出版社 : 法政大学出版局
「イスラエルとは何か」そのはじまりを考える重要作。シオニズム運動の推進者であり、イスラエル建国の立役者として知られるユダヤ人作家、テオドール・ヘルツル(1860-1904)。政治的シオニズムの宣言書『ユダヤ人国家』での構想をより克明に描き出し、1902年に発表後、大きな反響を巻き起こした近未来小説の初邦訳。
てんでんこな言葉遊び、饒舌きわまる文字もじり、けれど真剣この上なく、無限の繰り言が日本語の原郷を、東アジアの無意識をあぶり出す。ジョイスと柳田、モンテーニュと易経が哀野のユートピアに出会い、死者の言葉を結んでは開き、継いでは重ね、天地のコトワリをめぐらせる。日本語の幽霊的宿命がエコーする室井文学の未完の遺作、易占トリックで最高に文学的な寓話、空前絶後な試み(エセー)の物語。 一の巻 《甲子》むちゃくちゃティーパーティー 《乙丑》夜明けの晩に 《丙寅》上下を脱ぐ 《丁卯》キンセンにふれる 《戊辰》蝕言 《己巳》ある蜥蜴の探究 《庚午》断片プロレタリアート 《辛未》うしろを強くするということ 《壬申》三寸オペラ 《癸酉》一巻の終り 《甲戌》二の舞 《乙亥》衣衣 二の巻 《丙子》おらおらでてんでんこにいぐも 《丁丑》若菜 《戊寅》手習い 《己卯》野分 《庚辰》追風用意 《辛巳》総角 《壬午》三寸 《癸未》夕顔 《甲申》ゴドーとバッコ 《乙酉》千不当万不当 《丙戌》ムカゴランド 《丁亥》アイノカゼ 三の巻 《戊子》後人追和 《己丑》復水、盆に返る 《庚寅》[思わずうつってしまう……] 《辛卯》口裏合わせ 《壬辰》幻 《癸巳》雲隠れ 《甲午》ヤドリギ 《乙未》橋姫 《丙申》苦手 《丁酉》ニガデ 《戊戌》ウタカタ 《己亥》心ゆくもの 後記 編集協力 川口好美 装丁 高林昭太
第二次世界大戦後のルーマニアの政情を背景に,現実世界と神話的世界の交錯のうちにカフカ的状況がかもし出される。宗教学者・文学者エリアーデの代表的幻想小説。
1934年にナチス政権下の現ポーランド領に生まれ、「ドイツ人追放」により旧東独で育ち、作家デビューに伴い西ベルリンに「転居」、1984年にイギリスで孤独死したヨーンゾン。イデオロギーで分断された世界を対話的に描き、ブランショに称賛されるなど、戦後ドイツを代表する作家としての評価はいまだ揺るぎない。その文学的営為の根本的な「詩学」の問題は「対話性」や「倫理」という図式に回収されてきたが、本書は精緻なテクスト分析と大胆な批評性であえてそれらの「境界」を探り、彼の文学を貫く「真実への困難な探求」を新たな視点から描き出す。 序文 第1章 詩学 第1節 導入──ヨーンゾンの「詩学講義」 第2節 「詩学」の歴史──古代ギリシアからロマン派まで 第3節 戦後ドイツにおける「詩学」の制度化 第4節 〈ポスト詩学〉の状況 第5節 表されるものが表す手段を条件づける 第6節 方法論についての要約 第2章 ダイアローグ 第1節 導入──境界線 第2節 〈語りの全知性〉をめぐる問題 第3節 作り出された人物 第4節 対話性の詩学 第3章 パフォーマンス 第1節 導入──小説は革命のための武器ではない 第2節 二つの政治性 第3節 文学における「真実」 第4節 「真実探求」の死角 第5節 『ベルリンのSバーン』 第6節 パフォーマンスとしての「真実探求」 第4章 モダニティー 第1節 導入──モダニスト・ヨーンゾン 第2節 『長篇小説を検討するための諸提案』 第3節 モダニティーの歴史イメージ 第4節 ボードレールの現代性 第5節 理想と憂鬱 第5章 『ヤーコプについての推測』 第1節 導入──「難解」な小説 第2節 対話的形式 第3節 