出版社 : 彩流社
『フランケンシュタイン』出版の翌年、メアリー・シェリーが執筆したのは父と娘の近親相姦を描いた小説だった。娘に禁断の愛情を抱いた父、またそのような異常な愛を引き起こして父を追い詰めた罪悪感を抱く娘、その両者の激しい苦悶と悲劇が切々と綴られた本作は、その内容からゴドウィンが原稿を預かったまま返さず、1959年まで出版されなかった。『フランケンシュタイン』や『最後のひとり』に次いで読者を刺激し続けてきた、問題の多い作品の初邦訳。シェリーが友人の娘のために執筆し、その原稿が1997年に初めて見つかった児童文学的短編小説『モーリス』の本邦初訳も付す。
やんちゃで愉快で、動物が大好きーー 短篇の名手サキの姉が、子供時代からその死まで、 弟との日々を愛を込めて語った評伝に、 これまで未訳だった短篇作品を加えたコレクション! サキ直筆イラストも収録! 第一部 評伝 サキ伝 Biography of Saki(H.H.Munro) エセル・M・マンロー ヘクター・ヒュー・マンローのこと A Memoir of H. H. Munro ロセイ・レイノルズ 第二部 サキ短篇選 マッピンテラスの生活 The Mappined Life 失われた魂の像 The Image of the Lost Soul 包みを持ったジャドキン Judkin of the Parcels 聖人とゴブリン The Saint and the Goblin クローヴィス、ビジネスのロマンなるものを語る Clovis On The Alleged Romance Of Business 古都プスコフ The Old Town Of Pskoff カール・ルードウィヒの窓 Karl - Ludwigs Window ラプロシュカの魂 The Soul Of Laploshka 青年トルコ党の悲劇 二つのシーン A Young Turkish Catastrophe In Two Scenes ほか
北原白秋、萩原朔太郎、中原中也、立原道造、高村光太郎…詩人たちの「詩想」あふれる小説の世界!これまであまり知られなかった瑞々しい詩人の小説の世界を読みやすい現代仮名遣いで!
18世紀イギリス小説、風俗描写あり、社会風刺あり、当時の様子がありありと。そして、なによりも、その狂言回しが、子犬のポンペイ。動物を主人公としたユーモア小説。となれば、思い出されるのが夏目漱石の『猫』。小説家で英文学翻訳家でもあった丸谷才一が、『猫』を生み出すきっかけになった作品に相違ないと推理!一読されれば、推理が確信になること、請け合いです。
「20年も前に女装男子やってました。 従者(メイド?)もあり! の冥土珍道中!」 (立原透耶) 第3巻目は、いよいよ立原透耶の中華圏SF趣味全開の 「冥界武侠譚」シリーズの登場です! 全8話のうち、第3巻目に 「華仙乱舞」「迷恋錯綜」「判官流浪」「受胎狂詩」の 4話を一挙収録! 第4巻に残りの4話を収録します。 第3巻の解説は、武田雅哉氏 (中国文学者、北海道大学教授)が登場! 著作集は全5巻予定! 既に2巻「CITY VICE」 1巻「凪の大祭」が刊行されています! シリーズ監修は、小谷真理(SF&ファンタジー評論家)、 アートディレクションは、YOUCHAN が担当!
著者の最大の代表作にして、 中国で最も権威ある文学賞の一つである 茅盾(ぼうじゅん)文学賞受賞作! 「出延津記」「回延津記」の全後篇で 70年の歳月を隔てて描かれる大河ドラマは、 中国でテレビドラマ化、 2016年11月には映画も公開されるほどの人気作品。 原タイトル『一句頂一万句』は、 一万句に相当する一句、 つまりは「ひと言の重み」という意味で、 小説中、その「ひと言」が何を示しているのか、 探してみてください。 「前篇の主人公の楊百順こと呉モーゼも後篇の主人公、 牛愛国も妻とは話が合わず、話の合う友人、 あるいは養女、あるいは情人を捜し求めてさすらいます。 他の登場人物たちにとっても話が合う相手を求めることが どんなに難しいことかが描かれています。 人の一生はそういう相手を捜し求める旅なのだというのが 劉さんの言いたいことなのだと思います。 中国の批評家が、この小説は中国人の「千年の孤独」を 描いていると評したのも、なるほどと深くうなずきました。」 (訳者あとがきより)
