出版社 : 河出書房新社
人間の存在そのものに解き難い“謎”を抱かざるを得なかった太宰は、誰にも増して本質的にミステリアスな作家であると言えるだろう。だから、ある意味で太宰の作品はすべて、「生れて、すみません」の一語が投げかける深い謎をめぐるミステリ小説なのかもしれないー編者 人間の“原罪”に共感し続けた作家が、哀切なユーモアをこめ描き出す、罪と罰の15の風景。
『O嬢の物語』の作者、ポーリーヌ・レアージュが序文を寄せた幻のエロティスム小説。デュラス、ベケット、ロブ=グリエなど、ヌーヴォー・ロマンの錚々たる作家を世に出したパリの名高い『深夜叢書』の刊行。人間存在と愛の意識が構成するイマージュを、主人と奴隷の弁証法を駆使しながら描く、あまりに甘美な寓話的幻想世界。二十世紀版サドとも言える傑作。
大人から子供まで、多くの人々を熱狂させる未知の生物!!純文学の世界をはじめ、スラップスティック・コメディ、批評エッセイなど、あらゆる分野に登場するとびきりの『怪獣』たちを集大成した、空前絶後の大アンソロジー。寓話、メルヘン、SF、ホラー…破壊の恐怖をひき起こしながらも、どこか懐かしく、愛らしい異形の者たち。
狩人たちの森・満員の通勤電車の中でひそかに触れあう父と子。-「お前の唇が私の先端に被さりくびりまで包むと、そのまま下りる。だが、この漣のように拡がる快感は先端からか、それとも唇からのものなのか。それにまた、感じているのは私なのか、それともお前なのか」-同性愛、少年愛、父子愛、自己愛が、合せ鏡の無限の中で試される猥褻な聖画像。作者匿名。
中国・戦国時代、秦の常勝将軍・白起はなぜ大量虐殺者として歴史に悪名を残したのか…。乱世を一筋に駆けぬけた剛直な武将の悲運の生涯を、権謀術策渦まく赤裸々な人間模様のなかに鮮烈雄渾に織りあげた、大河歴史ロマンの精華。
バロウズの遺作長編。本書は、断片的に書かれてきたものを、とりまきたちが集めて編集したものである。これまで、ノスタルジックな形以外ではあまり触れられなかった家族との関係(特に老いてからの父母や兄との関係)、先立たれた息子に対する感情が、かなりストレートに出ているし、昔の恋人たちに関する記述も無防備なまでにはっきりしている。その意味で、本書はバロウズの諸作の中でもっとも内省的かつ自伝的要素の強いものとなっている。
ねむれる森の美女さながら永いねむりについてしまった美しく幼ない姫に魅入られるかのごとく数奇な運命をたどる腹違いのひとりの童子ー中世の京の都を舞台にくり広げられる男と女の不可思議な生涯を物語る「ねむり姫」ほか、実母の生んだ牝狐を愛し命を奪われてしまう男の物語「狐媚記」など、古今東西の典籍を下敷きに構築されたあやかしの物語六篇。
九百年昔、宋王朝の末期、風狂皇帝・徽宗の治世-。金権腐敗の悪政に背いて梁山泊に翔け参じた義賊、豪傑、悪漢、曲者、美女、謀反人たちが繰り広げる痛快壮絶な叛乱のドラマ。『三国志』とならぶ、中国歴史文学の傑作が、鬼才の筆で現代に蘇る。
天文十七年(一五四八)五月、十五歳の若き信長は自由都市・堺に足を踏み入れた。はじめて知る異国文化の衝撃、想像を絶する世界の広さ…革命児誕生の記念すべき日であった。堺で千宗易(利休)やザビエルの知遇を得た信長は、新時代を拓く歴史的使命を自覚し、群雄割拠する戦国乱世に立向かっていく。
天下を狙う今川義元を討ち取り歴史の桧舞台に躍り出た信長は、周囲の宿敵を次々と制し、ついには旧時代の象徴ともいうべき比叡山延暦寺を焼打ちし、足利幕府を打倒する。“魔王”と怖れられながら、新時代建設に邁進する革命児。しかしその足下にいつしか黒い影が…本能寺でこの偉大な才能を潰した黒幕は何者か?新解釈で挑む。
愛人を殺し、男根を切りとって持ち歩くというセンセーショナルな事件をひき起こした女・阿部定。半世紀以上を経た今も関心を集めつづけ、ベストセラー小説『失楽園』の下地ともなった事件を、お定はなぜひき起こすことになったのか。生い立ちから33歳で事件を起こすまでのお定の歩みを、彼女の立場に立ち、彼女に寄り添うようにして描いた告白体小説。
’81年パリで本当に起こった今世紀サイテーの事件を最強のコンビ(うち1名当事者)がよみがえらせた地獄のメルヘン。パリ人肉事件・当事者、佐川一政の小説と特殊漫画家・根本敬のヴィジュアルによる最暗黒の饗宴。