1988年6月発売
アメリカ大統領とアラブ産油国の国王らを乗せた専用バスが金門橋上で強奪された。知能犯ブランソン率いる犯人グループは、橋の交通を遮断し、爆薬を設置する。彼らの目的は5億ドルの身代金。要求が受けいれられぬ場合には、橋を爆破するという。現場に駆けつけた政府首脳らもブランソンの完璧な計画に、なすすべもない。だが、さしもの知能犯も、大統領一行の中にFBIのリブソンが潜んでいるとは知るよしもなかったー。かくて史上空前の大犯罪をめぐり、熾烈な頭脳戦が開始される!風光明媚なカリフォルニアに展開する大型冒険アクション。
1942年秋、ヒトラーは休戦協定を破り、ヴィシー政権下のフランスへ侵攻する作戦を進めていた。ツーロン港に碇泊する大艦隊を奪い、連合軍の北アフリカ上陸に備えようというのだ。この動きを知った連合軍は、英国特殊作戦執行部の精鋭ジョナス・ロイターをツーロンに潜入させ、やがて彼に重大な使命を与えるー。ヒトラーの計画を伝えて艦隊を救え、それが不可能なら自沈へ導け!ジョナスは密かにフランス海軍への接触を開始する。だが、思わぬことから彼は、敵の手に捕えられてしまった。史実をもとに迫真の筆致で描く戦争冒険サスペンス。
トレースは今回も気乗りがしなかった。しかし、軌道に乗りかけたはずのレストラン経営で急に資金が必要になり、一転調査を引受けた。おなじみグルーチョの依頼は、飛行機事故の一件だった。7年も前に墜落事故で死亡した男の保険金請求が、なぜ今ごろになってなされたのか?遺体は見つかっていないので、男が生きている可能性もあるのだが…。トレースはコネティカット州ウェストポートに飛び、得意のマシンガン・ジョーク片手に聞き込み調査を始める。われらが絶好調コンビ、トレースとチコの爽快かつ鮮やかな活躍を100%楽しめる新作推理。
大リーグを引退したハーヴェイは食いぶちを稼ぐため、私立探偵になった。最初の依頼は学生時代の友人からだった。プロ・バスケットボール界のスター選手が空港で失踪した一件の調査ー日を置かず、今度は別のチームのやはりスター選手が同空港で姿を消した。麻薬がらみとも思えたが、二人の選手は友人でなく、共通項が何もなかった。彼らはどこに消え、背景には何があるのか。敵陣ふかく走りこむハーヴェイに、プロも顔まけのジャンプ・ショットは決められるのか?初打席本塁打を放った大形新人による本格スポーツ・ミステリ、待望の第2作。
二十年前、卒業を間近に未婚の母となったために教員養成コースを断念したケイトは、今、二度目の学生生活を満喫していた。ところが、他のクラスメイトよりはるかに年上であるにもかかわらず、人気者の学生に関心を示されたことから、思わぬ男女関係の渦に巻き込まれてしまった。やがてその学生とルームメイトが失踪、三週間後、大学構内の池の氷の下から男の首なし死体が発見された。しかも、警察はケイトを容疑者とみているらしい…。平穏な学園生活を切り裂いていく残忍な殺人とその驚愕の結末をサスペンスフルに描く英国女流有力新人の秀作。
1983年8月のある朝、ラングレーのCIA本部にモスクワから緊急報が入った。ソ連の最新型原潜を設計した科学者がアメリカ亡命を望んでいるとの秘密情報だ。CIAはただちに危機対策本部を設けるが、一方ソ連では…。KAL007便撃墜までの意外な経緯と展開。迫真性が話題の国際サスペンス。
セヴェロドヴィンスクからモスクワへ、モスクワからイルクーツクへ、そしてシベリア鉄道で一路東…。息づまる追跡行のはてに、あの運命の瞬間が用意されていようとは!すべては“そのとき”に向かって収斂する。CIA、KGB、GRUの虚々実々の駆け引き。
鋭い爪で無残に引き裂かれた死体-。平和な街、北海道・帯広市に連続殺人事件が起きた。被害者はいずれも大雪山系に建設予定の“宇宙飛行士訓練センター”計画推進派だ。それ以外、犯人の足取りは全く掴めなかった。自然をテーマにルポを書く美神住鷹はこの事件に興味を持ち、叔父の森警視と共に建設現場へ向かおうとした。その美神の前に山で羆から命を救けた娘の兄、木貂雷介が現われ、山へは行くなという。山で何が待ち受けているというのか?木貂兄妹の正体は?大雪山を舞台に壮大なスケールで描く「雷獣伝説」シリーズ、待望のスタート。
