出版社 : 法政大学出版局
「イスラエルとは何か」そのはじまりを考える重要作。シオニズム運動の推進者であり、イスラエル建国の立役者として知られるユダヤ人作家、テオドール・ヘルツル(1860-1904)。政治的シオニズムの宣言書『ユダヤ人国家』での構想をより克明に描き出し、1902年に発表後、大きな反響を巻き起こした近未来小説の初邦訳。
てんでんこな言葉遊び、饒舌きわまる文字もじり、けれど真剣この上なく、無限の繰り言が日本語の原郷を、東アジアの無意識をあぶり出す。ジョイスと柳田、モンテーニュと易経が哀野のユートピアに出会い、死者の言葉を結んでは開き、継いでは重ね、天地のコトワリをめぐらせる。日本語の幽霊的宿命がエコーする室井文学の未完の遺作、易占トリックで最高に文学的な寓話、言語道断な試みの物語。
平凡な小学校教員・簡阿淘は、突然、特務警察によって「政治犯」として逮捕され、非公開の密室裁判を経て投獄される。簡阿淘の波乱に満ちた半生を通じて、戒厳令下の台湾の人々の日常生活や社会的・政治的苦悩を鮮やかに描き出し、二二八事件に端を発する白色テロの全貌に迫った長篇小説。附録として著者自身による回想録『一台湾老朽作家の告白』などを収める。
『ガリバー旅行記』英語版テキストを飾る挿絵には、ヨーロッパ植民地帝国の拡大につれて、日本・中国・イスラムを中心としたオリエンタリズムの表象が前面に現れる。英仏の挿絵画家たちのジャポニズムや植民地幻想に初めて詳細に光をあてるとともに、原作を独自に翻訳・翻案した明治以降の日本の児童文学作家・挿画家による模倣/創造の軌跡をも丹念に跡づける独創的研究。図版多数!
何者でもないがゆえに、逆に、人間の生の全体と深く係わる。『特性のない男』で知られるムージルは、他者性、あるいは一回しか存在しないものをどのように表現しようとしたのか。また、イメージや比喩の扱いをとおして、非言語的なものを言語によってどのように語ろうとしたか。ムージル文学の奥行に深く分け入り、その創作方法と小説世界を明らかにする。
シロアリをヒーローやヒロインに仕立て、変形譚を縦糸に、ウィットを横糸に物語を織り成し、その他かずかずの動物や昆虫を登場させながら、国家の虚構性、あるいは政治のウソに真正面から迫った長篇イソップ物語!本書は、長篇童話「丘蟻一族」とその続篇「天馬降臨」に加え、これら二作品の解説ともいえる著者の講演録「なぜ童話を書くのか」によって構成される。
生い立ち、実業家からの転身、処女長編の成功と失敗、ナチス下の獄中、逃亡とアメリカ亡命、戦中戦後、そして最晩年に至る足跡を実証的にたどり、現代の政治的・社会的、実存的・哲学的諸問題を多様な方法で追求した作家ブロッホの全体像を克明に描き上げる。
1940-45年、占領下のパリ、故国と訣別した孤独な異邦人の青春彷徨記ー未曾有の出来事の中で、己の出自への激しい否定の感情と共に文明の凋落と歴史の黄昏を生の根本感情として内面化し、「形而上の流謫者」「世界市民」としての新たな出発を告げる転位の書。
みずからのエクスタシー=神秘体験を言語化し、バッハやモーツァルトの経験を絶対的融合の宇宙として語りつつ、バロックの文体=超越の言語を創出するにいたる、初期シオランの思想的営為の全容を示すアフォリズム群。
〈物語/歴史〉から逃れるために怪奇と幻想に満ちた作品を書きつづけ、音楽家・画家・法律家としても多彩に活動したホフマンの波乱の生涯。激動と興奮の時代背景の中にその全体像を活写。
ギリシア・ローマ神話から聖書、聖者伝、さらにはデュメジルやフレイザー等の厖大な文献を渉猟しつつヴェルヌの〈驚異の旅〉の神話的構造を解析し、その壮大な作品群を「SFの元祖」という定説から解放して、諸神話を重ね合わせた〈神話大全〉として読み解く。
エスキモーとヨーロッパ人捕鯨船員の共同生活が徐々に破局へと至る物語を通して、19世紀末エスキモーの独自な社会構造を、勇壮な狩猟生活を、おおらかな性を、詩情豊かに生き生きと描き切る。