1988年2月発売
東山道、江戸、棚倉、二本松…。戊辰戦争転戦のさきざきから家郷へ宛てた安岡覚之助の夥しい書簡を軸に流離の物語は展開する。幕末維新の動乱の時代と、ただならぬ運命を生きた人々の相貌を鮮かに映し出し、歴史とは何かを鋭く問う傑作長編。
露伴の文名を一挙に高めた「風流仏」。そこに定着された入神の技芸讃仰の高い浪漫性は、「一口剣」をへて屈指の代表作「五重塔」に結実し、また変幻自在の小説手法は、山中仙境での妖艶な美女との出会いをめぐる怪異譚「対髑髏」へと展開する。
事件はすべて寝台特急「さくら」で発生した。まずダイイングメッセージを残して男が怪死。ついで変事を通報した女が射殺された車内から消失。そして第3の殺人。なぜ「さくら」なのか?犯人は3度とも目撃された美貌の女性なのか!?鉄壁のアリバイが崩れたとき、殺人特急は過去に向って逆走しはじめる!
殺人事件発生!現場はこともあろうに、県警記者クラブの中。被害者は、大がかりな県庁汚職事件を追っていた敏腕記者“ゴロちゃん”こと根来だった。彼のコーヒーに青酸カリを入れることができたのは誰か。汚職事件との関連は?東朝新聞・三四郎記者のゆくてにやがて第2の殺人が発生、事件は謎を深める。
出来たばかりの、堅固を誇る若松町の監獄本署から、強盗犯たちが脱走、その探索に海坊主の親方ことなにわの源蔵もかり出される。脱獄を手助けしたのが尼姿の人物とわかった。教誨師になりすまして、金ノコを渡したのだ。ピンときた源蔵の活躍でやがて意外な潜伏先がわかった!明治の大阪を活写する捕物シリーズ。
推理作家・牧薩次は、ファンから贈られた“新幹線2階建て寝台”の切符で旅へ。が、車中で奇妙な事件が続発。その謎のカギは、ファンから預っていた“小説”に暗示されていた!?そこで牧の婚約者でスーパー・ウーマンの可能キリコも登場して…。著者お得意の“創案列車”と多層構造の異色推理長編。
幼いふたりの娘を残して母はクリスマスの夜とつぜんと失跡した。それから30年…。埼玉県隈ケ谷警察署に殺人現場目撃の匿名の手紙が届いた。それを裏づけるように金融業の男の他殺体がみつかり、男の貸し金庫からは一枚の暗号紙片が。事件は謎はらむ展開に!父娘合作で話題をよぶ感動の本格推理長編。
元M新聞サイゴン特派員の矢沢建彦のもとへ、シエーというベトナム人から1通の手紙が届いた。ベトナム戦争当時、戦闘中に死んだはずの友人でジャーナリストの叶吾郎が生きているというのだ。叶の行方を探すため、矢沢は急遽、バンコックへ向かった。ベトナムに生き、愛し、闘った男たちへのレクイエム。
大恐慌大不況はやはり避けられない!米株式とドルの暴落を予言し、そのメカニズムを息詰るドラマの中で見事に解明した「絵のない」劇画世界資本主義。奇想天外な設定とスピーディーなストーリー展開。-難解な国際金融を主人公にレーガノミックスの暗部を抉る、ビジネスマン必読の本格経済サスペンスノベル。
ロープスピナー=首吊り用の縄をなう人。それは西側資本主義を破壊して永久に葬り去る一大陰謀のコードネームだった。本計画の首謀者であるロシア人天才経済学者メンシコフが実行に際して下した手は4つ。資本家に「選択の自由」を要求させ、銀行を「活性化」し、財テクをはやらせ、経済面を「面白く」し…。
好漢が手を結べば天地をゆるがすー。茫々たる大湖に立つ、難攻不落の寨、梁山泊は、いまや一国の軍勢に比敵した。義のため、威風堂々、八千余の軍勢は、寨を降り、湖を渡った。迎えるは精鋭1万2000の官軍。幡なびき軍鼓鳴る!猛獣躍り、風呼び雨おこす妖術とびかう!阿修羅のごとく激闘続く、全4巻完結篇。
花は揺れていた。咲いた花が雨に打たれる。雨よ、いつまで降り続くのか。矢沢の耳には、昔の恋人で反戦歌手だったドー・チー・ナウの悲哀に満ちた歌声が今も響く。ナウの悲惨な死には隠された大きな謎があった。ベトナムに潜入し、叶を探すうちに矢沢はナウの死の謎をも図らずも解くことになったのだった。
秀頼の誕生は新たな権力争いの種となり、関白秀次の自刃とその妻妾三十余人の斬殺という悲劇を招いた。一方、伏見大地震の混乱の中で迎えた明の講和使節が、実は無礼きわまる冊封使だとわかると、秀吉は烈火のごとく怒り朝鮮再征の令を下す。そして、再征の結着もみないまま一代の太陽児は波乱の生涯を閉じる。
太閤秀吉の死後には難題が山積していた。朝鮮からの撤兵用船舶の不足、日ましにつのる武断派武将と文治派吏将の対立、そして秀頼の母公淀君の頑迷と我執…。秀吉に後事を托された家康の使命は重い。と、そこに降ってわく“家康に異心あり!”の噂。はたして噂を流す石田三成の敵意はなにゆえか?
石田三成の家康に対する敵意はますますつのった。だが皮肉にも彼は、秀吉子飼いの七将の襲撃を避けるため家康の庇護を受ける羽目に。いったん三成を近江へ帰した家康は、上杉討伐を名目に出兵を決行。と、その留守を狙って三成挙兵、家康はただちに軍を西へ返す。関ケ原前夜、虚々実々の駆け引きが続く!
慶長5年9月15日、運命の関ケ原で戦いの火ぶたは切られた。東軍7万5千対西軍10万8千。世にいう天下分け目の合戦である。しかし、歴史のめざす方向は、すでにその前から定まっていたのかもしれない。戦は東軍のあっけない大勝利に終り、三成は京の六条河原の露と消えた。新時代の幕明けである…。