1987年発売
池禅尼(平清盛の義母)の涙の嘆願で頼朝は命を救われた。伊豆へ流された頼朝は仏道三昧の日々に身をやつして再起の時を待つ。だが平家の権勢は衰えを知らず、苦渋にみちた十数年の歳月が流れる。彼の無聊の青春を救ったのは、伊東祐親の姫との恋、それに破れて頼った北条時政の娘政子との結婚であった。
長州藩きっての俊才として吉田大治郎(松陰)の前途は明るい。だが時代の嵐を察知する彼の目は外へ外へと向けられた。九州遊学中に出会った山鹿万介、宮部鼎蔵らの烈々たる尊皇攘夷の弁、平戸で見た数多くの黒船や異人の姿、大治郎は外圧の高まりを身に刻んで知った。彼は叫ぶ、神州の民よ、めざめよ、と。
内憂外患の激動期。松陰はついにアメリカ密航を決意した。1854年3月28日早暁、めざすは下田沖に停泊中のペリー艦隊。松陰は盟友金子重之助と共に勇んで小舟を乗りだした…。日本を憂い、自ら維新の起爆剤となって行動し、30歳で散った変革期のリーダー吉田松陰の生涯を描く。完結篇。
杉丸だけが華雅学園に通うことになったので、うららの提案で壮行会をやることになった。香織さんも加わって、それはにぎやかなこと。帰り道、送ってくれた朱海さんを、またまた意識してしまう。「愛するって、戦うことよ」という杉丸のことばが思い出される。高校のクラスメイト、かわった人たちばかり。中学の時に世話になったツル先生に呼ばれた。波瀾にとんだ高校生活の幕開けになりそう。
それは春、猫のシーズンたけなわのころだった。陽気に誘われて、つい散歩に出たおいら(タマ)は、公園で知見らぬ白猫と出会った。犬のようにデカイそのメス猫は、恥ずかしそうに「チビといいますの」と自己紹介した。話をきいてみると、最近、越してきたばかりの飼い猫で、迷子になってしまったらしい。そのチビが、「おそばにいても、よろしいですか?」と、おいらに身をすりよせてきた!
美女丸んちで眠りっぱなしだったあたし(マリナ)が、ふと目を覚ますと、そこはなんと棺桶の中っ!あせりまくったあたしだったが、気を静めてよく見回すと、棺桶ではなく美しい輿に寝かされて運ばれていたのよ!輿を担いでる人たちも、前後につき従う人たちも、古代ローマの服を着た外人さんたち。おまけに、まわりの景色や建物は、ローマ帝国そのまま。いったい、ここはどこなのっ!
ぼくの露子がアメリカ留学から帰ってきて、やつ(彰彦)のうさぎが駆けおちから戻ってきて、そしてもう一度、暑い夏がやってきた。そんなある日、ぼくたちはテレビのニュースで偶然、蒸発した吉田ふみ子さん(田沢さんの姉であり、まみちゃんの母である人だ)を見てしまった。うさぎの清美ちゃん、露子、ぼくの三人は、まみちゃんを連れて、大阪までふみ子さんを探しに行くことになった…。
伸次さんに会いたいなァ。プロポーズはいつかしら…なんて、のんびり夢想していたあたし(留那)は、TVのニュースにぶっとんだ。“火星人が独立宣言。月まで占領”だなんて!!伸次さんは今、月に出張中。人並はずれたおっちょこちょいの彼、無事でいるのかしら?矢もたてもたまらず心配になったあたしは、伸次さんのハデハデ模様のギターをしょって、パパとふたり、月へ行くシャトルに乗った!
