出版社 : 早川書房
すべては大蔵大臣の失言が発端だった。国会の予算委員会において、蔵相の瑞田が、かねてより経営難が噂されていた日本不動産金融銀行の状態が「極めて危険なレベルに達しつつある」と発言したのだ。議場は騒然とし、記者たちはニュースを社へ報ずべく出口へ殺到する-まさしく、「昭和金融恐慌」の再現だった。日本不動産金融銀行は倒産へと追い込まれ、未曾有の金融パニックが日本全土に波及する。大蔵省は対応策を策定すべく、緊急チームを編成、事態収拾に向けて動きはじめる。その一方で、驚くべき事実が判明する。瑞田が読み上げた答弁書の中身は、何者かの手によって差し替えられていたのだ。となれば、蔵相の問題発言は「失言」などではなく、周到に仕組まれた陰謀だったことになる。いったい誰が、何の目的で-?現実の日本を襲う「危機」を現在進行形でシミュレートする、驚愕の金融経済サスペンス巨篇。
大蔵省銀行局の紀村隆之は、大蔵大臣の失言があった翌日、突然官房長に呼び出され、主計局への異動を言い渡される。異動を隠れ蓑に、「蔵相失言事件」を仕組んだ犯人を調査しろというのだ。しかし、紀村に許された時間はあまりにも少なかった。一両日中には、失言に端を発した金融パニックへの対応案が政府から発表になる。その前に犯人をつきとめ、犯行の目的を明らかにしなければならない。残された証拠から犯人を特定することは無理だと判断した紀村は、反対に動機面から事件を探っていく。だが、これほどの金融パニックを引き起こして、いったい誰が得をするというのか?やがて事件の裏に、謎の人物による経済クーデター計画が浮かび上がるが-膨大な情報と最新の政治・経済理論を駆使して描く、空前の金融経済ミステリ。
みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが、全身をめった打ちにされて殺された。やがて、若いころ愛人同士だったという北海道選出の代議士に、スキャンダルを恐れて消されたのではないかという噂が流れはじめる。マサコちゃんの友人だった「俺」は、周囲が脅えて口を閉ざすなか果敢に調査に乗りだすが、身辺に次々と奇怪な出来事が…!ススキノの便利屋探偵がかつてない強敵に挑む、待望の最新作。
オックスフォード大学の学寮長の引退を目前に控え、後継者争いが激化するなか、大学にほど近い閑静な住宅街で住人の女性が射殺される事件が起きた。さっそくモース主任警部は捜査を開始するが、被害者が人から恨みを買っていたとはとうてい思えない。糖尿病に悩まされながらも地道な聞き込みを続けるモース。うさんくさい新聞記者、耳の不自由な老婦人、詮索好きな主婦…一癖も二癖もある隣人たちの錯綜する証言から、モースは殺人事件と学寮長選挙との意外な接点を発見する!シリーズ終了との噂に、英米ミステリ界が騒然となった超話題作。
「異星人対策局」の三等事務官補トム・ペアレントは、ある日局長から特別命令を受けた。惑星オプリンキアからのお客様を妻のルーシーと共に接待しろというのだ。この接待いかんでは、いまだ銀河評議会に加盟できない後進惑星の地球にも、道が開けるかも…。気のいいオプリンキア人、狂暴なジャクタル帝国大使、銀河暗殺者ギルドの暗殺師など、さまざまな異星人が持ちこむ難題を見事に解決してゆくトムとルーシーの活躍。
写真家志望のメアリーは恋人に依頼され、ある男にロサンゼルス空港で鞄を渡した。代わりに彼女は重いスーツケースを受け取るが、その直後、渡した鞄が爆発、男は死亡した。爆破犯としてFBIと警察に追われ、スーツケースを奪おうとする二人組の男にも狙われる身となった彼女は、変装してポップアート画家のもとで暮らし始める。が、そこにも追跡者が!現代アート界を背景に描く痛快でスタイリッシュなパルプ・ノワール。
天才的な泥棒ドートマンダーが宝石店から盗んだ品物の中には、大きなルビーの指輪があった。それはアメリカがトルコに返却する秘宝で、宝石店の店主が奪ったものだった。不運にもドートマンダーはFBIと警察から追われる身に。しかも、仕事がしづらくなった彼の仲間たちが、捜査を終わらせるため犯人を探し始めた!『天から降ってきた泥棒』に続く爆笑作。
わたしは普通の私立探偵だ。ときおり、事件に関わる人物が放つオーラが見えたり予知夢を見たりすることを除けば。今回の依頼人は刑事だった。昔の友人が転落死を遂げ、警察は事故として処理したが状況に不審な点が多いので調べてくれという。わたしは殺人事件だと直感して真相を探り始めた。やがて被害者の天空図を調べるとそこには怪しい影が…超心理学と占星術の知識を駆使して調査にあたる女性探偵エリザベス初登場。
