小説むすび | 出版社 : 風詠社

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漆黒のLAST WALTZ〈帰還〉漆黒のLAST WALTZ〈帰還〉

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2025年12月2日 発売

柳原郁夫は独立して自分のビジネスを始めたいと考えるが、妻の裕子からは強く反対され、計画を断念する。それから1年後、今度は妻の裕子が女性起業家養成塾を立ち上げ、多くの参加者を集め成功を収める。その後、裕子の様子に変化が見られ、医師から中程度のアルツハイマー型認知症と診断される。徐々に彼女は出不精になり、階段やエスカレーターの使用を避けるようになる、外出時は郁夫が付き添ったが、ショッピング中の混乱や物忘れが頻繁に起こり、裕子は自身の行動に戸惑いを見せ始める。そして、優しい性格だった裕子は次第に激しい怒りから物を投げたり、時には包丁すら手に取るようになってしまう。家族は彼女を守り、耐えることが続いたが、年月の経過と共に関係が次第に複雑になっていった。その後、施設に入居したが、その生活中に裕子の体調が急変し、膵臓がんが発見された。余命宣告を受けた彼女は在宅看護を受けながら最後の日々を家族と穏やかに過ごすが、徐々に体力が衰えていく。それでも息子・祐の支えもあり、裕子は一時的に生き生きとし、病気を忘れたように見えたが、緩和病院への転院前夜に、裕子は家族に見守られながら静かに息を引き取った。郁夫は妻を悼みながら、裕子のことを思い出の中で大切に抱きしめる。 第一章 孤独から共生へ/第二章 意表を突かれて/第三章 たゆたう魂/第四章 共生から自立へ/《エピローグ》愛しきは命

小説 長嶺諸近小説 長嶺諸近

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2025年11月14日 発売

平安末期、藤原道長が栄華を誇っていた時代に、対馬、壱岐、九州北部を刀伊の海賊船50隻が襲った「刀伊の入寇」。初めに襲われた對馬国で代々地元の地方文官を務めてきた長嶺諸近は、援軍も来ない中、島の子供たちの命を助けるために捕虜となる。敵の隙をついて逃げ出したものの、家族や島民達は助けられなかった。島に戻った諸近は心無い噂を流され、このままでは生きていても甲斐がないと家族を取り返しに国外脱出を図る。高麗国までたどり着いたものの、官人による違法脱国は重罪。しかし高麗国の通詞の機転により270名の島民たちと共に無事対馬へと帰還する。さらに取り調べを受けた太宰府での太宰権帥 藤原隆家との出会いが諸近の運命を大きく変える。都で藤原道長親子に翻弄された隆家は、諸近の姿を己に重ねいつしか深い友情を結ぶ。しかし、都からの沙汰はなかなか降りず、やがて隆家も京都に戻ることになり、諸近に、「死んだことにして島民を救った長嶺諸近という名前は残し、観世音寺の下僕『隆永』として生きていかないか。男子が生まれれば、私が引き取って育て長嶺の名前を復興させよう」と提案。隆家の深い配慮に名前を捨てて隆永としての新しい道を歩き始めることとなった諸近。やがて妻を得て男子も誕生。約束通り、隆家の元で大切に育てられ、十数年後、再び太宰府に戻った隆家と共に戻ってきた諸近の息子高丸は、その地で元服。長嶺の氏も復活する。

永き清流永き清流

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2025年10月10日 発売

幼い頃に父を失い、母に育てられた佐藤藤佐(さとう・とうすけ)は、母親が工面した資金で江戸に旅立つ。江戸で旗本の柳生但馬守邸で奉公を勤める傍ら家計財務を担った。その後、豪農の養子となり、妻を得た藤佐は子宝にも恵まれた。その子泰然(たいぜん)は、蘭学医を目指し高野長英の門下に入った。泰然の末子となる林董(はやし・ただす)は英語に長け、工部省に入省。官吏となって17年余りの経験を経て、彼の行政手腕は地方の首長が務まるまでに磨き上げられていた。明治33年2月、林董は正式に駐英公使の辞令を受けた。その後、満洲問題では、外相となっていた林董の外交方針と関東都督府との対立があり、満洲の日本陸軍が強硬な姿勢を取り続けた。それは清国の反発を招き、紛争が継続していたが、政府は外交努力を続け、日仏協約や日露協約を締結し国際協調を進める一方、大韓帝国への圧力を強めた。林董は外務省を去った後、晩年は病に苦しみ、1913年に静かに生涯を閉じた。その人生は波乱に満ちており、多くの困難に直面しながらも、外交官としての使命を果たそうとした。佐藤藤佐、泰然、林董ら佐藤家の人々を中心に幕末から明治に至る激動の時代を背景に彼らの人生と当時の傑物たちを描いた歴史大河小説。 永き清流

