出版社 : 新潮社
アメリカ海軍艦船“フリーダム”は韓国沖を北進している不審な中型貨物船を発見した。間もなく北朝鮮海域に入ろうとするこの船を、無線で呼び出すも応答はない。停船命令も無視したため、特殊部隊が急襲し、船内から響くべき物を押収したー。一方、米国家情報長官府は、さらなる情報収集のため、極秘作戦を練っていた。その遂行に大統領は、意を決してゴー・サインを出すが…。
十代の終わりに、ストーカーと化した元恋人に刺された過去を持つカナ。29歳のいま、裕福な年上の夫と幼い息子、仕事での充足も手にし、満たされた日々を送っていた。そこに、アメリカから姉一家が帰国。未成年の甥から、烈しい思いを寄せられる。危うさを秘めた甥との破滅的な関係は、彼らと、彼らを取り巻く人々をどこに運ぶのか。-空虚への抗いと、その果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。
安住の地を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとロベルトは、平和で豊かな国「ナパージュ」にたどり着く。そこでは心優しいツチガエルたちが、奇妙な戒律を守り穏やかに暮らしていた。ある事件が起こるまではー。平和とは何か。愚かなのは誰か。大衆社会の本質を衝いた、寓話的「警世の書」。
一流私大の法学部に在籍する田嶋春は、曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気も、まったく読まず、もちろん、学内に友達はひとりもいない。嫌われているともいえるし、避けられているともいえるしー。だけど、彼女はすごいんです。まったくめげない!ゴーイングマイウェイ!恋にサークル、観覧車ー大学生活の断片で芽生えた謎の答えは、どれも清冽で切なくてー田嶋春が贈る青春ミステリは、癖になること間違いなし!
舞台は1991年夏、猛暑のニューヨーク。亡命ロシア人で画家のアーリクの重病の床に集まる五人の女たちと友人たち。妻として、元恋人として、愛人として、友だちとして、彼らはアーリクとともに歩んだ、喜びと悲しみに満ち、決して平坦ではなかった人生の道のりを追想する。ウォッカを飲み、テレビで報道される祖国のクーデターの様子を観ながら。そして、皆に渡されたアーリクの最期の贈り物が、生きることに疲れた皆の虚無感を埋めていく…。不思議な祝祭感と幸福感に包まれる中篇小説。
平凡だけど心優しい、キラキラネームの上原ライト。首席の女警でいつも能面、歩くパソコンこと内田アキラ。警察学校で大きな差のついた新任巡査ふたりは、ターミナル駅の東と西で、人生初の交番勤務を始めるー朝から次の朝まで、24時間の泊まり勤務。ライトは生き残ることができるのか。アキラはやっぱり優秀なのか。ふたりを襲う、あまりにも過酷な試練と陰謀とは?
いよいよお台場に建設されるカジノ場の企画運営を任されたチームは、政府の楽観的な計画を信用せず、世界のどこにもない「おもてなし」カジノを実現すべく奔走する。キーワードは「飲む・打つ・買う」。ニッポンが世界に誇る美食と、エキゾチシズム満点の賭場、そして極上の風俗サービスである。前例主義と省益を振りかざす官僚どもを打ち負かし、夢のカジノは果たして誕生するのか?
金で買われた愛人関係から晴れて恋人同士になった誠二と椿。ラブラブなふたりの前に誠二の元カノが登場!優柔不断な誠二の態度を見た椿は人生初のアルバイト&自立を目指すがそれがまた誠二の心を刺激して…。不器用すぎる男と素直になれない女の濃密ラブストーリー。
阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。イザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説く教祖のもと、アメリカ西海岸から謎の天才ハッカー集団が訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か?世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きた。世界の終末の、さらに先に待つ世界を問う、大注目の新鋭の集大成!芥川賞候補作。
失踪した父を探して難関音楽学院を受験する脩。そこで遭遇する連鎖殺人。謎の楽器“パンドラ”。“音楽”は人をどう変えるのか。才能に、理想に、家族に、愛にー傷ついた者たちが荒野の果てで掴むものは…?
ミュージシャンを目指す拓人と、脚本家を夢見るユナ。NYで出会い、国籍の壁を越えて世界を共有する二人。だが拓人の夢が叶いかけた時、運命の日が訪れたー。偏見、憎悪が渦巻く世界で人を愛し生き抜く意味とは。9.11の悲劇を体験した作家が混迷の世に問う長篇!
フランス留学時代、古物市で手に入れた、1938年の消印のある古い絵はがき。廃屋と朽ちた四輪馬車の写真の裏には、謎めいた十行の詩が書かれていた。やがて、この会計検査官にして「詩人」の絵はがきが、一枚、また一枚と、「私」の手元に舞い込んでくる…。戦乱の20世紀前半を生きた「詩人」と現在を生きる「私」。二人を結ぶ遠い町の人々。読むことの創造性を証す待望の長篇。
内戦終結後、出所した劇作家を迎えて十数年ぶりに再結成された小劇団は、山あいの町をまわる公演旅行に出発する。しかし、役者たちの胸にくすぶる失われた家族、叶わぬ夢、愛しい人をめぐる痛みの記憶は、小さな嘘をきっかけに波紋が広がるように彼らの人生を狂わせ、次第に追いつめていくー。鮮やかな語りと、息をのむ意外な展開。ペルー系の俊英がさらなる飛躍を見せる、渾身の長篇小説。
貧しさゆえ熊本の廓に売られた海女の娘イチ。廓の学校“女紅場”で読み書きを学び、娼妓として鍛錬を積むうち、女たちの悲哀を目の当たりにする。妊娠する者、逃亡する者、刃傷沙汰で命を落とす者や親のさらなる借金のため転売される者もいた。しかし、明治の改革の風を受け、ついに彼女たちはストライキを決意するー過酷な運命を逞しく生きぬく遊女を描いた、読売文学賞受賞作。
日本最大のメガバンクであるTEFG銀行。ディーラーとして名を馳せた桂光義は専務の地位にいた。ある日、盤石なはずの銀行は国債暴落を機に巨大負債を抱え、一夜にして機能不全に。暴落した株に群がるハイエナの如き外資ファンドや混乱に乗じて巨利を貪ろうと暗躍する政財官の大物たちー。桂は総務部の二瓶正平と共に生き残りを懸けた死闘に挑む。
30年で200組。福は在日の縁談を仕切る日本一の“お見合いおばさん”だ。斡旋料で稼ぐのに、なぜか生活は質素。日々必死に縁を繋ぐ理由とは(「金江のおばさん」)。在日韓国人の彼に恋をした。結婚への障害は妊娠で突破したはずが、大量のごま油と厳しい義母が待っていて…(「日本人」)。婚活から介護まで、切なく可笑しく温かく家族を描く連作集。
実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)昏い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
初対面で彼女は、ぼくの頬をなめた。29歳の営業マン・伊藤俊也は、ネットで知り合った「ナギ」と会う。5歳年上のナギは、奔放で謎めいた女性だった。雑居ビルの非常階段で、秘密のクラブで、デパートのトイレで、過激な行為を共にするが、決して俊也と寝ようとはしない。だがある日、ナギと別れろと差出人不明の手紙が届き…。石田衣良史上もっとも危険でもっとも淫らな純愛小説。