出版社 : 文藝春秋
35歳、9月。ロンドンで高校の同級生の結婚式に参加した。 仁と茜の夫婦は、茜の古い友達を訪ねてペルージャまで足を延ばす。 そして窓目くんは、結婚式でシルヴィに出会ってしまったのだった。 言葉と記憶があふれだす、旅の連作短編集。
2022年2月5日に急逝した著者の、読者からの熱烈な要望によって実現した未刊行小説集。 完結した小説としては著者最後の作品となった表題作をはじめ、著者の本領たる藤澤清造“歿後弟子”としての覚悟を扱った3篇を収録。 北町貫多30歳、地元に残された藤澤清造資料の調査に本腰を入れるため、東京の自室とは別に七尾に部屋を借りる(「廻雪出航」)。貫多31歳、七尾の部屋に清造の書簡を飾るため額装を依頼したが、思ってもいない仕上がりになる(「黄ばんだ手蹟」)。死の前年、53歳の貫多の姿を描く。ここ数年の自身を振り返り、“歿後弟子”の責を全うすべく新たなスタートを誓う(「蝙蝠か燕か」)。
初午の真夜中、水垢離に臨もうとしていた喜八郎たちのすぐそばで、男女が川に飛び込んだ。女を助けた喜八郎は、ふたりが奉公先の賭場で恋仲になった挙げ句に心中を図ったと知り、賭場の貸元と直談判に及ぶが…。そして喜八郎と秀弥の恋の行方にも新たな展開が!
ー夢を叶えるために生きてきたんだー あらゆるメジャー・レコード会社のディレクターやスカウトマンが集まった1990年代後半の下北沢のライブハウス。すべてのミュージシャンの目前に巨大なルーレットが置かれていた。 NONA REEVES 西寺郷太、初の自伝的小説! 僕は相変わらず大学や下北沢から家に帰ると寝る間も惜しんでダビングを繰り返していた。デモテープを配った相手にアンケートを渡し、そこに書かれた住所に美しくデザインされたダイレクト・メールを送る。お金に関して言えばまだすべて持ち出しだ。しかし、そんな日々を繰り返している中で「ファン」と呼べるような何人かが僕の周りに生まれ始めている。ようやく上京してから、いや音楽の道を目指してから永遠に続くかと思われた長い「スランプ」のトンネルを抜け出そうとしている実感が湧いてきた。 「やったるでー!」 ひとり暮らしの東中野ヒルズで布団にくるまりながら、僕は大声で叫ぶ。 (本文より) 第一章 Once Upon A Time In SHIMOKITAZAWA 九四年・冬 - 九五年・春 第二章 BIRD SONG 自由の小鳥 九五年・春 - 夏 第三章 Distortion And Me 九五年・夏 - 九六年・春 第四章 End Of A Century 九六年・夏 - 九九年・夏 最終章 See You Again 九九年・夏 - 二〇〇一年・冬
デビュー小説『ギフテッド』に続き、芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作。主人公は、アダルトビデオ業界で化粧師(メイク)として働く聖月(みづき)。彼女が祖母と共に暮らすのは、森の中に佇む、意匠を凝らした西洋建築の家である。まさに「聖と俗」と言える対極の世界を舞台に、「性と生」のあわいを繊細に描いた新境地。
コロナ禍のベルリン。若き研究者のパトリックはカフェで、ツェランを愛読する謎めいた中国系の男性に出会う。 “死のフーガ”“糸の太陽たち”“子午線”……2人は想像力を駆使しながらツェランの詩の世界に接近していく。 世界文学の旗手とツェラン研究の第一人者による「注釈付き翻訳小説」。 1 歌うことのできる成長 2 天使の素材からなるテクスチュア 3 傷つきやすい指 4 生命の樹をともなう小脳の虫 5 衝突する時間たち 6 ミイラの跳躍 訳者によるエピローグ 訳注 訳者解説(パウル・ツェランについて/詩集『糸の太陽たち』について/多和田葉子とツェラン)
法律が裁けないのなら、他の誰かが始末する。 司法を超えた復讐の代行者ーーそれが〈私刑執行人(ハングマン)〉 現代版“必殺”ここに誕生! 警視庁捜査一課の瑠衣は、中堅ゼネコン課長の父と暮らす。ある日、父の同僚が交通事故で死亡するが、事故ではなく殺人と思われた。さらに別の課長が駅構内で転落死、そして父も工事現場で亡くなる。追い打ちをかけるように瑠衣の許へやってきた地検特捜部は、死亡した3人に裏金作りの嫌疑がかかっているという。父は会社に利用された挙げ句、殺されたのではないか。だが証拠はない……。疑心に駆られる瑠衣の前に、私立探偵の鳥海(とかい)が現れる。彼の話を聞いた瑠衣の全身に、震えが走ったーー。 一 暗中模索 二 疑心暗鬼 三 愛別離苦 四 遅疑逡巡 五 悪因悪果 エピローグ
第169回直木三十五賞候補作 『ジェノサイド』の著者、11年ぶりの新作! マスコミには決して書けないことがあるーー 都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。 同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。 雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、 やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。 1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、 読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!
