出版社 : 新潮社
あなたは絶対にこの「結末」を予測できない! 新時代到来を告げる、驚愕の暗黒ミステリ。かつて祖母が暮らしていた村を訪ねた「私」。祖母は、同居していた曾祖父を惨殺して村から追放されたのだ。彼女は何故、余命わずかだったはずの曾祖父を、あえて手にかけたのか……日本推理作家協会賞短編部門ノミネートの表題作ほか、悲劇をひき起こさざるを得なかった女たちを端整な筆致と鮮やかなレトリックで描き出す全五篇。
人生の岐路を描いた7つの物語。父譲りの短篇の名手による、鮮やかな初作品集! 親友のランナーがゴール前で見せた、奇跡の追い上げ。和やかな送別会から突如勃発する乱闘騒ぎ。トラウマを乗り越えるため参加した水泳教室での、予期せぬ出来事。廃れゆく自動車産業の街で生きる、ひとりの労働者。人生は、驚くべき瞬間に満ちているーー。故アリステア・マクラウドの血を継ぐ新鋭、瞠目のデビュー短篇集。
両親を事故で失くしたみさきは19歳で美術教師の夫と結婚した。それから4年。あなたはあなたが連れてきたーー嵐の晩、彼女の前にふたりの「あなた」があらわれる。夫が、長い間音信不通だった双子の弟を探してきたのだ。混乱するみさきに、僕はもうすぐ死ぬんだ、と告げる夫。衰弱していく兄になりかわるように、その存在感を徐々に増していく弟。眩惑的な文体で綴る愛のサスペンス。
とんでもない医療格差が出現した近未来の日本。売れない作家の終田(ついた)千粒(せんりゅう)は「ランクC病院」で銀行のATMに似たロボットの診察しか受けられない。そんな彼に「ランクA病院」への潜入取材が舞い込む表題作。“日本一の健康優良児”を目指す国家プロジェクトに選ばれた男の悲喜劇「健康増進モデル事業」など、奇抜な着想で医療の未来を映し出す傑作短篇集。『ガンコロリン』改題
昭和十五年、ドイツは電撃戦により、フランスを征服。帝国陸軍はすかさず北部仏印に進駐した。敷島次郎は独立を志すインド女性の戦闘訓練を請け負い、四郎は満映作品の取材中に人工国家の綻びを目撃する。太郎は心ならずもある謀殺に加担し、三郎は憲兵としてマレー進攻作戦に同行することに。太平洋戦争開戦、南進の成功に沸きたつ日本人と次第に増幅してゆく狂気を描く、第七巻。
長崎伊王島沖合に二百年も前のガレオン船が現れ、覆面姿の兵士たちが怪しく舞うーー。江戸では一番番頭信一郎とおりんの祝言に合わせ新居普請が順調に進み、同時に五回目の古着大市の準備が佳境を迎えていた。そんな折、大黒屋前に不審な短艇が三艘留まり、哀しげな調べに乗って「死の舞い」が始まった。十代目総兵衛就任以来、最大級の謎と危機。巻を措く能わざる衝撃の第十二巻。
死んだのは、二人。その死は、何を残すのか。大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。
24時間を十九世紀英国式に暮らす、北海道東川町のお屋敷。ここでのメイド生活にも慣れた鈴佳は、今、真夏の悪夢に襲われていた。暑さのせいだけじゃない。サボり上手な後輩メイドに我侭なお嬢様、その上鈴佳の“罪”を知る昔のご主人様まで現れて…。川遊び、乗馬、純情な愛の逃避行。階上で過ごすご主人様の夢を叶えるため、お屋敷の歯車たちは、今日も階下を駆け回る!
