1988年3月発売
「あんただ!あんたがそうだ!」浮浪者の薄汚れた手がアラン医師の手を握った。たちまちアランは高圧電流にも似たショックを身体中に感じた。アランが奇跡の人になったのは、その時からだったー触れるだけでいかなる不治の病も治療できるようになったのだ!やがて彼の不思議な治療を受けようと、難病を患う人々が各地から大挙してアランの診療所に押しかけてきた。だが、この奇跡の力にはひとつ問題があった。おかげで、病人たちの間にパニックが生じるが…。
ダ・タイ・バオーベトナムに古来より伝わる奇跡の癒しの力。アラン医師はこの力を得たために妻と家を失い、あまつさえペテン師の汚名を着せられて医師連盟追放の憂き目にあった。そんな彼に救いの手を差しのべたのがマクレディ上院議員だった。だが、この上院議員の申し出も、実は自分の難病を治すためにアランを監禁し、奇跡の力を一人じめする口実にすぎなかった…。『城塞』、『マンハッタンの戦慄』で著名のベストセラー作家が放つメディカル・ホラーの傑作。
人類が宇宙に進出し、居住可能な惑星に植民するとして、どんな状況が現出するのであろうか。植民世界がしだいに建設されるとき、教育と訓練を受けた司政官と呼ばれる人間が、理屈の上では公平無私のロボット官僚たちを駆使して、その植民世界を統治するかもしれない。-司政官シリーズは、この一見統一されたかたちの中での司政官を描こうとするうちに生まれた。が…少し考えれば自明のように、それは連邦と植民世界、植民者と現住種族との間に立つ、矛盾した存在である。『引き潮のとき』は、その矛盾のうちに連邦から自己の世界を混乱に導く使命を与えられて赴任し、しかも司政官制度退潮の中でおのが何をし、どうあるべきかを追られなければならなかった男の物語というわけなのだ。社会と個人の関係に、透徹した視線を向け続ける著者のライフワーク。待望の第1巻。
長谷川清人・43歳。アメリカ各地のスキー場で催されるワールド・プロスキーレース・サーキットで、年齢・体力の限界をこえて大活躍した伝説のスキーヤーである。アスペンから始まったこのシーズンのレースは、清人と同い年のロートル・レーサー、ブルーノとの熾烈な闘いであった。清人には胸に秘した暗い目的があった。そのシーズン初め、13歳になる一人娘の舞子を西穂高で亡くしていた。彼女の死の原因になった2人のアメリカ人青年を捜し、娘の仇をとる…気力と憎悪の力だけが、清人のレースを支えていた。
饗庭仁-瞬発力を秘めたしなやかな筋肉と褐色の肌をもつ泥棒の段取屋。組織がらみの仕事は一切請けない主義だが、それが災いして、現在は文無しだ。ホテルの古美術展を襲う仕事も、たった1人の少年に目の前で鮮やかに獲物を攫われる。そして妖しい美女、葉子の色香に惑わされ、組織の仕事を請負わざるをえなくなってしまった。しかしそれが、あの少年との再会につながろうとは!妖精と呼ばれるその少年こそ、ベルフォールの宇宙生体工学研究所から逃げだした狂気のクローン・サイボーグだったのだ!気鋭が描く会心のフューチャー・アクション。
青函トンネル中央部付近に異常湧水が発見された頃、竜飛岬側から怪しい3人の男が斜坑内へ侵入していった。同時刻、上野発下り超特急アカシア209号では、青函連絡船復活を叫び爆薬を仕掛けた男女四人組が新幹線を停止、乗客を人質にトンネル内に居座ってしまった。急増する異常湧水と爆破犯、侵入者の三重の危機に、全権を委託された副技師長・梶木はどう対処するのか!パニツク長篇。
平凡なOL生活に飽き足らぬ依理子の前に、ある日“侍従”と称する謎の男が現れる。「望む所へ御供を」との言葉に誘われ、夜ごと冒険が始まった。やがてレズ・バーで出会った元侯爵夫人との愛に溺れた依理子は、夫人を追って侯爵邸へ忍び込むが、そこには夢とも現実ともつかぬ世界がー。青年を愛する侯爵。依理子そっくりの謎の少年。奇怪な蝋人形館。狂気と倒錯の館で、最後に彼女を持ち受けるものとは!
