1988年2月発売
太平洋戦争前夜、日米開戦回避の特命を帯びて来栖三郎はワシントンに飛んだ。だが、ルーズヴエルト大統領、ハル国務長官を相手に交渉は難航、だましうちのように、真珠湾奇襲攻撃が敢行される。三郎の努力と願いもむなしく、若者たちが殺し合わねばならない戦争へと時代は突入していく。ドキュメンタリー・タッチで描く現代史の悲劇、全3巻。
父三郎と母アリス。そして子供たち、安奈、良、恵理。日米戦争は、幸福な家族に過酷な運命と選択を課した。明朗闊達、スポーツマンでダンス名人の良。誰よりも強く平和を願った三郎の息子良が陸軍の戦闘機乗りになって、母の故国の飛行機を操縦する若者たちと闘われなければならない!大きな戦争が、男も女も、人も国も、激流に巻き込んで突き進む。
母の故国アメリカの爆撃機B29を体当りで落し、自らは落下傘で生還しながら、その相貌ゆえに敵国人と間違われ竹槍で殺された良。平和はかえってきた。だが、愛も、恋も、命までも、奪われたものは戻ってこない。巨大な力が個人の意志を押し流し翻弄した暗い戦争の時代、ひたむきに生きた男たち女たちの非劇を描く。感動の歴史長編小説、全3巻。
美しい港町、アカシヤ香る大連。そこに生れ育った彼は敗戦とともに故郷を喪失した。心に巣喰う癒し難い欠落感、平穏な日々の只中で埋めることのできない空洞。青春、憂鬱、愛、死。果てない郷愁を篭めて、青春の大連を清冽に描く芥川賞受賞の表題作及び、6編を収録。
そこは悪夢の島か、はたまたユートピアか。スミヤキ党員Qが工作のために潜り込んだ孤島の感化院の実態は、じつに常軌を逸したものだった。グロテスクな院長やドクトルに抗して、Qのドン・キホーテ的奮闘が始まる。乾いた風刺と奔放な比喩を駆使して、非日常の世界から日常の非条理を照射する。怖ろしくも愉しい長編小説。
妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し次第に自己を喪失する。無気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。第1回谷崎賞受賞。
雪の日にひとりのこどもを殺した!…少女時代の悪夢が、姉妹に遠い影を投げかける。血の絆に惹かれるように、妹の夫と関係を結ぶ姉牧。抜き差しならない深みに入り込んでいく二人に、気づこうとしない妹百合。性の地獄にさらわれながら、ついに女たちは生の明るみへと突き抜けていく。長編700枚。
『枯木灘』『鳳仙花』等の力強い文学的達成のあと、更に新たな表現の地平を拓こうとする果敢にしてエネルギーに溢れた“挑戦する志”。現代の文学を全身で担おうとする中上健次の奔騰凝集しつづける表現の“渦”。
谷崎賞受賞作『槿』をはじめ、70年代以後の現代文学を先導する、古井由吉の、既にして大いなる才幹を予告する初期秀作群、「雪の下の蟹」「子供たちの道」「男たちの円居」を収録。
ニューヨークの大学で英文学を教えるケイト・ファンズラーは知的で魅力的な30代女性。ある夏ケイトは、高校時代の同級生に頼まれ、その友人の死んだ父親が生前J・ジョイスやD・H・ロレンスらと交わした手紙や書類を整理しに、保養地として名高いパークシャーヒルズの山荘に赴く。数日後、事件が起きる。同行した甥のリオと家庭教師は毎朝早起きして空の拳銃を隣家に向けて撃っていたが、ある朝、空のはずの銃から弾が飛び出し、隣家のブラッドフォード夫人に命中、死なせてしまう。だれかが密かに銃に弾をこめていた。そしてその犯人は、甥たちの習慣と夫人が早朝いつも庭に出ることを知っていたのだ。ブラッドフォード夫人は嫌われ者ではあったが、殺されねばならないほどの理由があったのだろうか。