小説 見者の世紀小説 見者の世紀

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2025年5月7日 発売

徳川昭武は、欧州各国で「プリンス・トクガワ」と呼ばれ、将軍の後継者とみなされていた。昭武の別荘は松戸にあり、維新後そこで慶喜らと写真撮影や作陶などに興じた。昭武が残した写真は趣味の域を超え芸術としても出色の作品であり、どこでそのような技術を身に付けたのか謎であった。昭武は第3回のパリ万博に幕府名代として出席、パリ滞在中に写真師ジャックと知り合う。ジャックは写真の黎明期に遭遇し、一生の仕事にするとともに当時勃興していた印象派の画家達や作家、知識人との付き合いもあった。彼らは当時の最新技術であった写真に並々ならぬ関心を持っていた。そんな彼らと接するうちにジャックは写真撮影の革新を考える。しかし、普仏戦争を境に、世の中は大きく変わってゆく。セザンヌは展覧会に「首吊りの家」を出展。ジャックはそれを見て、写真と絵画の違い、類似点などを考えながら写真芸術の本質を極め始める。20世紀になって彼は日本に渡り、昭武が撮影した写真に遭遇する。それは当時の松戸の風景などを撮影し、現像したものだった。そこには、自らの幕府が作り上げた国家に対する愛着か、昭武が目撃した西洋文化習得に邁進していく新政府に感じるものがあったのだろうか。本書は、19世紀半ば以降のフランスを舞台に、実在の画家や小説家、そして写真家が登場する。徳川昭武とジャックが狂言回し的な役割を果たし、当時の芸術家達の状況や芸術論、思想が描かれる。 一九○五(明治三十八)年四月 上野駅/一八八七年 エジプト アレキサンドリア/一八六五年 パリ 木曜会/一八六七年六月 パリ・出会い/一八六七年夏 パリ カフェ・ゲルボア/一八六七年夏 パリ・キャプシーヌ街 ナダール写真館/一八六七年秋 パリ カフェ・ゲルボア/一八六八年冬 パリ郊外/一八六八年 パリ カフェ・ゲルボア/一八七二年 パリ カフェ ヌーベル・アテーヌ/一八七四年四月 パリ、ナダール写真館 印象派第一回展/一八七七年四月 パリ・ル・ベティエ通り、第三回印象派展会場/一八七九年 パリ北郊 イル・ド・フランス/一八八○年夏 エジプト アレキサンドリア/一八八一年五月 マルセイユ旧港/一八八六年春 パリ ラフィット通り一番地/一八八八年 プロバンス アルル/一八九○年八月 プロバンス、サント・ヴィクトワール山/一八九二年 パリ/一八九五年十一月 パリ/一八九八年 パリ郊外/一九〇二年 南フランス/一九〇四年(明治三十七年) 極東へ

8人の日本女性とその他のお話8人の日本女性とその他のお話

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2025年5月1日 発売

本書籍、『8人の日本女性とその他のお話/8 Japanese Women & other stories』は日本人女性に関する短編集です。著者はカナダ、バンクーバーに住んでいますが、毎年何度も東京を訪れています。ただ、日本に住んだことはありません。そのカナダ人としての視点から、日本や日本人、特に日本人女性を描く短編集は、日本人読者にとって新鮮で興味深いものになるのではないか、という想いが執筆の動機となりました。また、英語話者である著者自身が、日本語で小説を書いたのは珍しく、日本語と日本文化を尊重しながら作成することに尽力しました(著者まえがきより)。運命のように出会って恋に落ち、燃えるような情熱ーー。やがて垣間見えてくる別れの気配に怯え、傷つき、そして諦め、さらに静かに受け入れてゆく。そんな揺れ動く微妙なおとなの恋の心理を何気ない筆致で描く珠玉の短編集。各扉裏のQRコードを読みとると著者作曲の音楽が流れ、これらの曲をBGMとして物語と一緒に楽しめる。 8人の日本女性/1 亜矢子/2 雅美/3 美枝子/4 なおみ/5 邦子/6 よしこ/7 麗子/8 多美香/8夜の日本の夢 /1 来なかった/2 今でも/3 リス/4 雲/5 失念/6 オオカミの遠吠え/7 伝え忘れ/8 木の心/8話の日本の思い出/1 グッチ/2 幸子/3 真由美/4 さよなら/5 浩子/6 いつまでも/7 どうしても/8 百合子

