出版社 : 徳間書店
昭和18年10月、佐世保海兵団の講堂に「瀑竜」訓練部隊の隊員150名が集結していた。彼らは巡洋艦や駆逐艦で魚雷を扱う者、海軍航空隊の整備員のなかの寄せ集めのグループだった。訓辞が始まった。諸君の手にゆだねられる高速雷撃艇「瀑竜」は、高い技術を持つ兵士と一撃必殺の破壊力を持つ兵器による少数精鋭で当たれば、敵の新鋭艦も恐るに足りない-「瀑竜戦記」と、黄砂哭く中国東北で繰り広げられた日露の対戦を雄渾に描く「秋山支隊、挺進す」によって補強される「八八艦隊物語」の世界、横山信義が贈る傑作篇。
森江春策の法律事務所に中年の女性が訪れた。娘の川越理奈が消息を絶っているので探してほしい、という依頼だった。森江は弁護士の仕事よりも、なぜか探偵の能力を認められているのだ。「歴史街道」という手がかりを得て森江は行動を起こすが、その時には奇怪な事件が報告されていた。奈良元興寺近くの郵便ポストから右腕、宝塚劇場近くの廃墟旅館から胴体、イスパニア村のコインロッカーから左足が次々と発見されたのだ。これらの場所は「歴史街道」と関係があるのか。おぞましい殺人劇の幕は切っておとされた。
極寒の早朝、悠海子は検屍のために呼ばれた。公園のベンチの間にその男は倒れていた。赤い石畳に黒い血が飛び散っている。一目見て、死んでいることは明らかだった。-検屍結果は病死。だが持ち帰った便を検査した悠海子は、遺体は死んだ後に公園に捨てられたのではないかという疑惑を深めていった。検屍結果に間違いはない。病死の人間をなぜ…不審に思った悠海子は独自の捜査を開始した。死体遺棄事件は意外な様相を見せ始める…。女医・椎葉悠海子が鋭い推理で検屍の盲点を突く。本格医学ミステリー。
一見無関係に思われた三件の殺人事件。だが現場に残された口紅のケースが同じことから、同一犯の可能性が。鍵を握るのは犯行直後に目撃された喪服の女。そして新たな共通点も。最初の被害者は愛人と横領を働き、二人目は婦女暴行の常習犯、三人目は妊娠した愛人を捨てたという女性問題があったのだ。やはり犯人は喪服の女…。数日後、最初の被害者の妻が探偵事務所を訪れた…。
先物取引会社・大桑商事の雇われ社長・森田は、友人の大塚に十億もの借金を申し入れた。期間は一日。しかし金はオーナーの瀬島の口座に振り込み、自由に引き出してもいいというのだ。仕手戦で追いつめられた、大桑商事消失の危機。債権保全をねらっておし寄せる債権者の群れ、自己の利益追求で、会社を裏切る獅子身中の虫。森田の打った最後の奇策は効を奏するのか。会社清算をめぐる欲望模様。書下し長篇。
1910年の日韓併合から45年の日本敗北の瞬間まで、36年間朝鮮半島に君臨した「朝鮮総督府」。足がために乗り込んだ伊藤博文から寺内正毅、長谷川好道ら八人の総督が存在した。語られることの少ない“日韓併合時代”を大韓帝国滅亡に立ち合う悲運の国王高宗と純宗、暗躍する親日派高官、生命をかける抗日志士のそれぞれの生きざまを軸に展開する。知られざる歴史ー日韓の悲劇を描く壮大な近代史ドラマ。
’60年代の反戦運動の元闘士ペリー・ヒルダリーが通り魔に撃たれ死亡した。友人ハンク・ザーンは彼の遺言執行人だったが、死の3週間前に遺言が書きかえられていることを発見する。それは実子を完全に排除し、100万ドルの遺産を4人の男女に贈るという意外なものだった。1人は若く美貌の女性キャスター、1人はうさん臭い離婚訴訟専門家。女探偵シャロン・マコーンはそこに犯罪の匂いを嗅ぎつけるー。
チミケップ湖に幽霊が出る-北海道北見市の南に位置し、観光客もあまり訪れぬ山あいの小さな湖。冬は凍結し雪に埋もれる神秘の湖にまつわる幽霊伝説を耳にした大富豪の一人息子・中垣内和少年は、お坊ちゃまの財力と特権を生かして、家来の大人たちを引き連れ、真相解明のキャンプを湖で張ることにした。一方、推理作家の朝比奈耕作は、地元ローカル鉄道の『ふるさと銀河線』を舞台にしたミステリー執筆のため、やはりこの湖にテントを設営。そこで彼らが遭遇したのは、ワラ人形による恐怖の連続予告殺人だった。
ワシントンDCのアメリカ中央情報局-通称ラングレーといわれる場所、内部の人間がカンパニーと呼ぶ組織でシロン・リーは、サダム・フセインの動向にくぎづけになっていた。八月二日、この日、中東の軍事大国イラクが隣国クウェートへ電撃侵攻した。国連は無条件撤退決議を採択したが、中国の〓@68B0@小平はどう出るか。そのとき、衛星の傍受した通信をパソコンの画面が打ち出してきた。クウェート侵攻直前に起きたチベット騒乱で、ラサの軍と公安が手配した若い東洋系の男の顔だ。その頃、香港の工藤秋生は。傑作完結篇 上。
昭和四十九年夏、東京は未曽有の危機に瀕していた。ほどなく盛夏を迎えようという六月下旬、何の前ぶれもなく突然雪が降った。そればかりか、電力の供給がストップし、すべての内燃機関、エネルギー装置が作動しないという事態が起きたのだ。短時間ではあるが定期的に発生する謎の現象に、首都圏の機能は麻痺しつつあった。エネルギー消失の原因が、東京湾内に存在する「異獣」にあるとにらんだ、われらがロジャーズ・ラフネックスが出動。自衛隊、米軍をまきこんだ大作戦がはじまった。怒濤の書下しスペクタクル。
警視庁顧問探偵・尾高一幸は、南紀白浜で旅館を経営する叔父・太田徹のはからいで、見合いに招かれた。もとより身を固める意志のない尾高なので見合いは不首尾に終わったが、和歌山市に住む見合い相手の母娘を車で送り届けたその帰り、叔父・徹が事件にまきこまれた。ひき逃げの容疑をかけられたのだ。徹は、自分がひいたのは白い紀州犬であって人間ではないと主張するが…。徹の嫌疑を晴らすために、被害者の周辺を調査する尾高と助手の渥美純子は意外な事実にいきあたる。円熟の書下しトラベルミステリー。