出版社 : 岩波書店
過ぎし日、父親レヴの虐待を逃れて家を出たゼブ。しかし潜伏先でレヴに遭遇したゼブは…。運命はクレイクと謎のウィルスへと繋がっていく。一方、凶悪犯と闘うため、トビーたちは昨日の敵と手を結ぶことに。すべてが終わった後に開ける未来とは? 科学技術と環境破壊が行きつく先を構想した近未来小説三部作、ここに完結! 骨の洞窟 筆記体 ハチの群れ 骨の洞窟 子ブタたち ベクター クレイク誕生の物語 少年クレイク グロブ・アタック ベクター ウロコとシッポ ゼブとヘビ女たちの物語 子ブタ 預言者 子ブタ 長いおしゃべり 退 避 アヌーユー砦 クライオジーニアス行きの列車 二つの卵とクレイクが考えたことの物語 サングラス キックテイル ラズベリームース クライオジーニアス行きの列車 ルミローズ エデンクリフ 卵の殻 招 集 出 撃 卵の殻 戦いの物語 月の暦 裁 判 儀 礼 月の暦 本 本 トビーの物語 謝辞 訳者あとがき
明治一七年から二一年までの留学体験を下敷きにしたドイツ三部作『舞姫』『うたかたの記』『文づかひ』と、九年の歳月をかけてアンデルセンの小説を翻訳し、原作以上の評価を得た『即興詩人』(抄)を収録。
一九八四年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復だが、作者は明かせないという。阿政が恋人の新聞記者、方燕と調査に乗り出すと、長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり……。日本統治時代の台湾に生まれ、二・二八事件で幕を閉じた苦闘の生涯を描く歴史小説。 陳澄波を探して 消された台湾画家の謎 訳者あとがき
「わたしの家も、この街も、置いていけばゴミになるの?」 「ゴミ」「星」「林檎」……戦争の体験は人が言葉に抱く意味を変えてしまった。ウクライナを代表する詩人が避難者の証言を聴き取り、77の単語と物語で構成した文芸ドキュメント。ロバート キャンベルが現地を訪ねて思索した手記とともに、自ら翻訳して紹介。 旅立ちの前に ロバートキャンベル 戦争語彙集ーーオスタップ・スリヴィンスキー作/ロバートキャンベル訳 序 バス スモモの木 おばあちゃん 痛み 稲妻 妊娠 バスタブ 熊 結婚式 通り キノコ 雷 呼出音 「遠い」と「近い」 我が家 シャワー 住宅 生 土 星 歯 身の上話 食べもの ココア カレンダー カナリア アヒルの子 入場券 部屋 猫 鍵 色彩 お馬さん 恋愛 きれいなもの チョーク 血 銃弾 ランプ 手紙 愛 マドレーヌ 焼き網 都会 お祈り 空 ニュース 脚 ナンバープレート 洞窟 地下室 プラハ お別れ ラジオ 悦び 魚 自由 倉庫 ゴミ 夢 スイーツ 太陽 歌 記事 立て看板 禁句 戦車 動物 テトリス 沈黙 身体 パン生地 ケーキ 遺体 しっぽ 数 林檎 戦争のなかの言葉への旅ーーロバートキャンベル 一 列車から、プラットフォームに降り立つーー行き交う人々と言葉 二 人形劇場の舞台袖で、身をすくめるーー言葉の意味が変わるとき 三 階段教室で、文学をめぐる話を聞くーー断片としての言葉 四 ブチャの団地で、屋上から見えたものーー引き裂かれたランドスケープ 五 シェルターのなか、日々をおくるーーとどまる空間で、結び合う人々 六 あかるい部屋で、壁に立てかけられた絵を見るーー破壊と花作り 環のまわるが如く ロバートキャンベル 「戦争語彙集」原書謝辞
『赤毛のアン』『若草物語』『リンバロストの乙女』『あしながおじさん』などの少女小説に描かれる、強く生きる女性主人公の物語はいつ、どのように生まれ、広まっていったのか。英国の古典的名作『ジェイン・エア』が与えた衝撃と、そこから始まる脱シンデレラ物語の作品群を読み解き、現代における物語の意味を問う。 序 『ジェイン・エア』から少女小説へ --「シンデレラ・コンプレックス」と「ジェイン・エア・シンドローム」 第1章 脱シンデレラ物語の原型 --シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』 1 女性像の変転ーー『ジェイン・エア』以前の文学を見る 2 不遇な幼少時代を送るヒロインの登場 3 学校生活とキャリア 4 男性パートナーとの対等な関係 第2章 アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち --『若草物語』『リンバロストの乙女』『あしながおじさん』 1 『ジェイン・エア』の物語とアメリカの女性作家たち 2 女らしさへの問いーールイーザ・メイ・オルコット『若草物語』 3 逆境を乗り越えるーージーン・ストラットン・ポーター『リンバロストの乙女』 4 自立への道ーージーン・ウェブスター『あしながおじさん』 第3章 カナダで誕生した不滅の少女小説 --ルーシー・モード・モンゴメリ『赤毛のアン』 1 自分らしさと強さの肯定ーー『ジェイン・エア』からの飛躍 2 自力で居場所を獲得する物語 3 能力でキャリアを開く 4 敵対から友愛へ 第4章 イギリスでの変転とその後の「ジェイン・エア」 --ルーマー・ゴッデン『木曜日の子どもたち』 1 「シンデレラ」のゆくえーー『ジェイン・エア』からの変容 2 母としての「ジェイン・エア」 3 シンデレラ少年の物語 4 「意地悪な姉」の再生の物語 終 章 変わりゆく物語 --「ジェイン・エア・シンドローム」のゆくえ 1 変貌する「シンデレラ物語」--ディズニー映画と現代 2 変わる読者の意識と時代ーー新しい物語への展望 あとがき 参考文献
