出版社 : 早川書房
医学生ショーン・マーフィーは、特殊な脳腫瘍の治療にめざましい成果をあげているマイアミのフォーブズ癌センターに研修に来た。だが、研究心に燃えるショーンに対して、センターはなぜか秘密主義を押し通す。業をにやしたショーンは、追ってきたナースの恋人ジャネットとともに治療成功の鍵を探りだそうとする。やがて二人の前に、奇跡の癌治療の陰に隠された、恐ろしい事実が浮かびあがってくる!興奮の医学スリラー。
F-4ファントム戦闘機を駆るバニスター少佐は、ミグ四機を撃墜した名パイロットだった。彼の望みは、あと一機撃墜して東南アジアで最初のエースになること。だが、大統領命令で、事実上ミグと空中戦を禁じられてしまう。かわりに彼に与えられた任務は、夜戦専門の精鋭対地攻撃部隊を編成することだった。ところが折悪しく、北ヴェトナム軍がテト攻撃を開始。休暇中だったバニスターは借り物のファントムで出撃する。
敵の攻勢は熾烈を極めた。特殊部隊のローカート中佐は、孤立した民間人を救出するため、戦闘のただなかに赴く。一方バニスターは敵の補給路を叩くため、夜間の対地攻撃作戦を開始。経験豊富なパーカー大尉の協力で、敵の強力な100ミリ高射砲を発見する。作戦を成功させるにはこれを破壊しなければならない。かくてバニスターらは、堅固な高射砲陣地に大胆な攻撃を敢行する。戦闘機乗りだけが描きえた迫真の航空小説。
時は紀元前70年。ローマ警備隊を率いる若き貴族デキウスは、元剣闘士が殺された事件を捜査中、新たな任務を命ぜられた。今度はギリシャ人輸入商が殺され、犯人を至急逮捕せよというのだ。だが、二つの事件につながりを見出した矢先、元老院から謎の圧力が…ローマ時代のホームズが推理を武器に巨大な陰謀に挑む、謎あり恋あり活劇ありの冒険歴史ミステリ。
語れよ、あまたの世界の物語を。19世紀の詩人バイロンの娘にして、天才的な数学の才能を持つエイダ。彼女が世界初のプログラマーとして開発協力した階差機械は、幾多の世界を改変していく…。晩年の杉田玄白の許を訪れた間宮林蔵が語ったエトロフで出会った怪人とは誰なのか。ライヘンバッハの滝の上からモリアティ教授に落とされたシャーロック・ホームズに、殺人の冤罪を晴らして欲しいと依頼したフランケンシュタインの怪物の真意は。ロンドンの夜の路上で、メアリ・シェリーがチャールズ・ディケンズにひそやかに頼み込んだ重大事とは。…虚実ないまぜの人物たちが綾なす並行世界の物語。
1960年、ニューヨークのブロンクス区。イタリア系の9歳の少年カロジェロにとって、街の顔役ソニーはあこがれの人だった。バスの運転手をしている一本気な父は、まともな道を歩ませようと心を砕くが、ある事件をきっかけにカロジェロはソニーと親しくなっていく。そして8年後。ソニーの子分となった彼は、黒人の娘に恋をした。だが彼の仲間と黒人たちの対立が激化し、やがて悲劇が。限りない優しさをこめて描く青春物語。
1992年4月28日、イラクのティクリートでスナイバー・ライフルが三度火を吹いた。壇上の人影は、血煙をあげて倒れ伏した…。1991年の秋、イギリス海兵隊特殊舟艇部隊を退役し、いまは軍出身者を中心に警備会社を経営するハワードは、顧客からある建設会社社長ダーティングトンから驚くべき依頼を受けた。イラク大統領サダム・フセインの暗殺である。ハワードは実行チームの編成にかかった。アラブの専門家である部下ボーン、射撃の天才のスコットランド人マクドナルド、特殊空艇部隊出身のアッシャー、ローデシア空軍のパイロットだったデナードなど、各分野の最高の人材が集まってきた。周到な準備工作が進められ、やがてチームはさまざまな経路でサウジアラビアに集結、イラク潜入を開始する。ところが、アメリカの国家偵察局がスパイ衛星によって偶然にチームの動きを知し、追尾を開始した。はたしてフセイン暗殺計画の成否は?圧倒的なリアリティと面白さで話題をまいた、イギリスの大型新人登場。
反核活動家エリザベスは破壊工作中に事故にまきこまれ、50年まえの世界にタイムスリップしてしまった。行きついた先は1943年のアメリカ。そこではマンハッタン・プロジェクトが着々と進められ、いままさに世界初の核兵器が開発されようとしていた。なんとか開発を阻止しようとするエリザベスの行為が思わぬ結果を招き、やがてナチスの手に核兵器が握られることに…期待の共作コンビによるサスペンスあふれる傑作SF。
アメリカ大統領を誘拐せよ。アメリカによる空爆に激怒したリビアの指導者カダフィ大佐は、報復のため大胆な命令を下した。その実行者として白羽の矢を立てたのは、ジー・ハーディ。元アメリカ海兵隊の名パイロットで、今は密輸機を飛ばす彼は、戦争体験と息子の死によってアメリカ政府に深い憎しみを抱いていた。だが、大統領誘拐は超難事。はたして頭脳明晰な彼が考え出した天才的な作戦とは。面白さ満点の航空冒険。
