出版社 : 新潮社
証券会社のNY本部で多忙をきわめていた高澤は、妻との関係が壊れ離婚。会社も破綻する。再就職先で直面した、華やかなキャリアなど通用しない中堅損保の厳しい現実。再び転職した地方の無名大学で、都落ちの寂寥感に沈む高澤の前に現れたのは、学部長秘書の清楚な女性だった……。低迷する日本経済を背景に、もがきながら生きるビジネスマンの「仕事と家族」を鮮烈に描き、万感胸に迫る傑作
築三十三年、木造二階建て。臨死状態の古びた商店街にひっそりと佇む「小暮写眞館」。都立三雲高校に通う花菱英一は、両親の趣味により、この写真館に住むことになる。そして、弟を含めた家族四人の暮らしが始まった矢先、ひとりの女子高生が持ち込んだ不思議な写真をめぐる謎に、英一自身も関わることになり…。写真に秘められた物語を解き明かす、心温まる現代ミステリー。
写真の謎、君に解ける? 高校の先輩に呼び出された花菱英一は、当事者に話を聞くことなく、三年前に撮影された写真の謎を解明するよう言い渡される。困惑する英一だったが、親友の店子力や同級生の寺内千春の助力を得て、当時の出来事を調べ始める。唐突に破棄された婚約。父親の病死。涙を流す家族。一枚の写真に隠された物語とは? 現代を生きる人の温もりと優しさを描き出す、宮部ミステリーの真骨頂。
幼い女子を次々と拐(かどわか)す「黒い魔物」が、団員・篠崎始の妹と小林少年を拉致。溺死寸前の二人を少年らの機転で救い出すものの、魔物は首尾よく姿をくらませてしまう。それから二日、帰京したばかりの明智小五郎が講釈する「探偵学」に耳を傾けるうち、小林少年は世にも恐ろしい仮説に辿りつくーー。史上最高の名探偵vs.世紀の大悪党、華麗なる推理合戦の行方をしかと見届けよ!
黒船より前に浦賀に来航した米国船が存在した! 日米初遭遇の歴史的瞬間がいま鮮やかに甦る。「本船はこれより、エドへ向かう!」1845年、捕鯨船マンハッタン号は洋上で日本人漂流者22人を救助。彼らを送り届けるため、被弾覚悟で鎖国中の日本に針路を取った。言葉の壁を越えて育まれる船乗り同士の友情と敬意。そして船はついに浦賀入港を許されてーーペリーも注目した開国への第一歩を日米双方から描く興奮の歴史長篇!
その古道具は、あなたの人生を支配する。時間も空間も超えて、突如現れる古道具屋。訪れた客に商品を選ぶ権利はない。客を翻弄する不可思議な店主の望みとは何なのか?
河川敷で猫と暮らす柳さんは、ある日町で「野良ビトに缶を与えないでください」という看板を見た。やがて国ぐるみで野宿者を隔離しようとする計画が…。ほんの少しだけ未来の日本を舞台に、格差、貧困、差別の問題に迫る新鋭の力作。
拉致された九条文女の行方は杳として知れず、焦る総兵衛は意を決し、江戸城への潜入を試みる。また、北郷陰吉らの探索によって、異国の仮面兵と老中牧野忠精の関係が見えてきた。文女救出劇は老中牧野との闘争へと変わり、仮面兵との全面対決に発展。ついにイマサカ号とマードレ・デ・デウス号が駿河湾で激突する。敵船甲板上、女首領が構えた銃口は総兵衛一人に狙いを定めていた。
若だんなの許嫁が、ついに決まる!? 幼なじみの栄吉の恋に、長崎屋の危機……騒動を経て次第に将来を意識しはじめる若だんな。そんな中、仁吉と佐助は、若だんなの嫁取りを心配した祖母のおぎん様から重大な決断を迫られる。千年以上生きる妖に比べ、人の寿命は短い。ずっと一緒にいるために皆が出した結論は。謎解きもたっぷり、一太郎と妖たちの新たな未来が開けるシリーズ第13弾。
東京の大学を出て関西の大手メーカーに就職し、奈良県は大宇陀の旧家の婿養子となった伊佐夫。特筆すべきことは何もない田舎の暮らしが、ほんとうは薄氷を踏むように脆いものであったのは、夫のせいか、妻のせいか。その妻を交通事故で失い、古希を迎えた伊佐夫は、残された棚田で黙々と米をつくる。