出雲呪族抹殺を計る天孫・須米婁。彼らは、迫害の呪詛を綴った簸上文書の存在を嗅ぎつけ、次々と一族を襲撃する。呪族の末裔である画家・鬼祭光舜は“タマシキ”と呼ばれる精神遊離の操霊術を用いて、捕われの身となっていた簸上省吾、涼子、そして光舜を慕う手銭柚子香を救出した。暗闇の歴史の中にあって絶えず須米婁を脅かしたのは、呪族の血が継承する歴力による抵抗であった。光舜の違伝的操霊能力に恐れを抱いた須米婁の総帥・天の道士は、最後の闘いを挑み、刺客を放つ。聖地・出雲で、呪族存亡をかけた死闘が始まろうとしていた。
国際都市ヨコハマーそこには汚れたカネを求めてアウトローたちが集まる。その黒い港を背景に頻発する船舶密売事件。船・密輸品そして船員もろとも売り飛ばしてしまう国際シンジケートが深く静かに動き出した。公安調査官・加下千里は、組織に潜入すべく、うだつのあがらぬ失業中の二等航海士に変装する。帰らざる船の秘密を暴くため港を徘徊していると…。表題作ほか三篇の公安調査官シリーズ。
世界初の自叙伝形式で書かれ、“解放の文学”といわれる『枕草子』には謎が多い。当時では考えられない率直大胆な表現。歴史的事実・官位・自然現象等の誤記。異本の中には、有名な「春は、あけぼの」の段のないもの、清少納言のエピソードを全て欠いているものまであるというー。大胆な仮説で千年前の虚像を抉り、『枕草子』成立の謎と、紫式部と並び称される清少納言の実像に迫る。
大手商社の第一線営業マン山野純一郎は、取引企業倒産の責任を負わされて閑職の事業本部へ左遷。だが、山野はへこたれない。願ってもない充電期間とばかり、社内のOLと次々にオフィスラブを展開。会議室では斎藤恭子と、川端律子とも秘密の情事。テクニックの限りを尽して女性を歓ばせる。だが、山野の発展ぶりをじっと監視する謎の女性がいた…。企業恋愛小説の名手が描く最先端オフィスラブ長篇ロマン。
電機業界のリーダー的存在である極洋電気の営業企画次長・本郷直文は、次期社長候補の岡部専務から経営戦略室長への昇格を言い渡された。経営戦略室とは社長直属の組織で、社のシンクタンクともいうべきエリートセクション、室長経験者は取締役への昇進が約束されているという。本郷が夢にまで見たポストだった。だが、本郷は前任者・田代の突然の退社を知らされる。田代に何が起こったのか…?
大工の棟梁・磯七が料理茶屋で殺された。虫の息の磯七いわく、茶屋の博打に加わったおり、おりんという女と知り合ったという。おりんは負けの込んだ磯七に金を貸し与え、しかも博打の後、一夜を共にした。翌朝、頭に激痛を覚えて目をさました磯七の隣に、背中に見事な彫物をしたおりんがいたというのだ。おりんの身許はすぐに割れたが、なぜか背中に彫物はなかった…。異色捕物控シリーズ第五弾。
学園粉争のさなか、関東大学医学部事務局次長・小栗精一郎は不正入学にからんだ詐欺横領の容疑に問われていた。そんな折、大学二年になる小栗の娘・桐子が体育会系の学生らにレイプされた。数週間後、小栗は故郷徳島で自殺。傷心の桐子も大学を中退してインドを放浪。十二年後、尼僧・寂蓮となった桐子は、桜舞う和歌山の紀三井寺で、かつてレイプを謀った忘れ難い男と偶然にも再会した。官能サスペンス巨篇。
本名山本長五郎、清水港は米屋の伜次郎。遊侠の世界に足を踏み入れ家業を捨てる。天稟のいかさま骰子の腕で各所で賭場荒しをくり返すが、なぜか次郎を見こんだ駿府安東の大親分文吉の目こぼしで助けられる。いつも素寒貧、冬に褌一本で暮らすのもたびだびだが、いつの間にか次郎の周りには人の垣ができている。大政、金次、常…。巷間、“海道一の親分”と謳われた清水の次郎長実録一代記長篇。
見栄とやせ我慢が遊侠の徒の本領とばかり、草鞋を脱ぐ旅人には酒と飯、おまけに小遣いまで持たせてやる次郎長、内証は苦しい。清水に腰を落ち着けたとはいえ、本人は年中の逃避行、ついには敵方伊豆の金平が黒革おどしの鎧を着け、次郎長を捜して清水中を威嚇して回る始末、喧嘩っ早さが災いして、ろくに縄張の拡張も計れない。古老達の語りを丹念に集め、次郎長の実像に迫る次郎長実録一代記長篇。
不倶載天の敵黒駒の勝蔵が縄張を捨てた。子分を率いて京へ上り、公卿侍になったという。幕末の激流は遊侠の世界をも洗い始めた。だが次郎長は、愚直なまでに変わらない。かせぎ場の少ない次郎長の台所は火の車、喧嘩を構える毎に借金がかさんだ。世は明治となり、官軍の命で海道の取締りにあたるがやがて辞退、晩年は訪れる旅人を門口に待ちこがれる日々だったという。次郎長実録一代記完結篇。