出版社 : 徳間書店
唐は玄宗皇帝の治世。開元の治とうたわれた名君も政に倦み、楊貴妃にうつつをぬかす始末。悪宰相・李林甫の死因に毒殺説が流れ、警備にあたっていた方術士・葉法善に嫌疑がかかった。汚名をすすいでほしいともちかけられたのは詩仙・李白だ。宮廷を追われ、江南を旅していた詩人は再び長安の土を踏み、調査に乗りだす。厳重な護衛下にあった宰相を誰がどうやって殺害したのか。折しも安禄山の乱が王朝を震撼させる。殺人事件の背後に、唐を滅亡へと導く大陰謀が隠されているとは。酒豪詩人・李白の名推理。
主人公は矢島敏之、36歳。職業、刑事。監察医、向井玲子との結婚を間近に控え、同僚・石神と厄介な連続殺人事件の捜査に乗り出していた。悲劇は、激しく雨の降る夜、ペニスを鋭利な刃物で切断された全裸の男の死体が発見されたところから始まる。監察医・玲子の検死の結果、先月の被害者と同じ殺害方法と判明。いずれの被害者からも直腸から精液が検出され、犯人はB型血液の男と断定された。これらを手掛かりに、矢島と石神は捜査を開始する-。
人気ラジオ番組「電話人生相談」にかかってきた一本の電話…。それは数日前に殺された女性と同じ名前だった。単なる偶然か、死者の魂の叫びか。残された手がかりは埼玉・川越と伊豆・新島の市外局番、そして録音テープ。捜査が難航するなか、同じ手口で第二の殺人が起こった。事件の謎を解く鍵となる「音」を追って舞台は新島へ。そこで待っていたものは意外な結末だった。目と耳で読む本格推理。
カフェ・コメディの人気女性コメディアン、トレイシーが二年前の雨の夜、突如姿を消した。事件は死体なき殺人と断定され、友人のボビーが逮捕される。女探偵シャロン・マコーンは、無実を訴える彼のため、再調査にのりだす。が、カフェ・コメディのオーナーやボーイフレンド、ルームメイトが語るトレイシー像は奇妙に食い違う。いったい彼女はどんな人間だったのか。人気シリーズ待望の第五話は怖さがいっぱい。
おれは松平利春。不自然死死体を検屍する監察医だ。行く先々で殺人事件が発生するんで、“死神解剖医”なんて呼ぶ者もいる-。だが、今回は死体がおれを熱海へよんでくれた。身代り不動の極楽坂の梅の木に、若い美人がブラリぶらさがっていた。偽装縊死ではないかと考えた旧知の刑事チョウが、是非、解剖してくれと頼んできたのだ。ところが、待ってたのは死体一人じゃなかった。おれが行ったとたん、芸者の姐妓がやっぱり極楽坂に吊るされ、別の場所にももう一人。おいおい三人の首吊り人なんて、こりゃどうなってんだ。
李唐長安にあって、半神半人の運命からこれまで幾多の事変に巻き込まれざるを得なかった顕聖二郎真君に最大の危機が襲った。一身二者、彼の内が神と人の二つに分かれたのだ。天界に安住することを嫌って塵界に身を染めてはじめて、二郎は翆心という女性の真情に魅かれてきた。一方、天宮の玉帝は外甥にあたる二郎が卓絶した力で天界に謀叛を起こさないかと警戒をゆるめなかった。人としての限られた時間に命を燃やすか、今こそ天界を掌中に治め絶対の威力を揮うか。二人の二郎が、翆心をはさんで相対決する完結巨篇。
「私の最も大切な財産は石神探偵事務所の狩野俊介君にゆだねるものとする。猫を追い払うより皿を引くべきであった」-俊介の愛猫ジャンヌを通して親しくなった元市長・滝之水老人が、息をひきとる際、弁護士に託した遺言だった。真っ白な便箋に象形風に書かれた不可解な文字は、遺言であると同時に、その意味を解けとの探偵俊介への依頼だという。老人の娘婿・高山代議士から「大切な財産」を渡せと居丈高に要求された俊介は、それに反発し、長兄の娘、梨花とともに遺言の謎に迫る。会心の本格推理シリーズ新作。
バレンタインデーの夜、長野県諏訪市の十九歳の新聞配達員・青島蕗子が行方不明になった。蕗子は販売店に住みこみながら、信州大学へ通う学生であった。連絡を受けた諏訪署の刑事・道原伝吉は、いやな予感がした。果して、蕗子は絞殺死体となって発見された。しかも、その後、蕗子の死体発見場所から、わずか150メートルの畑の中に、若い男性の刺殺死体が埋められていた。2つの殺人事件の捜査の過程で、繰り返し哀切なメロディーが聞こえてくるのだった。その曲、幼女の歌う童謡「砂山」と事件の関連は…。
