出版社 : 新潮社
大政奉還の江戸城で独り気を吐く男がいた。日本初の金属活字を作るなど貪欲な学究精神で、彗星のごとく歩兵奉行に上り詰めた大鳥圭介である。わずか四尺九寸(一四九センチ)の短躯にみなぎる武士の反骨と、フランス式軍学の圧倒的知識で、実戦未経験ながら陣頭指揮を執り、幕末最後の激戦を戦い抜いていく。怒り、笑い、涙する快男子を描く熱血歴史長編。
内縁関係を貫いた曾祖母(78)、族のヘッドの子どもを高校生で産んだシングルマザーの祖母(58)、普通の家庭を夢見たのに別居中の母(42)、そして自分のキャラを探して迷走中の娘の若菜(17)。強烈な祖母らに煽られつつも、友の恋をアシスト、祖父母の仲も取り持ち大活躍の若菜と、それを見守る家族、それぞれに、幸せはやって来るのか。楽しき家族のてんやわんやの物語。
長生きするだけが、能じゃない!最初はただのクイズ大会だった。ホームで暮らす老人たちの退屈しのぎが、次第にエスカレート。性も闘争本能も解放して突っ走る彼らを、もはや誰も止められないー破茶滅茶な「老楽」小説!どうなる、日本。
多くの日本人が夢見た満州は理想の国家の欠片さえ失なって、重い重い鉄鎖でしかなくなったー「ポツダム宣言受諾」「ソ連侵攻」を描く最終巻。日本史上、最も激動した20年のすべて。著者入魂の7,500枚!四つの視点で描かれる満州クロニクル。
サーカスに魅せられ、綱渡り師を目指す少年の冒険と生長。心躍る物語。離ればなれになった両親とかつて一緒に見たサーカス。忘れられないその不思議な世界の一員になることを目指して入団した少年の前に現れる、自由で個性の強い人々。クラウン、ピエロ、ブランコ乗り、ジャグラー、そして美味しいお菓子やスープを作ってくれるコック。少年は少しずつ綱渡りを学んでゆく。新鮮な長編小説。
死を覚悟したのではなく、死を忘れた。そういう腹の決め方もあるのだ。果たしてこれは戦争だろうか。我々は誰と戦うでもなく、一人、また一人と倒れ、朽ちていく。これは戦争なのだ、呟きながら歩いた。これも戦争なのだ。しかしいくら呟いてみても、その言葉は私に沁みてこなかった──。34歳の新鋭が戦争を描き、全選考委員絶賛で決まった新潮新人賞受賞作にして芥川賞候補作となった話題作。
日本国債ついに暴落。運命の日は突如訪れたー。売国奴の陰謀が渦巻く中で、巨大銀行の存亡をかけた決戦の火蓋が切られる!敵は売国奴官僚+謎の外資ファンド。破綻寸前の巨大銀行に生き残る道はあるか?仕事とは何か?誰のために何と闘うのか?全サラリーマン必読の新世代経済小説!