20世紀の終わり、政府は支配するための人口都市を関西に造った。その象徴が神殿で、教祖によって新たな階級制を作りあげようとしていた。当然、支配に反対する者が急増した。革命家、カラス、バクダン屋、ネコたちは、同じ隠れ家に住む反対者の仲間だった。全員がそれぞれ、特別の能力をもっていた。革命家が街でふしぎな少女ビィを拾ってきたころから、警察の手入れがはげしくなった。
警察の追及をなんとか逃げのびた革命家たちだったが、なぜかビィが忽然と消えてしまった。ネコは彼女の行方をさがしてシティに入り、神殿へ潜りこんだ。殺人につぐ殺人。ネコは支配者が作りだした対人用殺人生物兵器なのだ。そんな彼の心を開かせたのはカラスだった。一方、革命家も困難な依頼を受けた。神殿に入り、コンピューターに閉じこめられた友人を解放してほしいというものだった。
あたし、夕花子。バニーガールのバイトしながらひとり暮らししてたけど、冬が来たからウサギをやめてネコ(無職)になったの。時々「来いよ」とTELかけてきてSEXするおとこ(28歳・放送作家)がいるのだけど、彼はデパートガールと同棲中なんだ。そんなある日、葉介という純情な(?)予備校生と知りあった。彼ったら、大学やめてケーカンの試験を受けるといいだしたの…。
大正の末ごろ。秋田県・大館から東京・渋谷に住む大学教授・上野秀次郎博士の家に、1匹の秋田犬の子犬がもらわれてきた。「前肢をぐっと八の字に踏んばっているな。ハチと名づけよう。どうだね?ハチ公」その日から、上野先生とハチは、熱い信頼で結ばれることになったのだった…。秋田犬・ハチの生涯を通して、愛とは?信頼とは?と問いかける涙の感動物語!
「もう檻の中の運動会はやめだ」-全共闘高揚期、茶番劇に飽きた4人の男たちが本物の銃と弾丸を用意して起ち上がった。活動家たちに、いささかヒステリックなジャーナリズムに、そして運動会そのものに“一杯食わせて”やるために…。遊びでもなく、気晴しでもなく、本物の戦いに命をかけた男たちの鮮烈な思いを描く衝撃のネオ・ハードボイルド。
戦争の火の手は、つまらぬことをきっかけに燃えあがる。-ここロンジュヴェルヌ村とヴェルラン村の子どもたちも然り。武器は棍棒、パチンコ、石を手に、家や学校や教会の偽善的世界を抜け出し、幼い戦士たちが勇躍出陣する。素朴さと無邪気さの中に大人の世界を風刺し、生命力と活力と情熱に溢れた児童文学の名作。名画「わんぱく戦争」の原作。
この社会は腐り、尊敬に値する人間は、どこにもいない。老人はCMの甘ったるいささやき、クイズ番組のあほらしさに怒って、ついにテレビをショットガンでぶち抜いた。…「いいかげん、くたばっちまえ」青年は世界に向って吐き捨てるように言った。だが世界はだらだらと尾を引いていく。自殺するしかない。青年は金門橋の橋げたにぶらさがった。…コレハ我ガ肉体デアル…。取ッテ食ベヨ…。ジェインは一方の手でひとりの男の巨大な背り返ったペニスを、もう一方の手で、もうひとりの男のものをそっと握りしめた。彼女は自分の肉体がグランド・キャニオンのように開くのを感じた。…全米批評家賞受賞、現代アメリカ文学の最高傑作。
広島カープの強さの源は〈モミジマンジュウ〉で、〈ヤキュウ〉のルーツは柳生一族にあった!自称“日本通”アメリカ人W・C・フラナガンの誤解とコジツケの処女作「素晴らしい日本野球」。そして、ソ連に占領された戦後日本の姿を描く「サモワール・メモワール」など、微妙な違和感を、大胆なフィクションをテコに極限まで拡大して笑いのめす異常発生作品群10編。
プロの当り屋、赤木圭一郎は、今を去ること10年前、当り屋専門学院の講師、当り屋文左衛門が言った言葉を思い出した。「幻の少年カスパー・ハウザーを見た日、あんたは当り屋をやめなあきまへん」。そして圭一郎は見た、幻の少年が、車の前へ身を躍らせるのを…。場外馬券売場のガード下からアンスバッハのしらゆきつもる公園へ。母と子の愛憎が交錯する悲しくも美しい妄想の純文学。人気ナンバーワン戯曲「小指の思い出」原作。
西ドイツの民間会社が中央アフリカのチャドに、第三国へ貸与するためのスパイ衛星基地を建設した。情報を得たCIA長官ピーターソンは現地で工作を開始するがことごとく失敗。同じころ、あいつぐ工作員の死にKGB議長ペトロフも焦躁を深めていた。このまま事態を放置すれば、世界情勢に重大な変化が及びかねない。CIAとKGBはついに、協同で妨害工作に当たることを決意する。