雨の下でにわか農夫はじっと息を殺し、晴れれば嬉々として田んぼへ飛び出す。大宇陀の山は今日も神武が詠い、祖霊が集い、獣や鳥や地虫たちが声高く啼き合う。始まりも終わりもない、果てしない人間の物思いと、天と地と、生命のポリフォニー。
560人が死亡した航空機事故の犯人として収監されたハッカーの能力は、国家権力をも凌駕した。命と引き換えに、国家間の犯罪を捜査する「広域警察」の極秘捜査班に加わることに。老数学者の身辺をハッキングするうち、自らの冤罪事件のからくりが見えてきて…。闇をはらむ権力との闘いが、いま始まる!ジェットコースター・サスペンス長編。
東京・赤羽。絞殺死体で発見されたひとり暮らしの初老男性。親譲りの不動産を所有する被害者の周辺には、多くの捜査対象が存在する。地道な鑑取り捜査の過程で、家事代行業の女性が浮上した。しかし彼女の自宅に赴いた赤羽署の捜査員の前に、埼玉県警の警察車両が。彼女の仕事先では、他にも複数の不審死が発生していたー。舞台は敏腕弁護士と検察が鎬を削る裁判員裁判の場へ!無罪を主張する被告は証言台で突然、口を閉ざした。有罪に代えても守るべき何が、彼女にあるのか?丹念な捜査、緊迫の公判。新機軸の長編ミステリー。
こんなはずじゃなかったのにーー。顔をあげろ、勇! 人生もゲームも、逃げたら、負けだ! 桐山勇、18歳。かなりの天狗。J1所属のチームに入団が内定していたが、“ある噂〞により取り消される。仕方なくこの春から、JFLの武山FCへ腰掛けのつもりで入ることになった。父と姉を残し向かった新天地で、天狗の鼻はぽきりと折れるーー。汗と涙と泥にまみれ成長する勇を、好きにならずにいられない。ザ・青春小説金字塔!
十代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験ーー。19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い。気鋭作家が自らの原点と初めて向き合い、記憶の痛みに貫かれながら綴った渾身作!
真田幸村の兄にして、“信濃の獅子”と謳われた真田信之。松代藩に善政を敷いた老雄は、九十歳を超えすでに隠居していたが、当主を譲った息子の突然の死をきっかけに、家督相続に頭を悩ませることに。その内紛に乗じ、“下馬将軍”と呼ばれた老中、酒井忠清は隠密を使い陰謀をめぐらすが、信之には藩を守るための秘策があったーー。巨編『真田太平記』の後日譚にあたる、爽快なる傑作。
ロシア革命直後のウラジオストックで、怪しい男がロマノフ王家の宝石にまつわる奇妙な体験を語る(「死後の恋」)。海難事故で無人島に漂着した兄妹が体験した悪夢(「瓶詰地獄」)。鼓作りの男が想いを寄せる女性に贈った鼓が、尋常ならざる音色で不吉な事件を引き起こす(「あやかしの鼓」)。──夢と現の狭間へと誘う奇才夢野ワールドから、究極の甘美と狂気を厳選した全10編。
母性に倦んだ母親のもとで育った少女・恵奈は、「カゾクヨナニー」という密やかな行為で、抑えきれない「家族欲」を解消していた。高校に入り、家を逃れて恋人と同棲を始めたが、お互いを家族欲の対象に貶め合う生活は恵奈にはおぞましい。人が帰る所は本当に家族なのだろうか? 「おかえり」の懐かしい声のするドアを求め、人間の想像力の向こう側まで疾走する自分探しの物語。
「会社を辞めて、これからどうするつもりなんですか?」リストラ面接官の村上真介が今回対峙するのはーー鼻っ柱の強い美容部員、台湾に身売りした家電メーカーのエース研究員、ペースを狂わせる不思議ちゃん書店員。そして最後にクビを切られるのは、なんと真介自身!? 変わりゆく時代を見据え、働くこと=生きることの意義を探す人々を応援する人気シリーズ、旅立ちの全四話。