明治前期、知識青年は近世からの伝統のなか、中国の白話体・文言小説や日本人の創作した漢文体小説を愛好した。菊地三渓『本朝虞初新誌』、依田学海『譚海』、三木愛花『情天比翼縁』、石川鴻斎『夜窓鬼談』を収録。
アメリカ南部の小さな町に、突然現れた“ピュウ”。見かけからは人種も年齢も性別もわからず、名前や過去についても一切語ろうとしない“ピュウ”の存在は、町に静かな波紋を広げる。執拗に“ピュウ”の正体を探ろうとする者、口もきかない“ピュウ”に長年の苦しみや秘密を打ち明ける者ー。沈黙を守る一方で、鋭い観察者である“ピュウ”の目には、親切で信心深い人々の欺瞞、怯え、残忍さが容赦なく映し出されていく。やがて町の恐ろしい一面が明らかになり…。気鋭の作家が謎めいた語り手を通じて描く、奇妙で恐ろしい現代の寓話。
黄河のほとり、第九十九更生区。知識人たちはここで「こども」に監督され、再教育を受ける。解放を夢みて狂騒的な鉄鋼農業生産に突き進む彼らを、やがて無謀な政策の果ての大飢饉が襲い……。不条理な政治に翻弄される人間の痛ましくも聖なる苦闘を、「四つの書」の形式で語る。大躍進時代を彷彿とする歴史の暗部に挑んだ意欲作。 第一章 天の子 第二章 更生区 第三章 紅の花舞う 第四章 見え隠れ 第五章 自由への道 第六章 両面 第七章 出発 第八章 天地にとどろかす 第九章 不思議な坂 第十章 省政府 第十一章 火 第十二章 作付け 第十三章 大飢饉(一) 第十四章 大飢饉(二) 第十五章 光 第十六章 原稿 訳者あとがき
稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸! 訳者あとがき
時事雑説を描くことが禁じられていた江戸期に比し、明治の実録は堂々と現実の重大事件を空想・虚構をまじえ叙述する。黒船来航から西南戦争に至る維新前後史話として広く読まれた染崎延房『近世紀聞(抄)』、西南戦争における在野の志士を描く篠田仙果『鹿児島戦争記』、社会問題ともなった相馬事件を伝える渡辺綱『掃魔の曙』を収録。
舞台はゴールドラッシュに沸く一九世紀ニュージーランド。隠者の死、娼婦の悲劇、金鉱掘りの失踪…。事件の真相を求める一二人の男たちの会合に新参者が闖入し、輝く者たちは運命の天球を廻りはじめる。鏤められた手がかりが加速度的に繋ぎ合わされ、緊張ののち全ての謎が解きほどかれる、超大作ミステリー。二〇一三年ブッカー賞受賞。
あふれる詩情と奔放な空想力とをひっさげ、明治の文壇に忽然と現れた露伴。夢幻と浪漫が結晶した名作『風流仏』や異色の色道論『艶魔伝』、抱腹絶倒の明治文壇盛衰記『硯海水滸伝』など、紅葉と並び称された青年期の旺盛な創作力をたどる九編。
一九一六年、大英帝国の外交官であった男に死刑が執行された。その名はロジャー・ケイスメント。植民地主義の恐怖を暴いた英雄であり、アイルランド独立運動に身を捧げた殉教者である。同性愛者ゆえに長くその名は忘れられていたが、魂の闇を含めて、事実と虚構が織りなす物語のうちによみがえった。人間の条件を問う一大叙事詩。 ロジャー・ケイスメント関連地図 主要登場人物一覧 コンゴ アマゾン アイルランド エピローグ 謝 辞 訳者あとがき 参考文献
嘘や憎しみにあふれた情報の断片を優しさによってつなげ、神話的な力を蘇らせる「第四人称」の語りとは。絶えざる流浪、破局、全体主義を経験しながら、菌糸体のごとき独自の生長をとげた中欧文学の魅力とは。細分化する世界を星座のように再構築する新たな文学の可能性を、『逃亡派』『昼の家、夜の家』のノーベル賞作家が語る。 優しい語り手……………小椋 彩 訳 「中欧」の幻影(ファントム)は文学に映し出されるーーーー中欧小説は存在するか……………久山宏一 訳 第四人称の語り手の未来ーー訳者あとがき……………小椋 彩
黒人文学・文化研究の第一人者であり、岩波文庫『風と共に去りぬ』の訳者でもある著者による、アメリカ文学・社会論。南北戦争による社会の分断と、激動の戦後を描く壮大な「アメリカン・サーガ」を、主人公スカーレットの背景や、アメリカ黒人史、分断と一体化といった視点から多角的に読み解く。文庫解説に新章一章を加筆。 はじめに 『風と共に去りぬ』あらすじ 地 図 第一章 分断するアメリカ・一体化のアメリカ 第二章 スカーレットとそのDNA 第三章 マミー現象とアセクシュアリティ(非性化) 第四章 タラ農園とチェロキーの〈涙の道〉 第五章 南北戦争とホーム・フロント (銃後)の女たち 第六章 マーガレット・ミッチェルとその時代 第七章 アメリカン・サーガーー永遠の歴史ロマンス『風と共に去りぬ』 『風と共に去りぬ』関連略年表(ジョージア州と南北戦争) 引用文献