出版社 : 新潮社
東京オリンピック開幕前後、六十六歳の松坂熊吾は金策に窮していた。大阪中古車センターをオープンさせるも、別れたはずの愛人・博美との関係を復活させ、それが妻・房江に知られ、高校生になった息子・伸仁にも責められ、熊吾は家を出ざるを得なくなる。糖尿病は悪化し、大怪我を負い、さらに会社の不振が続く。熊吾の運は尽きたのか。そして、心を痛めた房江はついに…。執筆三十五年、ついに次作・第九部で完結。
ある日、自分のハリが大嫌いで、ほかのどうぶつたちとうまくつきあえないハリネズミが、誰かを家に招待しようと思いたつ。さっそく手紙を書きはじめるが、もしも○○が訪ねてきたら、と想像すると、とたんに不安に襲われて、手紙を送る勇気が出ない。クマがきたら?ヒキガエルがきたら?ゾウがきたら?フクロウがきたら?-さまざまなどうぶつたちのオソロシイ訪問が、孤独なハリネズミの頭のなかで繰り広げられる。笑いながら、身につまされながら、やがて祈りながら読んでいくと、とうとうさいごに…。オランダでもっとも敬愛される作家による、臆病で気むずかしいあなたのための物語。
見るも無残に顔を潰された死体、変転する事件像(『石榴』)。絶世の美女に心を奪われた兄の想像を絶する“運命”(『押絵と旅する男』)。謎に満ちた探偵作家・大江春泥に脅迫される実業家夫人、彼女を恋する私は春泥の影を追跡するーー後世に語り継がれるミステリ『陰獣』。他に『目羅博士』『人でなしの恋』『白昼夢』『踊る一寸法師』を収録。大乱歩の魔力を存分に味わえる全7編。
私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれたーー。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。少女から大人に変わる十余年を描く、最強のガール・ミーツ・ガール小説。
本土初空襲とミッドウェー大敗。それは帝国の翳り。四郎は比島で抗日ゲリラの憤怒を体感した。少佐となった三郎は変転する戦を見つめ、太郎は自らの罪過が招いた惨劇に震えた。そして敷島次郎は劣弱な囚人部隊を率い、インパール作戦に加わる運命にあった。若き日駆け抜けた満州、彼の地より遠く離れた緑の地獄で男は何を想うのか。食い破られてゆく絶対国防圏。白骨連なる第八巻。
「僕たちはこのままじゃ、ゼツメツしてしまいます」小説家のセンセイのもとに、一通の手紙が届いた。手紙の送り主である中学二年生のタケシ、そして小学五年生の男子リュウと女子のジュン。学校や家で居場所を失くしてしまった三人を救うために、センセイはある隠れ場所を用意するがーー。想像力の奇跡を信じ、悲しみの先にある光を求める、驚きと感涙の傑作。毎日出版文化賞受賞。
時は戦国。乱世にその名を轟かせた海賊衆がいた。村上海賊ーー。瀬戸内海の島々に根を張り、強勢を誇る当主の村上武吉。彼の剛勇と荒々しさを引き継いだのは、娘の景だった。海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女。この姫が合戦前夜の難波へ向かう時、物語の幕が開くーー。本屋大賞、吉川英治文学新人賞ダブル受賞! 木津川合戦の史実に基づく壮大な歴史巨編。
天下統一に乗り出した織田信長が、大坂本願寺を攻め立てていた天正四年。一向宗の門徒たちは籠城を余儀なくされていた。海路からの支援を乞われた毛利家は、村上海賊に頼ろうとする。織田方では、泉州淡輪の海賊、眞鍋家の若き当主、七五三兵衛が初の軍議に臨む。武辺者揃いの泉州侍たち。大地を揺るがす「南無阿弥陀仏」の大合唱。難波海で、景が見たものはーー。激突の第二巻。
江戸は不忍池の畔で「阿部雨堂」を名乗る陰陽師。「安倍晴明の傍流のそのまた傍流の末裔」と称し、占いから憑き物落としまで請け負うが、実はー。梅雨のある日、訪ねてきた客は三人の美しい町娘。丑の刻参りの標的がこの中の誰なのか知りたいという。雨堂は弟子のおこと、狂言作者・甲悦と調べに乗り出す。小粋でほんのり切ないお江戸呪いミステリー!
