出版社 : 徳間書店
一流製薬会社・津久田健薬の研究所主任が殺された。何人かの容疑者が挙げられる中、その内の一人で、被害者の直属の部下でもある村田信彦が忽然と姿を消した。信彦は逃亡先の村で、農業を営む美しい未亡人、幸子と出会う。お互いの素姓も知らぬまま深い仲となる二人。だが、信彦を執拗に追跡する刑事の手は、すぐそこまで迫っていた。再び逃亡の旅に出る信彦だが、彼の行く手には、樹海の奥に潜む妖しい欲望の罠が待ち受けていた。村人も近づこうとしない、その樹海が孕む真の姿とは?そして、信彦は犯人なのか…。
英語教師・望月梨恵子は、中高一貫教育で有名な白雲学園の副理事長兼副校長である。といっても、年齢は二十八歳で、まだまだピチピチギャルの仲間に近い、若々しい豊満な肢体の女教師なのだ。梨恵子の夫が、当学園の理事長兼校長の息子だったが交通事故死し、梨恵子が夫の役職を継ぐことになった。梨恵子は教育熱心で、学園への責任感も強い。だが、当学園の学生の性に対する興味と欲望は並はずれていて、トラブルがつきない。梨恵子は、未亡人という特性を活かし、みずからの肉体を武器に学生たちとの勝負に出る…。
半神とはいえ、顕聖二郎真君の寿命は二千年の時を刻んでいる。その気になればどんな絶世の美女、仙女でも思いのままになる天界の神が翠心を妻に迎えると決めた。魏徴と裴氏の仲立ちで納采をすませたが、彼の行動はどこか荒んでいた。その頃、離宮の造宮と後宮の増員で遊興を重ねる大唐の二代皇帝・李世民は泰山封禅の意向をもらした。中華を統一し皇帝の位を天に祀る報告をする儀式で、秦の始皇帝以来だれひとりこの念願を達成したものはいない。唐の星辰に風雲あり。そこに“大逆”の気配を読むものがあった。傑作巨篇。
1802年10月、アミアンの和約によってナポレオン艦隊との間に束の間の平和が訪れた。オーブリー艦長はソフィー号の乗組員たちと一刻の休息を満喫した。フランス南部の軍港ツーロンにも旅し、旧知のパリエール艦長を軍医のマチュリンと訪ねた。だが、この旅の途中でフランスは再び英国に宣戦を布告、2人は苦心惨憺の末、故国に戻ることができた。そして休む間もなく、オーブリーは海軍第一卿メルビルに懇願し、首尾よくポリクレスト号の艦長に任命されるのだった…。
仏から六トンもの核物質を搬ぶため、最新鋭輸送船「ふげん」が横須賀を出港した。核物質の戦略的価値に注目し、原油価格の高騰を目論む産油国経済官僚の秘密組織はバックィン大佐の傭兵チームの「ふげん強襲計画」にゴーサインを出す。一方、このアラブの動きに警戒感を抱いたモサドは自衛隊特殊部隊と接触する。各国の思惑が錯綜し情報機関の暗闘が続く中、核を載せた「ふげん」がフィリピン沖で攻撃を受けた。
台湾海軍の新鋭原子力潜水艦の協力を得たバックィン大佐率いる傭兵チームは核物質輸送船「ふげん」占拠に成功する。護衛の海保ヘリの反撃に続き、イスラエルの特殊工作船「シバの女王」号の強襲を受けるが撃退。ついに頼みの綱は陸・海・空の自衛隊のみとなった。革新政権の初代女性宰相神崎は、愈々自衛隊特殊部隊に出動を要請する。巨大な迷路のような輸送船で繰り広げられる死闘の行方は。
旗本屋敷で家来が斬殺された。手に握られていたのが“いそぎしたため参らせ…”との巻き文の断片。手跡は典雅、古風。この文の主は?目付の依頼で文を手にしたまん姫様、莞爾と微笑み、自信をこめて下した鑑定はー、最高の教養をもつ女性、恐らくは遊廓の太夫か。推測が的中し、面会した式部太夫は、だが何も語ろうとしない(第一話艶書)。将軍ご息女、美貌の姫君のやんちゃ捕物帖。
