出版社 : 早川書房
東西ドイツ再統一の気運高まるボン。今そこの英国大使館から職員が1人、機密書類とともに姿を消した。彼の名はリオ・ハーティング。現地採用の臨時職員にすぎないが、消えた機密文書が公になれば英独の関係悪化は必至。事態を重く見た英国外務省は、公安部のターナーを派遣、極秘にリオの行方を追わせる。ターナーは失踪した男の経歴、背後関係を探るべく、大使館スタッフにインタビューを重ね、リオの実像に迫ってゆく。果たしてリオはソ連のスパイだったのか?巨匠が自らの体験をもとに外交社会の虚妄を描き新境地を拓いた傑作スパイ小説。
言葉巧みに真実を隠蔽しようとする官僚たちに、苛立つターナー。大使館の閉鎖的な人間関係を辿る彼は、リオが数カ月前から何事かに取りつかれていたことをつきとめる。一方、リオ失踪の噂に、西ドイツ公安局が動きはじめた。醜聞を恐れる大使館はターナーの帰国を決定。だが、真相究明への情熱断ちがたいターナーは、指示に背いて調査を続ける。やがて彼は、事件の背後にドイツ統一をめぐる権力者の卑劣な取引があることを知るが…。国益のためには手段を選ばない非情な国際政治の世界と、その中で正義を貫こうとする人間の苦闘を描く力作。
英米ではホラー・アンソロジーがブームだが、中でも〈ナイトヴィジョン〉シリーズは独自の編纂で知られる。つまり、3人の作家がそれぞれ250枚の中短篇を各巻に書き下ろすことで、一作家一短篇に限られた従来のアンソロジーにつきまとう物たりなさを解消したのである。本巻には、ベストセラー作家ディーン・R・クーンツ、SF界の実力派エドワード・ブライアント、クーンツをしのぐ人気作家ロバート・R・マキャモンの3人を収録する。
第二次世界大戦が終了した1945年。ニューヨーク近郊の町ポート・フィリップの貧しいジョーダーシュ家に生まれ育った姉弟の生活にも転機が訪れていた。中年実業家ボイランとの出会いから奔放な恋愛遍歴を重ねていくグレーチェン、ハイスクールの陸上競技選手で優等生の兄ルードルフ、不敬事件をひき起こし町を追われる弟トマス。自身の価値観にのみしたがい相容れない3人は、それぞれの新たな生活へと足を踏み入れていく…。現代アメリカ文学を代表する人気作家が戦後の混乱した社会を背景に壮大な人間愛のドラマを描いた大ベストセラー長篇。
大学を卒業後、大学院への進学を断念したルードルフは、地元のデパートで要職に就いた。幅広い経営の手腕を発揮する彼は、次第に有能な青年実業家としての名声を築いていく。そして、最愛の女性クロチルドにめぐり逢えたのも束の間、乱交事件を理由に叔父の家を追われ、行き場を失ったトマスは、ボクシングの世界に自分の住む場所を見出そうとしていた。心の底にまだ消えやらぬ互いの愛憎を秘めたまま、運命の糸に操られるよように、2人が思いもよらない再会をする日がやってくる。さまざまな出会いが織りなす人間模様を綴ったショーの代表作。
3人の姉弟は、母親の死によって長い間縛られていたジョーダーシュ家の血の怨念から解き放たれた。グレーチェンは最愛の夫と死に別れ、長く望んでいた学業へ戻ることになる。一方、ルードルフは市長として政治の世界に、トマスはヨットの船長として航海へ出ることになる。3人はそれぞれの求める道を見つけていくが、たがいを理解し合えたと思った矢先、思いもよらない大きな悲劇がかれらを待ちうけていた…。都会的で洗練された短篇の名手として知られるアーウィン・ショーが、家族とは、人間の本質とは何かという問題にとりくんだ傑作長篇。
