出版社 : 徳間書店
総合商社・東邦物産の平凡なサラリーマンの熊谷徹は、退社を覚悟で設立した“スワン・エンタープライズ”が大成功-。表向きはあくまでも人材派遣会社だが、実際は国際色豊かな才色兼備の若い女性を集め、大企業のエグゼクティブにセックス付きの愛人秘書として利用させていたのだから、儲からないはずはない。本社からの評価も高く、弱冠三十二歳で最年少取締役に抜摺されたほどだ。業績が伸びる度に、高級クラブやソープランドに通い、趣味と実益をかねた“人材確保”に努める熊谷の前途は洋々に思えたが…。
ときに愛しくしなやかにたわみまたあるときは、そっけなく誰より粋で昏く激しく甘やかで、いさぎよい。迸る情念をじっと抑えくるりとうしろを向いて去る、こんな愛の形もあった-。セピア色の東京。切なく激しい愛の作品集。
昭和七年、銀座。カフェー“キャット”で行なわれた魔術ショーの途中、突如大地震が起こった。狂乱と怒号の中、矢島菊枝子爵夫人のダイヤの指環“スフィンクスの涙”が怪盗・銀座男爵によって盗まれてしまう。偶然居合わせた少年・那珂一兵と女探偵・龍千景は、警視庁の仁科刑事とともに初動捜査にあたり、大地震がモートルを使ったトリックであったことを掴む。トリックに関わった人物及び、現場にいた不審な人物を追う一兵らは、次第に事件の真相に近づく。だが核心に迫った時、鍵を握る人物が死体となってしまう-。
エリート警部補だった青野は、警察の閉鎖的な世界に倦んでいた矢先、飲酒運転で依願退職した。続いて、誤認による殺人容疑。逃げ込んだ浅間の山荘には、国家秘密機関の男がいた。男は握った機密を楯に、組織からの脱出を試みていた。組織は男を抹殺にかかった。同時に青野と、そして男の妹も。銃弾飛びかう山荘を出た青野は、女を抱え、山並を越えて、ひたすら逃げた。その果てに何が待つのか?長篇ハードボイルド。
通信省真岡交換所は陸路と海路の両方から押し寄せてきた蘇連軍に包囲されていた。連続する砲声と銃声。時たまそれに被さって来る魂消る響きは、敵軍の接近を告げている。自分が操縦する流星改がモシン・ナガント・ライフルの七・六二ミリ弾によって昇降装置のワイヤーを切断され墜落した藤堂守は、そこで夢魔の叫びを聞いた。孤立した日本人五四名うち八名の徴用女性にとって、祖国への帰還はもはやかなわぬ夢となったのか。守はワルサーPPKを抜き取った。彼女たちを救うには充分な弾数だった…。気鋭の傑作完結篇。
新進アイドル歌手・南瀬碧が誘拐された。しかし犯人からの要求がないまま三日後に解放された。碧は束の間の冒険旅行を感謝してさえいるようだった。誘拐に〈北斗星〉が利用されたことから鉄道警察管理室・高杉警視が動きだした。碧によれば犯人は男性二人。〈北斗星〉で函館到着後、車で北海道各地を回ったらしい。移動先に作為的何かを感じた高杉は、犯人が名を騙った碧の友人、浜中毅を訪ねた。そこで鉢合せしたのは愛知県警の警部だった。浜中が名古屋で何者かに襲われ重傷だという。二つの事件を結ぶ糸は。
名探偵・野上英太郎の恋人アキは、親友、紫織の故郷を訪ねた。玄武屋敷と呼ばれる西洋館で、紫織の伯父・多賀谷貴峰を紹介され、気乗りのしない縁談がもち上っていることを知った。貴峰の義妹、真智子と娘の琴絵が多賀谷家の財産を巡って紫織への敵意を露にしていた。さらに、十年前、殺人を犯して姿を消した貴峰の弟が舞い戻ったとの噂が流れるなか、紫織と真智子が行方不明となった。これが恐るべき惨劇の幕開けだったのだ。アキは野上と狩野俊介に助けを求める。気鋭渾身の書下し長篇本格推理。
真珠湾に突撃し、戦艦ニュージャージーを撃沈して凱旋した第七の空母「米賀」だったが、おりしも中国がレーザー兵器を積んだ衛星を打ち上げ、全世界のハイテク兵器が無力化される事態となった。この機に乗じて世界制覇を狙ったのがリビアのカダフィ大佐。世界中からメッサーシュミットME109やユンカースJU87スツーカなどの旧式兵器を買い集め、イスラエルに侵攻。さらに「米賀」に対しても爆薬を満載した特攻船を差し向けてきた。そして地中海で日本の旅客船「前田丸」が人質にとられるに及んで、ついに「米賀」は再び出撃。サムライ飛行隊の零戦は遠く地中海へと飛んだ。
薩長を主軸とした官軍に敗れた幕府軍は、針路を北に向けた。旗艦開陽にて指揮をふるう榎本釜次郎武揚は、土方歳三総指揮による陸軍を掩護。艦隊を箱館に進攻させ、五稜郭を占拠した。知謀・榎本は明治政府を欺くため“開陽座礁”という奇策を講じ、やがて「蝦夷共和国」の独立を宣言。さらにフランス海軍を味方につけることに成功する。榎本は陣容を整え、明治政府に反撃を開始した。めざすは江戸東京。いや、東海道を進撃し、京の制圧だ。蝦夷共和国の運命と、明治政府は…?逆転の幕末戦記シミュレーション。
ドイツ新大海艦隊は台湾海峡から東シナ海へ入ろうとしていた。すでに沖縄は目前にせまっている。超戦艦ニーベルングは異様であった。『ニーベルングの指環』を高らかにひびかせながら驀進してくるのだ。ヒトラーの大逆襲が始まった。大和が米・英連合軍の先鋒としてハンブルクに乗りこみ、ドイツ本土を砲撃し、ナチス・ドイツを危機におとしいれたのだから、日本への憎悪はピークに達している。大和はヨーロッパの海で釘付けになっている。大和ぬきの日本連合艦隊で、祖国は守れるのか?風雲急をつげる日本近海。