出版社 : 岩波書店
岩波少年文庫は1950年のクリスマスの創刊以来、途切れることなく続いてきた。その70年のあゆみを振り返るとともに、代表作と作家の解説、挿絵画家の逸話、翻訳者の仕事にも光をあてた初めての保存版。著名人の文章も多数再録。創刊から現在までの総目録付き。
『失われた時を求めて』の冒頭部「コンブレー」を取り上げ、プルースト的生成を鮮やかに開示する。登場人物たちの思いがけない造形過程やいくつものテーマ系の細部から壮大な全体へと及んでゆく。プルーストを読む醍醐味を伝える。
あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末はー。
室町期の京都五山禅林は、当時の学問研究の総本山であり、仏典や漢籍に詳細な注釈を施した口語体の「抄物」が盛んに著された。本書収載の二篇はその代表的作品。五山高僧の該博な漢学の教養を遺憾なく今日に伝える。
「いちばん大きなカタストロフは、しばしば小さな足音で近づいてくる」。第二次大戦前夜、オーストリア併合に至る舞台裏を、事実の断片から描き出す。大企業家とナチ高官との秘密会合、オーストリア首相を恫喝するヒトラー、チェンバレンを煙に巻くリッベントロープ…。彼らの卑小で時に荒唐無稽な行動・決断が、世界を破局に引き込んでゆく。事実に基づく物語。仏ゴンクール賞(2017)受賞作。 主な登場人物 1 秘密の会合 2 仮 面 3 儀礼的訪問 4 脅 迫 5 ベルクホーフの会見 6 やむを得ない決定 7 絶望的な企て 8 電報を待った日 9 ダウニング街の別れのランチ 10 「電撃戦(ブリッツクリーク)」 11 戦車の大渋滞 12 電話の盗聴 13 ハリウッドの貸衣装店 14 幸せのメロディー 15 死者たち 16 あの人たちはいったい何者なんだ? 解 説…………三島憲一 関連画像 訳者あとがき
「豚になってでも生きろ」-李芳根の助けで日本に逃れた南承之。済州島に残った芳根が自殺した日の夜、承之と芳根の実妹で東京に住む有媛は同時に芳根の夢を見る。二つに割れてそれぞれの心の中に生きる芳根の魂が二人を引き寄せていく。名作『火山島』の続々編にあたる本作は、金石範文学の原点であり、巨大な小説の終わりでもある。
経済小説の旗手が、大手婦人服メーカーを舞台に、焼け野原からのアパレル産業の復興、「ガチャマン」景気、百貨店の隆盛と高度経済成長、バブルの熱気、カテゴリーキラー台頭による平成の主役交代、会社とは何かを社会に問うた村上ファンドとの攻防、社長の死と競合他社による経営乗っ取りまでを描く。 85年間にわたるアパレル業界の変遷というプリズムを通して展開する、戦後日本経済の栄枯盛衰の物語。 ■編集部からのメッセージ アパレル産業の栄枯盛衰を辿ることは、日本の経済の移り変わりの一断面を鮮やかにに切り取ることになります。ドラマティックなフィクションでありながら、日本経済の今を、そして未来を考える際の必読書となることでしょう。 プロローグ 第一章 笛吹川 第二章 つぶし屋と三越 第三章 百貨店黄金時代 第四章 株式上場 第五章 社長交代 第六章 ジャパン・アズ・ナンバーワン 第七章 カテゴリーキラー台頭 第八章 ヒルズ族の来襲 第九章 中国市場開拓 第十章 兵つわものどもが夢の跡 エピローグ 主要参考文献 アパレル用語集 装丁=森 裕昌
マトー率いる傭兵の反乱は大国カルタゴをじりじりと苦しめる.長引く戦闘,略奪,飢餓….女神の聖衣(ザインフ)を奪われ国を窮地に陥らせたサラムボーへの市民の糾弾は高まり,ついに凶暴なモロック神への子供たちの供犠(くぎ)が始まる.前作『ボヴァリー夫人』から一転,激情と官能と宿命が導く,古代オリエントの緋色の世界.(全二冊完結) 第九章 野戦 第十章 蛇 第十一章 テントの下で 第十二章 水道橋 第十三章 モロック 第十四章 斧の峡道 第十五章 マトー あとがき 〔上巻目次〕 第一章 饗宴 第二章 シッカで 第三章 サラムボー 第四章 カルタゴの城壁の下で 第五章 タニット 第六章 ハンノー 第七章 ハミルカル・バルカ 第八章 マカール河畔の戦い 地 図
