出版社 : 講談社
人生の、まどろむような昼下り。胸底に押し込めたわだかまりが、哀しみがふとしたことで噴き上げ、平凡な日常が一瞬、色を変え、ゆがむー。シュールな感覚の34のショートショートと12の愛のショートストーリー。
幼い日の記憶への憧れを秘めた孤児星玲子の小さな胸を、祖父が遺した幻の遺産をめぐる大人たちの打算が容赦なく揺さぶる。雪の札樽国道をさまよう少女を必死に守る幼な友だちの丈と愛猫とら。音もなく時間を巻きこんでいく非情な運命の糸車は、どんな明日を見せてくれるのか。雪国に芽ばえた可憐な愛の行くえを美しく描く長編ファンタジー。
愛の波紋のさまざまを鮮やかに描く恋愛小説集。芸大で邦楽に打込む陽子は東京・築地川育ちの下町っ子である。先輩の新進演奏家との恋の行方を、青果仲買店「吉長」の暖廉に生きた祖父や、移りゆく町と人情への哀惜をこめて描いた表題作他、「舞台のあと」「青春の傷」「松の木の家」等、珠玉作9編を収録する。
時は1944年、ノルマンディー上陸作戦の前夜。パリのホラー劇団=グランギニョールの団員による、小企模な逃亡イギリス兵の援助組織があった。その彼らに、撃墜され、瀕死の重傷を負ったイギリス人女性情報員が告げたのは、恐るべきナチスの兵器「鉄のヤスデ」だったー。軽快なテンポの傑作冒険小説。
V3の威力をはるかに超え、ドイツ第三帝国を不滅のものにする究極兵器「鉄のヤスデ」の秘密をめぐって、不屈で明るいパリっ子の抵抗と鉄血のSS隊員が、知力の限りを尽くして渡りあう。お手のものの演技力を駆使して、蟻の這い出るすきまもないヴォリン島の秘密基地に迫る彼らに、容赦ない追手がー。
「どうです?踊りませんか」男の誘いは自信に満ちていて、女に戸惑う隙を与えなかった。「これは、メモリーズ・オブ・ユーかしら?」…抑えがたい男の恋心、危ういと知りつつも傾いてゆく女心ー微妙な大人の愛の心理を、深く、やわらかく捉える恋愛小説集。表題作ほか「後坐配」「逝春期」等18編を収録。
その日まで恋はれてあるを知らざりし死のきはにのみ抱きける人ー。幾たびも恋のほむらに身を焦がし、本能のままに悔いなき女の倖せを追い求めた歌人・麻緒の、哀しく、美しく、奔放な生涯。大正期の名女流歌人・原阿佐緒をモデルに、“愛の作家”が華麗な筆致でこまやかに描く、長編恋愛小説の名品。
なぜ、それが“物語・歴史”だったのだろうかーー。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する“大いなる野性”坂口安吾の“物語・歴史小説世界”。 ●桜の森の満開の下 ●梟雄 ●花咲ける石
江戸下町の人情の綾を描く。江戸・深川中島町、俗にいう澪通り。過去を秘めた心やさしい木戸番夫婦の胸を熱くさせる愛し、涙し、許しあう男と女たち。江戸下町のけなげに生きる人びとを描いた連作短篇小説集。
私立探偵の緒方は、友人のデザイナー・野島と共に六本木に事務所を構えている。今の仕事は、与党の代議士・堀江の長女みつきの行方を捜すことである。どうやら不動産会社社長・外岡の息子・秀志がみつきを連れ出したらしい。ある晩、秀志は舟木を伴って緒方の事務所を襲うが、その直後、刺殺体となって発見され、さらに舟木も自室で殺されていた…。
日本では卑弥呼が邪馬台国を統治する頃、中国は後漢も霊帝の代、政治の腐爛は黄巾賊を各地にはびこらせ、民衆は喘ぎ苦しむ。このとき、たく県は楼桑村の一青年劉備は、同志関羽、張飛と桃園に義盟を結び、害賊を討ち、世を救わんことを誓う。--以来100年の治乱興亡に展開する壮大な世紀のドラマ。その華麗な調べと哀婉の情は、吉川文学随一と定評のあるところである。
