小説むすび | 出版社 : 法政大学出版局

出版社 : 法政大学出版局

エセ物語エセ物語

てんでんこな言葉遊び、饒舌きわまる文字もじり、けれど真剣この上なく、無限の繰り言が日本語の原郷を、東アジアの無意識をあぶり出す。ジョイスと柳田、モンテーニュと易経が哀野のユートピアに出会い、死者の言葉を結んでは開き、継いでは重ね、天地のコトワリをめぐらせる。日本語の幽霊的宿命がエコーする室井文学の未完の遺作、易占トリックで最高に文学的な寓話、空前絶後な試み(エセー)の物語。 一の巻 《甲子》むちゃくちゃティーパーティー 《乙丑》夜明けの晩に 《丙寅》上下を脱ぐ 《丁卯》キンセンにふれる 《戊辰》蝕言 《己巳》ある蜥蜴の探究 《庚午》断片プロレタリアート 《辛未》うしろを強くするということ 《壬申》三寸オペラ 《癸酉》一巻の終り 《甲戌》二の舞 《乙亥》衣衣 二の巻 《丙子》おらおらでてんでんこにいぐも 《丁丑》若菜 《戊寅》手習い 《己卯》野分 《庚辰》追風用意 《辛巳》総角 《壬午》三寸 《癸未》夕顔 《甲申》ゴドーとバッコ 《乙酉》千不当万不当 《丙戌》ムカゴランド 《丁亥》アイノカゼ 三の巻 《戊子》後人追和 《己丑》復水、盆に返る 《庚寅》[思わずうつってしまう……] 《辛卯》口裏合わせ 《壬辰》幻 《癸巳》雲隠れ 《甲午》ヤドリギ 《乙未》橋姫 《丙申》苦手 《丁酉》ニガデ 《戊戌》ウタカタ 《己亥》心ゆくもの 後記 編集協力 川口好美 装丁   高林昭太

対話性の境界対話性の境界

著者

金志成

発売日

2020年7月1日 発売

ジャンル

1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。 序文 第1章 詩学  第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」  第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで  第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化  第4節 〈ポスト詩学〉の状況  第5節 表されるものが表す手段を条件づける  第6節 方法論についての要約 第2章 ダイアローグ  第1節 導入──境界線  第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題  第3節 作り出された人物  第4節 対話性の詩学 第3章 パフォーマンス  第1節 導入──小説は革命のための武器ではない  第2節 二つの政治性  第3節 文学における「真実」  第4節 「真実探求」の死角  第5節 『ベルリンのSバーン』  第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」 第4章 モダニティー  第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン  第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』  第3節 モダニティーの歴史イメージ  第4節 ボードレールの現代性  第5節 理想と憂鬱 第5章 『ヤーコプについての推測』  第1節 導入──「難解」な小説  第2節 対話的形式  第3節 ロールフス  第4節 ヨーナス・ブラッハ  第5節 ゲジーネ・クレスパール 第6章 『イースターの水』  第1節 導入──「模範的な短篇小説」  第2節 水と鏡のイニシエーション  第3節 かつての少女の追憶  第4節 完結性と破綻 第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』  第1節 導入──付随状況  第2節 一年の日々  第3節 暦と想起  第4節 コレスポンダンスとアレゴリー  第5節 言語の問題  第6節 『記念の日々』における対話性  第7節 わたしが死んだときのために  終 節 マージョリーのゆくえ 結語 あとがき 参考文献 索引

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