出版社 : 新潮社
チン・シャンの計画が、新世紀の合衆国の存在自体を脅かすことが判明した。ピットはワシントン中心部での猛烈なカーチェイスを切り抜けたのも束の間、一味の切り札としてミシシッピ川を高速で遡上する巨大な豪華客船を食い止めようと奔走する。砲撃と猛火の果てに、野望は潰えたかに見えたが、チン・シャンには舞い戻るべき理由があった。そして二人は因縁の湖で最後の対決に臨む。
裕福で無垢な白人娘イザベルとスラム育ちの黒人青年トリスタンは、おたがいを一目見た瞬間、恋に落ちた。だがイザベルの父親が二人の関係を認めるわけがない。追跡と恋の逃避行が始まる…。大都会と原始の姿が混在するブラジルを舞台に「トリスタンとイズー伝説」を現代に強烈に甦らせたピュアでエロティックな恋愛小説。
「すまない。好きな人ができた」夫は突然去って行った。四十代半ばにして独りになったマギー。昔バイトをしていたカナダの小さな町に旅立つ。そこで出会った奇跡-それは初恋の人の息子だった…。
マンションの真下に住む赤い髪の女。銀行員の自分とはまったく別世界の人間だと思っていたのに…。自分なりに普通の人生を歩んでいたはずの人たち、その平凡な日々に潜む闇を描き、日常の断片が少しずつ異常な方向にずれていく恐怖感が濃密に立ちこめる短編群。
弱体の草野球チームに“神様”がやってきた。弛みきったチームに、やる気を甦らせ、基本を徹底させ、秘策奇策を授けていく。やがてチームは連勝街道に乗るが、彼は人知れず姿を消した。神様が教えてくれた野球の神髄。それはどこか、生きる道にも通じていた…。表題作のほか、どんづまりの人生に風穴をあけようと一念発起するやるせなき男たちを、たけしが愛情こめて描く大人の童話5編。
ヴェトナム戦で抜群の実績を誇る伝説的スナイパー、グレイは、今はNYで腕利きの検事補となっている。大物マフィアを有罪にすべく奮闘していた矢先、その容疑者が目前で射殺された。鮮やかな手並みはかつての自分に匹敵する。第二の狙撃事件が続き、もう一人の天才スナイパーの標的はグレイであることが分かる。持てる限りの力と技を尽くし、プライドをかけた男の死闘が今始まるー。
弁護士クリスにテレビ・インタビュアーのメアリから電話が入った。有名作家からレイプされそうになり、誤って射殺したというのだ。かつてクリスと関係を持ったメアリは、その後、息子カーロをもうけたが、別れて長い間没交渉だった。女性弁護士テリーザとともにクリスは正当防衛の線で弁護を引きうけるが、事件には多くの秘密が隠されていた。全米を沸かせた法廷ミステリーの最高傑作。
正当防衛かそれとも謀殺かー。全米が見守る中、予審が開始された。検察官シャープの冒頭陳述を皮切りに関係者が次々と証言すると、メアリの主張が検屍結果と微妙に食い違っていることが明らかになった。現場に残されたテープをめぐり、検察と弁護双方の駆け引きが続くさなか、テリーザは事件の謎を解く鍵を手に入れる。男女の葛藤、親子の絆を感動的に織り込んだ物語の結末は…。
一人の男が逮捕された-いかなる罪で?男の過去へと物語は収斂していく。実は、男は法律事務所のパートナーから九千万ドルを詐取し、ある男を自分の身代わりに埋葬したのだ。だが逮捕されたとき、男は一銭の金も所持していなかった。では大金はどこへ?男は保身のために殺人を犯したのか?事件は意外な方向に展開する。
「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカにとけこめず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国を躊躇い続けてきた。Toreturn or not to return.雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を浮き彫りにする、本邦初の横書きbilingual長編小説。野間文芸新人賞受賞。
闇に覆われた謎の街。娼婦ばかりを標的に、連続殺人が発生する。容疑者ジョン・マードックは記憶を喪失していた。僅かな記憶の断片を頼りに、真実を追うジョン。そして彼を追う刑事バムステッドと妻のエマ。だが、彼らにもまた、不気味な黒い影が忍び寄っていた。ストレンジャーー宇宙の寄生体。彼らは人間の「記憶」を奪おうとしていた…。超絶スケールの新世紀SFスリラー。
大の犬好きだった作家が飼っていたフォックステリアのイリスに、かわいい小犬が生まれました。名前はターシェンカ。やんちゃでいたずらな彼女に、作家はもう夢中です。毎日の成長の様子を、写真に撮ったり、肖像画を描いたり、あげくは小犬のためにおとぎ話まで作る始末。世界中の犬たちと、そして犬に手を焼きそれでも犬がかわいくてたまらないすべてのひとたちに贈る愛犬ノート。
異端信仰の嵐が吹き荒れるルネッサンス前夜の南仏で、若き神学僧が体験した錬金術の驚異、荘厳な光の充溢、そして、めくるめく霊肉一致の瞬間…。本作の投稿で「新潮」巻頭一挙掲載という前代未聞のデビューを飾った現役大学生が聖文学を世紀末の虚空に解き放つ。
死が村を蹂躙し幾重にも悲劇をもたらすだろう-人口千三百余、三方を山に囲まれ樅を育てて生きてきた外場村。猛暑に見舞われたある夏、村人たちが謎の死をとげていく。増え続ける死者は、未知の疫病によるものなのか、それとも、ある一家が越してきたからなのか。
広大な邸宅に独居する老いたイギリス人公爵。彼は突然何かに駆り立てられて、敷地内の地下に巨大なトンネルを掘り巡らせた。老いに怯える公爵は、トンネルを徘徊し、幼い頃親に手を引かれ海辺で見た光景の謎に、やがて突き当たる…。十九世紀に実在した公爵をモデルに、精緻な調査力と奔放な想像力を駆使した衝撃のデビュー作。ブッカー賞最終候補の処女長編。
あなたも、わたしも、ここにいる。なのに、なんて遠い男と女。求めても、体を重ねても、満たしきれない。禁じられるものは何もない。現代のさまざまな愛のかたちを描く短編小説集。男では満たされないことを知った女(「暗がりのローランサン美術館」)。婚約者とは別にプラトニックな愛を深めていく女(「最終公演、ワーグナー」)。平凡な結婚生活を送る女に突然よみがえるひと夏の記憶(「海に抱かれて」)。穏やかに見えても、心に、体に、生じるさざ波。果てなき愛の海をさまよう、男と女の九つの物語。
男は39歳、辛口で知られるコラムニスト。離婚歴あり。東京・山の手に、今は独り住まい。内省的な性格。性的な悩みを抱えている。そんな男の前にあらわれた女は27歳、古めかしい言葉をさらりと使う。六本木や西麻布の喧噪が苦手。新潟の出身だというが、その挙動はいたって不可解…。かくて、瀕死の巨大都市「東京」の光と影とに彩られた、物哀しくもユーモラスな恋愛譚が始まる。