孤城の蠕き孤城の蠕き

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2025年4月28日 発売

「大化の改新」は、西暦645年の蘇我入鹿の暗殺に端を発する。この戦略的な暗殺は皇極天皇、中大兄皇子、中臣鎌足、蘇我石川麻呂を含む反蘇我派が計画・実行し、蘇我蝦夷の自害によって決着をみた。蘇我入鹿の専制的な政治体制に反発したこれらの人物たちは、新たな政権への布石を打ち、後に壬申の乱が発生し、天智天皇の後を巡って大海人皇子と大友皇子が争い、大海人皇子が勝利した。この時期を通じて、多くの権力者が暗殺、敗死し、または自害に追い込まれた。天武天皇として即位した大海人皇子により、日本の中央集権化が進み、飛鳥浄御原令は天皇という称号を、また藤原不比等らによる大宝律令は日本という国号を制定した。さらに近江大津宮への遷都や新たな時代の幕開けとして、持統天皇による平城京への遷都などが行われた。これら一連の出来事によって、日本の古代史における重要な基盤が形成された。この激動の時代を生きた人々の中には、権力争いに翻弄されながらも、たくましく生きた女性たちや悲劇的な結末を迎えた人物も多くいた。騒乱が続く中で、辛酸をなめながらも新しい体制を築くために尽力したのだ。この時代は、現代日本の基礎を築いた古代の重要な転換期といえる。「大化の改新」を機に、旧体制が一新され、様々な制度が整えられた。現代日本の基礎を築いた古代の重要な転換期を描いた歴史小説。 消された野望/それぞれの思惑/疑惑の陰謀/深い苦しみ/苦渋の決行/作為の謀反(むほん)/妹との愛/まやかしの和解/計画された裏切り/悲しい恨み/衝撃の連鎖/欺瞞の企て(ぎまんのくわだて)/決戦へ/苦悩の敗戦/倭国の存続(わこくのそんぞく)/煩悶(はんもん)のとき/兄弟の決別/盟友の死/空虚な日々(くうきょなひび)/新時代へ

髪結い床 おいと髪結い床 おいと

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2025年3月24日 発売

おいとは、地元の深川今川町で髪結い床を開くことになった。以前は華やかな花街でお里師匠の下で働いていたが、急病で亡くなったお里から、弟子たちと共にそれぞれの店を持つ夢を託された。おいとは周囲の支援を受けながら、不安を抱えつつも、自身の店を立ち上げた。徐々にお客が訪れるようになり、地元の好みを理解しながら、髪結いの「技」を磨いていく。特に、初めて髪を結う弟子のお恵を指導しながら、おいとは自らの技術も向上させていく。お客の反応を見ながら、流行を取り入れつつ、地元ならではの髪形を確立していくことが求められていた。数ヶ月が経つと、店も繁盛し、特に年末には多くの客が訪れるようになった。おいとは新しい技術を弟子たちに教えていく中で、自己の成長も感じる。幼い娘の誘拐、仇を求めて江戸にやってきた若侍への淡い恋心、弟子の出奔、最愛の肉親の死……様々な出来事に翻弄されながらもおいとは、弟子たちを一人前の髪結いに育てることを使命とし、時代の流れに合わせた新しい技術を磨くことを誓う。髪結いの仕事は、彼女の人生そのものであり、客のために美しい髪を結うことが髪結いを生業とするおいとの喜びなのだ。未来を見据えながら、さらなる成長を目指し、髪結いとしての道を歩んでいく。 前口上(前作のあらすじ)/第一章 「髪結い床」おいと/第二章 勾引(かどわかし)/第三章 敵仇(かたき)/第四章 深川えにし/第五章 川井リク/第六章 灯籠(とうろう)びん

