出版社 : 徳間書店
伊勢から神戸にかけての約三百キロにわたる「歴史街道」は“日本版ロマンチック街道”ともいわれている。この街道にある日、点々と女性の死体がバラまかれた。一方、中年女性に失踪した娘の行方を探してほしいと頼まれた弁護士探偵・森江春策は青山高原と飛鳥にめまぐるしく続発した殺人に遭遇し、バラバラ死体事件にも取り組むことになる。やがて浮かび上がってきた前代未聞のおぞましいトリックとは。
処女作で文学新人賞に輝き華々しいデビューを飾ったものの、次作が書けず焦燥感にかられた秋川久生は、ルポライター寺島遼子との同棲生活を打ち切り、スペインに旅立った。そんなある日、夕景のアルハンブラ宮殿で小西景子と知り合い一夜を共にするが、翌朝、景子は姿を消していた。帰国し、新しい女性との交際を深めつつあった秋川は、軽井沢で、今は人妻となった景子と再会を果たす…。長篇恋愛小説。
危機への対応は幾つかある。米国が常套とする腕力による解決もその一つだ。しかし、私たちは中国との関わりで幾度も錯誤をやらかしている。その経験を踏まえるならばまずは対中関係のみならずアジア諸国と日本との道義に基づく共栄のアジェンダ(構想)を明示すること、それが実は日本が経済敗戦から立ち直る第一歩となるのではないか。それが本書の隠された主題である。
借金に追われるしがない画商ウィル・サムナーにある日、願ってもない儲け話が舞い込んできた。癌に冒され余命いくばくもないフロリダの大富豪が、その超一流の絵画コレクションを売却してほしいというのだ。ところが、鑑定を始めるや大富豪の妻が何者かに殺され、「ファイルをよこせ」という脅迫が。ファイルとは一体何?それに大富豪はなぜかフロリダ州知事を憎んでいた。謎が謎を呼ぶ名画鑑定の行方はいかに。
復帰公演を前にした女優、百嶋美也子から警護を依頼された野上探偵と俊介は、二十年前に銀扇座で行われた公演が事件を解く鍵であると考える。当時の関係者の周辺を洗っていくと、そこには意外な事実が…。そして惨劇は起こった。本番前の稽古中、共演の俳優、水越蒋太郎が舞台で十字架に磔となったまま短刀で刺されて死亡したのだ。まさにそれは「予告」どおりの死に様であった。事件は野上や俊介たちまでも巻き込み、意外な方向へと展開していく。
エジプトの王女とヘブライ人の若者の間に生まれた、エジプトの王子モーセ。彼は若くして役人となり、ファラオの壮大な建造物の建築現場を監督する。そこで見たのは、祖先アブラハム以来400間、奴隷として過酷な労働に苦しむヘブライ人の姿だった。神の命によりモーセは、民を解放し、約束の地カナンへと率いていくことを決意する。飢えと戦闘に明け暮れながら、モーセは偉大な国民を作ろうとするが、ようやく目前にしたカナンの地にはエジプト軍が立ちはだかっていた-。
レストランチェーン・ニコライの社長、市川俊夫が突然謎の脅迫電話を受けたのは、愛人、森田佳子と情事の最中だった。二十五年前、市川は長崎の鶴島炭坑で博奕打ちの堀切勇次と娼婦の井上清子の二人を殺害し、重要参考人として勾留された。が、証拠不十分のために不起訴となり、事件はすでに時効になっていた。松浦と名乗る脅迫相手は、人殺しの確証があるとほのめかし、市川の心胆を寒からしめた…。
尼寺の離れに独り暮しのお源は、若い女高利貸し。情なしお源だの、夜叉のお源だのと悪名高い。面長の顔に白粉っけもないが、スラリとした姿。見る目のある人に言わせれば、すこぶるいい女らしいのだが、小気味のいい、情容赦のない取り立てで、江戸の町にその名をとどろかせている。そんな非情なはずのお源が、隠れて庶民たちの暮しを助け、彼らが巻き込まれる難事件を解決していく。時代推理の醍醐味。
南アルプスで男女の死体が発見されたが、遺体は死後十日間で白骨化していた。同じ頃、環境庁鳥獣保護課の沖田のもとに中部山岳一帯における鳥獣の異常繁殖を告げる調査報告が相次いだ。沖田は理学博士・右川を訪ね、百二十年に一度というクマザサの結実が、それを餌とする鼠の大量繁殖をもたらしているとの指摘を受ける。関係官庁は対策要請にも耳を貸さず、ついに大惨事が発生する。壮大な長篇サスペンス。