ロールフス 第4節 ヨーナス・ブラッハ 第5節 ゲジーネ・クレスパール 第6章 『イースターの水』 第1節 導入──「模範的な短篇小説」 第2節 水と鏡のイニシエーション 第3節 かつての少女の追憶 第4節 完結性と破綻 第7章 『記念の日々 ゲジーネ・クレスパールの生活から』 第1節 導入──付随状況 第2節 一年の日々 第3節 暦と想起 第4節 コレスポンダンスとアレゴリー 第5節 言語の問題 第6節 『記念の日々』における対話性 第7節 わたしが死んだときのために 終 節 マージョリーのゆくえ 結語 あとがき 参考文献 索引
平凡な小学校教員・簡阿淘は、突然、特務警察によって「政治犯」として逮捕され、非公開の密室裁判を経て投獄される。簡阿淘の波乱に満ちた半生を通じて、戒厳令下の台湾の人々の日常生活や社会的・政治的苦悩を鮮やかに描き出し、二二八事件に端を発する白色テロの全貌に迫った長篇小説。附録として著者自身による回想録『一台湾老朽作家の告白』などを収める。
十五年戦争下の満州・日本・北京を往来し人気を博した梅娘、同じく大戦下の香港・上海で活躍したのちアメリカへと渡った張愛玲、そして難民の子として台湾に生まれアメリカ、ドイツ、香港を渡り歩く現代の人気作家・龍應台。中国を襲った二十世紀の戦火に運命を決定づけられ、故郷と異郷、妥協と抵抗、歴史と記憶の境にその文体を確立した三人の女性作家の分析を中心に、文学とアイデンティティの問題に迫る。
『ガリバー旅行記』英語版テキストを飾る挿絵には、ヨーロッパ植民地帝国の拡大につれて、日本・中国・イスラムを中心としたオリエンタリズムの表象が前面に現れる。英仏の挿絵画家たちのジャポニズムや植民地幻想に初めて詳細に光をあてるとともに、原作を独自に翻訳・翻案した明治以降の日本の児童文学作家・挿画家による模倣/創造の軌跡をも丹念に跡づける独創的研究。図版多数!
クンデラ、カフカをはじめ、数々の特筆すべき作家を生んだ中欧は、大国ロシアとドイツに挟まれ、この100年間に最も激しく地図が書き換えられ続けてきた地域にほかならない。多言語・多民族の複雑さと、常に介入され「歴史になれない歴史」をもつ不条理さは、しかし、中欧の詩学に比類なき輝きを与えた。抵抗の時代に中欧文化の本質を見つめた著者が、実存の痛みを結晶させた珠玉のエッセイ。日本語版のための書き下ろしも収録! 訳者序 「想像の共同体」としての中欧 ──トランスナショナリティーとマージナリティー ── まえがき──円卓の中欧 第 I 章 中欧の困難さ──アネクドートと歴史 第 II 章 実存の困難さ──神話とチェコ文学 第 III 章 第一次共和国の困難さと希望──概念と社交生活 第 IV 章 亡命の困難さ──逃走する知識人 第 V 章 文学の困難さ──物語と歴史 あとがき──アルマリウムと、もう少しの言葉 訳者あとがき 人名索引
何者でもないがゆえに、逆に、人間の生の全体と深く係わる。『特性のない男』で知られるムージルは、他者性、あるいは一回しか存在しないものをどのように表現しようとしたのか。また、イメージや比喩の扱いをとおして、非言語的なものを言語によってどのように語ろうとしたか。ムージル文学の奥行に深く分け入り、その創作方法と小説世界を明らかにする。
シロアリをヒーローやヒロインに仕立て、変形譚を縦糸に、ウィットを横糸に物語を織り成し、その他かずかずの動物や昆虫を登場させながら、国家の虚構性、あるいは政治のウソに真正面から迫った長篇イソップ物語!本書は、長篇童話「丘蟻一族」とその続篇「天馬降臨」に加え、これら二作品の解説ともいえる著者の講演録「なぜ童話を書くのか」によって構成される。