稀代の編集者がその「女性遍歴」を あますところなく描き尽くす。 これは、荷風、谷崎、乱歩、澁澤といった 文人たちへのオマージュなのか。 本書はまさに 編集者=偏執者による、 偏執者=編集者のための「小説」なのである。 《森魚名の小説は、おそらく異人たちとの 出遇いの問題に関係するのではあるまいか。 そしてまた人間の「〈うぶ〉さ、奥ゆかしさ、 そしてあるいは臆病さ」といったものも 描出されているに違いない。 してみれば、ここで異人とは、 つまるところ個としての実存の謂である。 そして氏にとって小説を書くとは、 異人の実存的行為のすぐれてひとつのかたちに ほかならないのだろうと思われる》 (谷川渥/美学者・京都精華大学客員教授、 本書跋文より) 「両手にて×× のしたより女の身ぐッと ひと息にすくいあげ、膝のうえなる×××にして、 したからぐいぐいと突きあげながら、 片手のゆびは例の×× 攻め、 尻をかかえる 片手のゆび女が×× にあて、×× へと廻る ぬめりをもって動かすたびたび徐々とくじってやれば、 女は息ひきとるような声して泣きじゃくり、 いきますいきます、いきますからアレどうぞと 哀訴するは、 前後××× の攻道具、 そのひとつだけでも勘弁してくれという」 (荷風散人的変奏)
宮崎アニメにも多大なる影響を与えた 堀辰雄の初期ファンタジー傑作が、 読みやすい新仮名遣いによって甦る! 多くの人が『風立ちぬ』『美しい村』『菜穂子』などの サナトリウム文学を思い浮かべる 堀辰雄のイメージを一新するような、 モダンな姿で若者を魅了する東京浅草などを 舞台にした作品群の数々。 新興芸術派のひとりと目されていた堀の初期の作品には、 しばしば天使や妖精が出てくる。 空を飛ぶイメージと共に、水の中を漂い泳ぐイメージを 伴う作品も少なくない。 どちらにも軽やかな浮遊感があった。 堀辰雄の初期ファンタジーを彩る幸福感は、 現実と無関係ではなく、 むしろ現実の過酷さへの順応と防禦として 形作られたものだった。 「堀辰雄」のイメージを一新する、 静謐で摩訶不思議な浮遊感の世界に、浸ってみたい。 【収録作品】 「死の素描」 「羽ばたき Ein Märchen」 「鼠」 「ある朝」 「夕暮」 「風景」 「眠りながら」 「蝶」 「あいびき」 「土曜日」 「窓] 「ネクタイ難」 「ジゴンと僕」 「水族館」 「眠れる人」 「とらんぷ」 「Say it with Flowers」 「ヘリオトロープ」 「音楽のなかで」 「刺青した蝶」 「絵はがき」 「魔法のかかった丘」 解説 天使と妖精たちのモダニズム 長山靖生
「科学が発展しても変わらぬものがある。 歳月を経てなお色あせないワクワク感をどうぞ」 (立原透耶) ◉第二回配本は、近未来サイバーアクション 「CITY VICE」全3冊を一挙収録! さらに、未完に終わった物語の完結編として、 特別に「CITY VICE 外伝 二つのエピソード」を 書き下ろし! そして、大人気シリーズ「チャイナタウン・ブルース」から、 「掟」「絆」を収録します。 第二回配本の解説は、 日下三蔵氏(SF研究家)が登場! 著作集は全5巻を予定! なんと、664頁の大ボリュームで、価格は第1回配本と同じ! シリーズ監修は、小谷真理(SF&ファンタジー評論家)、 アートディレクションは、YOUCHANが担当!
