出版社 : 講談社
過去と現在。記憶と現実。存在と不在。自己と他者。周到に仕組まれた言葉の奔流が、確かと信じられている輪郭をことごとく溶かし、境界を混じりあわせ、めまいにも似た乱反射を読む者に引き起こす。「読むことが、私の生きている証し」老練な読者たる著者が、最初期二作品を含む初期作品群から、現在の眼で選んだ短篇集、第三弾。
言葉の循環「考速」。世界は連なる「絵画」。命のざわめき「街を食べる」。毒はゆるやかに「みのる、一日」。物語の中で僕らは「さよならクリストファー・ロビン」。解けない問題「田舎教師の独白」。月の光を浴びて「塔」。騒がしい店内で「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」。記憶の交錯「きことわ」(芥川賞)。メレンゲの不安「波打ち際まで」。郷里で謎の言葉が「うらぎゅう」。亡き愛人の影「夫を買った女/恋文の値段」。現代文学の新たなる地平、シリーズ第八巻(最終巻)。
学問の家に生まれた父・菅原孝標と『蜻蛉日記』作者の妹にあたる母との女の手になる、平安中期の女流日記文学。物語への憧憬を育まれる少女時代。十三歳で父の任国上総から帰京。乳母や姉との死別。宮仕えや家庭生活で不如意な現実を生き、仏への信仰に傾倒、夫の急逝までの半生を回想する。晩年の諦観に至るまでの胸中の遍歴が鋭い感性で描かれる。
ときにエロティック、ときに残酷、そしてときに切ないーー。 珠玉の「大人のための童話」がここに。 収録作品 「ユメコさんとノボルちゃん」 ユメコさんとノボルちゃん、二人は同じバーに勤めるバーテンダーとその主だった。そして二人はお互いの美しさゆえにひとときも離れられず……。 「カワムラ青年」 戦争で夫も子供もなくした女が山の中で出会ったのは、一人の若い男だった。 「雪女」 出張先で吹雪に見舞われてしまった。そしてそこで出会った一人の女。行くあてもなく、彼女の家に泊めてもらうことになるのだが。 「おかしなことに」 学生時代の恋人との間にあった”性癖”が、中年のいまになってむくむくとわき上がってきてーー。 「人形の絵」 一枚の絵は、様々なカップルの間を巡り巡って行く。そして彼らの人生も変えていく。 「湖」 愛してやまないが手が届かない人ーーそんな彼女の側にいられるだけで幸せだったのに。
隠れ家という名のフレンチ・レストラン「Cachette カシェット」。 オーナーの山岸に声をかけられ、この店のキッチンで働くことになった滝沢葉月。実は、オーナーには遠大な計画があったのだ。 ある日、オーナーに呼ばれた葉月は、自分が料理コンクールの一次予選に通過したことを知らされる!? もちろん、葉月は応募していない。実は、葉月が入店する前に、店の料理長・荒木とソーシエ・細川の二人が創った料理を、山岸が葉月の名前でコンクールに応募していたのだ! 戸惑う葉月……。実は、滝沢葉月の祖父は、戦後はじめて世界的なフランス料理のコンクールで優勝した滝沢征爾だった。 しかし、祖父とはほとんど縁のなかった葉月。 言葉を失う葉月に、山岸は「女性のシェフが活躍する世界をつくりたい!」という思いを語る。 ようやくコンクール出場の決意を固めた葉月。 自身のルーツとは? オリジナルとは何か? そして物を創るということとは? 次々に起こる難問に向き合いながら、葉月の「美味しい闘い」が始まった!
「ムラセアズサを預かっている。これはイタズラではなく、正真正銘の営利誘拐だ」 無断欠勤を続けていた村瀬梓が勤めるコールセンターに掛かってきた犯行電話。身代金の要求額は1億円、輸送役は100人の警官。なぜ、家族ではなく、会社に掛けてきたのか。なぜ、1億円なのか。なぜ、100人も必要なのか。警察と“関係者”たちは、ピュワイトを名乗る犯人に翻弄されていくーー。 「罪」に期限はあるのかーー新乱歩賞作家が圧倒的な読み味で描く、史上最速の受賞後第一作。
一瞬にして帝都を地獄に変えた関東大震災。横浜刑務所の強固な外塀は全壊、さらに直後に発生した大規模火災が迫ってきた。はからずも自由を得た囚人に与えられた時間は二十四時間!帰還の約束を果たすため身代わりとなった少女は、大火災と余震が襲い流言蜚語が飛び交う治安騒擾の悪路四〇キロを走る…。著者が三〇年かけて発掘した、関東大震災の真実。
資産家の男性が殺害されて、妻が連れ去られる殺人誘拐事件が発生。遺体には猟奇的な装飾が施されていた。捜査を開始した直後、新聞社宛に、警察を挑発し、妻の居場所を示唆するメールが届く。懸命に捜査する新人刑事・如月塔子と指導役の警部補・鷹野だったが、犯人の魔の手が二人を襲い、鷹野は捜査の第一線から退くことに。エースを失った十一係は犯人を捕らえることができるのか!?死体に残された装飾の意味は?人気警察ミステリ最新作!