徳川三代将軍家光の治世、泰平の世が続き、武士も文弱に流れたとはいえ、まだ豊臣家残党の策動が絶えなかった。武骨一徹の旗本大久保彦左衛門の次男大八郎は父に似ず、その軟弱ぶりを、水野十郎左衛門ら旗本奴白柄組に嘲笑される始末。そんな頃、浜竜四郎と名乗る剣客が無法者を懲らしめているとの噂が流れた。青年武士大八郎をめぐる剣と愛慕の渦を描く長篇時代小説。
無法者を懲らす剣客浜竜四郎は大八郎のもう一つの顔だった。一方、徳川幕府転覆を企む流兵馬一味は浜竜四郎の名を騙り、辻斬りを働いて江戸市中を震え上らせた。兵馬の妹越路太夫を白柄組の毒牙から救い一心太助に匿わせたことで大八郎は許婚伊佐緒の父から絶縁、父彦左衛門からも勘当されてしまった。同じく家を出た伊佐緒と共に太助の世話を受け、大八郎は兵馬一味を追った。長篇時代小説。
米国の原子力潜水艦セタセアが、ソ連海軍に撃沈された。この事件で二カ月後に迫った米ソ首脳会談の実現が危うくなった。事件の鍵を握る英国のスパイ、カラソフを国外脱出させるため、英国“作戦本部”の秘密工作員クィラーが送り込まれることになった。だが、KGBの待ち伏せによってカラソフは死亡。事件の背後には、英ソ間で仕組まれた“取引”があった。好評クィラー・シリーズ。本邦初訳。
“ハードボイルド・ミステリーの始祖”としてますます評価が高まり、ハメット・ブーム到来の観さえある彼の長篇“デビュー作”-狂騒的な地獄絵図のような『ブラッド・マネー』と異色の短篇を6篇収録。いずれも初の文庫化。
東都電鉄グループの総帥で、持株会社ダルマ総業会長の鎮目甲斐。湯河原での静養の帰途、箱根ターンパイクで、車の爆発炎上現場にでくわした。焼死した男は、関東地所建物の取締役・河田大介と判明。鎮目は、日本舞踊の“神楽坂の師匠”、私設秘書の吾妻佐理と「老年探偵団」を結成、事件に首を突っこみはじめるが、今度は社長の沢村慶太郎がふぐ中毒死するという異常事態が発生。はたして、この二つの怪死は、マンション建設のため、平将門の祠を壊した崇りなのか?長篇ミステリー。
銀座で働くホステスにもピンからキリまである。羽振りのいいパトロンがついて豪奢な暮らしをしている一流ホステスから、店の保証金だけで安いアパートに住んでいるキリまで種々雑多。そして、銀座といってもキリが圧倒的に多いのだ。良子もそのキリの一人。良子の夢は、銀座で一流クラブのママになること。そんな良子の夢が、意外にも早く実現したのだが!「新・翔んでる警視」の胡桃沢耕史が軽妙に描く銀座の夜話。
米国カーネル市の市長選を前に市長夫人の佳奈子が失踪した。市長と強い繋がりを持つ日本企業から彼女の探索と護送の依頼を受けた格闘技の天才、野口。だが、市長の対立陣営にとって市長選の要となる彼女は抹殺すべきだった。ロスに乗り込んだ野口を待ち受けた恐るべき罠と韓国マフィアの暗殺集団。野口の拳が闇を裂き、極限の救出作戦が始まった。しかし、その裏には驚くべき真相が隠されていた。拳聖シリーズ第2弾。
東京の高級住宅地・成城で米国人弁護士と、その娘が殺害された。捜査線上に浮かんだ容疑者は、元米国陸軍二等兵のマイク。だが、彼はマフィアの一員で、素早く日本を脱出し、ニューヨークのハレムに潜伏したらしい。さあ国際刑事警察・特別捜査員ー響三郎の登場だ。このスーパー・スターは犯罪組織の壊滅に生命を賭ける。
最高打率を誇るセネターズのスター新海清が好打を放ち、走塁中に突然倒れ、絶命する。4万人が注視する真っ只中での不慮の出来事だ。観衆の1人だった高山検事が死の真相を追うが他殺の確証は掴めない。この検事が苦悩する人間性を中心にストーリーは進展し、焦点へじりじりと迫る。日本探偵作家クラブ賞に輝いた会心作。