出版社 : 早川書房
地球を脅かす「脳髄共和国」の活動阻止の任を受け、単身月へ赴いた国際刑事の中山弓ノ助は、月面に残された手がかりを探るうちに、さまざまな味方を得る。月背面の探索に向かう彼らに同行した中山は、共和国の妨害をはねのけ、苦難の末、敵本拠地に潜入することに成功したのだが、そこで彼らが見た共和国の正体は驚くべきものだった。-月世界に繰り広げられる胸躍る冒険を、著者ならではの絶妙な語り口でえがくSF巨篇。
愛するベルの死の衝撃から立ち直れないアウトロー探偵バークの許へ、幼なじみのキャンディから突然連絡が入った。怪しげな秘密教団に囚われた彼女の娘を助け出してくれという。超一流の売春婦になったキャンディの変貌ぶりに驚きつつも、バークは教団に赴き、娘の救出は成功したかに思えた。が、彼の前に恐怖の殺し屋ウェズリイが立ちはだかった。ニューヨークの暗黒街で非情な獣たちが闘いの血を流す、シリーズ第四作。
第一銀河帝国の崩壊を予見した科学者セルダンは、自ら発展させた心理歴史学を実用的な学問として完成させるために、帝国の首都惑星トランターに留まる決意をした。だが、その行く手には数々の難問が待ち受けていた。セルダンの友人で、心理歴史学研究を蔭ながら保護する首相エトー・デマーゼルを失脚させようとする企み…凡庸だが平和主義者で、セルダンに好意的な皇帝クレオン一世の暗殺計画…いずれも、ひとつ間違えば帝国衰亡の速度を大幅に加速する事態になりかねず、セルダンは全力で問題に対処してゆく。だが皮肉にも、人民にとって不吉な予言を伝達するセルダン自身がトランター住民の怒りを買い、執拗な攻撃を受けることになってしまった。
女は城壁の中の「女の国」で政治をつかさどり、男は外の「戦士の国」で軍隊を組織するー“大変動”の後の荒廃した世界で、人々は男女に分かれた社会を作り、微妙なバランスを保って生きのびていた。「女の国」に暮らす少女スタヴィア。ひとりの少年戦士と恋に落ちた彼女が数奇なる恋路のはてに見出した、この国の驚くべき秘密とは。気鋭の女性作家テッパーが、未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く話題作。
過去二十年間に急速に発展を遂げた惑星パトリアは、いまや新たな宇宙連邦加盟国の最有力候補と目されている。ところが宇宙連邦と敵対するクリンゴン帝国もこの星に目をつけ、その傘下におさめようと魔手をのばしてきた。クリンゴンの機先を制して宇宙連邦に加盟させるべく、カーク艦長率いる航宙艦〈エンタープライズ〉は惑星パトリアへ向かうが、現地では政府と反体制テロリストたちが激しい内紛を繰り広げていた…。
ダレシア大陸各地の英雄譚に登場する英雄たちがこの世によみがえり、民を扇動して反乱を起こしたーそれがタムール帝国の騒乱の真相だった。時を同じくして、イオシア大陸でも同様の事件が起きていた。さらにダレシアでは、トロールや吸血鬼、狼男までが徘徊しているという。この一連の騒乱にはどうやら神がからんでいるらしい。スパーホークはその神の正体をつきとめるべく、タムールの帝都マセリオンをめざしたが…。
高級宝石店の会長ルイスが散歩中に何者かに刺し殺された。会長に300万ドルの保険金がかけられていたため派遣された調査員ドーラは、会長の家族にまつわる怪しげな人々と出会う。会長未亡人にとりいる新興宗教の神父。ルイスの息子クレイトン社長の愛人である美女ヘレン。しかもヘレンの兄も会長の娘の心を虜にしていた…ニューヨークの富豪一家をめぐる愛と欲と殺人がおりなすサスペンス。
ホテルのエレベータホールで、マリアンはわが目を疑った。壁一面に飛び散った血痕。まわりに巡らされた警察の立入禁止テープ-。しかしマリアンが驚いたのは、そこが殺人現場だったからではない。その状況が、昨夜パソコンの画面上で見た「殺人現場」と寸分たがわず同じだったからだ。壁の形から、血痕の大きさや位置までもが…。マリアンが加入しているパソコン通信ネットワーク「インサムニメイニア」では、仮想現実の街でありとあらゆる娯楽を享受できる。そのひとつが「殺人現場」だ。ここでは毎週、アニメーションで殺人が「上演」されている。しかし、それとまったく同じ殺人が、現実の世界で起こることなど、ありえるのだろうか。仮想現実世界の殺人者が、現実の世界に侵入してきたとでもいうのか。最新のハイテク情報を駆使して、コンピュータ・ネットワーク時代の恐怖を描きだす、驚愕のサイコ・サスペンス。
