1988年4月発売
戦後の崩壊感のなかでの、主人公の母の死、父や妻との葛藤、先輩の妻との情事やその発覚後の抜き差しならぬ展開…捉えどころなく移ろう日常にひそむ「おそれ」と、人間のエゴイズムの深部を乾いた筆致で描き出した「幕が下りてから」「月は東に」の二つの長編を収録。なお「月は東に」には今回大幅な加筆が行なわれた。
明の建文永楽の交、中国を二分して相争ったこの二帝のたどる数奇の運命を軸に、群臣諸将の盛衰を描く一代の雄篇「運命」。一片の盃に人生の来し方を映し出す佳品「太郎坊」。露伴の人間観照を直載に示す諸作を収録。
こわいおばさんに夕里子はナイフをつきつけられ、陰気なおっさんは珠美を誘拐。長女・綾子は不治の病いの宣告を受けたと信じこみ、記憶喪失の少女は父親が海外!出張中の佐々本家に転がりこむ。名門吉沢家で起きた殺人事件は、容赦なく三姉妹を謎の大渦に巻きこむが、死を覚悟した綾子の大変身が見ものです。
伝説の戦士矢沢高雄が魔女マダム・マヌーの兵士として戦場に復活し、世界各地で大量殺戮を繰り返す。一方、マヌーの軍隊との戦闘で、ゆりは盟友ハマー・オースティンを失う。そして、矢沢がゆりの戦友達を全滅させたとき、ゆりは風祭凱との愛を選んだ。さらに激化していく闘いは遂に矢沢とゆりの対決へ…。
歌麿にアリバイがない!写楽が活躍した11ヵ月間、歌麿はどこで何をしていたのか?なぜ作品を発表しなかったのか?やはり歌麿が写楽だったのか…。世界一の美人画絵師をめぐる現代の罠と、歴史の謎に挑む塔馬双太郎の冴えわたる頭脳。大きな仕掛けでまたも読者を唸らせる高橋ミステリーの最高傑作。
主人公は理々子と元気。だけど前代未聞の珍刑事・西条香織の登場で事件は前代未聞の方向へ。見当はずれの独自捜査、狂いっぱなしのヒラメキ推理で、事件は迷宮へまっしぐら!最終ページまでに殺人事件は解決できるのか?大型♀推理作家誕生。毎ページ笑える爆笑ミステリー衝撃作。
8年前、スイスの国境近い町で自動車事故にあった夫。車を運転していたのは日本人女性だった。その死に納得がいかないまま暮しに追われてきた祥子の胸に、男との逢瀬が安らぎと希望を満たしていく。表題作のほか「白萩」「変身」「隠れ谷」「双生」等を収録。揺れ動く女の心の襞を細やかに描き上げた名作集。
運命的な愛の輝き、男の真心と行動の美学を描く処女長編。敗戦後の横浜を舞台に、放蕩とスタッド・ポーカーの勝負に明け暮れた無頼の青春。神戸に移り、脱走米軍将校と組んで始めた酒場での日々。謎を秘めた中国美女・李蘭との出会いに至る異色の恋愛小説。全女性に捧げる恋文として書かれたデビュー作。
男ゆえの傷をかくして港町神戸をキザに生きる名倉。その彼を敬愛しながらも、やがては追い越そうと狙う若者。そして誘蛾灯のような名倉の魅力にひかれて寄ってくる女たち…。名倉をめぐる人物の相関図が次第に暴いてゆく彼の謎の過去とは何なのか?美しい神戸を舞台に、人生を踊る男女を洗練された手法で描くロマン。
新たに出現した銀行の利息が、郵便局をはるかに上まわるというので、大阪の庶民は預金を郵便局から銀行へくら替えさせるのに大わらわ。そんな折、現金を積んだ郵便馬車が強盗に乗っ取られた。2人組の犯人は巡査服に長髪という異形。さて、その正体とは?異形のわけとは?海坊主の親方が活躍する出色捕物帳。
大久保長安の遺した不思議な連判状は何を意味するのか。やはり大坂は討たねばならないのか。しかし家康の願いは豊臣家存続にある。そのためには戦の回避と大坂開城が必要絶対条件だった。家康と片桐且元の和平交渉が始まる。家康は方広寺の鐘銘事件に名をかりて、淀君、秀頼母子に、大坂城無血明け渡しの謎をかけた。だが…。
大坂冬の陣!籠城を決定した大坂方は河内出口村の堤を破壊し、枚方付近の道を閉ざした。しかし家康は容易に二条城を動かず、東海道を大軍で西上する秀忠にも「急ぐな」との命を発する。はたして家康は、胸中に何を秘めているのか?紆余曲折ののち和議成立。が、それも束の間、時の勢いは夏の陣へ…。
大坂夏の陣!濠を埋められ、篭城できなくなった大坂方は城外に打って出た。名ある猛将も相次いで倒れ、太閤以来の名城も紅蓮の焔に包まれる。そして、家康の最後の悲願淀君・秀頼母子の救出も水泡に帰した。やんぬるかな、秀頼母子ご自害!こうして豊臣家は地上から永遠に消え去った。
豊臣家減亡後の家康に残された仕事は幕府永続の礎石固め、すなわち確乎とした泰平の世づくりであった。「人間はみな永遠に続く大樹の枝葉なのだ」という万民の愛と安らぎをめざす世を!その理想を果たし、巨樹はついに波乱にみちた75年の生涯を終える。時代を超えて生きる壮大なロマン完結編。
金色の虹を描いて、白い月光の中を跳ぶ「黄金豹」。宝石を喰い、札束をかすめ、幻のごとく消えてしまう魔豹に、人々は慄然とする。園田家に収蔵された、豹の美術品の数々。「八方にらみの豹」と名付けられた一枚の日本画より抜け出した魔豹は、黒メノウと青ダイヤを嵌めこんだ金の豹を狙って、闇の中をしのびよって来る。
友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。障害児を出産した菜採子。苦渋に満たち登場人物たちが、四国の谷間の村をさして軽快に出発した。万延元年の村の一揆をなぞるように、神話の森に暴動が起る。幕末から現代につなぐ民衆の心をみごとに形象化し、戦後世代の切実な体験と希求を結実させた画期的長編。谷崎賞受賞。
ジゼル(エリー)・サイモンズはロンドンに住む27歳のインテリアデザイナー。頭の回転も早くユーモアのセンスもある彼女の最大の悩みは太っていること。そんな彼女にある日、大金持のマーリンおじから親戚の集まりを知らせる連絡が入り、彼女もエスコートサービスから紹介された作家志望の青年ベンをにわか恋人に仕立て、おじのもとを訪れる。そして数週間後、マーリンおじが亡くなり、再び集まった親戚一同の前でおじの遺言が発表される。その内容は意外にも、エリーとベンに莫大な財産を残すというものだった。ただしそれには、マーリン屋敷に6カ月間住み、その間にエリーは体重を30kg減らし、ベンはまともな本を1冊書き上げ、さらに2人で“秘密の宝物”を探すことーという4つの条件を達成しなければならない。他の親戚たちの羨望と嫉妬の視線のなかで、意を決して苛酷なダイエットに挑みはじめたエリー。その翌日から彼女のまわりで次々と奇怪な出来事が…。