出版社 : 文藝春秋
デジタル機器に囲まれた日常の疲れを癒し、本来の人間性を取り戻す「デジタルデトックス」のために孤島にやってきたメンバーが次々に死を遂げる。偶然その場に居合わせたミステリ作家がそのすべてを目撃するのだが、なぜかメンバーたちの目には彼の姿が映らないらしい…。中華系マレーシア人の女性作家がミステリ界の巨匠・島田荘司氏が提唱する21世紀本格に応えて放つ“21世紀の十角館”!第7回金車・島田荘司推理小説賞受賞。
ウイスキーバブル、過激な推し活、連続強盗団、宗教二世ー難破寸前の日本という船を襲うトラブルに、今日もマコトは立ち向かう。
瀬川朝彦、35歳。無給のポスト・ドクターである。学生時代に魅了された古事記の研究に青春を賭してきたが、教授職など夢のまた夢。契約期間の限られた講師として大学間を渡り歩く不安定な毎日だ。古事記への愛は変わらないが、今や講師の座すら危うく、研究を続けるべきかの煩悶が続いている。そんな折、ゼミ時代の先輩が大学の貴重な史料を持ったまま行方不明になってしまうという事件が。45歳の“高齢ポスドク”となっていた先輩は、講師の職も失い、なかばホームレス状態だったという。先輩は史料を「盗んだ」のか?自らの意志で「失踪」したのか?そして、朝彦の下した将来への決断は?
コロナ禍下、40歳を前に離婚した桐原まりえは、新たな生き方を模索し始める。直木賞作家が初めて、等身大の主人公で「今」を描く。「これから恋愛できるわね」、年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえはすべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはない。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする…。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録する。そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、年下の恋人とのあいだでも揺れながら、まりえは考え続ける。
死んだはずの名投手とのプレーボール 戦争に断ち切られた青春 京都が生んだ、やさしい奇跡 女子全国高校駅伝ーー都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。 謎の草野球大会ーー借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。 京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとはーー 今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない 青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇 第170回直木賞を遂に受賞! 十二月の都大路上下(カケ)ル 八月の御所グラウンド
2023年ミステリーランキング3冠達成! (「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位) 余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。 群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。 群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の周りの雪は踏み荒らされておらず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って“刺殺”したのか?(「崖の下」) 榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」) 太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」) 連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。
『そして、バトンは渡された』『夜明けのすべて』の著者の書下ろし長編 いまを生きる私たちの道標となる物語の誕生! 「明日が怖いものではなく楽しみになったのは、あの日からだよ」 今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。 不自由で息苦しかった毎日。 家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。 多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。 それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあったーー。 【著者より】 何かと制限され思いどおりに過ごせない毎日を、大人も子どもも、誰しもが 困難を抱えながら進んできたと思います。 そして、これから、また違う日々に向かわないといけない中で、ほんの少しでも 明るいものを差し出せる物語になれれば。そう思っています。
第30回松本清張賞受賞作 この小説は、選考委員への「挑戦状」だ! 衝撃のデビュー作。 1つの街を舞台に描かれる、5つの世界は、少しずつ重なりあい、影響を与えあい、思わぬ結末を引き起こす。 すべてを目撃するのは、読者であるあなただけ。 推理小説/青春小説/科学小説/幻想小説/恋愛小説 5つの物語は、5度世界を反転させる。 森バジルを読めば「世界が変わる」 【選考委員 選評より】 阿部智里 5つの同じで異なる世界! その構成に気が付いた時、「正気か」 と目を疑った。 辻村深月 抜群のきらめきに満ちていた「青春小説」パートは見事だった。 米澤穂信 小説というものに必死に手を伸ばした作者の叫びが聞こえた。 森絵都 チャレンジ精神と熱量の高さがすばらしい。 森見登美彦 「読者だけが知っている」そんな構造を楽しんでほしい。
片田舎の少年たちが、世界を相手に挑むゲリラ戦 武器は“知恵”と“友情”、報酬は“自由” SF小説の旗手による青春ハック小説 2024年、鹿児島。県立南郷高校に通うマモルは、男子寮の次期寮長に指名される。下級生の指導や揉め事の解決など、マモルの負う役割は大きいが、なかでも、学生VR全国大会出場に向けてチームをまとめるのか最重要ミッションの一つである。昨年敗れた先輩たちの雪辱を晴らすべく、準備を進めるマモルだったが、大会事務局の対応にある違和感を覚える。同じ頃、アマチュアVRの世界大会「ビヨンド」の存在を知り、自分たちの進むべき新たな道を見出していく。 吉川英治文学新人賞作家による、近未来青春小説
過ぎてみれば、全部、どうってことなかったーー 日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だというーー。 生と死、そして性を描き、人生を謳いあげる短編集。名手がつむぐ至高の7作。
人は絶対に死ぬ。生き方は選べても、死に方は選べない…のだろうか?介護に疲れて次々と男を買う女、妹の夫との際どい週末のひととき、両親・祖父母が遺した消えない禍根、忘れ得ぬ男との別離と心に刻まれた深い傷跡。そして、死にゆく男が示した奇妙な交換条件…。いくつもの人生が響き合い、絡み合う。そして物語は、衝撃のラストへ。人生と世界の営みの深淵を追い続ける作家が到達した、新たな極点。
1969年、ハリウッドー俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてきたのだ。悩みを抱えながらTVドラマの撮影に出かけたリックが現場で出会ったのは…リックの長年の相棒、クリフは謎の多い男だった。妻を殺したが罪を逃れ、戦争中には大勢殺したと豪語する男。今日もリックの車でハリウッドを流していたクリフはヒッピー娘を拾い、彼女らがチャーリー・マンソンなる男と暮らす牧場へと向かう…女優シャロン・テートは気鋭の映画監督ポランスキーと結婚し、リックの隣に住みはじめたところだった。折しも自分の出演作『サイレンサー/破壊部隊』が劇場でかかっているのを目にした彼女は、うきうきとチケット売り場の女の子に声をかけ…アカデミー賞2部門受賞、ゴールデングローブ賞3部門受賞の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をタランティーノ自ら小説化。映画にはない場面、映画にはない物語、映画とは異なる結末ーこれは単なるノベライズではない。同じ種子から生み出された堂々たる長編小説なのである。オフビートな小説を愛し、自身の映像言語としてきた巨匠がみせるグルーヴィな語りの才能に瞠目せよ!