大地主の私生児として生まれ、混血の伯父に育てられ、革命軍に参加し、政略結婚によって財産の基礎をつくり、政治を巧みに利用して、マスコミを含む多くの企業を所有する‒‒‒‒。メキシコ革命の動乱を生き抜いて経済界の大立者に成り上がった男アルテミオ・クルスの栄光と悲惨。現代ラテンアメリカ文学の最重要作。 アルテミオ・クルスの死 * 解 説……………木村榮一
長い療養生活を経て,ゲルマント大公邸のパーティーに赴いた「私」は驚愕した.時は,人びとの外見を変え,記憶を風化させ,社交界の勢力図を一新していた.老いを痛感する「私」の前に,サン=ルーの娘はあたかも歳月の結晶のように現れ,いまこそ「作品」に取りかかるときだと迫る.全巻の人名・地名・作品名を網羅した索引を付す.(全14冊完結) 凡 例 『失われた時を求めて』の全巻構成 本巻について 本巻の主な登場人物 地図(一九二〇年代のフランスとその周辺/一九二〇年代のパリとその郊外) 第七篇 見出された時 2 場面索引 訳者あとがき(十四) 『失われた時を求めて』以外のプルーストの文献一覧 プレイヤッド版との異同一覧 図版一覧 総索引(人名/地名/作品名)……………津森圭一編 【『失われた時を求めて』の全巻構成】 第一篇 スワン家のほうへ コンブレー(以上,本文庫第一巻) スワンの恋 土地の名─名(以上,第二巻) 第二篇 花咲く乙女たちのかげに スワン夫人をめぐって(以上,第三巻) 土地の名─土地(以上,第四巻) 第三篇 ゲルマントのほう 一 二(以上,第五,六,七巻) 第四篇 ソドムとゴモラ 一 二(以上,第八,九巻) 第五篇 囚われの女(以上,第一〇,一一巻) 第六篇 消え去ったアルベルチーヌ(以上,第一二巻) 第七篇 見出された時(以上,第一三,一四巻)
ミヒャエル・エンデが、父エトガー・エンデに捧げた代表作を、生誕90年の記念版として新訳で刊行する。夢の中の出来事のような謎めいた幻想譚30篇と、画家であった父エトガーの不思議な魅力に満ちた絵画とが、互いに響き合うようにして構成されている本書は、父と子の共同作業によって築かれた物語の「迷宮」である。 鏡のなかの鏡 内容 挿絵リスト 生誕九〇年記念版刊行に寄せて……………ロマン・ホッケ 訳者あとがき
ヘンリー・ジェイムズが「美の精華」、キプリングが「まさに人生そのもの」と表題作を絶賛。アメリカの女性作家ジュエット(1849─1909)は、故郷のニューイングランド・メイン州の歴史ある静かな町を舞台に、人びとのささやかな日常と美しい自然を繊細な陰影をもって描き続けた。文学史上に名をのこす傑作、初の邦訳。 とんがりモミの木の郷 シラサギ ミス・テンピーの通夜 ベッツィーの失踪 シンシーおばさん マーサの大事な人 訳者解説 ジュエット略年譜
前3世紀のカルタゴの傭兵反乱に想を得た、フローベールの一大歴史絵巻。大国カルタゴの統領の娘にして女神に仕える神官サラムボー。傭兵たちの信望厚い隊長マトーは、彼女への許されぬ情念を胸に、反乱軍の指導者となる。「触れてはならぬ! 女神のヴェールです!」──東方の沙漠に花開く、荒々しく残忍な古代の夢。(全二冊) 第一章 饗宴 第二章 シッカで 第三章 サラムボー 第四章 カルタゴの城壁の下で 第五章 タニット 第六章 ハンノー 第七章 ハミルカル・バルカ 第八章 マカール河畔の戦い 地 図 〔下巻目次〕 第九章 野戦 第十章 蛇 第十一章 テントの下で 第十二章 水道橋 第十三章 モロック 第十四章 斧の峡道 第十五章 マトー あとがき
あたしは、月のように死んで、生まれ変わるーーこの七歳の娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人? そうでないなら、はたしてこの子は何者なのか? 三人の男と一人の女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく、この数奇なる愛の軌跡。プロフェッショナルの仕事であると選考委員たちを唸らせた第一五七回直木賞受賞作、待望の文庫化。(特別寄稿:伊坂幸太郎) 午前十一時 1 2 3 4 午前十一時半 5 6 7 8 午後〇時 9 10 11 午後〇時半 12 午後一時 13 特別寄稿 伊坂幸太郎