出版社 : 文藝春秋
「離婚って失敗なの?」「恋愛と結婚って別物?」 新直木賞作家が描く、おとなの女性の結婚と幸福をめぐる物語。 桐原まりえは40歳を手前に離婚した。夫の森崎に「恋愛がしたい」と切り出され、2年近い話し合いの時期を経て、7年半の結婚生活に終止符を打ったのだ。理由にはいまも納得がいかないまりえだったが、自分はもう誰にも属していない、そう思うと心は軽やかだった。離婚届を提出する朝、寂しさよりも、手放して一人になることの清々しさをこそ感じたのだ。 「あんたもこれから恋愛できるわね」、行きつけのワインバーでよく遭う年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえにはその気はない。駆け引きも探り合いも億劫だし、今のからだを見せる羞恥が性欲を上回る。なにより、すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはないのだ。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする……。 ひょんなことで懐いてきた由井君が粉料理を教わりに訪ねてくるのを好ましくは思うが、物事の受け止め方に7つの歳の差を感じるばかりだ。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録をした。そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。マリッジコンサルタントに、紹介された男たちに、婚活仲間に、切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、まりえは考え続ける。自分が人生に求める幸せとは何なのか。 若い頃のように無邪気に恋愛に飛び込んでいけなくなった眼にだからこそ捉えられる、おとなの女の幸せをめぐる長篇。 離婚、新しい香水、白いシーツ 孤独死、工具箱、ホットワイン 正月、マッチングアプリ、フォー 最後の手紙、結婚相談所、夜桜 髪を切る、料理教室、友の逢引 古文の授業、お見合い、紫陽花 雨の蜜月、ポリープ、桃モッツァレラ ひとり寝、奇遇、緑のリフト お揚げ丼、コロナ発症、金木犀
乱世は謎に満ちている。 上杉謙信の脅威にさらされている越中神保家を助けると約束した武田信玄だったが、援軍は出さぬという。果たして援軍なしに上杉を退ける秘策とは? 腹の探り合いが手に汗握る「川中島を、もう一度」。 下野国・宇都宮家に仕える若色弥九郎は、先代当主の未亡人・南呂院の警固番に抜擢される。門松奉行という閑職の父を持つ弥九郎にしてみれば、またとない機会。意気揚々とお役目に着く弥九郎だが、この抜擢の本当の目的は……うまい話の裏を描く「宇都宮の尼将軍」。 長宗我部家は、大量の砂糖の献上を織田家に約束していた。外交僧として必死の思いで砂糖をかき集めた蜷川道標だったが、何者かに砂糖の献上の先を越されてしまう。横槍を入れてきたのはまさかの……すべてが戦略物資になる乱世の厳しさが身に染みる「戦国砂糖合戦」etc. 気鋭の歴史小説家が放つ、戦国どんでん返し七連発。
死んだはずの名投手とのプレーボール 戦争に断ち切られた青春 京都が生んだ、やさしい奇跡 女子全国高校駅伝ーー都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。 謎の草野球大会ーー借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。 京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとはーー 今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない 青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇 第170回直木賞を遂に受賞! 十二月の都大路上下(カケ)ル 八月の御所グラウンド
2023年ミステリーランキング3冠達成! (「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位) 余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。 群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。 群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の周りの雪は踏み荒らされておらず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って“刺殺”したのか?(「崖の下」) 榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」) 太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」) 連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。