豊臣秀吉が朝鮮を攻めた文禄の役。後に萩焼の祖となる李勺光は、そのとき朝鮮で捕まり日本に連れてこられた陶工だった。その際、秀吉の命で毛利家がその身を預かることになる。茶器が戦国武将たちに珍重されていた当時、毛利家では彼の造る焼き物を国の特産品とすべく、勺光を捕虜としては別格の待遇で迎えようとした。朝鮮での戦いで夫を亡くしたばかりの志絵を世話係に任命したのだ。志絵は毛利家・三美人の一人と言われ、夜伽も務めなければならないその任命に屈辱すら感じるが、武家の娘として従容と受け入れる。それから、志絵の煩悶がはじまる。毛利家中と勺光をつなぐ連絡係を務める青年武士・弘太郎に一目惚れしてしまったのだ。作品作りに打ち込む陶工と、若き家人との間で揺れ動く志絵の心。時代も大きく動き、関ヶ原の合戦で敗れた毛利家は、八ヵ国から二ヵ国に大幅減封され、勺光の窯場も萩の地へ移動を迫られるが……。
「大切なことは目には見えない」その本当の意味は?宇宙をかけめぐるリトルプリンス、その驚きの正体とは?“欠けた蝶ネクタイ”から始まる、星空を舞台にした壮大な謎解き。フランス人の物知りな父と、おしゃべりな日本人の母をもつ姉弟がサン=テグジュペリが仕掛けた巧妙なトリックに挑む!
いくら流行っているからといって、経済的にも精神的にも自立した大人が、なぜ一緒に住むのか(第1話「シェアハウさない」)。その人がどれだけ「リア充」であるかを評価する、「コミュニケーション能力促進法」が施行された世界。知子のもとに、一枚の葉書が届く(第2話「リア充裁判」)。親のクレームにより、幼稚園内で、立っている金次郎像が座っているものに変えられた!(第3話「立て!金次郎」)。…そしてすべての謎は、第5話「脇役バトルロワイアル」に集約される。
こんどの客は、大垣藩の江戸留守居。四藩による対抗戦で、各藩が代表を一人ずつ出して戦うことになったのだ。仕合の場所は浦賀近くに浮かぶ猿島。さて当日、待たされたあげくに現れたのは鎖鎌の男。伊賀流らしい。あとの二人の流派はまだわからない。吉岡一門の流れを汲む、京流の技の冴えを見せつけるときがきた。
両親を殺人事件で亡くした天野直人・七海の兄妹は、養父なる人物に呼ばれ、長野山中のペンションを訪れた。待ち受けていたのは絞殺事件と、関係者全員にアリバイが成立する不可能状況!推理の果てに真実を手にした二人に、諜報機関が迫る。名探偵の遺伝子群を持つ者は、その推理力・問題解決能力から、世界経済の鍵を握る存在として、国際的な争奪戦が行われていたのだ…!
大好きな女の子が死んでしまったーーという悪夢をみて起きた朝。高校の教室に入った綜士は、ある違和感を覚える。唯一の友人である一騎が、この世界から「存在が消されている」という事実にひとりだけ気付くのだ。綜士の異変を察知したのは、『時計部』なる部活を作って時空の歪みの真相を追いかける千歳先輩と、破天荒な同級生の雛美。3人はこの世界で起きているタイムリープの謎を解こうと奔走をはじめる! 大好きな女の子が死んでしまったーーという悪夢をみて起きた朝。 高校の教室に入った綜士は、ある違和感を覚える。 唯一の友人である一騎が、この世界から「存在が消されている」という事実にひとりだけ気付くのだ。綜士の異変を察知したのは、『時計部』なる部活を作って時空の歪みの真相を追いかける千歳先輩と、破天荒な同級生の雛美。 3人はこの世界で起きているタイムリープの謎を解こうと奔走をはじめる! 第一話 自分を守るために嘘をついたから 第二話 赦されるには重過ぎて 第三話 哀しい未来の輪郭を 第四話 すべての痛みを受け止めて 第五話 隣り合うこの世界は今も あとがき
世界を動かす大富豪の家に生まれながら、幼い頃に父母を亡くし孤独に生きる少年・海堂凜。立場上、身の危険にさらされることが多い凛のもとに新しいボディーガードとして現れたのは、元警察官の永瀬だった。しかし彼には「死神」と思しき、ある秘密があった……。不思議な縁に引き合わされるように出会った、二人の運命とは……!? 世界を動かす大富豪の家に生まれながら、幼い頃に父母を亡くし孤独に生きる少年・海堂凜。 立場上、身の危険にさらされることが多い凛のもとに新しいボディーガードとして現れたのは、元警察官の永瀬だった。しかし彼には「死神」と思しき、ある秘密があった……。 不思議な縁に引き合わされるように出会った、二人の運命とは……!? 第一章 十歳の主人とボディガード 第二章 開幕ベルは聞こえず 第三章 海堂家の黒い闇 第四章 ウィンター・ローズを君へ 第五章 ハーメルンの笛ふき男は語る 第六章 生者のための鎮魂歌 第七章 ボディガードは秘密を知らず 第八章 黒い血のさだめるところ