多奈川線多奈川線

著者

中村勲

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2024年12月17日 発売

改札口を通り、長い階段を上がる。階段の外に緩やかなスロープがあるのを知っている人は少ないだろう。そこにはかつてレモンの木が植えられていたが、今はもうない。上まで続いているので、以前、資材などを搬送するのに使用されたのかもしれない。階段の途中から、瓦屋根が見え、視界が少しずつ広がる。深日の町並みが一望でき、その向こうに大阪湾が見えると、プラットホームだ。今日の淡路島はうっすら霞がかかり、いつもより遠くにあるように見える。海は濃い藍色だ。南海電鉄で海と淡路島がはっきり見える駅はここだけであろう。プラットホームを歩いてベンチに座る。目の前に見える宝樹寺のソメイヨシノは五分咲き。線路をはさんだ向かいには、雑草が茂るプラットホームがある。(中略)電車は春の陽を浴びた緑のトンネルをくぐり抜ける。樹々の葉っぱがきらきら光り、右に流れて行く。その向こうに見える山々には山桜の薄いピンクが灯っている。(本文より)全長2.6キロ、緑あふれるのどかな風景のなか、2両の電車が4駅をつなぐ多奈川線。その沿線にある中学校を舞台に、大人になりかけた少年少女とそれを見守る教師たちによって繰り広げられるさまざまなドラマ。 多奈川線/深日町駅/謎のトンネル/ガイア塾/薫風/偶然と出会い/深日港駅とフォンターナ/夢の中でも人は成長する/プレゼン大会への挑戦/祭り/窓に映るきみ/和歌山のU塾/制御できないパワー/岬まちづくりコンテスト/軍需工場で始まった授業/衝撃/独演会/負の体験/バケツリレー/月明かりの教室/勇敢な犬/お燈まつり/古代豪族紀氏の末裔/斑鳩と平群/五世紀の市/大クスノキの樹上で/淡輪から木ノ本へ/金の勾玉/特別な一日/多奈川駅

ヘレン・ヴァードンの告白ヘレン・ヴァードンの告白

リチャード・オースティン・フリーマンの『ヘレン・ヴァードンの告白』は、20世紀初めに多数登場したシャーロック・ホームズのライバルたちの中でも最も人気を博した名探偵ソーンダイク博士が登場する長編作品です。若く美しいヘレン・ヴァードンは、ある日、父親の書斎のドア越しに、父とルイス・オトウェイとの激しい口論を耳にします。それは、後に彼女の運命を大きく変えることになる事件へと発展していきます。そんな中、オトウェイが死亡してしまうのです、それも自殺とも他殺とも断定できない状況で。あらゆる状況はヘレンに不利に働いていきます。真相を究明すべく、法医学者ソーンダイク博士の科学的捜査のメスが入ります。オトウェイ死亡の真相が究明されていく物語終盤の検視官とソーンダイク博士との激しい質疑応答は、科学的捜査の実証を重んじるフリーマンの面目躍如。本格ミステリの醍醐味を堪能できる傑作、ついに初邦訳です! ヘレン・ヴァードンの告白/訳者あとがき

独自商品を目指す群像独自商品を目指す群像

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2024年11月6日 発売

風花良太は、突然の転勤命令に悩み続けていた。所長は、エアコンの売り上げが目標に達していない現状を説明し、製造設計部門の強化が急務であるとし、風花がその適任者だと推薦したというのだ。長年働いてきた研究所に愛着を持つ彼にとって、転勤は受け入れ難いものであったし、家族にとっても大きな問題であった。帰宅後、妻と転勤によって引き起こされる様々な問題について話し合うが解決策が見えないまま夜が更けていく。一方、若い同僚達は、風花の転勤について噂し会社の方針に疑問を抱いていた。風花は、考え抜いた末、転勤について、単身赴任という選択肢を取ることで、家族にとっても最良の生活を見出そうとしていた。風花は、技術者として働いているが、物づくりの技術というのは、この社会で最も重要なことの一つであり、社会にとって役に立つやりがいのある仕事といえる。同時に自分の携わっている仕事で成果を上げて、会社の中で評価され昇進することも大事だ。それは、自分についてきてくれた部下たちの評価を高めることにもつながるからである。しかし、結局は技術者としてベストを尽くすことが大事であり、そのことに信念を持ち、それを目指して生きていけばいいのだと改めて思うのだった。風花良太をはじめ、新たな商品開発に挑む技術者たちを通し、組織の中で生きること、人事を巡る人間模様、そして家族との絆を描く自伝的長編小説。 第1章 転勤/第2章 単身赴任/第3章 試行錯誤/第4章 技術者たちの矜持/第5章 思いがけない転勤打診/第6章 逆風に負けずに/第7章 家族と共に

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