ひとたび存在したものは、誰かの中で生きつづけるー。拍手もほとんどない中、「ソラシドです」と二人組が現れた。ギターを弾きながら歌う彼女と、ひたすら黙々とダブル・ベースを弾く彼女。二人とも男の子みたいな女の子だった。消えゆくものと、「冬の音楽」をめぐる長編小説ー。
風の吹きすさぶ赤い丘に暮らす一家の、四代にわたる物語。カンピエッロ賞受賞作。イタリア半島最南端、赤い花の咲き乱れる丘に根を下ろして暮らすアルクーリ家の人々。ときに横暴な地主に、ファシズム政権に、悪質な開発業者に脅かされながらも、彼らは美しい丘での生活を誇り高く守り続ける。そしてその丘には、古代遺跡のロマンと一族の秘密が埋もれていた。権威あるイタリア・カンピエッロ賞受賞作。
五十年前に突然姿を消した恋人を探してほしい。末期ガンの母・美月からそう懇願された。将来を誓いあった東北大生だったという。東京で恋に破れ、故郷函館でひっそり暮らしていた李恵は母の願いに応え、男の行方を捜し始める。史上最大級の海難事故・洞爺丸遭難が、人びとの運命に打ち込んだ楔とは。現代と過去、母娘の恋が交錯する。『海猫』『余命』を越えた、恋愛小説の最高峰。
高級外車窃盗団を追う築地署の刑事游二の眼前に、その女は立ちはだかった。美しい肢体を晒しながら、銀座ティファニーのショウウインドーに銃弾をぶちかましたのだ。少女のような微笑をたたえながら。そしてダイヤのピアスを盗むと、獣じみた哄笑を残して、消えた。同僚の死、ビル爆破、高級車炎上ーー。次々と凶事に巻き込まれる游二が辿り着いた女の正体とは。渾身の傑作長編。
華やかでモテる女子高生・愛が惹かれた相手は、哀しい眼をした地味男子。自分だけが彼の魅力に気づいているはずだったのに、手紙をやりとりする女の子がいたなんて。思い通りにならない恋にもがく愛は、予想外の行動に走るーー。身勝手にあたりをなぎ倒し、傷つけ、そして傷ついて。芥川賞受賞作『蹴りたい背中』以来、著者が久しぶりに高校生の青春と恋愛を瑞々しく描いた傑作小説。
男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田をとらえたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情だった。女たちの世界を観察することに無上の喜びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれる。熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。著者26歳の時に書かれた単行本未収録作品も併録。
実家はインチキ拝み屋。ご先祖様は江戸妖怪の総大将ぬらりひょん。14歳の市村鉄之助は剣の才能皆無なのに、愛犬モモと共に新選組に入隊。源義経の亡霊に取り憑かれて滅法強い剣士と化す。将軍家の重大な秘密を握るため、暗殺者に狙われる沖田総司を絶対に守ってみせる!ご先祖様のお仲間の、お歯黒べったり&お岩さん・お菊さんも大きに応援。新感覚書下ろし時代小説、堂々開幕。
剣道の達人キヨ、武闘派の柔道家シゲ、危ない頭脳派ノリ。あの三人が帰ってきた!書店での万引き、ゴミの不法投棄、連続する不審火…。ご町内の悪を正すため、ふたたび“三匹”が立ち上がる。清田家の嫁は金銭トラブルに巻き込まれ、シゲの息子はお祭り復活に奔走。ノリにはお見合い話が舞い込み、おまけに“偽三匹”まで登場して大騒動!ますます快調、大人気シリーズ第二弾。
小柄で、泣き虫で、人見知り。濃厚津軽弁話者の相馬いと。高校2年生になり、メイドカフェのバイトも変わらず奮闘中。親友早苗と始めた写真同好会に大きな男子後輩登場! 早苗との初ケンカ、男の子への微妙な感情。先輩智美の夢に向かう姿、シングルマザー幸子と娘のやりとり。大好きな人たちに囲まれていとも確実に成長中。智美主役の短編「ジャンピングニー」も収録の第2弾。
坂東蛍子は桐ケ谷茉莉花が嫌いだった。容姿端麗、運動神経抜群にして、自分と並び称される彼女のことが許せなかった。だが、なぜ嫌いで許せないのか、判らなかった。故に、彼女は果たし状を書く。その日、学園二大スターは、屋上にて決闘する。校舎がお化け屋敷と化し、テロリストに占拠されようと、その程度の“事件”は少女達の青春をとめられない。疾風怒涛の女子高生譚、第二弾。
ロンドンの高名な紳士、ジキル博士の家にある時からハイドという男が出入りしていた。彼は肌の青白い小男で不愉快な笑みをたたえ、人にかつてない嫌悪、さらには恐怖を抱かせるうえ、ついに殺人事件まで起こしてしまう。しかし、実はジキルが薬物によって邪悪なハイドへと姿を変えていたのだった……。人間の心に潜む善と悪の葛藤を描き、二重人格の代名詞としても名高い怪奇小説。