1988年6月発売
再びチャンスがめぐって来る日をダッグアウトの片隅でひたすら待ち続けた九人の選手たち。人知れず練習を重ねてきたセカンド、実力がありながら監督に認められる事のなかったショート、ピッチャーから転向したサウスポーのキャッチャー。やがて再起する者、去りゆく者、球界に生きる男たちの爽やかな後ろ姿を描いて、様々な人生のあり様を浮き彫りにした珠玉の連作短編集。
シベリア=西ヨーロッパ・パイプライン開通式を目前に控えた1983年12月、極寒の収容所から3人の囚人が脱走した。この事件はやがて凍土帯の少数民族の暴動へと発展する。クレムリンは軍を投入し事態の収拾に全力を傾けるが、脱走犯の足取りさえ掴めない。一方、現地に派遣された民警の女性検事アンナは捜査を進めるに従い、意外な真相に近付いていく。亡命作家が描く迫真のサスペンス。
CIAは、百万人に1人という心を覗く力を持つ男女を集めてスパイに仕立てあげ、国家の重要機密にかかわる情報戦に利用している。しかし彼らは、そのあまりにも“敏感な心”のために32歳以上は生きることが出来ない、という。ふとしたことから、自分の運命に疑問を抱いたスパイたちは、巨大な組織との対決を余儀なくされる。特殊な力を持つスパイたちの苦悩を描く異色サスペンス。
ハリウッドの著名なTVプロデューサーが、取材先で事故死した。テレビに毒され、病んでしまったアメリカ文明の実態を記録するため、大陸を横断し、最終地でネットワークの陰の大物にインタビューした直後だった。撮影済みのテープをめぐって、残された妻ジャンヌの周囲は急に騒がしくなった。夫の死に疑念を抱いた彼女はその謎を解くため、夫の足跡をそっくり辿る決心をしたー。
謎を秘めたた取材のテープを手に入れようと、テレビ界の実力者たちの追撃は執拗に続く。皮肉にもTV番組で旅程が公開されることによって、身の安全を保証されながら、ジヤンヌとその同行者は最終地に近づいた。様々な利権が絡むネットワークの醜悪な実態を目にし、気づかぬうちに先入観を植えつけられ操られる大衆の姿を見ながらー。現代文明への鋭い批判を込めた問題作。
トランクを少し斜めに傾けてみた。試しに留金を押してみると、抵抗もなくパチンと外れる。それならと、蓋をそっと開けた。隙間から、ぎっしりと詰まったものが見える。紙がぎっしり。唐草模様だ。伊藤博文。札束である!-後楽園球場でトランクいっぱいの贋千円札を渡された「私」は、月産百五十億円の紙幣生産地へ赴いた。そこは何と…。「模型千円札裁判」の有罪判決から四半世紀、前衛画家赤瀬川原平が、いま尾辻克彦として放つ、脱経済=超芸術(トマソン)小説。あふれる想像力と言葉の乱舞が、読者を天空の高みへと誘う。
ウォール街のエリート証券マンが、突然透明人間に!その瞬間、街は苛烈な試練とロマンに彩られた未知のジャングルに変わった-。待ちうける罠、忍びよる追跡者をかわし、現代ニューヨークでいかに生きるか。究極のサヴァイバル・ゲームの賽は投げられた!卓抜な発想で描く、新感覚のスーパー・エンタテインメント。
旧友の愛娘、教え子、そして何よりも、最愛の女性-そのプリルが人生の春に命を散らせてしまうとは!しかも何者かの手によって。ニール・ケリー教授の喪失感はたとえようもないほど大きかった。妻を病で失って7年、ようやく心の拠り所を見出したと思っていたのだが…。プリルが殺害されたのは、図書館で毎春行われるコンサートの最中だった。何者かに殴られて書架の後ろに倒れているのを発見されたのだ。状況から判断して犯人は大学内の人間と考えられた。だが、いったいどんな理由で誰からも愛された彼女が殺されたのか?プリルの両親から懇願され、ニールは絶えざる苦悶に苛まれながらも、捜査を担当するスカーリー署長に協力して周囲を調べ始めた。大学内に渦巻く愛憎、そして現実と過去の狭間から現れた事件の真相とは?洗練された比喩をちりばめた知的な文体で描く愛と殺人-MWA,CWA賞候補の本格傑作。
