出版社 : 新潮社
雨宮黎の前に、死んだはずの父親が現れた。家族を守るため罪を背負い、刑に服していたという父の存在に戸惑いを隠せない。そんななか、探偵社には女子高生の捜索依頼が舞い込む。ある資産家の愛娘で、アイドル志望の少女が消息を絶ったのだ。そして身代金を輸送中、黎までも拉致されてしまう。事件に浮上する、闇社会を牛耳る男とはー黎の奪還に命を賭す大神チーム、絶体絶命か!
七草は引き算の魔女を知っていますかー。夏休みの終わり、真辺由宇と運命的な再会を果たした僕は、彼女からのメールをきっかけに、魔女の噂を追い始める。高校生と、魔女?ありえない組み合わせは、しかし確かな実感を伴って、僕と真辺の関係を侵食していく。一方、その渦中に現れた謎の少女・安達。現実世界における事件の真相が、いま明かされる。心を穿つ青春ミステリ、第3弾。
重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンの街を歩き始め、不思議な文具店で魅入られたようにブルーのノートを買う。そこに書き始めた小説は…。美しく謎めいた妻グレース、中国人の文具店主M・R・チャン、ガーゴイルの石像や物語内の物語『神託の夜』。ニューヨークの闇の中で輝き、弦楽四重奏のように響き合う重層的な愛の物語。魅力溢れる長編小説。
日本に必要なのは、子どもの可能性を伸ばす小学校だ。就活中の学生たちが、夢に向かって立ち上がった。設立資金は四億円。奔走する彼らを襲う挫折、裏切り、黒い策謀…目指す「志ある授業」は実現するのか。不可能に挑む青春群像を描き心震わす力作!
ちょっと変わった先生。母の謎とPTA。行事をめぐる一喜一憂。男子と女子の攻防。隣町への小さな旅。マスコミを賑わした誘拐事件。「五年生男子」の視点から克明に立ち上がる、ノスタルジーも無垢も消失した、驚くべき世界像。瞠目の“小学生小説”。
地方都市に暮らす宇田川静生は、他者への深入りを避け日々をやり過ごしてきた。だが、高校時代の後輩女子・蜂須賀との再会や、東京から移住した木工職人・鹿谷さんらとの交流を通し、かれは次第に考えを改めていく。そしてある日、決定的な事件が起きー。季節の移り変わりとともに揺れ動く内面。社会の本質に迫る。滋味豊かな長編小説。
自分に自信が持てず恋をしたことのない璃子は、女性を知り尽くした接客のプロ、ホテルマンの槇に、勇気を振り紋って恋愛の先生になってくれるように頼みこむ。基本のデート講習、婚活パーティでのテスト、そしてベッドの中で教えられたのは…。女の子ならだれもが夢見る、シンデレラ・ロマンス!
著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する究極の小説、ついに刊行! 河川敷で発見された片腕はバラバラ事件の発端と思われた。美貌の警部、不穏なベーカリー、老教授の奇矯な振舞い、錯綜する捜査……。だが、事件はあらゆる予見を越え、やがてGODが人類と世界の秘密を語り始めるーー。巨匠が小説的技倆と哲学的思索の全てを注ぎ込んだ超弩級小説。
五歳の葉月貴夫はその美貌ゆえ暴漢に襲われ、性器を切断された。性欲に支配される芸術に興味を持てなくなった彼は、若いころから美食を追い求めることになる。やがて自分が理想とするレストランを作るが、美女のスタッフが集まった店は「背徳の館」と化していく…。巨匠・筒井康隆が古今の日本語の贅を尽くして現代を描き未来を予言する、文明批評小説にして数奇極まる「聖人伝」。
幼い頃に家族を火事で失い天涯孤独の身となった木山慎一郎は友人も恋人もなく、自動車塗装工として黙々と働くだけの日々を送っていた。だが突然「他人の死の運命」を視る力を手に入れ、生活は一変する。はじめて女性と愛し合うことを知った慎一郎の「死の迫る人を救いたい」という思いは、無情にも彼を窮地へと追いやり…。生死を賭けた衝撃のラストに心震える、愛と運命の物語。
文学新人賞を受賞した加代子は、憧れの“小説家”になれる…はずだったが、同時受賞者は元・人気アイドル。すべての注目をかっさらわれて二年半、依頼もないのに「山の上ホテル」に自腹でカンヅメになった加代子を、大学時代の先輩・遠藤が訪ねてくる。大手出版社に勤める遠藤から、上の階で大御所作家・東十条宗典が執筆中と聞きー。文学史上最も不遇な新人作家の激闘開始!
激動の幕末。江戸で暮らす会津藩士の山浦鉄四郎は、質実剛健な会津士魂に馴染めず、天下国家を論じることもなく、ただ平穏な人生を望んでいた。そんなある日、家中の美しき薙刀の達人・中野竹子と出会う。互いを思いながらも、新撰組隊士となった鉄四郎は内乱の渦に呑まれていく。友が死に、自身が傷を負っても刀を振るうのは、竹子の元に生きて帰るためー。魂を震わす歴史長編。
「ソクラテスより頭の強い人間はいますか」聞き間違えた神託のせいで頭突き勝負が始まって(「ソクラテスの石頭」)。論理学の講義が苦痛で仕方がない未来の大王は…(「アリストテレスの論理が苦」)。若く美しい婚約者とモメた四十男のヘーゲルは思慮深すぎる手紙を書くが(「ヘーゲルの弁証法的な痴話喧嘩」)。哲学史に燦然と輝く巨星たちを笑いのめし、叡智の扉へと誘うユーモア小説。
巨大な波が押し流した町、空が落ちて壊れた土地ー災厄に見舞われた沿岸へ、舳先と艫が同じ形をした小さなフェリーは、中古自転車と希望を載せて進む。失恋したての青年、熊を連れた男、200人のボランティアと小動物たち。そして被災地では、心身を傷めた人々を数限りなく受け入れながら。東日本大震災の現実をつぶさに見つめた著者による被災地再生への祈りに満ちた魅惑の物語。
昭和48年、小学校3年生の裕樹は県境に建つ虹ヶ本団地に越してきた。一人ぼっちの夏休みを持て余していたが、同じ歳のケンジと仲良くなる「遠くの友だち」。あなたの奥さまは私の妻なんですー。お見合い9回の末やっと結婚にこぎつけた仁志が突然現れた男にそう告げられる「秋に来た男」。あのころ、巨大団地は未来と希望の象徴だった。切なさと懐かしさが止まらない、連作短編集。
文化二年の元日。年賀の挨拶で賑わう大黒屋の目下の話題は、信一郎とおりんの祝言の話と次の船団長の人選であった。そんな中、年賀客より武州・上州など関八州の田畑の荒廃と無宿者の増加という情報がもたらされ、重ねて「影」からは「八州探査」の指令が下った。天松、忠吉を供に上州高崎に入った総兵衛は、早速賭場に潜入する。盆茣蓙の奥には異彩を放つ異人の用心棒がいた…。
若だんな、そんなに頑張ってだいじょうぶ?両国を仕切る親分の提案で、大店の跡取り息子三人が盛り場での稼ぎを競うことに。体の弱い一太郎は、果たして仕事を見つけられるのか。妖と恋人たちが入り乱れるお見合い騒動、記憶喪失になった仁吉、生きがい(?)を求めて悩む幽霊…兄やたちの心配をよそに、若だんなは今日もみんなのために大忙し。成長まぶしいシリーズ第12弾。
奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末はー。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。