出版社 : 早川書房
弁護士のジェフは、気づいたときにはすべてを失っていた。くじを当てて大金持ちになった妻が、何もかも奪ってしまったのだ。専業主婦だった女の復讐なのか。家も財産もおいしい料理も、いまの彼には自由にならない。残されたのは愛車と愛人だけ。やがて彼は完璧な殺人計画を思いつくが…。
この奇妙な青春のストーリーは、わたしが貧しく希望のない町をオンボロ車に乗って逃げ出したことから始まった。オクラホマのチェロキー・ネーションを通過中、インディアンの女が近づいてきて、頼みもしないのに車の座席に小さな子供を置いていった。わたしの体にしがみつこうとするばかりで、声も出せず、体じゅうに生々しいあざがあった。しかもその子は、女の子だったのだ。突然ころがりこんだインディアンの子供を連れたまま、わたしはアリゾナのとある町にたどりつく。そこにはまた、乳呑児をかかえ夫に捨てられた女や、暗い過去をまとうグアテマラからの亡明者夫妻がいた。それぞれの痛みや悲しみにとまどい、途方に暮れながらも、わたしはその町で生活の糧を得て、傷だらけの子供の閉ざされた心に光をあてようと試みるが…やがて、子供の心にさらに傷を負わせる事件が起こった。へらず口を叩きつつひたむきに生きる若い女主人公と、いたいけなインディアンの女の子との心の交感を描く感動作。
学校では問題児だが映画が大好きな中学生、翔一と知り合い、意気投合した〈俺〉。ところが、翔一の親友が惨殺死体で発見され、一緒にいた彼も行方不明になってしまった。担任の教師、春子に頼まれて、〈俺〉は懸命の捜索を始める。変質者による誘拐か、暴力団がらみか、学校にも飛び火している障害者施設建設反対運動に巻きこまれたか。翔一、無事でいろ。札幌の街を便利屋探偵〈俺〉は必死で走る。
あたしの名前はフライデイ。職業は戦闘伝書使ー秘密文書を正確かつ迅速に運ぶのが任務。でも、この仕事は危険がいっぱい。先日も謎の武装集団に捕えられ、手ひどい拷問を受けたばかりだ。はやく休暇を取って、ニュージーランドに住む3人の夫のもとに帰りたい。だけど、彼らはどう思うだろう。あたしが遺伝子操作で作られた人工人間だと知ったら…ハインラインの著作中、最も魅力的なヒロインが活躍する傑作長篇。
はるかな昔、幻獣たちが暮らすクレタ島の森ー。心優しきミノタウロスの若者ユーノストスは、美しい木の精コーラに恋をした。だが、いつか人間の恋人と結ばれることを夢見ているコーラは、ユーノストスに色よい返事をしようとしない。そんなある日、瀕死の重傷を負ったクレタの王子アイアコスが森に迷いこんできた。彼がコーラと出会ったとき、悲劇は始まった…。幻想の詩人スワンが贈る『ミノタウロスの森』の前日譚。
ここは英国のカントリーハウスの一室。一堂に会すは、退役大佐、伯爵夫人、神父、英国の大富豪、等々。この中に冷酷な殺人犯が潜んでいるのだ…と思いきや、実はここは老人ホーム。殺人などは起こっていない。すべては探偵小説好きの老女の妄想なのだ…と思いきや。英国ミステリ界きっての俊英が贈る、才知とたくらみに満ちた本格ミステリ。
銀河のあちこちで謎のミュータント、リバルド・コレッロの暗躍がはじまっていた。強力な催眠暗示で人々をあやつり、生体フィクティヴ転送機ともいうべき能力をもつコレッロの正体をつきとめるため、ローダンは本格的調査に乗りだす。おりから、惑星アステラで人間があやつり人形のようになる事件が発生した。太陽系秘密情報局の特殊工作員ノーマン・ヨーダーは、自由商人の協力を得て単身アステラへの潜入を試みたが。
第一次大戦さなかの1917年、イギリスのスパイをしていた美貌のユダヤ系アメリカ人ルース・メンデルソンは、家族とともにトルコ軍に逮捕されてしまった。しかも、イギリスのエルサレム進攻作戦をスパイしろと命じられる。拒否すれば、父の命はない。ルースは、イギリス軍が駐屯するカイロに潜入するが…アラビアのロレンスなど実在の人物をたくみに織りこみ、非情な運命の渦にまきこまれたスパイの姿を描くサスペンス。
一週間千ドルで、コブラという男を捜してほしいーフラッドと名乗る小娘の依頼は、バークにはうまい話に思われた。だが彼女は、幼児虐待殺人鬼コブラに復讐を誓う女性武術家だった…前科27犯のアウトロー探偵バークが、聾唖の武術の達人、黒人の預言者、マッドサイエンティスト、魅惑的な男娼らをひきつれ、NYの暗黒街で最低のうじ虫を追いつめる。ポスト・ネオ・ハードボイルドの旗手ヴァクス、衝撃のデビュー作。
CIAを引退し、身辺警護コンサルタントをしているナーマンは、ホロコーストを生きのびたユダヤ人で、ナチ・ハンターとしてその名を轟かせていた。ある日、彼のもとにドイツ連邦情報局のフォアシャーゲが訪ねてきた。殺し屋がナーマンを狙っているから気をつけろというのだ。殺しを命じたのは、なんと現ドイツ首相ヴァルトナーだという。
ソロモンは飛んでいった。ソロモンはいってしまった。ソロモンは空を突っ切っていった。ソロモンは故郷に帰った。アメリカ中西部の町に生まれ育った黒人青年ミルクマンは、伝説の歌のごとく自由と幸福を手にすることができるのか。はたして旅の果てに何を見出すのか。生と死の幻想を鮮烈に描く、ノーベル賞作家トニ・モリスンの代表作。全米書評家協会賞&アメリカ芸術院賞授賞作品。