中国きってのユーモア作家が描く現代中国の素顔! 「潘金蓮」とは? 『水滸伝』『金瓶梅』に登場する、通説では架空とされている女性。 『水滸伝』では、炊餅(蒸し饅頭)売り・武大の妻として登場。 絶世の美女だが性欲・物欲・向上心が強く、 夫を殺して情夫との淫蕩にふける典型的な悪女・淫婦である。 『金瓶梅』では副主人公として描かれ、彼女の名の頭文字が 作品の題名の一文字目として使われている。 本作は、范氷々(ファン・ビンビン) 主演で、 9月に中国で公開予定の映画『私は李雪蓮』の原作です! 本作のヒロイン、李雪蓮は、一介の農村婦人でありながら、 権力にも世俗的な成功者にもまったく臆することなく、 自分が納得いかないことには決して巻かれず、 理不尽な夫や地域の権力者たちに立ち向かう。 あの手この手で彼女を懐柔しようとしたり丸め込もうと する自分の利益しか考えないせこい役人たちの思惑を しっかり見抜き、 自分は、「潘金蓮じゃない」と言って、 自分の足でしっかり生きていくそのたくましさに、 読者は思わず喝采を浴びせたくなる。 独りっ子政策の行き詰まりや、保身に走る役人たちの 滑稽さなど、現代中国の抱える問題点をユーモラスに描く、 劉震雲の傑作長編小説、ついに翻訳なる! 前作『盗みは人のためならず』も併せてお読みください。
「懐かしくてどこか新しい立原ワールドへお帰りなさい!」 (立原透耶) 昨今、日本のファンタジー、SF が世界からも注目され、 その文学史的な書き換え、整理の必要が迫られている……。 91年にデビューして以来、ファンタジーからSF、そしてホラーへ と作品の幅を広げてきた特異な作家・立原透耶! 現在、初期の立原作品はとくに品切れや絶版が多く、 入手が困難であるという現状がある。しかしながら、 著者本人にも作品を入手したいという依頼が多いという。 それら読者のために、 ここに著作集の形で復刻し、 日本ファンタジー(SF)、文学史上、独得な歩みを見せる 立原ワールドとは何かを今こそ再考する! 著作集は全5巻を予定! ◉第一回配本は、SF長編第一作『凪の大祭』を中心に、 『闇の皇子』、「Cobalt 1992 年2 月号」に掲載された デビュー作「夢売りのたまご」、そして、 「魔の森の秘密をとけ!!」「天使の降る夜」 「ミステリアス・ヒーロー!!!」「ひとつぶの氷」を収録。 解説・小谷真理、詳細な年譜、著作一覧・星敬、そして、 著者による「書き下ろしあとがき」も収録されます。 シリーズ監修は、小谷真理(SF&ファンタジー評論家)、 アートディレクションは、YOUCHANが担当!
ハーストンは現代の多くの作家たちにインスピレーションを与えた作家でありかつ文化人類学者。アフリカ系アメリカ人女性としての精神や物語の手法は、多くの作家が受け継ぎ、作品に活かされた。彼女には長編『彼らの目は神を見ていた』があるが、その魅力に手軽に触れることができるのが、ここに集めた短編である。表題の「マグノリアの花」は、川が語るという形式をとった民話のようなつくりで、冒頭から詩的で絵のような情景に引きこまれ、人物描写も戯画的な部分がある。しかし父娘の衝突や民族を取り巻く複雑な感情の描写、情感の把握の確かさ、そして民族の歴史をふまえた作家の意識が見られ、たんなる民話とはかたづけることができない。
中河与一の代表作の一つ『天の夕顔』のモデルであり、 材料の提供者であった不二樹浩三郎が 書き下ろした『冷たき地上』は、 体験した者のみが書ける生涯を賭けた愛の苦悩の姿 そのものである。 中河が一度も訪れたことのない岐阜県山之村を 舞台にできたのは、不二樹の口述があったからである。 終戦後、中河との確執のなかで、自ら書き残した 未発表原稿を甥の吉田郷氏の編集で世に問う問題作。 付録として、朝日新聞記者のインタビューに応えた 『天の夕顔』に対する不二樹の思いを収める。
母が狂っていたという過去を知り、自らも狂うのではないかという恐れを抱き続ける男(近づく狂気)。過去に捨てた子どもと知らずに、彼女と肉体関係を結ぶのではないかという恐怖に囚われる男(子への恐怖)。自害を予告しながらも、目の前の男に死について滔々と語る男(遺言)。狂人の内部が覗き見られる、悪魔的短編小説13編を収録。
