出版社 : 新潮社
繊細で心やさしい童話作家の私。この純粋無垢で純情な私が、結婚した娘に送金するために、悪寒と戦慄、恐怖と吐気に七転八倒しながら、バイオレンス小説を書きはじめた。家族のために死ぬ思いで苦労している私を、優しく美しく、知性もある女房が殺そうとしている。次々と襲う危険な罠、恐怖体験。私の妄想か、錯覚か?-ちっとも怖くない大恐怖ユーモア小説。
航空機がテロの標的としてあまりに危険になったため、米政府は地下にトンネルを巡らし弾丸列車を通す計画を立てた。最大の難所、ミシガン湖底の工事が、もう完成間近だった。しかしコンピューターの予測する地層が、実際と全く違う。無理な工期の短縮もあって、現場は大混乱だった。案の定、爆発事故が続き、奇蹟的に生き残った人々は、深さ400フィートの湖底に閉じ込められた…。
学術論文をまとめるため渡英したドロレス・デュアラーは、ある日、やはり単身でロンドンに赴任していた商社副社長ヴィクター・モリセイと出会い、一夜をともにする。徹底的な女権拡張論者、自然保護論者であるドロレス、男性主導社会の論理に固執し、常に勝者であることを目指すヴィクターーまったく相容れぬはずの男と女が、運命の糸に引きずられるように恋に陥ちた。
ドロレスは男性の支配する社会、生産性のみが重視される社会への憤りを訴え、ヴィクターはそれを認めたうえで彼女の潔癖さ、偏狭さを指摘した。ふたりは互いにおのれの信念を譲らず、会うたびに反発し、だが同時に強く引かれあう。-他人を傷つけながら生きていかざるをえない男と、他人の心の傷みに涙を流す女。理性と感性がぎりぎりまでせめぎあう愛の極限を精緻に描く長編。
「ハハ シンゾウホッサ」の電報で急遽帰国した息子のわたしを待っていたのは、呆然としている父親だった。父は身の回りのことすべてを母に頼って暮してきた。車の運転も、着替えも、電話さえ一人で掛けたことがない。わたしは父を自立させる計画を立てたが老い、死の恐怖、世代断絶への焦燥など、誰も避けて通れない重い主題と真正面から取り組む。
父は簡単な料理を作れるまでになった。退院した母を看ながらの毎日も、順調のように思われた。しかし、身体の不調を訴えて検査入院した父が、病気への恐怖から、突然痴呆症になる。病院の処置に憤ったわたしは強引に父を帰宅させるが、病人との生活は想像以上に厳しかった。-現代社会が克服しなければならない大きな問題を捉え、家族の姿と生きることの意味を問う、愛と感動のドラマ。
もし、モリエールやモーツアルトがぼくのなかにいるとしたら、学校に殺されてしまう!16歳のある日、ぼくは寄宿舎を脱走、首尾よく戻ったパリで恋に落ちる。彼女は夫のいる女性。初めてのメイク・ラブ、彼女の腕の中で眠る日々。でももちろん彼女の夫も、パパも黙っているわけはない…。ヌーヴォー・ヌーヴォー・ロマンの少年の物語。
儀式の夜、侍女は仰向けにされて司令官を待った。その精液を受け、妊娠を待った。ただそれだけのために、男に仕えるために。そして、なにもかもが女性たちから奪われた。自由、それはいったい、どんな味がしたのだろう-。恋愛も読書も、仕事や家族やお喋りも、自由の思い出は、すべて夜の眠りの中にしまいこまれた。だが、ヒロインに、小さな希望、壁に囲まれた町から脱出する微かな兆しが…。数々の文学賞に輝いた、衝撃の全米ベストセラー待望の完全翻訳版。
細胞手術という世界初の手法で執刀された肝臓移植手術の経過報告に、永田町は耳をそばだてていた。肝機能障害を噂される首相の緊急入院。全閣僚の寿命を1ケ月単位で予測したヒポテーブルなる怪文書。先端医学情報が国政を揺さぶった6ケ月を描く、驚異の医学サスペンス