犯罪は時と場所を選ばない。が、時と場所は犯罪を選ぶ。本書はその証明である。ペルーではインカ帝国の幻の財宝をめぐって醜悪な争いが演じられ、18世紀のスコットランドでは千里眼の存在を信じる迷信深い人々が洞窟に棲む魔物におびえ、未来の火星ではサム・スペードの衣鉢をつぐ私立探偵が事件解決のためにシャーロック・ホームズのロボットを雇う…。ちょっぴりロマンチックで神秘的な、好奇心をくすぐる時と舞台をめぐる魅惑の旅。その土地ならでは、その時代ならではの16の事件を収録する。かつてない試みのユニークなアンソロジー。
スーザンがカウンセリング指導をしている少女エイプリルが姿を消した。もともと悪い噂が絶えず、売春組織に関わっていた可能性もある。母親に懇願されたスペンサーは、たった1ドルの報酬で娘を連れ戻すことを請け負い、ホークとともに背徳うずまく歓楽街に潜入した。ところが何者かが圧力をかけているらしく、関係者は固く口を閉ざし関わり合いになろうとしない。やがて、複雑な糸を手繰り寄せ、ようやくエイプリルの居所をつきとめたスペンサーの前に、狡猾な売春組織がたちはだかった。揺れ動く少女の性に鋭くメスを入れたシリーズ問題作。
インディアン保留地で、3件の殺人と警官殺害未遂事件が連続して起こった。何のつながりも見えない4つの事件を結ぶものはナヴァホ族の呪いなのか?呪術を嫌悪するリープホーン警部補と呪術師をめざすチー巡査ー対照的な生き方をする2人のインディアン警官の活躍を描き、全米の熱い注目を集めるベストセラー作家の人気シリーズ。アンソニー賞受賞作。
フォークランド紛争で重傷を負い、ビクトリア十字勲章を授与されたニック・サンドマンは、二度と自力では歩けないと宣告された。だが、彼には絶対にあきらめきれない夢があった。唯一の生きがいである愛艇〈シコラクス〉に乗り、広大な南の海へ船出するのだ。ところが、〈シコラクス〉を繋留しておいたデボンへ帰ってみると、岸壁には別の船が繋がれ、〈シコラクス〉は装備を略奪されて陸上に無残な姿をさらしていた。繋留位置を占領していたのは、テレビの人気ニュースキャスターで有名なヨットマン、トニー・バニスターだった。彼はまた、海の悲劇に遭った男としても知られていて、外洋レース中の事故で妻を失っていた。だが、バニスターの妻は父親である海運王ヤシア・カソーリは、この事故が殺人ではないかと疑っていた。海を愛し自由を愛するヨットマン、ニックが捲込まれた洋上の陰謀と、不自由な体での不屈の闘いを描く、疾風怒涛の海洋冒険サスペンス。
ワスプの弁護士ヴィンス・ハラーを介して、タフト大学当局がスペンサーに妙な依頼をしてきた。タフトは全米大学バスケットボール・リーグの有力校なのだが、最近、試合には勝っても故意に得点を減らしている、という噂が校内で流れている。その噂の出所をたどって真偽を確かめ、この一件に決着をつけてほしい、と。大学に出入りし、聞込み調査をつづけるうちにスペンサーは、最強のパワー・フォワードといわれる黒人選手ドウェインが巧妙に得点操作をしていることに気づく。輝かしい将来が約束されたスター選手なのに、なぜそんなことをするのか?もし発覚すれば、経歴に傷がつくだけではないか。背後に何かあるのか?大学内部の人間や選手たちが調査に非協力的であるにもかかわらず、スペンサーは何としても真相をつきとめたかった。八百長に巻込まれたスター選手のために一肌脱ごうと意気込む私立探偵スペンサー。完全復調なったシリーズ第16作。
アリソンは戦略家だった。四人目の夫を失くし、娘たちも独り立ちしたいま、親友のプラムとジュインと一緒に老後を楽しく暮らそうと計画を立てたのも彼女だった。だが、いざオレゴンの海岸沿いにある〈ねじれた家〉で共同生活を始めてみると、お互いあらが目立って気に障ることばかり。そして、そんな三人の老女たちの生活を陰から監視する若い男がいた…。男の名はトミー。ねじけた性格でみみっちい悪事を重ねてきた彼は、〈ねじれた家〉に住む老女の一人が、過去に殺人を犯しながら捕まらずにきたのを知っていた。そしていま、それをネタに脅迫しようと、チァンスをうかがっていたのである。相手は女でしかも年寄り。金は簡単に手に入るはずだった。ところが予想に反して相手が開き直ってきたことから、事態は思わぬ方向へ…。孤立した家を舞台に老人と若者の対決を息詰まる緊迫感で描いたMWA新人賞候補の心理サスペンスの秀作。
