出版社 : 新潮社
古町界隈で「高木の家」を知らぬ者はなかった。「高木の人」といえば、父の経営する土木工事、港湾荷役、キャバレー、飲食店、旅館等に従事する人々とその家族50人余りをさしていた。少年にとって、父は聳える山のような存在だった。母は豊かな海であった。瀬戸内の小さな港町で過した著者のなつかしい少年時代を描いた自伝的長編小説。
京に逗留中に眠狂四郎に、京都町奉行から突然呼び出しがかかった。禁裏から高貴の身分の姫宮が失踪し、その事件の裏には大阪商人が一枚かんでいるという。御所が金のために姫を売った?狂四郎は姫を取り戻しに商人の別荘へ赴くのだがー。他に狂四郎の独白体で進行する「悪女仇討」、行商人の回想で綴る「のぞきからくり」など、文庫未収録作品を集めた眠狂四郎最後の円月殺法。
時は戦国、氷上の名主に拾われたコナタは快活な少年だった。しかし、戦の終わった戦場で青の魔剣と出会った日から、コナタの運命は一変する。己の出生の秘密を知ったコナタは、運命の導くまま「男でありながら女であるもの」へと変化して京に上る。一方、赤の魔剣の所有者シナは織田信長の元にあった。二振りの魔剣が再び相まみえ火花を散らすー。長編歴史ファンタジー、完結編。
結婚して以来転居を繰り返している智佐子・克郎の若夫婦が今回引っ越してきたのは公団住宅。家賃の安さにつられたけれど、今時珍しい星型の住宅で、五階建てなのにエレベーターなし、おまけに傾きかけている。隣に住む老人が120億の遺産を智佐子に進呈すると言いだして、やっぱり死体が御登場。オンボロ団地の住人を巻き込んで繰り広げられる好評のドタバタ書下ろしシリーズ。
明治政府に反逆し、賊として処刑された者たちが、維新前夜の功績を評価されて次々と贈位されていく中で、奇兵隊三代目総管・赤根武人の名誉がついに回復されなかったのはなぜか。現代の法廷に、山県有朋、伊藤博文らを次々に冥界から証人として喚問し、著者の分身たる弁護人が維新史の暗部に横たわる謎をえぐりだす表題作をはじめ、明治維新前後に材をとった力作3編を収録する。
事故で顔面に重傷を負った女性記者カーリーの顔は、天才的形成外科医の手で見事に修復された。だが彼女はほどなく医師のいかがわしい前歴を知らされる。そして、自分と同じ顔を与えられた女が存在し、しかも彼女が行方不明になっていることもー。医師は完全無欠の顔を作り出し、自分の名を不朽のものにしようとしていたのだ。真相を知りかけたカーリーに、医師の魔の手が迫る。
シアトル市内で八件の連続殺人事件が発生した。独身の若い女性ばかりで、目はテープで見開かされたまま、腹部を十字架の形に切り刻まれて。その残忍な手口から異常者の仕様と思われたが、捜査を嘲笑うかのように、新たな犠牲者が出て、当初の犯人のほかに模倣犯が加わった線も強まる。幾重にも隠された謎を解く鍵は、果たして何処に?実力派作家が入念に描く大型警察ミステリー。
ダンは霧の山道を妻とともにドライブ中、崖下に転落して瀕死の重傷を負った。無残に潰れた顔は手術でもとに戻ったが、失われた記憶は蘇らない。そして、ようやく退院したダンの前に立ちはだかる不可解な謎の数々。同乗の妻がかすり傷だけですんだのはなぜか?書斎に隠されていた妻と男の絡み合った写真は?ダンの心に恐ろしい疑念が暗雲のように拡がっていく…。
財産のある若き美貌の妻ローランスの結婚は、ピアニストのヴァンサンに「自由」を与えることだった。しかし、階級の違う結婚を嘲笑する彼女の父、冷やかでスノッブな彼女の友人の視線のなかで、飼い犬のように夫ヴァンサンを独占するローランス。そして、彼がその才能で富と名声を得たとき、真実の愛が姿を現した…。愛の束縛、愛の哀しみを描くサガン待望の恋愛長編。