頼むよ。俺を、鬼にしてくれよ 親を失い、貧しさに喘ぐ少年。 江戸の闇に生きる美しき謎の女。 偶然の出会いが、永遠の絆となるーー。 最強のヒロイン×バイオレンス・アクション×純愛 誉田節炸裂の「妖シリーズ」エピソード・ゼロ 人の血を啜り、闇から闇へと生きる絶世の美女・紅鈴が、江戸の世で出会ったひとりの少年、欣治。吉原に母を奪われ、信じていた大人たちにも裏切られた。そんな絶望の中でなお、懸命に生きる欣治との出会いが、孤独な闇を生きてきた紅鈴に思いがけない感情を芽生えさせる。 「こんな腐った世の中に、こんなにも清い魂があるものか。この汚れなき魂を、あたしは守りたい」 欣治を“鬼”にするーー。その、後戻りできない決断の先に待ち受ける運命とは⁉ 美しく、凶暴なまでに一途なダークヒロイン、ふたたび
長崎の貿易商・梅屋商店の跡継ぎとして育った庄吉は、香港で写真館を経営する。 そこで出会ったのが、清朝を打倒し、西洋の武力支配からの自立を目指す若き孫文だった。 西洋列強による東洋の侵略に理不尽を感じていた庄吉は、孫文の情熱を知り、革命を支援することを約束する。庄吉はやがて、日活の前身となるMパテー商会を創立。黎明期の映画事業は大成功を収め、その資金で革命を支援し続ける。 実業家・梅屋庄吉の熱き生涯を描く!
小学6年生の夏、マンモス団地「ニジノマチ」に引っ越した。恋しては振られ、告白しては振られること14人。でも隣にいるあの子にだけは、告白しなかった。恋じゃないつもりだったー。笑って泣ける、ほろ苦い恋の「自伝風」小説。
仙台郊外に立つ「医療法人社団清光会中東北総合病院」。婿養子で入った病院を一代で日本トップクラスの総合病院にした池田利宗と、出来損ないの次男として育ちながら、天才的な経営手腕を発揮し、時に手段を選ばずに病院とグループ企業をさらに大きくした池田利雄。父子二代を中心としながら、家族の確執、大病院の栄華とその躓きを描く長編小説。
【好評3刷! シリーズ化決定!】 第100回オール讀物新人賞を満場一致で受賞した著者が、満を持して送り出す初の作品集。第12回日本歴史時代作家協会賞新人賞受賞。 選考委員の村山由佳氏が”読み終えるなり「参りました」と呟いていた”と選評に記した受賞作「をりをり よみ耽り」の世界を5篇の連作で展開する。 物語の舞台は、文化年間の江戸浅草。女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉の奮闘を描く。盛りに向かう読本文化の豊饒さは本好きなら時代を超えて魅了されることでしょうし、読本をめぐって身にふりかかる事件の数々に立ち向かう〈おせん〉の捕物帖もスリルに富んでいます。 第99回オール読物新人賞受賞作、由原かのん『首ざむらい 世にも怪奇な江戸物語』も同時発売。
第99回オール讀物新人賞受賞作 「全篇にわたって楽しい」有栖川有栖 「無条件に楽しんで読むことが出来た。ああ、面白かった」乃南アサ ニヤリ、クスリ、ホロリ 選考委員も癒された、新・癒し系時代奇譚 叔父を訪ねて大坂へ向かった男の道ずれは、首だけのサムライだった⁉(受賞作「首ざむらい」) とある若侍が死体で発見された。下手人は河童らしく……。(書下ろし「よもぎの心」) 現代人の疲れた心と疲れた身体に、ただただ楽しく、チャーミング(&時々すっとぼけ)な時代小説をご用意しました! 第100回オール読物新人賞受賞作、高瀬乃一 『貸本屋おせん』も同時発売。
第30回島清恋愛文学賞受賞、第168回直木賞候補作、2023年本屋大賞第3位 刊行以来、続々重版。大反響、感動、感涙の声、続々! 令和で最も美しい、愛と運命の物語 素晴らしい。久しぶりに、ただ純粋に物語にのめりこむ愉悦を味わった。 さんざん引きずり回された心臓が、本を閉じてなお疼き続ける──そのまばゆい痛みの尊さよ。(村山由佳) まぶたの裏で互いの残像と抱き合っていた二人のひたむきさが、私の胸に焼き付いて離れない(年森 瑛) ーーほんの数回会った彼女が、人生の全部だったーー 古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。 彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。 どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。 ーー二人が出会った、たった一つの運命 切なくも美しい、四半世紀の物語ーー
「これは、梯結子の問題解決及びその調達人生の記録である。」 大阪で代々続く海産物問屋の息子を父に、東京の老舗和菓子屋の娘を母に持つ、梯結子。幼少の頃から「おもろい子やなー。才能あるなー。なんの才能かまだよう分からんけど」と父に言われ、「商売でもいけるけど、商売にとどまらない、えらいおっきいこと、やりそうや」と祖母に期待されていた。その彼女の融通無碍な人生が、いまここに始まるーー。
2022年2月1日に死去した石原慎太郎氏。その最後の文学的結晶ーー 限りなくピュアな初恋の記憶を描いた「遠い夢」、死後公開された「死への道程」など、単行本未収録のまま残された作品を収録。 「太陽の季節」から67年、まさに「白鳥の歌」と呼べる一冊。 遠い夢 空中の恋人 北へ 愛の迷路 ある結婚 死への道程 解説 石原延啓