すべての発端は、四枚の花弁を持つ薔薇を中央と四隅とに一輪ずつ並べた“五輪の薔薇”の意匠だった。少年ジョンは、母メアリーとの散歩の途中で目にした豪華な四輪馬車を飾る紋章に、なぜか自宅の銀器類と同じその薔薇の意匠がほどこされていることを知る。ほとんど屋敷から出ずに母と二人で暮らすジョンにとっては、そもそも、半幽閉的な自分の生活そのものが謎だった。そして、自分に父親がいないことも。ジョンの問いかけにたいし、かたくなに返答を避けてきたメアリーだったが、ある日、自分たちには邪悪な敵がいて、ジョンの身の安全のために、今こそ重大な選択を迫られているのだと告白する-。出生の秘密、莫大な遺産の行方、幾多の裏切り、そして未解決の殺人事件と、物語文学のあらゆる要素をそなえ、読者を心地好い迷宮へと誘う、波瀾万丈かつ複雑に入り組んだプロット。文豪チャールズ・ディケンズ、ウィルキー・コリンズの作品世界をも凌駕する超弩級の大作が、ついにそのヴェールを脱ぐ。
屍体窃盗団同士の抗争、私設学校での残忍な児童虐待など、さまざまな危難をきりぬけたジョンを待っていたのは、愛する母メアリーの死だった。しかも、貧困の底で死んでいった母の遺した手記から、自分の父と思われる人物が祖父を殺害したかもしれないことを知る。ますます深まっていく謎に懊悩しつつ、ジョンの心に渦巻いていたのは、自分たち母子を陥れた者たちにたいする怒りだった。誰一人信用できる者もないまま、五つの旧家にかかわる莫大な遺産相続と、五輪の薔薇をかたどった五点図形をめぐる謎の解明にむけ、さらなる冒険に身を投じたジョンを、以前にもまして苛酷な試練が待ちうけていた-。立体ジグソーパズルを思わせる、知的で重層的な謎解きに加えて、19世紀ロンドンのアンダーグラウンドの息吹を現代に甦らせる、驚くほどの臨場感。大河小説、ミステリ、教養小説のすべての魅力をはらんだ大作も、いよいよ、呪われた一族の暗鬱たる過去の秘密が明らかにされる、衝撃のクライマックスへ。
旧独裁者の死をうけ新タシュカルとなった、秘密警察長官ギンコラシュの恐怖政治がタラケで始まった。不穏分子静粛を進めるギンコラシュは、独裁権力確立の鍵を握る巨大ステーション“貯蔵庫”とタシュカル護衛にあたる“家臣”団の存在を知る。両者わがものにすべく、彼は自ら貯蔵庫に赴くが、そこにはローダンたちが閉じこめられていた。そして混乱の中明かされる貯蔵庫の驚くべき正体とは。
ソ連に吹き荒れたユダヤ人迫害の嵐のなか、一人の女性詩人が処刑された。彼女は二人の子供を残した。最初の夫である詩人との間に生まれたアレクサンドル。そして二度目の夫のKGB大佐を父とするジミトリー。だが、兄弟の運命は大きく分かれてしまった。アレクサンドルはアメリカの伯母のもとへ。ジミトリーは孤児院へ。東西に引き裂かれて闘うことになる宿命の兄弟を、息もつがせぬ展開と壮大なスケールで描く傑作巨篇。
アメリカで育ったアレクサンドルはアレックスと呼ばれ、ソ連の研究家になった。一方、ジミトリーはKGBに入り、次第に頭角を現わしていく。しかしパリでめぐりあった二人は、同じ女性を愛したためにお互い激しい増悪に身を焼くことになった。アレックスはCIAに加わり、丁々発止の諜報戦の中で弟との死闘を繰り広げる。そして波瀾万丈の物語は驚愕のクライマックスへ…。巨匠バー=ゾウハーの集大成というべき雄篇。
アル中更生施設で働く青年ジューヴェナルは、触れるだけであらゆる病を癒す“奇蹟”の力の持ち主だった。その力を当て込み、ひと儲けをたくらむ元宗教家が、若い女性リンを手先として更生施設に送り込んできた。ところが、リンは天真爛漫なジューヴェナルにこれまでの男性にない魅力を感じ、たちまち恋におちてしまう。策謀にからめ取られていく二人の恋の行方は?犯罪小説の巨匠レナードが新境地を拓いた傑作恋愛小説。
うかつな発言が死をまねくパソコン会議室。女刑事スキップの活躍を描く、MWA受賞シリーズ第四弾!二十七年前に殺人を目撃したことがある-電子会議室にそう書きこみした直後、パソコンマニアのジェフが不自然な転落死をとげた。捜査にあたったニューオーリンズ市警の女刑事スキップは、彼の父親が二十七年前に強盗に殺され、事件は迷宮入りになっていることを知る。ジェフは書きこみを見た何者かに殺されたのか?彼の不審な死と、過去の事件との関係は?殺人犯を追ってサイバースペースと現実世界を往き来し、懸命の捜査を続けるスキップのまえに第二、第三の殺人が起きる。