一流商社の燃料部に勤務するOLの森高美加に、人事部の小野寺という女性から電話があった。午後六時に有楽町のイタリア料理店で待ち合わせた美加に小野寺の持ち出した話は、彼女にアルバイトをしないかということだった。それも、いきなり横書きで森美子と書いてみてという。実は、これが優良企業に勤めるOLを巻き込んだ詐欺の始まりだった(表題作)。裏経済傑作短篇集、文庫オリジナル。
南極横断の冒険に失敗して失意の底にあったアメリカ人飛行士オーエン・ハートは、1938年、ナチスドイツに雇われ、再び南極探検へと出発した。しかし航海中、ノルウェーの船と戦闘状態になり、破損して南極の小さな火山島にたどり着く。そこには、苦悶に顔をゆがめた死体の山があった。何か新種の病原体らしい。ナチスの高官ユルゲン・ドレクスラーは、それを生物兵器に利用しようと考える。
イタリアのバイオリン職人ニコロ・ブソッティによって命を与えられ、四世紀にわたりオーストリア、イギリス、中国、カナダと五つの国を旅した伝説の“レッド・バイオリン”。官能的で悲愴なまでに美しいその音色は、多くの人を魅了し幸福の絶頂へと導くとともに、いつしか破滅へと誘ってきた…。永遠を司るがごとき悪魔的な力の源は?明かされる衝撃の事実とは?一本のバイオリンが綴る愛と運命の物語。日本版オリジナル・ノベライゼーション。
工場汚水から毒ガスが発生し、幼児が中毒死した。自分の不注意を責めた母親は、その後を追って自殺する。妻と子供を失った芭蕉研究家の大学講師・三浦八郎は廃水を流した化学工場の工場長・田辺に激しい憎悪を燃やす。間もなく相模湖畔で絞殺死体となって発見される田辺。その直後、最有力容疑者の三浦が遺書を残して自殺する。事件は解決したと思われたが、三浦には鉄壁のアリバイが…!?傑作長篇推理。
ヴァンパイアに襲われた臨月の母親から生まれたブレイドは、超人的な力と人間の心を持つヴァンパイア・ハンターとしてヴァンパイア抹殺に闘志を燃やす。一方、世界征服を企む宿敵フロストは、密かに古代予言書「マルガの君臨」を解読し巨大な力を得ようとしていた。人類のため、そして自らの忌まわしい宿命に立ち向かうべく、ブレイドは最後の闘いに挑む…。新世紀に贈るアクション・スリラー超大作。
1919年、ニュートン・ボーイズの華々しい活躍が始まった。貧しいテキサス育ちのウィリス、ジェス、ドク、ジョーの兄弟は爆破の専門家グラスコックと組み、夜間に銀行の金庫を爆破するという手口で、次々に「仕事」を成功させていく。銃を乱射するそれまでのアウトローを時代遅れにした彼らだったが、銀行や警察も黙ってはいなかった。追い詰められたウィリスは危険を承知で郵便列車強盗の話に乗るが…。
花咲村の惨劇を彷彿とさせる桜吹雪に彩られた殺人劇が、またも朝比奈耕作を襲った。月光に照らされた雪景色の中で眺める満開の夜桜-雪・月・花の三要素が揃ったとき、吉野の山の蔵王堂に惨劇が起こる。不気味な殺人予告状で標的にされたのが、地元の名士・井筒屋義信が誇りとする美しい三人の娘、雪絵・月絵・花絵。闇に響く法螺貝の音とともに、異様な美意識に彩られた連続殺人の幕が切って落とされた。朝比奈耕作、待望の新シリーズ『四季の殺人』第一弾。
大地震と、人の生き血を吸う妖怪たち。十万人を越える死者が出た京都大災害の1年半後には、琵琶湖の湖底からホタルに似た巨大昆虫が人々を襲い、テニアン島が空を飛んで、京都上空に浮かんでいる。いまや町は危機管理委員会の支配下にあった。黒き神々の手先はあらゆる機関に入り込んでいる。未曾有の災厄に立ち向かい、いったん死んだものの、貴船神社の龍神から、命を授かった地質調査技師の木梨香流は恋人の真行寺君之とともに、時空の裂け目にある闇の牢獄に部屋ごと封じ込められていた。大異変が始まった…。
ぐおぉーんと、寂寥たる闇を震わせて、不気味な鐘の響きが山中を貫いた。絶対、鳴らないといわれ、もし鳴るようなことがあれば『この世が終わる』と伝えられた不鳴鐘が突然、大音声で鳴り響いたのだ。鐘堂に駆けつけた天主家の人々の前に、また新たなる悲劇の幕が上がった。着物を着た人間の膝から下の部分が釣り鐘の中からぶら下がっている。庭師の秀夫だった。突然吉原より呼び出された朱雀十五、因縁の地、神岡山の聖地、天主家の館に再度、乗り込むことに…。いよいよ、事件は因習と血塗れの大迷宮に。全ての謎は解かれるのか。『黄泉津比良坂、血祭りの館』完結篇。