バーテンダーからサンフランシスコの地方検事補に復帰したディズマス・ハーディは、捕獲されてきた鮫の腹から食いちぎられた手首が出てきたのを目にする。ヒスイの指輪をはめた男の手だった。その後、海岸に手首のない男の死体が打ち上げられ、身元はシリコン・ヴァレーの実業家で大富豪のオーエン・ナッシュと判明。2発の銃弾を陰部の上と胸に浴びていた。ハーディは売春、盗難、麻薬所持などの些末事件の処理から、新聞の一面を飾った殺人事件を担当できると張り切る。が、被害者の愛人で元高級娼婦の日系女性メイ・シンが容疑者として逮捕され、事件がスキャンダラスな様相を帯びるとともに、主役の座を野心的な女性検事補プリョスに奪われる。しかも、情報リークの濡れ衣を着せられ、検事局を首になる。ところが、事件は意外な発展を見せ、検察側の敗北、そして思いがけない第二の容疑者の登場。ハーディは、殺人犯として逮捕された元義父-公平さを尊敬されてきた判事だが、メイ・シンと関係があった-の弁護を引き受け、自分を追いやった宿敵の女性検事補と正面から対決することになる。
マンハッタンに住む43歳のセラピスト、クレアには若い頃、女の子を産んですぐ養女にだした過去がある。そんな彼女のもとに患者として現れたのがジョディ。年頃や生いたちから考えてジョディが実の娘ではないかと思いはじめたクレアは、彼女のことが手放せなくなっていく…心理描写に定評のある新進気鋭の女性作家が軽快に描きあげた、クスクス笑えてちょっとこわーいサイコ・ドラマ。
刑事だった妹が自動車に爆発物を仕掛けられて殺された。誰が、何のために。上院の調査監視分科委員会で顧問を務める兄のベンジャミンは、真相を探るため帰郷した。分科委員会から受けた重要な使命を遂行しつつ、彼は事件の調査を始める。やがて謎に満ちた妹の私生活が明かされるが…鮮烈なサスペンスが貫くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
時は21世紀。大恐慌の余波でNASAは民間企業に売却され、米ソ共同火星飛行計画は実現間際で破棄されていた。だが、誰もが忘れていたこの計画に、ハリウッドが目をつけた。人類初の有人火星飛行を映画に撮ろうというのだ。かくして、元宇宙飛行士や映画スターを含む撮影隊が火星へ赴くことになるが…。航海の行く手に待ち受ける数々の冒険をドラマチックに描き、SF黄金時代を彷彿させる、心ときめく宇宙小説。
火星ではひとりが一個、銀色のボール状のパーソナル人工脳PABを持っている。PABは、子供が誕生したその日から経験データを蓄積し、巨大企業・秋沙能研所有の都市部を覆うアイサネットを通じて制御され、人工副脳となるのだ。そして、事実上火星を支配する秋沙能研の当主である秋沙享臣は「帝王」と呼ばれていた…。人間を凌駕する機械知性の存在を問う『あなたの魂に安らぎあれ』にはじまる火星三部作の第二作。
自殺をはかりニューヨークの病院に収容された美貌の青年は、ドンファンと名乗った。愛にかけては世界一の男。わずか2歳で女性の美しさに目覚め、16歳で人妻と燃えるような恋をして、21歳までに1500人もの女性と愛し合った男。この青年を担当する精神科医ジャックがドンファンから聞かされる荒唐無稽な恋と冒険の物語は、妄想なのか、それとも事実なのか。現代に生きる伝説の男、ドンファンを描きだす、話題の映画化作品。
エンジェルに親友オオカミ男からSOSの電話が入った。知らぬ間に麻薬の運び屋に仕立てられ、しかも自動車事故でブツを失ってしまい、ブルターニュ国民戦線なる連中に軟禁されているという。麻薬は彼らの資金源だったのだ。ブツを持って行かなければオオカミ男の命はない。ロンドン一のお気楽男エンジェルが友の窮地を救おうと、ヤンキー娘と怪僧を助っ人に大奮闘。英国推理作家協会賞ユーモア賞に輝くシリーズ第三弾。
必死に逃げるエリザベスに、獰猛な犬が牙をむいて襲いかかった。だめだ、開かない。家じゅうのドアに鍵がかけられている。彼女は自分が監禁されていることにようやく気がついた…。絵画修復師のエリザベスは、日の当たらない地下室で、古い絵に囲まれひっそりと暮らしていた。ある日、絵画収集家として知られる富豪のトマス・ミルトンから住み込みで絵画の修復を頼まれた彼女は、ロンドンにある彼の住まいを訪ねた。そこは外界から完全に遮断された静かなマンションで、日当たりのよいスタジオを与えられたエリザベスは仕事に没頭する。だが、美しいものに異常な執着を示すトマスは、やがて彼女を幽閉し、しだいに常軌を逸した行動をとるようになっていった。囚われの身になった女性の心理を、二度の英国推理作家協会賞に輝くフランセス・ファイフィールドが別名義で描く、出色のサイコ・サスペンス。
いったい何が起こったんだ。平凡な牧師アレックスは動顛した。南の島で火渡りに挑戦して意識を失いー目覚めると、世界が一変していたのだ。名前はアレックに、乗っていた機船は汽船に変わっている。客室係は初めて見る美女で、なんと彼の恋人だという。だがこれは、際限なく続く次元転換のほんの始まりにすぎなかった…聖書ヨブ記に材を取り、混線次元をさまよう男の冒険をコミカルに描く、ハインラインの話題作。