ふくろう隊こと特別自由捜査室で発砲事件発生。メンバーの一人・大門太郎が殺されたといって銃を手に駆け込んできたのはAV女優の早舟まほ。なんと大門と共演していたというのだ。勘違いだと分ったものの、彼女は別の殺人事件を目撃していた。三国銀行の女子行員の愛人で、友愛銀行の支店長がひき殺されたのだ。両銀行に合併の噂があることを知ったふくろう隊は捜査を開始する。長篇ユーモアミステリー。
あることで気落ちしていたあなたは、自らを励まそうと、幼馴染みの真澄に誘われるまま、怪奇幻想文学作家・故鳥飼征流の住んでいたベルギーの古城で、夏休みを過ごすことにした。しかし、楽しいはずの旅行も、いつしか異様な連続殺人という惨劇に擦り替わっていく。それは、あなたが謎の少女を目にした瞬間から始まったのだった…。古城にまつわる戦慄の秘密とは。鬼才が二人称で綴る、奇想推理長篇。
1944年、連合軍はノルマンディー上陸作戦を敢行した。だが、この名高い作戦の陰で英国女性工作員と空軍司令官が数奇な恋物語を繰り広げたことはほとんど知られていない。女の名はリフカ。男はハリー。独軍の爆撃を受けた列車内で命を助けられたリフカは、いつしかハリーに淡い恋心を抱く。やがて彼女は極秘指令を言い渡される。独軍占領下のフランスで消息を絶った彼を見つけ次第、殺害せよとの命令だった。
(あれだけの規模の修理を、最前線で行うとは…。)海軍の艦上偵察機「彩雲」の機長・千早猛彦は、わずか三か月半前のトラック沖海戦で「大和」「鞍馬」と同等以上の被害を受けて着々と回復してゆく姿を何度か見ていた。だが、この日、メジュロ環礁内の雲下には一隻の艦艇、一機の戦闘機、一人の兵士の影も発見できなかった。米軍はどこに来寇するのか。呉鎮守府の作戦会議に居並んだ幕僚たちの表情に緊張が走った。「我が軍の全艦が修理を終えるのに、あと三か月…」それまでの迎撃は、航空機による戦艦撃沈しか途はなかった。
アメリカ独立革命、フランス革命につづいてヨーロッパではナポレオン戦争に突入、世は大動乱の第一幕が下ろされていた。本篇の主人公J・オーブリーは地中海のネルソン艦隊の小型補助艦艇ソフィー号の艦長に任ぜられ、商船の護衛や索敵作戦に当たっていた。艦長着任まもなく、ナオ岬沖を航行中、フランス私掠船に遭遇、奇襲攻撃を敢行し三隻を拿捕した。つづいてスペイン軍艦カカフエゴ号と死闘を演じ、ディロン副長の活躍でこの艦の拿捕に成功、しかし右腕とたのむディロンを失ったのだ…。ナポレオン艦隊と戦い、地中海を血で染める男たちの壮絶な日々。ネルソン艦隊の栄光と苦闘を描く。
飽きっぽい性格のため、何度も職を転々としていた志村兼次郎は、持前の腕力、胆力の強さから、いつの間にか横浜の盛場でハイダシ(ユスリ・タカリ)集団の不良仲間の首領として、徐々に幅を利かせるようになっていった。そのあまりの無鉄砲さに「鉄砲兼」というアダ名をもらっていた兼次郎だが、強きを挫き、弱きを扶けるという精神だけは生涯変わることはなかったー。「鉄砲兼」の喧嘩人生痛快譚。
高尾山中の白樺山荘が全焼との急報を受け、八王子分署の江頭検視官補はじめ国分部長刑事、百瀬刑事の三人が現場に急行した。異様な臭気に噎せ返る焼け跡から男五人、女五人の無残な焼死体を発見。事故か殺害かー。ほどなくして、当夜山荘に集まった男女のメンバー表が発見された。そこには男五人、女六人の氏名が記されていた。もう一人は何処に。八王子分署の個性的な刑事達の活躍を描く書下し長篇。
業界最大手である関東証券の河津一郎は、高卒入社以来抜群の業績を挙げ続けていた。妻の美香とは見合結婚だが、会社一筋の河津を美香は愛せず、かつて求婚された名倉冬樹との不倫に溺れた。やがて河津は出世コースの支店長に栄転、しかし、業績が落ちてしまう。焦る河津に、株暴落の中で無謀ともいえるノルマが課せられた。証券業界の実態を赤裸々に描き会社人間の苦悩を活写した力作企業長篇。