誘拐作戦の一端をになうシリア人パイロットがアメリカに入国したことで、FBIとモサドが動き出した。FBIのウェアターとシリア人の顔を知るモサドのメルニックは〈ダラス〉という言葉を手がかりにパイロットの足どりを追う。しかし大統領専用機を狙うハーディの目論見までは知るよしもなかった。亡命キューバ人や日本人狙撃者を動員したハーディの大規模な作戦は、大統領がカリフォルニアを訪れたとき、ついに動き出す。
ウィーンの英国大使館に勤務する情報部員ピムが、忽然と姿を消した。父リックの死を告げる電話を受けた直後の出来事だった。事態を憂慮した情報部は、ただちにチームを派遣、ピム宅でチェコ製の写真複写機を発見する。そのころピムは英国の田舎町にある隠れ家で、これまでの半生を憑かれたように書きしるしていた。彼のペンは一人のスパイの驚くべき人物像を描きだしていく…。自伝的色彩も濃厚な巨匠の集大成的傑作。
ピムは希代の詐欺師だった父のもとで、幼いころから二重生活を送り、しだいにスパイの適性を身につけていった。やがて情報部員となった彼は、大戦後のオーストリアでかつて心ならずも裏切った友に出会う。今は東側の謀報員となっていたその男の提供する情報によって、ピムは情報界の寵児となる。だが、それは彼をからめとろうとする巧妙な罠の一部だった。戦後英文学の最高作と評され、スパイ小説の枠を越えた畢生の大作。
十八世紀の昔、村人を殺して目をえぐり出し、魔術的儀式を行なったとして火あぶりになった女性エヴァンジェリンー新作の題材を探していた歴史作家のわたしは、彼女のたどった数奇な運命に興味を惹かれた。産婆として信望も厚かった彼女が、なぜこのような凶行におよんだのか。事件の背景を調べはじめたわたしの前で、やがて過去と現在とが交鎖する異常な連続殺人が…重層的なプロットを駆使して描く心理サスペンス。
有能な教師にして模範的市民のコンラッドの運命は、あの夜から大きく狂いはじめた。ほんの気晴らしにヒッチハイクの娘を拾ったのがいけなかった。別れた直後に娘が何者かに殺され、殺人の容疑をかけられてしまったのだ。しかも醜聞を恐れて警察についた小さな嘘から、コンラッドは予想もしなかった窮地へと追いつめられていくー緻密かつ巧妙なプロットで描く、英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞の傑作サスペンス。
エリツィンに代わりタカ派の大統領が就任したロシアは、ドニェストル地域の独立をめぐってモルドヴァとの対立が深まり、それに関連してウクライナとも緊張状態が続いていた。そして1995年初頭、領空侵犯したロシアの爆撃機隊をウクライナの戦闘機隊が撃墜する事態が発生した。ロシアは核ミサイルを発射し、ウクライナの軍事施設を破壊した。壊滅的な打撃を受けたウクライナは、臨時政府をトルコに移し、ロシアに対して宣戦布告をする。アメリカの対応は微妙だった。むやみに軍事介入し、ロシアとの核戦争を誘発してはならない。しかも大統領は、兵力削減を推進していた。かくて、数隻のフリゲートと、予備役の一個RF-111G偵察機部隊がトルコに派遣されるが湾岸戦争でいわくつきの極秘任務に携わった経歴をもつメイス中佐、アメリカ初の女性戦闘機パイロットのファーネス少佐らが、ウクライナ空軍の若き英雄トゥイチーナ大佐と共に、不利な状況下で戦闘を繰りひろげる。そして、ロシアの強硬な姿勢に、アメリカ大統領が最後に下した決断とは…。リアルな筆致で描く衝撃のシミュレーション小説。
チューリヒの名門ホテルのイギリス人ナイト・マネジャーであるジョナサン・パインは、雪の夜、忘れることのできない過去と遭遇した。貿易商リチャード・ローパー。その夜ホテルを訪れた彼こそ、ジョナサンが愛した女ソフィーを、自らの手で死に導いてしまう元凶となった男だった。おりしも、イギリスの情報部から独立した新しいエージェンシーを任されたレナード・バーは、ローパーを仕留めるべく網を張っていた。世界中に武器を売りさばいて巨利をむさぼる死の商人であるローパーを、同じイギリス人として許せなかったからだ。ジョナサンの存在を知ったバーは、ローパーの違法取り引きの証拠を握るために彼をリクルートしようとする。愛国心から、そしてソフィーへの贖罪の気持ちから、ジョナサンは危険な任務を引き受け、経歴を偽ってローパーに接近していく。軍需産業に骨ぬきにされた英米政府の思惑と妨害のなかで孤軍奮闘するバーの新エージェンシー、そしてただひとり死の商人の懐深く潜入していくジョナサン。冷戦後の真の敵を見据え、エンターテインメントの醍醐味を堪能させる最新作。