1922年、まだ無名時代のヘミングウェイの原稿がスーツケースごと何者かの手で持ち去られ、以後、杳としてその消息はつかめなかった。これは実際に起った有名な文学上の事件である。その原稿が出てきた…。本当にヘミングウェイの原稿であろうか。一流のヘミングウェイ学者も間違いないと大鼓判を押すが…スリリングに展開する知的小説。
夫の転職にともなって長崎にやってきた谷地万沙子は、祭で一心不乱に太鼓を打ち続ける信次の凛々しい姿に心惹かれる。したたり落ちる汗が太陽に輝く。男はこれほどに美しいものか。彼女のその一瞬の心の揺れが思いがけない悲劇を生んだ。不倫の汚名を着せられた信次は12年後の再会を誓って島を去った。そして今、約束の時が訪れる。-海沿いの町を舞台に描く大人の恋の物語。
美也子は33歳の普通のOL。この8年間いつも週末に流行作家の日比大作と密会してきた。最近、彼との愛人関係に充たされない何かがある…。ある日突然、彼の娘が2人の前に現れ、美也子は傷つきやすい魅力的なこの娘に、そして別居中の彼の自由奔放な妻にある嫉妬を感じた。そんな折、山で死んだ兄の友人に、美也子は心の安らぎと新しい愛の歓びを見つけはじめた。長編恋愛小説。
療養のため、とある温泉地に滞在している少女は、そこで出会った1人の青年に惹かれるが…。感受性の強い少女の清新の時を瑞々しい筆致で切り取ったデビュー作「サビタの記憶」。単調な生活に倦んだ人妻は、若い従弟との危険な時間に足を踏み入れた…。3組のカップルが織りなす妖しい愛のロンド「廃園」。ベストセラー『挽歌』刊行の前後に発表された8編を収録した作品集。
築地の料亭“花巻”で働きながら、地唄舞いを心の支えにして生きている30歳の有紀は、日本画家の香屋雅伸と知りあい、香屋の妻の敵意と嫉妬をよそに運命的に結ばれた。激しく愛しあった10年の歳月、香屋は50歳の男盛りをガンに冒され、有紀を残してひとりで逝った。それから1年、有紀は、永遠に愛する男のために舞台に上がり、幽艶な女の情念を秘めて「雪」を舞う…。長編小説。
25歳の誕生日に春霞に沈んだプールでひとり泳ぐ美佐子。全身の感覚で水と光と風を楽しむ彼女の、プールの底に映る影は、いつもの冷静そうな影。心の動揺などまるで感じさせず、彼女の動きをそのとおりに映していた。周りのだれもが揺れ動いている時にも、あくまでもクールな美佐子。春から夏へと移る季節のなかで、いま静かに始まる彼女の、そしてあなたのためのラヴ・ストーリー。
芸者の子として生まれ、父を知らずに育った未知子は、学生結婚に失敗し、1人息子を連れて、東京・向島の花街に戻ってきた。座敷に出て間もなく、初老の紳士と知り合うが、父親にも似たその男との出会いが、未知子を惑わす。好きになってはいけない同士の、大人の恋のゆくすえは…。男女の胸の内を描いて定評のある著者が、変わりつつある花柳界を舞台に展開する意欲恋愛長編。
NATO(北大西洋条約機構)軍加盟の各国から優秀なパイロットが選抜され、改良型のトルネード戦闘攻撃機による特別飛行中隊が編成された。集まってきた彼らは、互いに競い合いつつ、厳しい訓練を耐え抜いていく。その間に起きる女性との恋、仲間の事故死、そしてソ連人パイロットの亡命…。大空を翔けめぐる若きパイロットたちの世界を爽快に描く、NATO版“トップ・ガン”。