『そして、バトンは渡された』『夜明けのすべて』の著者の書下ろし長編 いまを生きる私たちの道標となる物語の誕生! 「明日が怖いものではなく楽しみになったのは、あの日からだよ」 今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。 不自由で息苦しかった毎日。 家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。 多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。 それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあったーー。 【著者より】 何かと制限され思いどおりに過ごせない毎日を、大人も子どもも、誰しもが 困難を抱えながら進んできたと思います。 そして、これから、また違う日々に向かわないといけない中で、ほんの少しでも 明るいものを差し出せる物語になれれば。そう思っています。
第30回松本清張賞受賞作 この小説は、選考委員への「挑戦状」だ! 衝撃のデビュー作。 1つの街を舞台に描かれる、5つの世界は、少しずつ重なりあい、影響を与えあい、思わぬ結末を引き起こす。 すべてを目撃するのは、読者であるあなただけ。 推理小説/青春小説/科学小説/幻想小説/恋愛小説 5つの物語は、5度世界を反転させる。 森バジルを読めば「世界が変わる」 【選考委員 選評より】 阿部智里 5つの同じで異なる世界! その構成に気が付いた時、「正気か」 と目を疑った。 辻村深月 抜群のきらめきに満ちていた「青春小説」パートは見事だった。 米澤穂信 小説というものに必死に手を伸ばした作者の叫びが聞こえた。 森絵都 チャレンジ精神と熱量の高さがすばらしい。 森見登美彦 「読者だけが知っている」そんな構造を楽しんでほしい。
第169回芥川賞候補作に選ばれた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。
【恐怖の帝王、作家50周年を前に王道のSF巨弾が待望の邦訳!】 異能の少年少女を拉致する謎の機関〈研究所〉。 彼らは子供たちの超能力を利用して何を企図しているのか。 冷酷なるくびきから逃れるため、少年は知恵をめぐらせる。 ミネソタ州ミネアポリスに暮らす12歳の少年ルークは、両親こそごく平凡だが、優秀な子供の特待校に通う神童だ。彼にはちょっとした特殊能力があった。ふとしたときに、周りのごく小さな物品をふれることなく動かしてしまうのだ。と言っても、それは他人が気づくほどのことでもない。 一流大学MITの入学内定を勝ち取ったルークだが、ある夜、3人の不審な男女が眠る彼をかどわかす。目覚めたルークが見たのは、自分の部屋そっくりにしつらえられているが、何かが違う一室だった。扉の外は自宅とは似ても似つかぬ、古びた大きな施設。そこには様々な少年少女が拉致され、自室と似た部屋を与えられて戸惑いながら暮らしていた。 目的も知れぬこの〈研究所〉で、残忍なスタッフや医師に、気分の悪くなる注射や暴力的な検査を繰り返される少年少女たち。彼らの共通点は「テレキネシス」か「テレパシー」の超能力を持っていることだった。 ルークは黒人少女カリーシャ、反抗的な少年ニック、幼く泣き虫だが強いテレパシーをもつ男の子エイヴァリーらと知り合うが、一定期間検査を受けた子供はひとり、またひとりと〈研究所〉の別棟〈バックハーフ〉へ連れ去られ、決して帰ってこないのだった。ルークはこの不穏な施設からの逃亡計画を温めはじめるーー。
【恐怖の帝王、作家50周年を前に王道のSF巨弾が待望の邦訳!】 〈研究所〉を脱走したルークvs.冷酷女所長。 超能力少年少女vs.残忍スタッフたち。 ついに策謀の本性があらわになり、決戦が迫る。 部屋係モーリーンとエイヴァリー少年の助力でルークは〈研究所〉を逃れた。脱走に気づいた女所長ミセス・シグスビーは激怒し、自ら手下を率いて追跡する。元警官の流れ者ティムとルークが邂逅し、田舎町デュプレイで地獄のふたが開く! 一方〈研究所〉では、〈バックハーフ〉に送られたカリーシャ、ニックらがついにその企みの全貌を目にしていた。これ以上超能力を利用されつくして正気を失う前に、なんとかして逃れる方法はないのか。能力が開花したエイヴァリーを中心に、少年少女たちは立ちあがる。非情なスタッフたちとの戦いがはじまったーー。 『ファイアスターター』を彷彿させる超能力、『IT』ばりの少年少女たちの勇気。キングに影響を受けたと言われるドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の設定を逆オマージュしたかのような舞台で、キングにしか書けないキャラクターが、キングにしか書けない戦いを繰り広げ、物語はキング史上最大級のクライマックスへ。 恐怖の帝王の本領が炸裂するエンターテイメント、ここに極まる!
