出版社 : 新潮社
幕末期、勤皇派の薩摩藩士の企てを上意によって阻止せんとした寺田屋の変。辛うじて生き残った志士たちが、長州との勢力争いのため、迎えることを余儀なくされた無残な最期とは(「遺恨の譜」)。詰め腹を切らされた父の無念を晴らすべく、主君の死に際してご法度となっていた追腹を願い出た武士の心情を綴った、著者のデビュー作(「高柳父子」)。哀感あふれる名作九編を収録。
文化元年、幕府は対露政策の一環として蝦夷地に官寺建立を決定。命を受けた文翁、智弁らは、アイヌ教化のためにアッケシに赴任した。文翁の布教は困難を窮め、若い智弁はアイヌを虐待する和人に慣りを募らせていく、やがて、文翁は幕命を果せぬまま横死、智弁は苛烈な運命に呑まれてゆく。二つの文化の間で苦悩する二人の僧を通して歴史の暗闇に光を当てる新田次郎賞受賞の巨編。
19世紀なかば、漂着した孤島で豊富なダイヤモンド資源を発見した一組の男女。その子孫であるアーサー・ドーセットはオーストラリアのダイヤ王として、富をほしいままにしていた。だが、その採鉱は膨大な生命を奪う危険な技術を活用するものだった。ドーセットの娘で海洋生物学者のメーブ・フレッチャーを南極で偶然救出したピットは、彼女と協力してこの阻止を図るが…。
息子たちを人質に取られたメーブとともに、ピットとジョルディーノはグラディエーター島へと救出に向かった。だが、ドーセットの罠にはまり、三人は絶海を漂流する運命に。彼らが自然の猛威と絶望的な苦闘をつづける一方で、ドーセット鉱山のもたらす衝撃波は、ハワイの200万近い人命を奪おうとしていた…。音速で迫り来る危機に瀕したNUMAの面々の機知と格闘を描く問題作。
湾岸戦争で戦死した女性大尉が「名誉勲章」の受章候補者となり、その戦死状況の調査が開始される。調査を命じられたサーリング中佐には、戦闘中に味方の戦車を誤射し部下を殺してしまうという、苦い経験があったー。戦場の極限状況下における「勇気」とは何なのか?全世界にテレビ中継されたあの戦争を初めて戦闘員の目からリアルに描いた、話題のヒューマン・ストーリー。
幼時に戦死し、記憶の片隅にすら残っていない父。だが父親であることにはかわりはない。母親の求めに応じて父親の過去の姿を探り、やがて思いは自分の少年時代へ…。-古典の祭壇に奉られることなく、いまなお鮮烈な輝きを失わないカミュ。自動車事故死のため執筆を中断せざるをえなかったカミュ最後の未発表長編-。壮大な自伝的作品として構想され、カミュの全体像を捉える鍵を握っている未完の長編小説。
あなたも故郷に帰りますか?彼らの夏は、終わらない…心の道しるべを探して旅を続けるボブ・グリーンの小説世界!友情の絆を確かめ、恋に出会い、自分の人生を見つめるために-。オハイオ州ブリストル。彼らが生まれ育ったコロンバス近郊の小さな町。二十五年目の同窓会で、親友三人が思い立った「ひと夏の旅」は、故郷の町で終わりを告げる。けれども、旅する夏は新しい出会いと生きる勇気を与えた。男たちは、人生の新たな旅立ちに向かう。
セラピストとして開業したての「私」のもとを訪れた美しきクライアント、ジェニファーは、多重人格だった。初めて目にするその症状に魅了され、翻弄された「私」は、ついにその内の一人と恋におちてしまう。治療が「成功」すれば、二人の気持ちはどうなるのか?-NYの有名セラピストが、自らの体験をもとに、治療の現場でのセラピストとクライアントの心理的駆け引きをスリリングに綴る。多重人格のクライアントとセラピストの心理的葛藤をリアルに綴ったノンフィクション・ノヴェル。
今こそ新しい預言者があらわれる時だー。ある時は銀行員、ある時はアステカの神官の子孫。神出鬼没、正体不明の“神の代理人”謎の預言者ムルカシを探せ!元カソリックの信者で後に娼婦となったマリ子と、聖書と『ガンジー自伝』を愛読する天才的平和主義者の日本人ワタルが、ムルカシを追って都市を彷徨い、聖地を巡礼する。永遠の悟りを求めた魂の遍歴を綴るアンチ宗教小説。
長谷川正人は遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った。そこは水没した鐘乳洞で、中は迷路のようだった。自分の位置を見失ってしまった正人は死を覚悟するが、突如現れた「彼女」に導かれ、奇跡的に生還した。あれは幻覚だったのか?それともー正人は「彼女」の姿を求めて再び水底へと向かう。だが、そこで見たものは…。新感覚のサスペンス・ファンタジー。
ニューハンプシャーの小さな街で十七歳の少女が惨殺された。容疑者は同級生の少年ジェイコブ。彼は理由も告げず失踪し、警察は家族の家を訪れた。彫刻家の父親ベンと小児科医の母親キャロリン、そして妹のジュディス、三人の生活はその瞬間から一変した。倫理を貫こうとする母親と愛情を訴える父、その狭間に立ってただ内向していく妹。愛情と家族のあり方を厳しく問う問題作。
25年目の同窓会。ビーチ・ボーイズの「オール・サマー・ロング」を聴きながら、かつての親友三人組が「ひと夏の旅」を思い立った。TVの取材記者ベン、教師のマイケル、会社を経営するロニー。行き先を決めない自由な旅が始まる。歳月が引き離した友情を取り戻し、新しい恋に出会う夏-爽やかで切ないボブ・グリーンの小説世界。
昭和二十年七月、原爆を運ぶ米重巡洋艦インディアナポリスをグアム-レイテ線上で撃沈するべく待ち受ける海軍伊号五八潜水艦。太平洋戦争における艦艇同士の最後の戦いが開始された。索敵と待ち伏せ、追跡と反攻、そして撃沈。史実に加えられた巧みなフィクション、双方の指揮官・戦闘員の活写、詳細な戦闘描写、意表をつく結末。第一級エンターテインメント。
小説だからってフザケるのもいい加減にしろ!日本人に欠けているものは何だ?それは言うまでもない。堅牢強固な意志の力だ。日本ファンタジーノベル大賞受賞後初の書下ろし長編小説。今、とぼけた調子で、世に問う。世界一弱いヒーロー活躍、天才・サトウのナンセンス・ワールド!カニジンジャー沢蟹まけるは改造人間である。彼を改造したマングローブは世界征服を狙う秘密結社である。沢蟹まけるは人間の自由のためにマングローブと戦うのだ。
蓬莱島に暮らす美しき仙人・玉英は、仙界でも指折りの神通力を持つものの無類の酒好きで呑みっぷりは天下一品。東に銘酒ありと聞けば、行って一盞を傾け、西に美醪ありと聞けば、数斛を乾す毎日-。ところが、人間の男に恋をしたから、さあ、大変!永生の国で暮らす仙人たちの愛しき日々を愉快に描いた、博識読者に贈る今世紀最笑の仙人小説。
試合では万年二位の中距離走者の高校生・ジョンは、ある日、林の中で新種の蝶を見つける。小さな製材の町の運命さえ変えてしまうかもしれないこの蝶の出現で、ジョンは友人、町の人まわりのすべてとぶつかってしまう。不治の病に冒された父親とも-。淡い初恋に胸を焦がし、将来を思い悩みながら、大人への一歩を踏み出していく17歳を瑞々しく描いた青春小説。