出版社 : 筑摩書房
退屈であるはずの日常生活にひそむグロテスクさと、グロテスクなはずの非現実の退屈さがせめぎ合う、〈現実〉という血まみれの部屋-。夫婦間の秘密、葛藤、すれちがいをさらけだす、アトウッドの短篇集。
1960年代後半から90年にかけて、〈知〉が沸騰した時代を背景に、バルト、フーコー、デリダ、ラカン、アルチュセール、レヴィ=ストロース、ソレルスなど、現代思想の冒険者たちの強烈な生と死、さらに、多重的にくりひろげられる官能的な物語を描いた華麗な自伝的回想。
あたしの名前は大沢ルミ。学校からの帰り道に、変な二人組に誘拐されそうになったの。何とか逃げ出したんだけど、その次の日、ヒゲゴジラことうちのパパが中華街で連れ去られちゃって…。あたしたち一家を狙う秘密組織って一体何?オヨヨ大統領って何者なの?ギャグ、パロディ、風刺ー大人も子供も楽しめる傑作コメディ。〈オヨヨ大統領シリーズ〉の第1作。
メアリアンはゆっくりと人々から切り離され、孤立してきた。隅っこに追い詰められて、今はそこに座りこんでいる。手に膝をのせて。ほかに道はない。ほかに行くところはない。ディックの青春小説。
白い肌、白い髪、紅い瞳の魔法少年エンジェル。彼は巡回奇人一座と一緒にやってきて、平凡なホーリイの夏をめくるめく興奮と恐怖のうずに巻き込んだ。エンジェルを意のままにあやつるハーヴァーストック、小人のティム、半獣人ミノタウロス、幻想と現実のはざまに棲む者たちーアメリカの知られざる幻想作家トム・リーミイが、ブラッドベリにも似た透明で美しい世界を織りあげた、ファンタジーの傑作。
子供たちの玩具に隠された秘密を見つけだせ。地球輸入基準局はやっきになった他の星から送られてくる輸入玩具をチェックする。“ウォー・ゲーム”と名付けられたゲームに隠されている謎とはー?彼らは地球を守ることができるのか?-表題作他、本邦初訳を含む初期短篇9篇収録。
ときには膝を打つほど面白く、ときには哀しいまでに美しく、またときには身も凍るほど残酷に…。人生をあざやかな形で描き出したフランス短篇小説の名手たち。詩人・堀口大学がこよなく愛し訳したアポリネールやラディゲ、アナトール・フランスなどの作品を集めたエスプリの香り高い一冊。
純白の処女の喉元に飾られた血の色の首飾り。さしこむ月光の中、下肢から血をしたたらせる狼少女…。赤頭巾、白雪姫、青ひげ、吸血鬼譚などに着想を得て、性のめざめと存在の変容とを描く、セクシュアルで残酷な短篇集。
軍隊と戦争の罪悪を、エピソードを盛り込み劇的な構成でスリリングに描き出す、ショー初の長編小説。三人の主人公(ナチスに投じるオーストリア人、ユダヤ系アメリカ人、芸術を愛するアメリカ人)は、それぞれ前途に漠然とした不安を抱きながらも、青春を愉しんでいた。そこへ開戦。三人とも戦地に送られ、人間性は破壊され、堕落していく人々をまのあたりにする。
二人のアメリカ青年は、戦争の体験から戦友として信頼しあうようになるが、ナチスを信奉するオーストリアの青年は、有能な兵士になるにつれ人間性を喪失してよく。やがて三人は、バイエルンの森で運命の対決を迎える。『武器よさらば』『禅者と死者』と並ぶ戦争を舞台にした青春小説で1958年には映画化された。
秘された“過去”を負う“被疑者”冬木二等兵の「不条理上申」と東堂二等兵の「意見具申」によってさしもの「剣〓事件」も終熄する。そして事態は、醜怪極まりない「模擬死刑事件」による東堂・冬木らの営倉入りを経て、小説の掉尾を飾るかのような大珍事によって急転回をとげる。…1942年4月24日午前9時55分、主人公東堂太郎二等兵の屯営への訣別と共に、4700枚の壮大なファルスも遂に完結する。
入営して、やがて3ヶ月目に入る。上官上級者によって仕掛けられる無理難題、“思想上の嫌疑”に対する東堂太郎の精妙かつ尖鋭な“合法闘争”はつづくー。「こういうことに血眼になっても、それにどんな意味があるのか、あり得るのか」懐疑に陥りながらも…。しかし一方、奇怪な「剣〓(けんざや)事件」の犯人と目されて窮地に立つ冬木二等兵救済のために「精一杯抗うべく」決意を固める。