1971年発売
父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエルを主人公に、近づきつつある大人の世界を予感して怯えるひとりの少年の、屈折した心理と移ろいやすい感情を見事に捉えた半自伝的な処女長編。戦後アメリカ文学界に彗星のごとく登場したカポーティにより、新鮮な言語感覚と幻想に満ちた文体で構成されたこの小説は、発表当時から大きな波紋を呼び起した記念碑的作品である。
さようなら母さん。泣かないでカリーン。ぼくは行きたくない。本当はここにとどまって、君といっしょに働いて、子どもをつくり、君を愛したい……。異国の地の戦場で砲弾にあたり目、鼻、口、耳をそぎとられ、両腕両足まで切断された青年ジョニーの心の旅を描く問題作。平和への思いをこめられて読み継がれた反戦文学の金字塔。
南太平洋に浮かぶ絶海の孤島キャスパック。そこは百万年前の恐竜時代さながらの世界だった。この島にたどり着いたアメリカ青年ボウエンは、襲い来る太古の怪獣や有翼人間と戦いながら脱出の機会をうかがっていた。ある日、彼は島を支配する不可解な進化の法則に気づく。どうやら脱出の成否は、その謎をとくことにかかっているらしい。ロストワールド三部作を全一巻に合本した。
数百年にわたって京都御所内の御文庫に保管されている皇室御所蔵本を精密に影印。大正年間以後はじめて原本から直接撮影させていただいたものであり原本さながらの真姿と風韻を発揮している。錯簡の状態と編者による新発見事実等を説明した厳密なる解題を付した。
英国の片田舎に住む開業医ビクリー博士は、妻を殺そうと決意し、完璧な殺人計画を練り上げた。犯行過程の克明な描写、捜査官との応酬をへて、物語は息詰まる法廷の攻防へ。謎解き小説の雄アントニイ・バークリーが、一転、犯人の側からすべてを語る倒叙推理小説の形式を活かして完成させた本書は、殺人者の心理を見事に描いて新生面を拓いた。驚くべきスリルに富む歴史的名作!