1988年4月1日発売
断崖絶壁に立った時の血が引いていくような戦慄、季節はずれの別荘地の静寂につつまれた時の本能的な怯え。-北は北海道の十勝岳、シラルトロ沼から、南は九州の平尾台、高千穂峡まで日本全国18カ所の風景を〈主人公〉にしたユニークな旅のミステリー。非情な大自然が人間の心に呼びおこす名状しがたい恐怖を、時刻表や心理のトリックを駆使して描き出す。泉鏡花賞受賞。
ある朝、ニューヨーク56番街に中年の劇作家イェップ・マスカットがふらりと戻ってきた。舞台女優の夢を捨て切れぬ妻、ブルックリン・ドジャースが大好きな息子と母親似の娘、そして幼なじみや懐かしい人たちとの再会…。ニューヨークの街を歩くイェップの前に人生のほろ苦さと暖かさ、憂鬱と輝きが浮かび上がる。誰よりも人間を愛し続けた作家、サローヤンの自伝的代表作。
英国南部、海を見下ろす崖の上に建つ古い邸宅エンド・ハウス。その家の若く魅力的な女主人ニックは、このところ奇妙な事故に悩まされていた。重い額縁の落下、ブレーキの故障、落石…。そして、たまたまリゾートにやってきたポワロの目の前で、ニックが狙撃されるという事件が起きる。彼女の命を守るため、ポワロの灰色の脳細胞が働きはじめたー。初期クリスティを代表する長編。
飛行テスト中の新型弾道ミサイルが突如方向転換して米本土へ舞い戻った。ソ連の妨害工作か?調査を命じられたCIA工作員マーカムは自国の驚くべき超能力開発の現場を垣間見るが、KGBでの研究はそれをはるかに凌ぐという。研究者に偽装した彼はソ連の研究の中枢に侵入をはたすがー。最先端の科学をめぐる秘密工作とその裏に隠れた謀略をスリリングに描くエスピオナージュ。
亡き妻の級友と知り合い、再婚に漕ぎつけた男に降りかかる奇妙な災難を描く表題作ほか、人間心理の深奥を鋭く探り、日常生活のうちに突然生ずる殺意の瞬間を鮮やかに捉える、濃密なサスペンス7編。
ロックが少年の脇で急停止した車に気づいたときは手遅れだった。彼はもう一台の車から飛び出して襲ってきた3人の男を倒すのがやっとだった。その隙に、少年を押しこんだ車は彼の眼の前を走り去った-。かつてSAS将校として勇名を馳せたジョン・ロックは、トロントに住む一匹狼のボディガード。彼の今回の仕事は富豪の一人息子ハービーの警護だった。ハービーは高校をドロップアウトした問題児だが、以前は絵を描くことが好きな心優しい少年だった。家族は優れた芸術作品に触れさせることで昔の情熱を取りもどさせようと、護衛をつけて彼をイタリア旅行に出すことにした。が、到着早々ハービーは何者かに誘拐されてしまったのだ。-プロの意地をかけて少年を奪回せんと反撃に出たロックだが、そこには犯罪組織の絡む罠が…。
時の罠ヴァリオがあるアンドロメダ星雲に到達するのにどうしても必要な新型超光速機関カルプ。それを《クレスト3》に届けるべく《ディノ3》は過去へ旅立った。だがようやく五万年前の過去界に潜入したものの、すでに《クレスト3》のローダン一行はレムール艦隊の追跡をかわそうと5百年だけ時間移行していた。そこで《ディノ3》が試みた命がけの賭けとは?
