出版社 : 講談社
もし頼朝が伊豆以外に配流となっていたとしたら、後の日本の歴史も変わったものになっていたに違いない。まことに奇しく伊豆、そして火の国の女・政子との出会いであった。さすがの佐殿も、政子の情熱に寄り切られたのである。ここに最大の被害者は、政子の父・北条時政であった。-一方、都に目を移せば、反平家の気運は次第に強まり、洛中洛外、不穏な兵馬の動きにあわただしい。
鹿ケ谷事件は“驕る平家”への警鐘であったが、清盛にはどれ程の自覚があったろうか。高倉天皇の中宮徳子は、玉のような御子を産み、一門をあげて余慶にひたっていた。-だが反平家運動は、今や野火の如く六波羅の屋形を包んでいた。その総師はもちろん、清盛の圧力に屈せぬ後白河法皇、関白基房などの院方。そして意外と思われる人に、76歳の老武将・源三位頼政がいた。
源三位頼政は、殱滅された源氏一族にあって、異例といえるくらい、清盛の殊遇をうけた人であった。その彼が、何ゆえ76歳の高齢もかえりみず、平家打倒に起ちあがったか。そして戦いは断橋の悲痛な叫びを残して終ったが、これを境に反平家の勢力は、燎原の火の如く各地に蹶起する。-伊豆での旗挙げに1度は失敗した頼朝も、鎌倉に本拠を定めて都を窺う。つづいて木曽の義仲、挙兵!
中国は宋朝の時代、勅使として龍虎山に派遣された洪言は、厳しく禁じられた石窟の中を掘ったため、封じられた百八の魔星はどっと地上に踊り出た。やがて、その一星一星が人間と化して、梁山泊をつくり、天下を揺さぶる。-これが中国最大の伝奇小説「水滸伝」の発端である。「新・水滸伝」は、少年時代からこの中国古典に親しんだ著者から、思うままに意訳し、奇書の世界を再現する一大絵巻。
一介の毬使いから近衛大将にまで成り上がった高〓。専権をほしいままにする彼が腐敗政治を生み、庶民の血と涙が反骨の英雄を生む。禁軍の師範だった林沖、王進、楊制使の楊志、下級官吏の魯達など、官に不満を抱く諸豪傑、今孔明の異名を持つ呉学人や宋江、武松らいずれ劣らぬ錚々たる面々は、烈々たる想いを胸に、梁山泊への道を歩んでくる。聚護庁に同志の数の灯がともる。
夫との旅の途中、清教徒の町セーラムでアンジェリクは病に倒れた。高熱と悪夢に苦しみながら双子を生んだ彼女の枕元には“魔女”と恐れられる二人のクエーカー教徒の女が。突然町に姿を現わした黒衣のイエズス会士、秘密を告げようとして謎の死をとげた若者…病床のアンジェリクの胸は忍び寄る不安に波立つのだった。
作家の間宮は過疎村の廃屋が気に入り、家族とともに東京から移住してきた。夢見村の自然は素晴しかったが、墓地には大きな秘密があるようだった。村人たちも沈黙の中で何かを隠そうとしている。家の持ち主の「妻」にも二代にわたり異変が起こっていた。追いつめられていく若い家族の限りない恐怖!ホラー長編。
悲劇で幕が切られる。シリーズの名探偵・陣内龍二郎が殺されたのだ。ダイイング・メッセージは、タ・サ・ツ。深鞍財閥の別荘でも奇怪な殺人事件が発生した。刺し殺された男の服に切り口がない!名探偵はなぜ殺されたのか。ホームズを失ったワトソン=大垣洋司に何ができるのか。壮大なる挑戦。三部作完結。
横浜海運社長令嬢・大谷絵里子が刺殺された。絵里子は死を覚悟していたのか、「ゆみはふねとほねつくした」が暗示する人物が犯人だと書きのこしていた。10日後、別の全裸殺人事件で横浜海運役員の名刺が発見されたが、二つの事件を結ぶ糸は?12文字に隠された意外な真犯人。そして思いもよらぬ逆転のラストが!
成城学園に住む28歳の美貌の社長夫人は秘密の共有者である小杉安雄殺害の記事を見て茫然とした。小杉は新・新宗教「月霊教会」の代表役員で、事件当夜、現場に現われたという教祖「月霊様」の正体と消えた1億円の行方を唯一人知っていたはずなのだが…。社長夫人であり教祖である女の謎の正体を追う。
膨大な額にふくれあがった借金をすべて踏み倒す。この役目を誰にやらせるか?思案に暮れた島津重豪は、茶坊主の調所を大抜擢、駄目でもともとと大坂に派遣する。回天の事業はまさにこの時はじまったー。地位も財力もない身で瀕死の薩摩経済を再建、維新の胎動に挑戦した不屈の男の経営手腕を描く長編。
黄河学術調査団のメンバーとして中国に渡ったカメラマン笹井には、もうひとつの目的があった。太平洋戦争当時軍属として中国大陸にいたことのある父が、昨年中国再訪の旅に出たまま失踪してしまったのだ。その謎を解きたい、と笹井は決意していた。その笹井を次々奇怪な事件が襲う。何が父に起きたのか?悠久の大河を舞台の鮮烈ミステリー。
リオのカルナヴァル(謝肉祭)の最後の夜、暗殺者であるおれは、組織の裏切者・金承春を狙ってビルの高層階に待機した。金はリオの非合法地域に潜伏中だったが、カルナヴァルの日にはどの住民も例外なしにサンバの踊り手として山車の上に乗らなければならない。おれは今、狙撃の瞬間を静かに待っている。
強者だけが生き残れるサハラ砂漠ー。テロリストの一味は、乾ききった死の世界の奥へと逃げ去った。ローマ大使館で人質にされた、12歳のいたいけな小女を嬲り殺したあげく。もはや許せない。大統領直属の殺し屋コーディー軍団の、凄まじい反撃が開始された。ご存じ無敵ヒーローの胸のすく冒険活劇。
処女作「風宴」の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作「桜島」の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作「日の果て」。「桜島」「日の果て」と照応する毎日出版文化賞受賞の「幻化」。不気味で純粋な“生”の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。 ●風宴 ●桜島 ●日の果て ●幻化
グリム童話が不思議に交叉する丘の上の家。“姉がひとり、弟が二人とその両親”-嫁ぐ日間近な長女を囲み、毎夜、絵合せに興じる五人ー日常の一駒一駒を、限りなく深い愛しみの心でつづる、野間文芸賞受賞の名作「絵合せ」。「丘の明り」「尺取虫」「小えびの群れ」など全十篇収録。