1988年3月発売
謀反の挙に出て敗死した由井正雪は、死の間隙に庶子雪之介を逃がし、これに1万両の黄金の隠し場所を秘めた絵図面を持たせてやっていた。絵図面は雪之介から娘お万の手に、そのお万が大番頭も務めた水野左衛門尉の側室となって絵図面の秘密を告白したことから、左衛門尉がそれをかつての上司で寺社奉行などの重職をも務めた青山頼母に告げて絵図面を預けたのだが、左衛門尉は頼母によって放たれた刺客によって殺害されてしまったのだ。左衛門尉とお万の間に生まれた早苗・主馬之介の姉弟はいま頼母の手から絵図面をとり戻すべく苦心するが、老獪な青山一党の凶刀が2人の身に迫る。その早苗姉弟を助けるのは春之介と名のる虚無僧であった。-はたして黄金の謎を秘めた絵図面の行方は…!
足利幕府勘定台所目付の貝塚源太夫と木戸鹿九郎の両人に野狩りの混乱のうちに討たれた郷士重右衛門の子藤次は、いまだ14歳の少年であったが、父の仇を討つべく独り剣を学ぶ。彼の師となった老僧こそ、鬼一流6代室行雲為家であった。5年後、鬼一流の秘太刀“乱剣”の極意をさずけられ、7代祇園源宗春に成長した藤次は、いよいよ京の都へと上った。伊賀の兵法者伊賀崎幻雲の娘春海と知り合った藤次は、卑怯な神山左近らの手槍の襲撃も伊賀兵法“畳返し”の妙技でこれをしりぞけ、幻雲に会うべく春海を同道して伊賀国へ。痛快な面白さを発揮する著者得意の剣豪小説。
信玄の父信虎の生涯は、波瀾に満ちた81年であった。25年の歳月を費して乱国を統一し、甲府を開いて武田家を守護大名から戦国大名へ押し上げた。国主であった期間は、信玄よりも長く、信玄に国外へ追放されて、なお33年間を異境で生き抜いた。信玄卒去の報に接して、京都からその老躯を信州高遠まで運んできた。この「信虎の巻」は、その誕生前夜から駿河へ追われるまでの辛苦に満たち50年を書いたものである。
信玄の父信虎の生涯は、波瀾に満ちた81年であった。25年の歳月を費して乱国を統一し、甲府を開いて武田家を守護大名から戦国大名へ押し上げた。国主であった期間は、信玄よりも長く、信玄に国外へ追放されて、なお33年間を異境で生き抜いた。信玄卒去の報に接して、京都からその老躯を信州高遠まで運んできた。この「信虎の巻」は、その誕生前夜から駿河へ追われまでの辛苦に満ちた50年を書いたものである。
馬の改良に情熱を燃やす対馬藩の若き馬医・猪方方正は、朝鮮の〈馬上才〉一行に随行して江戸に向うが、藩の存亡をかけた争いの渦に巻きこまれていく…。江戸時代初期に起きた〈国書改竄事件〉の顛末を描く異色の話題作!
安らかに、まるで眼っているような顔、まだ濡れている長い髪、全裸美女の溺死体。釣船に発見されて引き上げられたばかり。若い釣客が近づいて黒髪を掻きわけてやろうとした。その手に白いものが巻きついていた。それは死体の腕だった。女はゆっくり目を開けるとニッコリ笑った。コキッと背筋の凍るような音がした。女は軽く手を握っただけで男の腕を肘からもぎとったのだ。真白な裸体に鮮やかな血の飛沫がふりかかった。
1959年の夏、パリに到着したばかりのペルーの一留学生が買い求めた一冊の小説。それこそは、作家としての彼の人生を決定づけた「愛の物語」だった。現代ラテンアメリカ文学の最前線に立つ若き巨匠、マリオ・バルガス=リョサが、鍾愛の書『ボヴァリー夫人』をめぐってダイナミックに展開する、とびきり面白い文学論。
ママはパパと別れるし、彼女はふいにいなくなっちまうし、ついでに犬も死んでしまった。僕の人生、さいきんちょっと暗いぜ。新鋭ピーター・キャメロン、本邦初登場。ミドルクラスの明るい〈悲劇〉を描く80年代のサリンジャー。
女性ミステリ作家としてすでに確固とした地位を築いたジェシカのもとへ、その知らせはある日、青天の霹靂のようにもたらされた。往年の大歌手であるいとこが、不慮の自動車事故で死亡したというものだ。仰天したジェシカは、とるものもとりあえず、現地ロンドンへと飛んだが…。凋落したミュージック・ホールを舞台に展開する「ミュージック・ホールのジェシカ」、落ち目のテレビドラマをめぐって、俳優、脚本家、ディレクターが虚々実々の駆け引きを繰りひげる殺人劇「ジェシカ、台本を書く」の二篇をおさめた、おなじみのシリーズ第四弾!
あとをつけまわす仮面の男。身に覚えのない脅迫電話。血まみれのベツドから消え失せた娘。そして、不気味なヴードゥー人形は血を滴らせて。憂さ晴らしに、ジャズの街ニューオリンズのカーニヴァル見物にきた中年カメラマン。その仮装パレードの狂騒のさなか、男は除々に追いつめられていく。だが、本当の恐怖はまだ始まってすらいなかった。
季節はずれの奇妙な嵐がヘラーズを揺るがし、雷鳴が不気味に轟く夜、ひとりの赤ん坊が産声をあげた。名はドリリス、アルダラン卿ミカイルのひとり娘である。ドリリスは父の愛を一身に集め、美しく成長する。が、彼女は雷を自由に操る、おそるべきラランの持ち主だったのだ。読者の要望に応え、ついに書き上げた、〈混沌の時代〉のエピソード。
〈塔〉の〈監督者〉レナータの厳しい指導のもと、ドリリスは次第に〈ちから〉をコントロールする術を身につけていった。だが、アルダラン城の平和な日々にも、やがて暗雲がきざしはじめる。やがて、マトリクス技術と超能力のかぎりをつくした、凄絶な戦いの火蓋が切って落とされた。ブラッドリー入魂の力作巨編、いま悲劇のクライマックスへ。