惑星フェンリルのキチン虫からしか産出されない長寿薬ーその莫大な利益をめぐって、原住種族フェインと同盟する第1次植民者と海岸ぞいに居住する第2次植民者とのあいだでは、激しい抗争が繰り返されていた。だが、地球の太陽系世界政府の本格的な介入で、すべての状況は一変した。新たに赴任してきた航宙軍提督シジミア・エンコフは、長寿薬の全権益を世界政府が掌握すると告げたのだ。航宙軍の圧倒的な軍事力を眼前にして、フェンリルの全住民がその提案を受諾するか否かの決断を迫られる。期待の新鋭が魅力的な異星世界を舞台にパワフルな筆致で描く一大戦争SF。
横暴をきわめる太陽系世界政府のやりかたに、フェインと第1次植民者たる高地族の怒りが、ついに爆発した!航宙軍との前面戦争の火蓋が切って落とされたのだ。高度な科学技術を駆使する航宙軍を相手に、勇猛果敢なフェインを軸にして、高地族は捨て身のゲリラ戦法で挑む。だが、奇怪な機甲服を身にまとう航宙尖兵隊には、フェインの攻撃も歯がたたなかった。あまつさえ、ビュート族の族長の娘アーマーダも、航宙軍の手に落ちた。全高地族の指導者、ファンダン族の族長マザー・フェアは、無謀ともみえる作戦を命じる。とうとう、惑星フェンリルの命運はつきはてたのか?
あたしたちケイとユリは、銀河系のはじの鉱業惑星チャクラへ送り込まれた。鉱山技師の一人が未知の獣に襲われたからだ。襲われたといっても、全治三日のけが。どうして、WWWA(世界福祉事業協会)随一のトラコンであるあたしたちが行かなきゃならないの?と思ったのだがー。鉱山のオーナーに市長、宗教集団の長=マスターの三人のリーダーの思惑が交錯するチャクラで、ハンサムなシェリフとともに真相究明に乗り出したあたしたち二人の前に、意外な事実が現われた。大人気ダーティペアの活躍を描く、ベストセラー・シリーズ第2弾!
冥王星ドーム基地へ、半年に1度、故郷からの郵便物を運んでくる郵送艇。だが衛星ケルベルスが引き起こす嵐のため、ドーム脇に着陸した郵送艇は大破した。命がけで郵便物を守った男は…。「ケルベルスの嵐」、小惑星帯の鉱脈でひと山あてようと、違法採掘を始めた宇宙兵くずれと、僻外星界を布教活動している伝道者に偽装した宇宙警察の女刑事との軽妙なやりとりを描く「天女と羽衣」など、太陽系第3惑星地球を飛びたち、兵士として、またはやむなき事情により小惑星以遠の外惑星へ流れついた男女の哀歓を絶妙な筆致で描きあげた連作短篇集。
自らの出生の謎を解き明かすべく、タリオンは故郷の村を目ざす。氷雪に閉ざされた酷寒の地。自然の猛威に加え兇悪な三兄弟の率いるならず者の軍隊が行く手を阻むが…。一方、東方の蛮族の帝都侵攻を好機として、フォルタらは帝国への反乱の狼煙を上げた。帝国打倒の呼びかけに諸国の人々は立ち上がるのか?また、タリオンを育んだ小人族の島に迎えられたレヴィ王女のその後は?さらにミシュリーヌ殺害がもたらしたフリオ侯爵と狂気の剣士バランの確執のゆくえは?いま大陸全土を戦雲が覆いゆく。
レジャーセンターの建設現場で古代の遺跡が発掘された。地下に封じられていた小部屋にはおびただしい骸骨が…。それが恐怖の幕開きだった。建設現場では原因不明の事故が続発して多くの作業員が命を落とし、町では両眼をえぐられた無惨な死体が次々に発見される。美人考古学者キムとウォレス警部の二人が一連の事件の指し示すものに気づいた時、想像を絶する結末は間近に迫っていた。強烈な残酷描写を過剰なまでに盛り込み、パワフルな筆力で描く、鬼才の会心作。
ウォール街の法律事務所〈チェイス・アンド・ウォード〉のあわただしいランチタイム。同僚たちが見守る中、次期所長と目されていたドナヴァンが、もがき苦しみながら息絶えた。毒殺だった。前所長ルービンはひそかに犯人捜しを始めたが、今や引退同然の身である彼には知らされない様々なトラブルを、事務所は抱えていた。所内の何者かが絡んだインサイダー取引、所長の座を狙う所員間のいさかい、同僚の妻との情事。ドナヴァン殺害の動機もそのあたりにあるように思えた…弁護士作家がシニカルかつ巧みに描くウォール街の生態と事件の顛末。