出版社 : 新潮社
貞次郎の想い人、弥生は心ならずも目付神崎に嫁いだ。貞次郎は奸計に遭って、神崎の腕を斬り脱藩。江戸での潜伏の日々、神崎の参府と弥生の出奔を知り…(「雪の果て」)。餅菓子を売りながら女手ひとつで幼子を育てるおみさの前に、父親になるはずの男が五年ぶりに現れたのだが、幕吏に追われる身となっていた(「梅香餅」)。女たちのはかなくも強靭な愛の姿を炙り出す傑作人情譚四編。
二十世紀後半、ドイツ中部の地方都市に突如出現した怪物“月硝子”。同市に隔離された市民は、五十年の時の中で、人間と怪物の戦いをギャンブル「生存賭博」として娯楽産業化した。賭けで生計を立てる少女、琉璃=A・ミュンヒハウゼンはある日、謎の甲冑騎士が月硝子を壊滅させたことを知る。それは狂乱を貪る都市の崩壊を告げる事件だった…。極限の欲望を描く、近未来エンタメ。
クラスの女王に媚を売り、カースト底辺はイジり倒す。それが殺された人気教師の素顔だった。犯人候補は多数。警察が捜査を始めた矢先、保健室に謎の手紙が届きだす。明かされる上位メンバーの過去、裏切り、そしてイジられ役からの悪魔誕生。1年D組に復讐ゲームが広がる中、第二、第三の死者も発生し…。すべてを計画した“神”は誰だ?衝撃的結末の学園バトルロワイヤル!
19世紀末の英国ヴィクトリア時代。風が渡る荒野とハリエニシダの茂る情景の中で、運命に翻弄される主人公たち…美しい若妻ガートルードの腕に残された痣をめぐる悲劇的な人生を描いた傑作「呪われた腕」、妹の婚約者との密やかな愛を綴る「アリシアの日記」ほか、「妻ゆえに」「幻想を追う女」など珠玉の八編を収録。「ハーディ短編集」を復刊・改題。「村上柴田翻訳堂」シリーズ。村上春樹×柴田元幸「特別解説」付き!
ギル・ガメシュはリーグ史上唯一審判を殺そうとした監督、一塁手ジョン・バールはアル中の凶状持ち、三塁手ウェイン・ヘケットは最年長52歳と、放浪球団マンディーズは厄介者だらけ!珍記録を次々と樹立し、あげく反米スパイ事件の汚名まで着せられて…。アメリカの夢と神話を痛快に笑い飛ばした、米文学史上最凶の大問題作が、「村上柴田翻訳堂」シリーズで38年ぶりに禁断の復刊!柴田元幸が全力投球した注釈を収録!村上春樹×柴田元幸「特別解説」付き!
三十歳。生まれて初めての恋が私を変える。手品のようにー女子力の低いOLが人気マジシャンに一目惚れ。オレンジ色のシルクスカーフを巧みに操る彼に近づきたくて、仕事をやめてマジックの世界へ。芸も恋も前途多難、心が折れそうになったとき、不思議な巡り合わせが…愉快な恋愛成長小説。
もしかして、私、ニセモノなんじゃない?ある日、六年間連れ添った妻はこう告白し、ホンモノ捜しの奇妙な日々が始まったー。けれどいったい、僕は誰を愛してきたのだろう?奇想の町の名手が切り拓く、愛おしき新境地。非日常に巻き込まれた夫婦の、可笑しくてホロリと切ない四つの物語。
フリーのビデオジャーナリスト・御堂万里菜は、チェチェンでの戦場取材から帰国後、若年性認知症と診断される。ショックを受けながらも逆境を逆手にとり、自らのドキュメンタリー番組を企画するが、病状の進行は緩やかで、取材は停滞していた。そんな折、タジキスタンで原因不明の感染症が発生する。それは、感染から約1ヶ月で死に至り、特効薬もないという恐ろしい病だった。所属会社の後輩と共に、万里菜はタジキスタン取材に赴くことになるがー。圧倒的リアリティとダイナミズムで描く、読み応え満点の社会派サスペンス!
