出版社 : 集英社
戦国時代。土佐の名門、長宗我部家の若き当主・元親は、領民が安らかに暮らせる戦のない国を目指して四国統一に乗り出す。巧みな戦略で着実に領土を広げてゆくが、戦で多くの部下を失い、肉親をも殺めたことで、元親は自身の器量と夢との間で苦しみ始める。さらに、天下を目指す信長、秀吉の脅威が迫りー。四国の覇者、長宗我部一族の栄光と挫折を真正面から描く、圧巻の歴史小説。
動乱の予兆をはらむ幕末の会津藩。下級武士の家に生まれた伊庭俊輔は、頭はいいが大人しい一平、何事にも中庸を得た新次郎ら幼馴染と楽しい日々を過ごしていたが、上士の子弟に因縁を吹っかけられ袋叩きに遭う。将来を誓い合った隣家の娘である梨津に縁談話が持ち上がり、平穏な暮らしが一変する。時代の激浪にもまれ、俊輔は大切なものを守りぬけるのか。青春時代小説の新基軸、ここに始まる。
「女」という漢字を分解すると、“く”“ノ”“一”-女忍者の通称である。そのくノ一を主人公にした、傑作六篇を収録。真田方の忍者と徳川方の女忍の因縁のドラマ。愛する新妻が隠密だと知った夫の苦悩。男たちの間を流転する忍びの悲哀…。戦国乱世の裏で、江戸時代の泰平の底で、くノ一たちが濃艶に、きらびやかに乱舞する。本邦初のくノ一アンソロジー、ここに見参!オリジナル文庫。
イギリス医学界の重鎮、アーサー・ヒルがノーベル賞を受賞したー。知らせを受けた青年医師の津田は、同じ分野で研究を続けながら惜しくもこの世を去った恩師、清原の死因を探るなかで、アーサーの周辺に不審な死が多いことに気付く。彼らを死へと追いやった見えざる凶器とは一体何か。真相を追ううちに津田は大きな陰謀に飲み込まれてゆく。ノーベル賞を題材にした本格医療サスペンス。
7編の連作短編を通して〈笑い〉と〈忘却〉というモチーフが繰り返しバリエーションを奏でながら展開され、精緻なモザイクのように編み上げられる、変奏形式の小説。クンデラ文学の原点。
騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。
あたたかな一皿が、誰かと食卓で分かちあう時間が、血となり肉となり人生を形づくることがある。料理人の父に反発し故郷を出た娘。意識の戻らない夫のために同じ料理を作り続ける妻。生きるための食事しか認めない家に育った青年。愛しあいながらすれ違う恋人たちの晩餐ー。4人の直木賞作家がヨーロッパの国々を訪れて描く、愛と味覚のアンソロジー。味わい深くいとおしい、珠玉の作品集。
風営法の改正に伴い、若手ホストたちがショーとスイーツでもてなす昼間の2部営業をはじめた「club indigo」。人気は上々だが、個人主義で生意気な若手ホストたちと、ジョン太、犬マンなどのレギュラー陣との間に対立が。しかも彼らが連れてきた謎の青年が新たなトラブルを引き起こし!?謎だらけのマネージャー・憂夜の素顔に迫る表題作ほか、全4編を収録したホスト探偵団シリーズ第4弾!
和助と作蔵は信州の幼なじみ。江戸で食い詰めた二人は、仏具屋へ押し込みに入る。盗んだ五十両は、ほとぼりがさめるまでと、和助が箱に入れ質屋『万屋』へ預けたが…。店主の藤十郎は、箱の重さに不審を抱き、和助を探り始める。やがて二人にお上の手が伸びた時、裏で幕府を脅かす意想外のからくりが仕組まれていたことが判明。悪を挫き庶民を護る藤十郎の名裁きやいかに!痛快人情捕物帳。
自称「貴族」で趣味は「探偵」という謎の男が、コネと召使いを駆使して事件を解決! 斬新かつ精緻なトリックと過去に例のない強烈なキャラクターが融合した、奇跡の本格ミステリ集。(解説/千街晶之)
同じ大学に入学した妹と同居することになった「私」。妹を追うようにして写真部に入った私は、顔に皮膚炎をわずらいながらも写真の魅力に少しずつ引き込まれていく。そんな私を妹は意図的に無視し続ける。いびつな二人暮らしが続くなか、ある日妹は荷物と共に忽然と姿を消して…。現実世界に突如現れる奇妙な出来事を丁寧な筆致で掬い取る。第149回芥川賞を受賞した著者の小説二作品を収録。
時は明治末。財産家の次男に生まれた代助は30歳になっても仕事に就かず、結婚もせず、父の金に徒食して暮らしていた。ある日、失職して上京した友人、平岡の来訪を受ける。彼の妻、三千代は、かつて代助とも因縁のある間柄だった。再び目の前に現れた三千代。それをきっかけに、停滞していた日々の歯車が思わぬ方向に少しずつ動きはじめる。『三四郎』に始まり『門』へと連なる、三部作の第二作。
オスロにその年の初雪が降った日、一人の女性が姿を消した。彼女のスカーフを首に巻いた雪だるまが残されていた。捜査に着手したハリー・ホーレ警部は、この10年間で、女性が失踪したまま未解決の事案が、明らかに多すぎることに気づく。そして、ハリーに届いた謎めいた手紙には“雪だるま”という署名があった…。全世界でシリーズ累計2000万部、ノルウェーを代表するミステリー作家の傑作。
“雪だるま”事件は連続殺人の様相を呈していた。また、10年前に起きた警官失踪が、事件に関係していることも明らかとなる。捜査班の前には、次々と容疑者が浮かぶが、真犯人はあざ笑うかのように先回りし、やがて、その魔手は、ハリーの身辺にも迫る…。アルコール依存症と闘いながら捜査に打ち込む、陰影に富む主人公と、癖のある同僚警官たち。30カ国以上で出版されている傑作警察小説。
わけありの武家の女三人と頼りない案内人(御師)の珍道中若い女巾着切り、いわくありげな浪人者、犬を相棒にした抜け参りの子ども…いくつもの出会いが祖母の、母の、孫の人生を変えていく。心がほっとあたたまる長編時代小説。
定年後のバラ色の人生を信じていた威一郎を待っていたのは、家族との深い溝だった。娘は独立、妻は家を出てしまい、残ったものは犬のコウタロウだけだった。現代の夫婦像を見つめた異色の長篇。 (解説/藤田宜永)
葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い…。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。