弟を養うためサラリーマンになる!そう決意した大学三年の佐倉聖。元政治家、大堂の下で事務員をしているが、コネ採用はお断りだ。事務所がらみの難問は鮮やかに解決する聖も、就職活動では悪戦苦闘。面接先の広告代理店では事件に遭遇、商社ではインターンシップを突然クビに。奮闘する聖の元に、身に覚えのない五通の内定通知が届くー。爽快感あふれる青春ユーモア・ミステリー。
調和が崩れ始めた世界を救うため、炎帝から宝具「一」の探索を命じられた拠比と僕僕。他方、炎帝と世界を二分する最高位の神仙・黄帝は、異変を解消する手段として「人」を創り出し、彼らの国の整備に力を注いでいた。「一」の欠片が人間の国・栄陽にあると突き止めた拠比たちは、王都へ潜入。人の王に近づくため、側近の厨師と料理対決に臨む…!グルメ冒険ファンタジー、第二弾。
客船<バッキンガム>爆破事件の後、ハリーはシベリア強制収容所に幽閉されている一人のロシア人を救出する決意を固める。その男ババコフはかつてスターリンの専属通訳を務め、内幕を暴露した本を著して逮捕されていた。セバスティアンの恋とビジネスに迫る危機、ジャイルズを襲う予期せぬ不祥事、そしてエマを待ち受ける陰謀……一寸先に闇が訪れ、息つく暇も与えぬシリーズ第5部。
ソ連が闇に葬り去ったババコフの著書『アンクル・ジョー』のありかを知ったハリーは単身、モスクワに向う。だが、そこに待ち受けていたのは異常極まりない国家の罠だった。一方、エマはバリントン海運社内の危機を抱えながら、宿敵ヴァージニアに起された名誉毀損訴訟の法廷に立つことに。はたして全ての真実が語られる日は来るのか。希望と絶望が交互に押し寄せる驚愕の新展開!
難破宇宙船から持ち帰った謎の生命体は妖艶な美女の姿をしていたーー≪彼女≫を犯そうとした者は心を読まれ、生命エネルギーを吸い取られる。人体から人体に乗り移り、「殺人」を重ねる宇宙ヴァンパイアー。やがて明らかになる人類創世をめぐる壮大な宇宙ドラマとは……。英国の奇才コリン・ウィルソンによる異色のゴシック風スペース・ホラーを復刊! ≪村上柴田翻訳堂≫シリーズ
むかしむかしのずうっとむかしのこと。イギリスの森でクマのプーは暮らしていました。大親友クリストファー・ロビンと冒険の日々を送っています。風船で体をふわって浮かせて本の上にあるハチミツを取ろうとしたこと。コブタのコブタンのおうちが水浸しになったこと。ついにプーが発見した北極…。ふわりと柔らかく、たまらなく愛おしい。永遠の友情に彩られた名作がいま蘇る。
森の洞穴に現れた人間の赤ちゃんは、母オオカミ・ラクシャに預けられて、オオカミの群れの中で育てられた。その少年モウグリを主人公に、ヒグマのバルーと黒ヒョウのバギーラ、モウグリを誘拐したサル族、知恵もので岩ニシキヘビのカー、人間を恨みモウグリの命を奪おうとするトラのシア・カーンなど、「ジャングルの掟」とともに厳しく生きる者たちを描く永遠の名作、新訳で復活!
ドーピングの発覚で失墜した世界的英雄が、突然ツール・ド・フランスに復帰した。彼の真意が見えないまま、レースは不穏な展開へ。選手をつけ狙う影、強豪同士の密約、そして甦る過去の忌まわしい記憶…。新たな興奮と感動が待ち受ける3000kmの人間ドラマ、開幕!
かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を殺さねばならなかったのか…究極の選択を迫られた女たちの悲劇を、端正な筆致と鮮やかなレトリックで描き出す、ミステリ短篇集の新たなるマスターピース!磨き抜かれたプロットが、日常に潜む狂気をあぶりだす全5篇。
自動車産業で知られるカナダの街ウィンザーで、灼熱の太陽の下、煉瓦敷きに励む男たち。働き者の高校生がバイトを辞めることになり、リーダー格のトムは送別会を兼ねて昼間から皆をバーへと誘った。だが、そこでまさかの事件が起きるー。スリリングな人間模様を鮮やかな筆致で描く表題作のほか、友人ランナーの奇跡の追い上げを敗者の視点から写し出す「ミラクル・マイル」、幼少期のトラウマを克服するため飛び込んだ水泳教室での恋の予感が語られる「成人初心者1」など。誰の人生にも起こりうる、瞬間のドラマを切り取った7篇。ギラー賞、フランク・オコナー国際短篇賞最終候補作。