秘密捜査官・矢神俊二。一切の過去、怒りと哀しみを、その虚無的マスクの下に隠しもつスーパークールな男だ。政府の水際作戦によって官能麻薬〈ヴァージン・ジュース〉の供給が枯渇し、都市ではファミリー同士の縄張り争いが一触即発の状況だった。そんな中、郷田ファミリーのVIPがたて続けに狙撃された。奴らが多国籍ファミリー相手に戦争を始める前に狙撃者をつきとめろ、それが指令だった。コンビを組まされたワル刑事鬼城と非情の捜査を開始した矢神の前に、黒いボディスーツの女が影のように現われる…。
重役いうのも、ツライもんでっせ。いびられ、こき使われて三十年。大阪の商社の総務部長が肩書で、春闘に株主総会、ゴルフコンペまで、気ィの休まる暇もありません。エゴは上司に共通で、これにヒステリーまで加わると、下の者は堪まりません。念願の取締役の末席に就いて、二年首がつながったものの、その間に常務に昇格せんと会社に残れるかどうか…。ここだけの話、サラリーマン重役の本音、教えたげます。
フィリピンの有力な貿易商が京都清水寺で刺殺された。ガイド・森麻子の一瞬の隙を狙っての犯行だった。麻子の夫・一郎は、特ダネをものにして名声を得たいと焦っているルポライター。友人のライター・石川利一の協力を得て事件の取材に乗り出す。一方、京都府警・狩矢警部の捜査が始ったやさき、石川と、前年に商社員の夫を事故でなくした野村亜矢子の死体が哲学の道で発見される…。長篇本格推理。
欲望秘書課長・野見山将介は、前から狙っていた大物代議士の美人秘書を口説き、濃蜜愛を交わした後、彼女から相談をうけた。野見山の親友・藤田の死についてだ。藤田は一週間前、秋川渓谷をドライブ中、誤って転落死した。彼は代議士の山荘へ五億円の闇献金を運搬していたのだ。事故後、現場から現金は消えていた。表沙汰にできない事件だけに内密に調べてほしいという。早速、藤田未亡人を自慢の巨根で蕩けさせ事情をきくと、事故当夜、車には女性が同乗していたらしい。しかもその女は巾着の持主ということだった。
「よし、Z旗一旒!」大和のメインマストに赤黄青黒四色のZ旗が翻った。「皇国の興廃この一戦にあり。各員、一層奮励努力せよ」を意味する、連合艦隊の勝利と栄光の象徴が掲げられるのは、この大戦で通算3度目そして史上通算4度目だ。第一艦隊を率いる近藤信竹大将は、ウィリス・リーの第一任務群と遭遇していた。正面の空には、グラマンF6Fヘルキャット約200機が双眼鏡に認められた。日本海軍誕生以来、最強の戦艦群を率いて米海軍の最新鋭戦艦と戦う一大決戦。完結篇。
スルターニアはイル・ハーン朝の時代に夏の宮廷が置かれた北ペルシャの美しい都である。二人の従者を連れた男は、スークの一遇にある奴隷商人からトルコ系の美少年を買い求めた。それより前、男はエルブルズ山脈の鋭い稜線に落日がかかる二基の小塔に影を落していた。塔は白茶けた髑髏で覆われて暗い眼窩に鬼火が点っていた。ナービルと呼ばれた男は尊師の命を受けて、奴隷を買い付けにやって来たのだ。彼の眼にはティムールへの激しい憎悪が燃えていた。その頃、ビザンツの鷲アレクシオスの一行も都に旅装を解いていた。
リアチュールは、花枝と癒しの場に満ちあふれた至福の街であった。火の神ベイモットに初めての献花をささげる成人の披露目の感謝祭を一週間後にひかえたその日、王女ガレイラは氷の魔王グラーダスの呪いの矢を胸にうけてしまった。魔王の花嫁となったガレイラは、父王、母王妃を惨殺して圧政をしき、花の都はみるかげもなくなった。泉の国キアンの王子ゼスを戴いた同盟諸国の使節団が、リアチュールの様子をうかがいに荒廃した街へとやってくるが…。
泉の国の第二王子ゼス・キアロス率いる同盟国軍は、氷雪吹きすさぶ極寒の地シュラバーンを、氷の魔王グラーダスの居城へと向けて苦難の遠征を続けていた。魔王の花嫁となった氷結の姫君ガレイラと、花枝の化身リアチェとに引き裂かれた奇しき運命の魂は、果たして救われるのか?快活な火の巫女ヴィルの恋の行く末は…?同盟国軍の前に立ちはだかるのは、魔王の狡猾な下僕たちばかりではなかった。星雲賞連続受賞で注目を集める著者が、渾身で綴りあげる異世界ファンタジーの精華。
地中海でのリビア攻撃作戦からの帰途、超巨大空母「米賀」はメッサーシュミットME109を主軸とするリビア空軍機とウイスキー級潜水艦の攻撃を相次いで受けた。今やカダフィにとって「米賀」と日本はイスラエルやアメリカと同じ憎むべき聖戦の相手となったのだ。カダフィは空母3隻と駆遂艦12隻を擁する大機動部隊を「米賀」追撃のために派遣。リビア機動部隊はマラッカ海峡を越えて北上し、マレー沖海域に至った。第7の空母「米賀」の藤田提督は、新型栄エンジンに換装した零戦百機からなる攻撃隊の出動を決意。南太平洋の空に一大航空決戦の火蓋が切られようとしていた。