悠久の時のかなたに滅び去った強大な星間帝国がつくった究極の戦闘マシンーバーサーカー。生きとし生きけるものすべてを殺戮することのみをプログラムされたこの自動戦闘マシンは、創造者たる帝国の滅亡後もはてしなく自己複製と改良をつづけ、やがて人類星域に大挙して侵入してきた!かくして、多様な形態と恐るべき武器をそなえたバーサーカーと人類の壮絶な戦闘が、銀河系宇宙全域にわたってくりひろげられることになった。シリーズ第3巻。
閑静なリゾート地に見るもおぞましい疑似生物が出現し、住民をパニックに陥れた。ほぼ時を同じくして、惑星サラクシの超能力者シャーマンが地球から帰還後消息を絶ったという報告が入る。かれははるばる地球の超能力研究所を訪問しながら、わずか一時間ほどで逃げるように立ち去っていた。コムコンー2〈異常事件〉部の伝説の男マクシム・カンメラーの指令を受け、調査員トイヴォ・グルーモフは次々とわき起こる不可解な事件の捜査を開始した…。ソビエトSFの雄が『蟻塚の中のかぶと虫』に続き壮大なイマジネーションを展開する傑作長篇。
この風光明媚な湖には何かがある。夜ごと水面を這う七色の怪異な色彩、生長過剰な動植物たち。あまつさえ、この湖で泳くと生気が吸いとられていく。この異変に逸早く気づいたのが二人の老学者。彼らは湖の監視員はもとより、付近のキャンプ場の人々にも事の重大さを説いてまわるが、耳を貸す者は誰一人いない。そうこうするうちに、ついに湖の犠牲者が出始めた。老学者たちは事の真相を究明すべく、ラヴクラウトと交流のあった画家を訪れるが…。ラヴクラフトの名篇「異次元の色彩」を現代に甦らせたコズミック・ホラー・ファンタジィ。
人類初の恒星間宇宙船〈ディオゲネス〉は片道5万光年の旅に出た。だが、人類の壮挙ともいうべきこの旅の出発式は、驚くほど小規模なものだった。人々はすでに宇宙開拓への意欲を失っていた。フロンティア・スピリットにみちあふれ、選び抜かれた先鋭たち、とはいいがたいクルー6名が搭乗した〈ディオゲネス〉-しかし、それを見守っていたのは人類だけではなかった。異星生命体・見張り(ウォッチャー)もまた、人類監視のため、注視しつづけるのだった。異星体とのファースト・コンタクトを描く本格SF「見張り」ほか、7篇を収録。
アメリカは占領された!急激な軍備縮少と敵の策謀で、戦わずして敗北したのだ。ホワイトハウスの翻訳官ヒュウリットは、スラブ人司政官ザリンスキイの命令で占領軍への協力を強要される。やがて彼が見たものは、厳しい言論統制、ユダヤ系市民に対する弾圧などの過酷な占領政策。だが祖国奪還のため密かに活動を開始した者たちがいた。アメリカ最高の頭脳を結集した抵抗グループ〈ファースト・チーム〉。彼らの狙いは、恐るべき破壊力を持つ核ミサイル搭載原子力潜水艦を敵の手から奪取することだった。悪夢の事態を迫真の筆致で描く冒険大作。
綿密な計画の下、原潜奪取作戦は開始された。敵の裏をかき、潜水艦〈マグサイサイ〉は無事港を脱出。だが、敵も死にもの狂いで捜索を開始した。〈マグサイサイ〉が敵国を射程内に収めるには、難関ベーリング海峡を抜けなければならないのだ。一方、〈ファースト・チーム〉はヒュウリットを通じて敵に最後通牒をつきつける。アメリカから撤退しなければ、核ミサイルを敵国に発射するというのだ。だが敵はすでに潜水艦を発見、撃沈したと発表した。果たして〈マグサイサイ〉とアメリカの運命?占領者の圧制と戦う人々の勇気を描く感動の巨篇。