デザイナー五条亜希子とCAUグループの総帥佐伯は、偶然の出会いから急速に親しさを増していった。佐伯の家庭は冷えきっていた。彼には愛人がいるし、妻は佐伯の腹心の部下と通じていた。折りからの円高不況で会社の経営が悪化し、局面打開のため、佐伯は単身シカゴへ飛んだ。だが、そこで、拉致され厳寒の湖へ投げ込まれた。虎口を脱した佐伯は見えない敵と戦うが…。
真児は、愛美と一緒に彼女の淑母・麻矢のピアノ演奏会に行った帰り、愛美が麻矢と組んで欧州行きを計画していることを知った。この計画は、丹羽の学祭を利用することになっていて、本人の知らないうちに真児も仲間に加えられていた。尚登は真児に秘密を打ちあけた。それによると、愛美がジョゼ人なため洋菓子の材料にされるという。そこで、愛美を逃がそうというのが、この計画なのだ。
ここは、とある一流ホテルー某漫画出版社のパーティー会場。美紀は、俊に連れられてまぎれこんでいるのである。そこで見かけたのが、今、漫画界一の売れっ子・速水洋二。でも彼、ちょっとおかしい。実際の年齢よりはだいぶふけて見えるし、つかれているようにも見える。それに美紀は、速水がそばを通りすぎた時、かすかな霊気さえも感じとっていまったのである。-第1話『猿の手』より。
夜の遊園地ー水晶骸骨どもが祭貴優を取り囲んだ。血戈岳の戦いで葬った阿修羅の配下だった。が、優の七宝聖剣と精霊少女・舞衣の鞭の前には、彼らは敵ではなかった。優たちは、これまで11邪神のうち6匹まで倒した。今度の相手は、覇王のタブレットを狙う恐怖王だ。タブレットが恐怖王に渡ったら、世界は破滅になる。しかし、優と舞衣の前に立ちはだかる敵は恐怖王だけではなかった。
探偵事務所の所長の茂介は、大学時代所属していた日本昔話同好会の、先輩5人の事故死や自殺の調査をしていた。その茂介に自動車事故で焼死したはずの葉子から電話が入り、葉子と間違えられて死んだ女性の身元と同好会の先輩の謎の死についての調査を頼まれた。いっぽう美香は、別件の浮気調査をしていた。茂介の調査は進展し、5人の死は、ある夏休み、同好会合宿の時に起こったことだった。
坂本竜馬の血すじをひく坂本家は、青年実業家を名のる悠馬と春雨ばあさん、小さい時に坂本家へ引きとられた高校生の百合子、そして犬の総司が住んでいる。本当は悠馬が大ドロボーだとは、百合子は知らない。悠馬には仲間がいる。剣を使うアラン・ジュニアとセクシーなモンローの2人。ダイヤをめぐる大事件の発端は、某国スパイ・ジェイコブスギーの髭を、悠馬が盗んだことからだった。
引っ越しの日の夕方、あたしはあいつに初めて会った。隣に住んでたあいつの名前は原田達彦。ついてない。というのも、原田達彦って、あたしが昔、付きあってた男の子と同姓同名なんだもの…。偶然にしてもひどい話。あいつに会うたび、転居を機に忘れようと決心した昔のことがよみがえってきそう。すべてが新しく始まるはずだったのに、あたしの前には、なんともままならぬ現実が…。
時は西暦2091年。USF(国家統合府直属特別警備局)に所属するヒロミは、17歳の女エージェント。“世界を飛び回り、素敵な男性と恋をしてハッピーエンド”を夢見てこの仕事についたのに、チームメンバーに難あり、の浮かない毎日。そこへ舞い込んだ局長命令が「トキオ・シティの過激派を逮捕せよ」しかも、めちゃ美形のエージェント、ユウと組んで!チャンスよヒロミ、ぐぁんばっ!