父さんと2人暮らしの幹太の家に、見知らぬおばあさんがやって来た。掃除や洗濯はもちろん、おいしいご飯をつくってくれるし、いじめっ子のイノブタには熱いお灸をすえてくれるから、幹太は大歓迎。父さんが豊島園の遊園地に捨てて来ても、超能力ねこゴン太を連れてちゃんとご帰館。でも、優しくて賢いおばあさんをつけ狙う、とても悪いやつらが現れたんだ…。オリジナル文庫。
九月のある日、その男は新しいキャデラックに乗ってサンフランシスコへ向っていた。男の名はロック・ワグラム。アルメニア系の俳優だ。三十三歳になった今、ロックはどうしようもなく孤独で死んでしまいそうな気がしていた。死の怯えを振り払い、好きな女と結婚し、軍隊に入ろうと故郷へ向かっているのだ。人生と孤独と愛、そして家族の絆をハート・ウォーミングに描いた長編小説。
1959年のアメリカ。厳格な校風で鳴る東部の名門校に、新任の国語教師キーティングがやってきた。型破りなスタイルで熱っぽく詩を講じる彼に、生徒たちはとまどいながらも惹かれてゆく。クラスの有志は、キーティングが学生時代につくった秘密組織〈死せる詩人たちの会〉を復活させた。が、やがて思わぬ事件が…。自由を愛する精神と管理教育との対立を描く、感動の青春学園ドラマ。
英国秘密情報部員ダビナは、亡命したKGB大佐ササノフの尋問を任された。婚約者を美貌の妹に奪われた過去を持つダビナだが、誠実なササノフに惹かれ、二人は結ばれた。ササノフは残してきた家族の救出を条件に機密を明かすと約束する。救出作戦のためにソ連に潜入したダビナの周りに裏切者の影がー過酷な情報戦を生きる女性を描いた、新しいスパイ小説の誕生。シリーズ第1作。
ボリコウスキーはブルガリア情報機関DSの職員である。変装の名人で、演技力と語学力には自信がある。今回の任務は、米政府が開発した画期的なエネルギー源の研究成果を盗むことだったが、つい母国語で罵声をあげたのがもとで計画変更が重なり、無用の殺人を犯してしまった。彼を兄の仇とつけ狙う米情報部の男も、身近に迫っているようだ。追う者と追われる者が錯綜する緊迫の二週間。
武士道とは死ぬことと見つけたり-常住坐臥、死人となって生きる佐賀鍋島「葉隠」武士。死人ゆえに自由、死人ゆえに果敢、死人ゆえに晴れやかな主人公たちの、藩内外の、更には幕府相手の型破りの活躍。
武士道とは死ぬことと見つけたり-常住坐臥、死人となって生きる佐賀鍋島「葉隠」武士。斎藤杢之助、中野求馬、牛島万右衛門らの、死人ゆえに強烈、死人ゆえに爽やかな生きざま。藩の存亡をめぐって、老中・松平伊豆守信綱との対決が迫る…。
「おやじ、死なないでくれー、と私は念じた。彼のためでなく私のために。父親が死んだら、まちがいの集積であった私の過去がその色で決定してしまような気がする」百歳を前にして老耄のはじまった元軍人の父親と、無頼の日々を過してきた私との異様な親子関係を描いて、人生の凄味を感じさせる純文学遺作集。川端康成文学賞受賞の名作「百」ほか三編を収録する。
蘭の原種を探し求めるオーキッド・ハンターは、世界にただ一つの蘭づくりを最高の名誉とするが、その行動はあくまで隠密、敏捷である。ところが、そのハンター達が次々に殺され、とびきり高価な花が盗まれた。死体の胸には、必ず蘭の花が…。魅力的な謎、生彩ある登場人物、意外な展開。華やかな推理美に彩られた、名探偵キャサリン・シリーズの代表作に「宵桜殺人事件」を併録。