ちょっとヘルシンキへ行くので留守を頼むー。そんな置き手紙を残し、御手洗潔は日本を去った。石岡和己を横浜・馬車道に残して。その後、彼は何を考え、どこで暮らし、どんな事件に遭遇していたのか。ロスでのインタビュー。スウェーデンで出会った謎。明かされる出生の秘密と、父の物語。活躍の場を世界へと広げた御手洗の足跡を辿り、追憶の中の名探偵に触れる、番外作品集。
十歳にして両親を亡くし、親戚に引きとられたメアリ。顔色も悪く愛想のない彼女を唯一楽しませたのは、隠されるように存在する庭園だった。世話役のマーサの弟で、大自然のなかで育ったディコンに導かれ、庭園と同様にその存在が隠されていたいとこのコリンとともに、メアリは庭の手入れを始めるのだがーー。三人の子どもに訪れた、美しい奇蹟を描く児童文学の永遠の名作を新訳。
分別ある侍たちが、なぜ武家の一線を越えたのか。直木賞受賞後、待望の第一作! 若き徒目付の片岡直人に振られたのは、腑に落ちぬ事件にひそむ「真の動機」を探り当てることだった。精勤していた老年の侍がなぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった積年の思いとは。語るに語れぬ胸奥の鬱屈を直人が見抜くとき、男たちの「人生始末」が鮮明に照らし出される。本格武家小説の名品六篇。
なにが善で、なにが悪か。決めるのは、誰だ?崩壊した世界。恐怖や暴力が蔓延し、他人を信じることも難しい。罪だけ増え続けていた。そんな時代に、黒騎士は降り立つ。罪の浄化。悩める者の救済。数々の奇跡、圧倒的な力。神と呼ばれた男。命を狙う影。すべてが壊れた場所で、価値観をめぐる闘争が始まる。
その男は、女たちの心も身体もハダカにするー病のため6歳の頃の体型のまま大人になった俳優の朔也。彼は「誰にも見せない」という約束で、女性のヌードを撮影している。20代のフリーター、40代の介護士、そして30代の対照的な主婦二人…年齢も容姿もバラバラの女たちは、なぜ彼にすべてを見せたのか?心を閉ざした女たちが再び人生を取り戻す姿を鮮やかに描く、日常と格闘するすべての人たちへの応援歌。
いちばんの親友って、誰? あなたは訊く。餌を見るみたいな目でーーねえ。友情って、そんな関係だったっけ? 家出したふたりの少女が出会ったのは、?が充満、盗みが横行する最底辺のシェアハウスだった。社会から弾き飛ばされた者たちで作られる疑似家族。居心地、けっこういいかも。だが些細な行き違いから、歩む道は分岐してしまう。喰われる側に墜ちた少女は、やがてーー。少女たちの友情と愚行そして後悔、つまり、青春の全記録。
「男と張り合おうとするな」醜女と呼ばれながら、物書きを志した祖母の言葉の意味は何だったのだろう。心に芽生えた書きたいという衝動を和歌が追い始めたとき、仙太郎の妻になり夫を支える穏やかな未来図は、いびつに形を変えた。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。それでも切実に求めているのだ、大切な何かを。全てに抗いもがきながら、自分の道へ踏み出してゆく、新しい私の物語。
浅草は田原町で小さな古着屋を営む喜十は、北町奉行所隠密廻り同心の上遠野(かとの)のお勤めの手助けで、東奔西走の毎日。店先に捨てられていた赤ん坊の捨吉を養子にして一年、喜十の前に、捨吉のきょうだいが姿を現した。上遠野は四人の子どもも引き取ってしまえと無茶を言うが……。日々の暮らしの些細なことに、人生のほんとうが見えてくる。はらり涙の、心やすらぐ連作人情捕物帳六編。
高野が警察手帳を紛失したらしい。柴崎警部は頭を抱えた。彼女はその事実をあっさり認める。だが捜査を続けるうち、不祥事は全く別の貌を見せはじめた。少年犯罪、ストーカー、老夫婦宅への強盗事件。盗犯第二係・高野朋美巡査は柴崎の庇護のもと、坂元真紀署長らとぶつかりながら刑事として覚醒してゆく。迫真のリアリティ。心の奥底に潜むミステリ。警察小説の最高峰がここに。
ある者は朝食を用意している最中に、或いは風呂を沸かしたまま、忽然と姿を消した。四国山間部の集落で発生した老人の連続失踪事件。重要参考人となった父に真相を質すべく現地に赴いた医師は、村人が隠蔽する陰惨な事件に辿り着く。奇妙な風習に囚われた村で起る凶事。理不尽な差別が横行した60年前の狂気が、恨みを増幅して暴れ出すー。ハンセン病差別の闇を抉る慟哭の長編小説。