旧制一高在学時、20歳の川端が出会った運命の少女・伊藤初代。不遇の幼少期を過ごした13歳のカフェ女給に、自分と同じ孤独を見た川端はたちまち心奪われた…。恋の歓喜と思わぬ結末を描く「篝火」「非常」から、著者の女性観を色濃く映す「孤児の感情」「再会」まで、初恋をテーマとした“ちよもの”を集成。「伊豆の踊子」の原点となり、文豪を生涯魅了した永遠の少女像がいま甦る。新発見書簡も初収録!
18歳で私を身ごもった母。「お前は醜い」と私に言い続けた母。育児を放棄し不倫に走る母…。そんな母に認められたくて子役の仕事を始めた私は、やがて女優「遠野なぎこ」になった。思春期を迎え、増える体重に悩む私に悪魔がささやく。「吐けばいいのよ」。悪魔は母の顔をしていたー。摂食障害に苦しみ、愛情を求めてさまよった壮絶な体験を綴る。圧倒的共感を呼んだ自伝的小説。
鬼無里が、消える…。民俗学者・蓮丈那智と助手の内藤三國は差出人不明のメールを受け取り、かつて訪れたH村に思いを馳せる。5年前、鬼の面をつけ、家々を練り歩く神事の最中、殺人事件が起きたのだった。誘われるようにふたたび向かった村では、ある女性が待っていたー。著者急逝から6年、残された2編と遺志を継いで書かれた4編を収録。歴史民俗ミステリ、堂々たる終幕!
決して陥ちぬ天下城、それは築城家の見果てぬ夢。戸波次郎左は信長の夢を叶えるため、欧州に向かった。安土城を造った鬼才の血を引く男はイタリアで名を上げる。やがて大国イスパーニャの圧政に抗うネーデルラント人たちに請われ、彼らを守る鉄壁を手がけることに。愛しい妻子。異国で得た信頼。だが故郷日の本はあまりに遠くー。佐々木譲が全ての力を注ぎ込んだ、大河冒険小説。
道士・司馬承禎と暮らす那那と這這の大活躍。変幻自在な旅のお供・第狸奴の生態。劉欣の苦悩と、秘められた優しさ。シリーズ第七弾は、僕僕ワールドのキャラクター総登場の豪華短編集!そして、最後に明かされるのは、美少女仙人・僕僕の秘密。ふと気づけば、先生によく似た女性と結婚していたが、彼女は老衰で死にかけていて…。謎が謎を呼ぶ、魅惑のファンタジー六編。
ときは十八世紀後期のお侍さんの国。齢十六のお星が薮の中で光る円盤を発見した。この円盤、なんとひとりでに穴が開き、中には見たことのないものばかりが並ぶ。お星と幼馴染の舟彦、ふたりのティーンエイジャーは、現代から時空を超えてきたとも知らず、さまざまなアイテムに興味津々。これで難事件を解決できるかも?技術の進歩=犯罪捜査の進歩、笑いあり涙ありの科学的捕物帳。
市役所建設課に勤める新米女子職員の千秋はある日、給湯室で不思議なものを目にした。歌をうたいながら踊る着物姿のおじさんー驚くべきことに、その身の丈は15センチほどしかない。孤独な人にだけ見える、小さい(だけどへそまがりで態度はやたら大きい)おじさんの力を借りて、5年前の殺人事件の謎解きに挑む千秋だったが…。史上もっとも凸凹なコンビで贈るミステリ、誕生。
僕の名はアラム、九歳。世界は想像しうるあらゆるたぐいの壮麗さに満ちていたー。アルメニア移民の子として生まれたサローヤンが、故郷の町を舞台に描いた代表作を新訳。貧しくもあたたかな大家族に囲まれ、何もかもが冒険だったあの頃。いとこがどこかから連れてきた馬。町にやってきたサーカス…。素朴なユーモアで彩られた愛すべき世界。“村上柴田翻訳堂”シリーズ開始。
この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたいーむせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。南部の田舎町に暮らし、父や従弟、女料理人ベレニスとの日常に倦み、奇矯な行動に出るフランキー。狂おしいまでに多感で孤独な少女の心理を、繊細な文体で描き上げた女性作家の最高傑作を村上春樹が新訳。“村上柴田翻訳堂”シリーズ開始。