男たちの身勝手さを、一行で打ち砕く桐野文学の極北! 夫公認のもと、元恋人と自由な時間を過ごす妻を描いた表題作「もっと悪い妻」など、計六作の短編を収録。 「麻耶は大事だと思っている人が他にいるの?」 「いるよ。男でも親友になれるよ」 「それはそうだろうけれど。困ったな」 (「もっと悪い妻」より) ネット上で〈悪妻〉と批判されることに悩むバンドのヴォーカルの妻を描いた「悪い妻」。 妻と離婚した後、若い女性にしつこく迫る壮年の男性の哀歓を伝える「武蔵野線」など、男と女のカタチを切り取った現代の「悪妻論」。 西加奈子さん(作家)推薦 不幸な「悪い妻」は許されるが、 満たされた「もっと悪い妻」は断罪される。 「妻」という呪いと、 「妻」を理想化する社会へのしたたかなカウンター。
片田舎の少年たちが、世界を相手に挑むゲリラ戦 武器は“知恵”と“友情”、報酬は“自由” SF小説の旗手による青春ハック小説 2024年、鹿児島。県立南郷高校に通うマモルは、男子寮の次期寮長に指名される。下級生の指導や揉め事の解決など、マモルの負う役割は大きいが、なかでも、学生VR全国大会出場に向けてチームをまとめるのか最重要ミッションの一つである。昨年敗れた先輩たちの雪辱を晴らすべく、準備を進めるマモルだったが、大会事務局の対応にある違和感を覚える。同じ頃、アマチュアVRの世界大会「ビヨンド」の存在を知り、自分たちの進むべき新たな道を見出していく。 吉川英治文学新人賞作家による、近未来青春小説
第169回芥川賞受賞。 選考会沸騰の大問題作! 「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」 井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。 両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだすーー。
過ぎてみれば、全部、どうってことなかったーー 日々老いを感じつつ山裾の町で暮らす絵本作家の雪代。ある日やってきた植木屋の青年に興味を惹かれ話をしてみると、彼が結婚を望む恋人は、還暦を過ぎた現役の風俗嬢だというーー。 生と死、そして性を描き、人生を謳いあげる短編集。名手がつむぐ至高の7作。
〈運びの掟〉 一つ、中身を見ぬこと。 二つ、相手を探らぬこと。 三つ、刻と所を違えぬこと。 約束の物は何があっても届け切る。それが〈運び屋〉。 母は病に倒れ、父も道場の経営に失敗して体を壊した。 自力で稼がなくてはならなくなった円十郎は〈運び屋〉を営む〈あけぼの〉に雇われることになった。 腕のいい〈運び屋〉として江戸の街を駆け回る円十郎だったが、 荷を運んでいたある夜、攘夷の志を口にする武士と手練れの忍び(?)に立て続けに襲われる。 一体何が起きているのか? 円十郎は知らず知らずのうちに時代の大きな渦に巻き込まれていく……。 オール讀物新人賞受賞の大型新人が放つ、幕末時代活劇。
圧巻の書き下ろし最新長篇 最高の人生 永遠の快楽 その、極北 十字架を背負った女が、死にゆく男と交わした奇妙な約束ーー。 衝撃のラスト4ページの先に、あなたは何を見るだろうか。 介護に疲れて次々と男を買う女、妹の夫との際どい週末のひととき、両親・祖父母が遺した消えない禍根、忘れ得ぬ男との別離と心に刻まれた深い傷跡。そして、死にゆく男が示した奇妙な交換条件……。 いくつもの人生が響き合い、絡み合う。そして物語は、衝撃のラストへ。 人生と世界の営みの深淵を追い続ける作家が到達した、新たな極点
クエンティン・タランティーノ、小説家デビュー作! アカデミー賞2部門受賞、ゴールデングローブ賞3部門受賞した 〈ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド〉を タランティーノ自ら小説化! 1969年、ハリウッド。 俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。 キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてきたのだ。悩みを抱えながらTVドラマの撮影に出かけたリックが現場で出会ったのは…… リックの長年の相棒、クリフは謎の多い男だった。 妻を殺したが罪を逃れ、戦争中には大勢殺したと豪語する男。今日もリックの車でハリウッドを流していたクリフはヒッピー娘を拾い、彼女らがチャーリー・マンソンなる男と暮らす牧場へと向かう…… 女優シャロン・テートは気鋭の映画監督ポランスキーと結婚し、リックの隣に住みはじめたところだった。 折しも自分の出演作〈サイレンサー/破壊部隊〉が劇場でかかっているのを目にした彼女は、うきうきとチケット売り場の女の子に声をかけ…… 映画にはない場面、映画にはない物語、映画とは異なる結末ーー 本書はノベライズではない。同じ種子から誕生したもうひとつの物語、堂々たる一編の長編小説なのである。オフビートな小説を愛し、自身の映像言語としてきた巨匠がみせるグルーヴィな語りの才能に瞠目せよ! 池上冬樹氏、絶賛ーー とても映画監督の余技とは思えないほど、作家としての豊かな力量を感じさせる。 映画と小説はあわせて一本、または二つあわせて「完全版」と言えるかもしれない…… 面白いのである。掛け値なしに面白い。(本書解説より)
千年の愛は、一途でかろやか 千年ぶんの愛も、今この一瞬のときめきも。 最高にポップなモダン・ファンタジー。 千年前、女は神からの求婚を袖にして、愛する男と共に輪廻転生の呪いをかけられた。 生を繰り返すふたりは様々な時代で出会っては別れ、そして現代。壮大な過去を背負う岡田杏は、しかしすっかり「運命の恋人探し」を放棄して、ルームメイトの盗み屋・祥子と共に令和の世を謳歌していた!? 人と神とが駆け回り、時を超えた愛と欲とが入り乱れる只中で、悠々と我が道を行く最強コンビの物語!