1983年発売
何が起こるかだれにも予測できない謎の地帯、ゾーンーーそれこそ、地球に来訪し地球人と接触することなく去っていった異星の超文明が残した痕跡である。ゾーンの謎を探るべく、ただちに国際地球外文化研究所が設立され、その管理と研究が始められた。だが警戒厳重なゾーンに不法侵入し、異星文明が残していったさまざまな物品を命がけで持ちだす者たち、ストーカーが現われた。そのストーカーの一人、レドリック・シュハルトが案内するゾーンの実体とは? 異星の超文明が来訪したその目的とは? ロシアSFの巨匠が描くファースト・コンタクト・テーマの傑作
わたしと結婚にしたいなら、あの女と寝てみせて──奈見子が提案した。一介の自動車セールスマンでは納まらない裕也の野望に火がつき、世界がぐるっと廻りはじめる。奈見子は地方財界の大物の1人娘、あの女は金沢そのもののような由佳。風花舞う街に若い野心がたぎり、新旧の愛が息づくハード・ロマネスク。
イングランドの町で引退した医師が失踪した。三分ほど前には、くつろいで新聞を読んでいる姿を妻が見ているというのに。誘拐か? それとも数日前、彼が密かに会っていた女性と駈け落ちしたのか? 彼が書いていた原稿とは何か? そしてまた失踪者が一人……。フレンチ警部が六十四の手掛かりをあげて連続失踪事件の真相を解明する。
日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展するー。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。
駈け落ちを決行した哲と明子のトランクからナント死体がー。新生活を夢みて出発したのに、とんだことから殺人事件に巻き込まれた恋人たちを、ユーモアタッチで描く青春推理。(解説・神津カンナ)
戦時下の弾圧の中で信仰につまずき、キリストを棄てようとした小説家の「私」。エルサレムを訪れた「私」は大学時代の友人戸田に会う。聖書学者の戸田は妻と別れ、イラスエルに渡り、いまは国連の仕事で食いつないでいる。戸田に案内された「私」は、真実のイエスを求め、死海のほとりにその足跡を追う。そこで「私」が見出し得たイエスの姿は?愛と信仰の原点を探る長編。
人は精がのうなると、死にとうなるもんじゃけー祖母が、そして次に前夫が何故か突然、生への執着を捨てて闇の国へと去っていった悲しい記憶を胸奥に秘めたゆみ子。奥能登の板前の後妻として平穏な日々を過す成熟した女の情念の妖しさと、幸せと不幸せの狭間を生きてゆかねばならぬ人間の危うさとを描いた表題作のほか3編を収録。芥川賞受賞作「螢川」の著者会心の作品集。