1970年発売
城の牢に幽閉されたファブリスをめぐってパルム宮廷の政争はさらに激しく展開する。才気と美に輝く叔母サンセヴェリナの情熱、モスカ伯爵の精妙な政治学、政敵コンチ将軍の娘クレリアの可憐な恋。個性的な多くの副人物を配し、19世紀前半、動乱期イタリアの小公国パルムを描いて「広範な社会的真実」を見事に浮かび上がらせた傑作。
敗戦間近。かの耐乏生活下、独身の映画監督と白痴女の奇妙な交際を描き反響をよんだ「白痴」。優れた知略を備えながら二流の武将に甘んじた黒田如水の悲劇を描く「二流の人」等、代表的作品集。
発端の怪奇性、中段のサスペンス、解決の意外な合理性、この本格推理小説に不可欠の3条件を見事に結合して、独創的なトリックを発明するカーの第一短編集。奇妙な事件を専門に処理するロンドン警視庁D3課の課長マーチ大佐の活躍を描いた作品を中心に、「新透明人間」「空中の足跡」「ホット・マネー」「めくら頭巾」等、全10編を収録。解説=中島河太郎
肺病でレイテ島に上陸した田村一等兵。死の予感から、島に踏み出した田村が見たものは。ミンドロ島で敗戦を迎え、米軍捕虜となった著者が、戦地と戦争の凄まじい有様を渾身の力で描き、高い評価を得た一冊。
元禄期の名優坂田藤十郎の偽りの恋を描いた『藤十郎の恋』、耶馬渓にまつわる伝説を素材に、仇討ちをその非人間性のゆえに否定した『恩讐の彼方に』、ほか『忠直卿行状記』『入れ札』『俊寛』など、初期の作品中、歴史物の佳作10編を収める。著者は創作によって封建性の打破に努めたが、博覧多読の収穫である題材の広さと異色あるテーマはその作風の大きな特色をなしている。
夢に現れた不思議な出来事を綴る「夢十夜」、鈴木三重吉に飼うことを勧められる「文鳥」など表題作他、留学中のロンドンから正岡子規に宛てた「倫敦消息」や、「京につける夕」「自転車日記」の計6編収録。
退屈になると家族が集まり”物語”の連作を始める入江家。個性的な兄妹の性格と、順々に語られる世界が重層的に響きあうユニークな家族小説の表題作など、バラエティに富んだ7篇を収録。 秋風記 新樹の言葉 愛と美について ろまん燈籠 女の決闘 古典風 清貧譚
恐怖的なまでの法悦を描く無二の作家マッケン。英国怪奇小説の黄金期を代表する彼の作品は、いずれも妖(あや)しいまでの白光に包まれている。本書には、白い粉薬を服(の)んだがために青年の肉体に起きる変容を綴った「白い粉薬のはなし」を始めとする円環をなす一連の奇譚を集めた表題作に、“聖杯”をテーマにすえ、怪奇小説のひとつの終点をも暗示する『大いなる来復』を併せて収録した。訳者あとがき=平井呈一
はしがき 序 一 ダルタニャン老人の三つの贈物 二 トレヴィル邸の控えの間 三 初の謁見 四 アトスの肩、ポルトスの吊帯、アラミスのハンカチ 五 近衛の銃士と枢機官の護衛士 六 ルイ十三世 七 銃士の内証 八 宮廷の密謀 九 ダルタニャン片鱗をあらわす 一〇 十七世紀の張り込み所 一一 事件はもつれる 一二 バッキンガム公ジョルジュ・ヴィリエ 一三 ボナシュウ氏 一四 マンで見た男 一五 法官と武人 一六 司法卿セギエ、かつてせしごとく、また鐘を鳴らさんと紐を探すこと 一七 ボナシュウの家 一八 恋人と夫 一九 作 戦 二〇 旅 二一 ウィンテル伯爵夫人 二二 舞 踏 会 二三 逢 引 二四 離 れ 屋 二五 ポルトス 二六 アラミスの論文 二七 アトスの妻 二八 帰 還 二九 身仕度の苦心 三〇 ミレディー 訳 注
三一 イギリス人とフランス人 三二 代訴人宅の午餐 三三 侍女と奥方 三四 アラミスとポルトスの身仕度の話 三五 夜はすべての猫が灰色になる 三六 復讐の夢 三七 ミレディーの秘密 三八 アトスが一歩も運ばず身仕度をしとげた話 三九 おもかげ 四〇 恐ろしい幻影 四一 ラ・ロシェルの攻囲 四二 アンジューの葡萄酒 四三 赤鳩舎亭 四四 煖炉管の効用 四五 夫婦の場合 四六 サン=ジェルヴェー稜堡 四七 銃士の密談 四八 家庭の事情 四九 宿 命 五〇 兄妹の会談 五一 士 官 五二 囚われの第一日 五三 囚われの二日目 五四 囚われの三日目 五五 囚われの四日目 五六 囚われの五日目 五七 古典悲劇の手法 五八 脱 走 五九 一六二八年八月二十三日のポーツマスの出来事 六〇 フランスでは 六一 ベテューヌのカルメル派尼僧院 六二 二種の悪魔 六三 水 滴 六四 赤外套の男 六五 裁 判 六六 処 刑 結 末 後 の 話 解 説 訳 注