生活のすべてがコンピュータで管理される夢の新興住宅地、コブルストーン・ヒル。白い家と緑の芝生。すみきった青空。だけどこの街に住んでいるのは、ちょっとおかしな人ばっかり。お向かいのご主人は、なぜかわが家を目のかたきにして、わざわざ家庭用ミサイルを設置しちゃうし、それに対抗したうちのパパなんて、ガレージに原発をつくっちゃった!ふたりの喧嘩はエスカレートするばかりだし、おまけに家族は災難つづき…。いったいこの街、どうなっちゃうの?若き異才マーク・レイドローが、ブラック・ユーモア光線を乱射して、アトミック・エイジに捧げる傑作コメディ。
二十九歳の若さで大型航宙艦〈エンタープライズ〉号の艦長に任命されたジェイムズ・T・カークーだが、かれを待っていたのは、移動演芸団率いて宇宙基地を巡回するという退屈な任務だった。何かというと新米艦長に反発する乗組員たち、移動演芸団の気が強い女団長を相手に、クリンゴン帝国宙域と近接する第十三宇宙基地めざしてカークの奮闘の旅が始まった。
クリンゴン帝国との境界宙域を航海中の〈エンタープライズ〉号の眼前に、突如、正体不明の飛行物体が現われた。動揺する乗組員をよそに、自らその物体に上陸したカークは、空を飛ぶ異星生命体フライヤーとのファースト・コンタクトに成功する。しかし、フライヤーと精神融合したスポックはショックで昏倒し、演芸団の女団長らも行方不明になってしまった…。
平和な村ネルウィンに、今戦乱の暗雲が迫っていた。北方の地で権勢をふるう悪の女王バヴモルダが、魔の手を伸ばしてきたのだ。故郷を守り、世界に平和をもたらすため旅立ったウィローを待っていたのは、善と悪の壮絶きわまる魔法の決戦だった!〈スター・ウォーズ〉で全世界を熱狂させたルーカスが贈る最新SFXファンタジイ映画原作。
「燃えろ!」ガリオン少年は、心に潜む不思議な声に命じられるまま言葉を放った。すると、たちまち親の仇チャンダーが炎に包まれた。ついにガリオンの内に眠っていた恐るべき“力”が目醒めたのだ。やがて時を経るにしたがい、この魔力は死んだ子馬を生きかえらせ、巨大な岩をも動かすほど強力になった。が、ガリオンには魔力をコントロールする術がわからない。あまつさえ、彼の内なる声は謎めいたことを語る有様。自分は得体の知れぬ怪物と化したのか?ガリオンは不安にとらわれながらも、〈珠〉を盗んだ邪神トラクの高弟を追うが…。
マーナが72回めの離婚をして、ようやく回ってきたおれの番。この結婚の日を半年以上、待ってきた。ところが、二日間の補給・整備停船の間にひまをもてあまして惑星リュドラに上陸してしまったために悲劇ははじまった。定期船の停泊している軌道ステーションへ向かうシャトルの船長が、空を指差し、出航を拒絶したのだ。「今日はくらげが出ている」空に浮かぶリュドラレンズクラゲが透明な体のレンズ効果を利用してシャトルを撃ち落とすという。だが、ぐすぐずしていると、定期船に乗り遅れ、結婚式はふいに…。表題作をはじめ、6短篇を収録。
マンハッタンのエアロビクス・スタジオが覆面をした男たちに襲われ、従業員が殺害された。一見平凡な強盗事件と思えたが、殺人課のロスとエルナンデスは、死体に空手による打撃の跡を発見する。続いて起こった三つの殺人事件の犠牲者からも空手の痕跡が見つかった。実は事件の背後には、日本人ビジネスマン待島が率いる浪人集団の存在があったのだ。だが忠臣たちは待島の手を放れ、暴走をはじめようとしていた。ロスとエルナンデスに彼らを止める術はあるのか?アメリカ探偵作家クラブ最優秀ペイパーバック賞候補の異色ポリス・アクション。