『憐憫の孤独』は二十の中・短編で構成されている。物語もあればエッセイもある。 初期「牧神三部作」(『丘』『ボミューニュの男』『二番草』)のあとに書かれた作品で、ジオノ文学の重要な要素が見事に凝縮された内容豊かな傑作である。 これ以降に出版される多種多様な作品群を予告するような物語が多く含まれており、 ジオノ文学の扇の要にたとえられるような作品だといえよう。 (1)憐憫の孤独[放浪者の物語] (2)牧神の前奏曲[鳩をひとりの男が助ける物語] (3)畑[妻の心が自分から別の男に移って しまったので、家を出て見知らぬ土地で畑を開墾して 暮らしている男の物語] (4)イヴァン・イヴァノヴィチ・コシアコフ [第一次大戦中、ジオノとロシア人が見張役を 務めることになり、言葉が通じないにも関わらず 心が通い合うようになる物語] (5)手[盲人がすべてを手で確かめる物語] (6)アネットあるいは家族のもめごと [孤児が21歳になり孤児院から出て働きはじめ、 おばさんが雇い主を表敬訪問する] (7)道端 [メキシコに行ったことがある男の妄想を聞く] (8)ジョフロワ・ドゥ・ラ・モッサン [買取った果樹園の木を抜こうとしたところ、 売った男が情熱の注がれた桃の木を引き抜くなら 殺すぞと脅し、注意されると男は自殺する といって騒動を引き起こす] (9)フィレモン[豚の屠殺を生業とする男が、 娘の結婚式の間際に豚を殺さざるをえなくなり、 殺し処理する物語] (10)ジョズレ [太陽を食べるという妄想を語る男の物語] (11)シルヴィ[男に捨てられ田舎に帰ってきた シルヴィは男への未練を捨てられない。シルヴィを 素朴な青年が見守る物語] (12)バボー[自殺した青年の様子を女が語る物語] (13)羊[樹木の気持になりきることができる男が、 樹木や風景などについて語る物語] (14)伐採人たちの故郷[農場にはどこでも糸杉が 植えられているが、糸杉が音楽を奏でるという物語] (15)大きな垣根[襲われた野ウサギからカラスを 追い払ったが、野ウサギは怖がっているのが分かった。 人間と動物のあいだには垣根がある] (16)パリ解体[大都会に未来はないという物語] (17)磁気[自然のなかに放り出されても 生きていける男とはどういう人間なのかを考える] (18)大地の恐怖[生きていることが不安なため さまよい歩く男] (19)漂流する筏[山の中には無人島のような 暮らしをしている住人がいる。そこでは非人間的なこと が時として行われている] (20)世界の歌[世界の歌が聞こえてくる作品を 書きたい。その必要があるという主張]
“探偵小説の父”ウィルキー・コリンズの短編から、 異なる味わいをもたらす5 つの短編物語をセレクト! ヴィクトリア朝の古くさい物語? いえいえ、侮るなかれ! 市井の人々の直面する謎、秘密、運命…… シリアスに、ときにユーモラスに語られる ストーリーテリングの妙をご賞味あれ!! 【第1話】アン・ロッドウェイの日記 【第2話】運命の揺りかご 【第3話】巡査と料理番 【第4話】ミス・モリスと旅の人 【第5話】ミスター・レペルと家政婦長
大学の薬学部を卒業し、自立を目指す「私」。社会学者として仕事に生きてきたはずの母タシャレジが最近やたらと結婚のプレッシャーをかけてくるけれど、交際中のノズリとの溝は深まるばかり。薬局開業の夢もだんだんと遠のいて…。一方。スクリノの村から上京したヤルフェルは、せっかく入った大学でドロップアウトの危機に直面。秘密の話し相手だった「女王様」も失い、起死回生、密航を企てる。現代チュニジア社会の見取り図とそこにある多様性を浮かびあがらせると同時に、国や文化でも変わることのない若者の希望や葛藤を描く。
フランケンシュタインと日本SF の相関をさぐる文化論! 200 年前に書かれた『フランケンシュタイン』が提示する 問題系の現代的な意義=「つぎはぎ」「知性や労働の複製」 「母性をめぐる解釈」などをめぐり、日本の戦後SFへの継承をたどる! 小松左京、光瀬龍、荒巻義雄の第一世代、 田中光二、山田正紀の第二世代をへて、 第三世代以降の伊藤計劃や円城塔へどのように繋がっているのか? ※2015 年秋上映予定の映画『フランケンシュタイン』、 そしてアニメーション映画、伊藤計劃・円城塔原作の『屍者の帝国』 の上映にあわせての刊行! ●はじめに 「怪物には、へそがない」・徘徊する怪物・ へそをめぐる議論・この本のねらいと構成 第1部 メアリー・シェリーの遺産 ●第1章「生命創造とつぎはぎの身体」・ 神の創造とゴシック小説・つぎはぎの身体と準創造 ●第2章「魂なき肉体と機械の複製」・ 人口統計と数値化の時代・ラッダイト運動と機械嫌悪 ●第3章「境界線上の怪物」・ 母性という呪い・家なき子と男たちの関係・ 製造物責任をどこまで負うか ●第4章「グローバル化のなかの怪物」・ ナショナルの外へと出ていく・怪物の存在証明 第2部 戦後日本におけるフランケンシュタイン ●第5章「怪物からロボットやサイボーグへ」・ フランケンシュタインと視覚表現・フランケンシュタインと鉄腕アトム・ 兵器としての鉄人28 号・良心回路と人造人間キカイダー ●第6章「神との闘争をめざして」・フランケンシュタインと戦後日本・ 別の歴史と神への道ー小松左京・サイボーグと解脱ー光瀬龍 ●第7章「フランケンシュタインと対抗文化」・新しい波と対抗文化・ ヨーロッパとフランケンシュタインー荒巻義雄・ エコロジーと闘争ー田中光二・神を狩る敗者たちー山田正紀 ●第8章「怪物たちの共同体」・ポストヒューマンと怪物・ フランケンシュタインと女性性・『屍者の帝国』とテキストの縫合 ●おわりに「フランケンシュタインの問題群」