黄巾賊の乱は程なく鎮圧されたが、腐敗の土壌にはあだ花しか咲かない。霊帝の没後、十常侍に代って、董卓(とうたく)が権力の中枢に就いた。しかし、群雄こぞっての猛反撃に、天下は騒然。曹操が起ち袁紹が起つ。董卓の身辺には、古今無双の豪傑呂布(りょふ)が常に在り、刺客さえ容易に近づけない。その呂布が恋したのが、董卓の寵姫貂蝉(ちょうせん)。傾国という言葉は「三国志」にこそふさわしい。
黄巾賊の乱より10年、天下の形勢は大いに変っていた。献帝はあってなきものの如く、群雄のうちにあっては、曹操が抜きんでた存在となっていた。劉備玄徳は、関羽、張飛を擁するものの一進一退、小沛の城を守るのみ。打倒曹操!その声は諸侯の間に満ち、国舅(こっきゅう)董承を中心に馬騰、玄徳など7人の謀議はつづく。誰が猫の首に鈴をつけるのか。--選ばれたのは、当代一の名医吉平。
乱世の姦雄を自称し、天下を席捲した曹操も、関羽には弱かった。いかな好遇をもってしても、関羽の心を翻すことはできない。玄徳を慕って千里をひた走る関羽。そして劇的な再会。その頃、兄孫策の跡を継いだ呉の孫権は、恵まれた自然と豊富な人材のもと、国力を拡充させていた。失意の人玄徳も、三顧の礼をもって孔明を迎えることができ、ようやく天下人として開眼する。
新野を捨てた玄徳は千里を敗走。曹操はなおも追撃の手をゆるめない。江夏にわずかに余喘を保つ玄徳軍に対し、潰滅の策をたてた。天下の大魚をともに釣ろう、との曹操の檄は呉に飛んだ。しかし、これは呉の降参を意味する。呉の逡巡を孔明が見逃すはずはない。一帆の風雲に乗じ、孔明は三寸不爛の舌をもって孫権を説き伏せる。かくて赤壁の会戦の大捷に導き、曹操軍は敗走する。
12世紀の初め、藤原政権の退廃は、武門の両統“源平”の擡頭をもたらした。しかし、強者は倶に天を戴かず。その争覇興亡が古典平家の世界である。「新・平家物語」も源平抗争の歴史を描くが、単なる現代訳でなく、古典のふくらんだ虚像を正し、従来無視された庶民の相にも力点を置く。-100年の人間世界の興亡、流転、愛憎を主題に、7年の歳月を傾けた、著者鏤骨の超大作。
保元の乱前夜、爛れた世の病巣は、意外に深かった。院政という摩訶不思議な機構の上に、閨閥の複雑、常上家の摂関争いの熾烈、その他もろもろの情勢がからみあって、一時にウミを吹き出す。-かくて保元の乱は勃発したが、「皇室と皇室が戦い、叔父と甥が戦い、文字どおり骨肉相食むの惨を演じた悪夢の一戦」であった。その戦後処理も異常をきわめ、禍根は尾をひいた。
25の謎であなたに挑戦する、鬼才岡嶋二人の傑作推理短編集。犯人はだれか、なぜ完全犯罪は破れたか、暗号やダイイング・メッセージの解読。「ちょっと考えてみて下さい」という文章が探偵ゲームの始まりです。(南伸坊イラスト入り) ラスコーリニコフの供述 誰が風を見たでしょう 三年目の幽霊 曇りのち雨 Behind the Closed Door ご注文は、おきまりですか ボトル・キープ マリーへの届け物 水の上のロト 死後、必着のこと 煙の出てきた日 高窓の雪 断崖の松 組長たちの休日 最後の講演 愛をもってなせ 明かりをつけて ルームランプは消さないで 机の中には何がある? 穏やかな一族 酔って候 シェラザードのひとりごと 聖バレンタインデーの殺人 奇なる故にこれをのこす たった一発の弾丸