小説むすび | 出版社 : 文藝春秋

出版社 : 文藝春秋

円卓円卓

出版社

文藝春秋

発売日

2013年10月10日 発売

「こっこ」こと華原琴子、早生まれの8歳、小学校3年生。好きな言葉は「孤独」。 狭い公団住宅に、中華屋から譲り受けた赤い大きな円卓で食事をする華原家は、頑固で文字好きの祖父、明朗快活な祖母、ハンサムで阿呆な父と美人で阿呆で素直な母、それに中2の美人の三つ子の姉の8人家族。みんなこっこがかわいくてしょうがなく、何かと構うが、こっこは反骨精神豊かに「やかましい!いろいろと」「なんで、て聞くなやボケが」と心で思う。 こっこの尊敬する人物は、祖父の石太と、同じ公団に住む同級生のぽっさん。ぽっさんの吃音を、こっこは心から美しいと思う。吃音や眼帯をした同級生のものもらい、韓国人の同級生の不整脈をかっこいいと憧れ、それを真似したときに、「こっこはなんでそんな風なんや」と大人に怒られてしまう。しかしこっこは感じる。なぜかっこいいと羨んでやったことがいけないのか。こっこはぽっさんに相談し、人の痛みや言葉の責任について、懸命に「いまじん」するのだった。そうして迎えた夏休みの祖母の誕生日。ぽっさんにも「言わない」出来事がこっこに起きてーー。 世間の価値観に立ち止まり、悩み考え成長する姿を活きのいい言葉でユーモラスに温かく描く。2014年に芦田愛菜主演で映画化され話題に。

水色の娼婦水色の娼婦

出版社

文藝春秋

発売日

2013年9月9日 発売

日露戦争で活躍した軍艦「日進」と「春日」。この二隻はアルゼンチンから日本に寄贈されたもので、その縁で来日したアルゼンチンの海軍軍人と知り合った一人の日本人女性が、ブエノスアイレスへと渡ったことは歴史上の事実である。そのふたりの間に生まれた、エヴァ・ロドリゲスが本書の主人公。早くに母を亡くした彼女は、ある事件をきっかけに自身の出生の秘密を知り、タンゴ・ダンサーとして、娼婦として生きていくことを決めた。 やがてエヴァは活躍の場を、ベルリンへと移し、老舗のタンゴ・バー「エル・スール」を拠点に踊り、国内外の要人たちと夜を共にする。そこで出会ったのが、昭和通商なる会社に勤める吉川公夫だった。日本陸軍の予備役であるという彼に運命を感じたエヴァは、その関係にのめりこんでいくが……実は、吉川の正体は諜報員であり、国際社会から孤立を深め、対ソ連、対アメリカとの戦争へと突っ走る勢力に必死の工作を繰り返し、時には多重スパイも辞さない危険な男だった。 愛する吉川のため、あるいは母のルーツで祖国・日本のため、エヴァは時にナチス政府の要人から、時にゲシュタポ(秘密警察)の高官から、ベッドの中で偽りの愛をささやき、情報を引き出すようなる。エヴァだけではなく、他にも同じような女スパイが、当時のヨーロッパでは暗躍していた。また吉川は、同じ志を持つ者たちと密かに通じ、エヴァにさえ知らせず、ドイツ国外でも精力的に活動を行うが、日本の対ソ・対米戦争への流れを止めることができず、やがて二人に別れがーー。 そして半世紀を経て、ベルリンの壁の崩壊後、年老いたエヴァから、その驚くべき人生を聞き取ることになったのは、ある日本人男性ジャーナリスト。その姿は近代史の闇をノンフィクション・ノベルに仕立て、世に問うてきた著者自身の姿にも重なる。エヴァが、吉川が本当に守ろうとしたものは何だったのか? 改めて平和な現代に問いかける傑作長編!

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