出版社 : 河出書房新社
太平洋戦争前夜の難局のなかで、衆望をにない首相となるが、日米開戦を避けられずに辞職し、戦後、マッカーサーによる戦犯容疑での収監を拒み、その前夜に自決した文人宰相の悲劇の生涯を、公私両面からあますところなく描く。毎日出版文化賞受賞。
孫娘の不慮の死に疑念をいだいたアモレル老婦人は、田舎の別荘で引退生活を楽しんでいるメグレに調査を依頼する。アモレル家を訪れたメグレは、そこで意外な人物に出会う。中学時代の同級生マリクが老婦人の娘婿として、この大富豪の一族を支配しているのだ。しがない税務署員の息子のマリクが…。彼は今の自分を誇示しながらも、一家の内情をメグレに知られることを極度に恐れている…。
登山家にして大学教授、天才的美術鑑定家ジョナサン・ヘムロックは、アイガー北壁での困難なサンクション(制裁)を最後にCIIを辞めて、ロンドンに滞在している。ところが、友人の依頼で、マリノ・マリーニ彫刻『ダラスの馬』の鑑定を引き受けたことから、再び〈サンクション〉任務に引きずりこまれる羽目になる。その任務とは、英国全体を巻きこむ荘大な陰謀を阻止することであった。
50篇にのぼるサドの中・短篇の中から選び抜かれた12篇ー短篇作家としてのサドの魅力をあますところなく伝える『恋の罪』から3篇、そしてフランス風コントの中にもサドならではの道徳観・恋愛観を窺わせる『小咄、昔噺、おどけ話』から9篇を収録。また最後に収録された「末期の対話」はヴァンセンヌ獄中で書かれた記念すべき処女作であり、「最初の無神論宣言」である。
映画館から出たとたん銃撃戦にまきこまれ、とっさに麻薬ギャングを射殺してしまった子持ちの中年私立探偵ブレイニーは一躍有名に。しかしこの事件をきっかけに彼の人生は大きく変っていく…。百万ドルの宝石の争奪を発端とするスピード感にあふれるスケールの大きなストーリー、連続殺人とその謎解き、凄惨なアクションシーン、そして哀切でショッキングな人間ドラマへと展開する結末!シリアスな読みごたえと娯楽性をかねそなえたハードボイルド小説の傑作。
金曜日の夜更け、フランス大統領特別顧問アタリは、重大事態発生を告げる大統領府事務総長ビアンコの電話で、急遽官邸に駆けつけた。ミッテランが暗殺された!その晩大統領は、自陣営の幹部たちと会談するため、彼らを官邸に招集していた。最初の会談が終って客が退出した直後、執務室で銃声がして、大統領が胸に銃弾を受けて倒れていたという。フランス政界の舞台裏を実在の人物たちをとおしてリアルに描くミステリー仕立ての政治情報小説。
世界放浪の果てに、日本に漂いもどった青年と、自らの青春を持て余した家出娘…。都会の雑踏のなかでの一瞬の出会い、同棲、出産。小さい生命がもたらした天と地の輝きのなかで、若い二人が抱きとめた、愛と性と死と大自然の讃歌。野間文芸新人賞を受賞した表題作の他に、九州南端の港町に住む少年の眼を通して著者の原風景を形象化した処女作「行者シン」を収めた、文芸賞作家の代表作。
行方不明になったイギリスの科学者ミッチェルの写真がスイスのグラビア雑誌に掲載された。だが写真のミッチェルは巧妙にメークをほどこして生きているように見せかけた死体であった。敵を欺く策略か?見破られるのを予期した挑発か?-太陽光線を瞬時にエネルギーに変換する発明をめぐって、イギリス情報部と第三国スパイとの虚々実々の駆け引きと暗闘。古典的スパイ小説の傑作。
昭和三年、『週刊朝日』の懸賞小説に入選、のちに物議をかもした『芦屋夫人』を始め、耽美派文学の真髄に迫る珠玉短篇集の復刻版。伏字部分は、すべて注釈つき。即日発禁処分となった幻の話題作、半世紀を経て、ここに完全収載。
18歳・文子・高校3年いわゆる受験生。「受験生の生活って、暗いもんじゃない」。大学受験を目指し、悩み、怒り、苛立ち、傷つきながらも、精いっぱいに生き抜く文子たち4人組の女の子の日々の姿。独特の名古屋弁スタイルに、ユーモアと苦味をミックスしてフレッシュに描く、あっぱれ痛快奮闘記ーさて、結果は?文芸賞受賞のベストセラー『1980アイコ十六歳』に続く、青春小説のパート2。
“ハードボイルド・ミステリーの始祖”としてますます評価が高まり、ハメット・ブーム到来の観さえある彼の長篇“デビュー作”-狂騒的な地獄絵図のような『ブラッド・マネー』と異色の短篇を6篇収録。いずれも初の文庫化。
アメリカの家族の絆の光と影をしなやかな感性で巧みにとらえた“優しく、おかしく、雄弁で、知的でもある驚くべき短編集”(ニューヨーク・タイムズ紙評)…。23歳で華麗にデビュー。80年代アメリカ文学の新しい流れを代表するレーヴィットのベストセラー。