出版社 : 新潮社
独り暮らしの初老男性が絞殺死体で発見された。捜査線上に浮上したのは家事代行業の地味な女性。女の周辺では、複数の六十代男性の不審死が報じられ、疑惑は濃厚になっていく。女は、男たちから次々に金を引き出していたのか。見え隠れする「中川綾子」という名前の謎とは。逮捕後も一貫して無実を訴える彼女だが、なぜか突如、黙秘に転じた…。判決の先まで目が離せない法廷小説の傑作。
全国紙記者の夢破れた野々村巡洋が入社した、北海タイムス。配属された整理部は、他紙の4倍の仕事量にして7分の1の年収だった。変人だらけの職場。連日の酒席。過酷な労働環境に厳しすぎる先輩。失望に加え、恋の終わりすら味わった野々村だが、あることを契機にプロフェッショナルとなる覚悟を決めるー。著者が身を置いた北海道の名門新聞社を舞台に描かれた、熱血度120%の長篇小説。
北日本のとある地方都市の一角に建つ、時間旅行者しか泊まることのできないなぞのホテル、「はなぞのホテル」。そこで働く新米の桜井千鶴は、このたびホテル系列の犬カフェへ出向して、過去や未来からやってくるお客様(徳川将軍からロボットまで!?)を必死でもてなすことに。けれど、闇ルートで違法時間旅行をする悪党の影が、彼女のドタバタで平和な日常に忍び寄りつつあった!時間旅行者が経営する犬カフェに勤める桜井千鶴のほっこりでどたばたなタイムトラベルミステリー。
どうか神様ーこの物語がハッピーエンドでありますように。「宝石病」の理奈と、受験を頑張る翔太の恋と青春の物語。読後、必ず読み返したくなる「泣ける」恋愛小説。
イギリス労働党に入党し政治家としての階段を上りつめていくサーシャ。ヴェトナム戦争を経てアメリカの経済界で伸し上がっていくアレックス。やがて二十世紀が終わる頃、二人の進路は何かに導かれたかのように同じ場所へと向っていく。そこには野望と怨念が渦巻く世界が待ち構えていた。果して両者の到達点はー現代史を背景に、人生の偶然と宿命を奇抜なスタイルで描き出す空前のサーガ。
顔も知らない父親に、事故死した幼い娘に、片思いしていたあの人に、もしも会えるなら。一生に一度だけの死者との再会を叶える使者「ツナグ」。長年に亘って務めを果たした最愛の祖母から歩美は使者としての役目を引き継いだ。7年経ち、会社員として働きながら依頼を受ける彼の元に、亡き人との面会を望む人々が訪れる。依頼者たちは、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていてー。
不貞の濡れ衣により婚家を追われ、芽吹長屋で縁結び屋を名乗る、おえん。旧友と二枚目戯作者の仲を調え、安堵した折に驚きの報せが。十年も行方知れずの息子・友松が帰ってきたのだ。若者へと成長した友松には、目印の珍しいホクロが確かにあった。が、おえんにはこの子が友松と思い切れぬ何かがありー。粋に描き出す江戸の人間模様。人情時代小説決定版!
北尾実加、27歳。公私ともに超多忙!大好きな姉に続いて母も亡くし、父は別の家庭へ。それでも強く歩んできた実加が直面する、危険な恋、会社の一大プロジェクト、そして初めて会う“妹”。懐かしい声が、悩み多き実加に語りかけるー大切な毎日に気づかせてくれる愛しい物語。永遠の名作『ふたり』感動の続編!
戴国に麒麟が還る。王は何処へー乍驍宗が登極から半年で消息を絶ち、泰麒も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎は慶国景王、雁国延王の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。-白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!
民には、早く希望を見せてやりたい。国の安寧を誰よりも願った驍宗の行方を追う泰麒は、ついに白圭宮へと至る。それは王の座を奪い取った阿選に会うためだった。しかし権力を恣にしたはずの仮王には政を治める気配がない。一方、李斎は、驍宗が襲われたはずの山を目指すも、かつて玉泉として栄えた地は荒廃していた。人々が凍てつく前に、王を捜し、国を救わなければ。-だが。
山形十九万石を治める最上義光の愛娘で東国一の美少女と称される駒姫は、弱冠十五歳にして関白秀次のもとへ嫁ぐこととなった。が、秀次は太閤秀吉に謀反を疑われて自死。遺された妻子には非情極まる「三十九人全員斬殺」が宣告された。危機迫る中でも己を律し義を失わない駒姫と、幼き姫に寄り添う侍女おこちゃ。最上の男衆は狂気の天下人から愛する者を奪還できるか。手に汗握る歴史小説!
時は元禄、御家御取潰しは現代ならば会社倒産。松の大廊下の刃傷沙汰で、主君は切腹、藩は解散。「いくさや!」と赤穂牢人が意気込もうとも、先立つものはお金。退職金、御家再興の運動費に、墓代?吉良家に討ち入るなら武器だって必要だし…家老の大石内蔵助は減りゆくばかりの予算をいかにやりくりし、主君の敵を討ったのか?一級史料をもとに生れた同名映画を監督自身が小説化!
武田家再興の鍵を握る秘巻を巡って四人の少年武者の艱難辛苦を描く「悪龍窟秘譚」。智恵が足りぬと蔑まれていた弟が悪徳の商売敵をやりこめる「鹿島灘乗切り」。父娘の命を賭けた伊達政宗への諌言を描く「誉の競矢」。剛勇無双の本多平八郎と同名の臆病侍が心機一転、強敵に挑む表題作。新発見二編を含む快作二十一編収録。
織田信長さえ、いなければー。天下を獲れたはずの男・今川義元。戦に賭けた男・真柄直隆。逃げ続けた男・六角承禎。将軍殺しの悪名と生きた男・三好義継。戦より茶を愛した男・佐久間信栄。老躯をおして仇を狙う伊賀上忍の男・百地丹波。祖父の影を追い続けた男・織田秀信。乱世の主役、信長に翻弄された時代の“脇役”たちもまた、己が人生を必死にもがき生き抜いた。敗者たちの戦国列伝。
看板娘のお瑛と兄の長太郎が切り盛りする雑貨屋『みとや』。一律三十八文が売りの小さな店だが、のんきな兄が鼻高々で仕入れてくるのは、おかしな品ばかり。大量の黄表紙、煙臭い市松人形、小花の簪、山ほどの下駄。訳あり品に秘められた下町人情、意外な縁、嫉妬の罠とは…。時代小説の名手が、背負った過去にも負けずに生きる人びとの姿を、しみじみと描き出す。好評シリーズ第二弾。
46歳の下田保幸は、プロのジャズクラリネット奏者。演奏に全てを捧げた若い日の情熱は潮が引くように褪せ、いまは音楽教室講師の僅かな収入で過ごす。そんな暮らしがギタリストの青年・音矢との出会いで動き出す。どうしても困ったら下田を頼るよう、亡き母に言われたという音矢の名字は佐久間。下田が昔愛した女性と同じだった…。人生の折返し点で迷う大人たちの心をはげます感動作。
1845年3月、クーパー船長率いる米国捕鯨船は日本海を目指す途中、無人島に漂着していた日本人11名、翌日にも沈没しかかった日本船の乗組員11名、計22名を救助した。22名分の水と食料の消費は激しく、送りとどけるにも日本は鎖国中で、沿岸部に近づけば被弾する恐れもある。船長の決断は早かった…。ペリー浦賀来航の8年前にあった日米交流の史実を題材に、船乗りたちの交誼を描く圧倒的感動巨編。