1988年8月発売
モスクワ警察の大尉ダンコーは怒りと復讐の念に燃えた。麻薬密売ルートの元締めロスタに無二の相棒を殺されたのだ。そのロスタが数カ月後シカゴで逮捕された。ダンコーは身柄引取りのため単身シカゴへ飛ぶ。が、彼の目の前で、ロスタは仲間の手を借りて逃亡。激しい屈辱にかられたダンコーは帰国命令を無視し、市警のはみだし刑事リジットと共に執念の追跡を開始した。巨大な犯罪都市に展開される白熱のバイオレンス・アクション。
シカゴで警備会社を経営するハリー・デインのもとに、昔の恋人シェリルから電話が入った。ふたりは再会することになり、デインは彼女が指定したヴェトナム料理店へ赴く。だが、中に入りかけた瞬間、店内で大爆発が起きた。何者かが爆弾をしかけていたのだ。しかも意外なことに、シェリルとその婚約者が爆破犯はデインだと警察に証言。奥深い謎の渦中にはまりこんだデインは単身真相を追い始めた。アメリカ探偵作家クラブ賞候補作。
一流企業大正重電の社員小木曽は、「白昼の囚人」にも等しいサラリーマン生活に焦りと不満を感じていた。そんなある日、タクシーの中で偶然拾った3200万の大金が、彼を現実からの離脱と野望へと駆りたてた。銀座の夜の世界で、愛人の夏子らと華やかな事業をおこした彼は、だが、色と欲にまみれた人間どものエゴと裏切りの前に、やがて…。長篇サスペンスロマン。
かつて、彼女の恋心も知らず、彼女を別の相手に譲ってしまった男ー律子にとって、それは二十年ぶりの彼との再会だった。初恋の想いを今に秘め、積年の身体の疼きを一夜にかけた人妻の、むせかえるようなセックスを描いた表題作のほか、結婚を決意した平凡なOLが、上司との恋の清算に、最後に燃えた「色づく初夏の風」など、女の肉体と情感を女流作家の鋭い感性で写した官能傑作集。
ロンドン郊外のお城で、偶然知りあったマイケルは、白馬にのったステキな王子さま。もう二度と逢えないと思ってたのに、突然あたしの学校に、留学生としてやってきた…。親友の朝子なんか、もう大騒ぎ。そして、あたしのハートも〓@76B6だけど、この留学生、チョット変。青白い顔で、極度の貧血症。血に対して異状な反応をする。そのうえ、柔道部のジローさんの首を、いきなり締めつけたり、真夜中行方不明になったかと思うと、あたしの首に…!あたしの中にひろがるギワク。でも、イイのだ。母性本能をくすぐる、かわいいあいつが、あたしの血で元気になるのなら…。でも、この恋の行方、どうなるのかしら…?
オスマン帝国支配下のブルガリア、時は17世紀後半、山深きエリンデニャ谷の羊飼いたちに襲いかかった苛酷な運命ー。イスラム教徒への改宗を迫られた人びとは、キリスト教徒として死を選ぶのか…?民族の歴史と生活を鮮やかに活写!ディミトロフ文学賞に輝く、ブルガリアの長編傑作!
異形異類の狂い咲く世。豪快な政略軍略を駆使して旧い権威の一切を焼き払い、新しい秩序を目ざして突進する足利尊氏の執事高師直-。猪の生き血を吸って絶倫の精力で、我欲以外は念頭にない権門高家の美姫妻妾を片っ端から毒芽にかけ、遂には前の関白の姫に恋し華燭の典に乱入して-。「神を恐れず」「巨悪と巨善」と「鬼と人と」…乱世型天才児の不敵な生きざまを、歴史文学の奇才が、現代の視点で活写。
歴史の奔流の中で、紺碧のカリブ海に生きたネッド・ヨークの、愛と冒険の一大ロマン。議会派と国王派の対立は、1642年夏についに内乱に発展した。議会派の新国民軍は国王派の軍隊を破り、49年にはチャールズ一世が処刑され、クロムウェルが護国卿に就任する。イギリスは王国から共和国に変わった。清教徒革命である。激動は本国から大西洋をわたってきた。伯爵家の2男でバルバドス島の農園開拓に従事しているネッドに、議会派の迫害は日に日に高まっていく。島を棄て、バカニアとなったネッドは…。
通勤地獄を掻い潜りやっと出社すれば、次には職場のみんなの淫らな視線が無遠慮に注がれ…彼女たちの欲情を見透かすように、中年上司の猥語や指技がその肉体を翻弄すれば、疼きをはらんで堰を切ったように愛液を溢れさす…ピザやクレープ育ちの、奔放なオフィス・ギャルの赤裸々な生態を描く!
如何なれば膝ありてわれを接(うけ)しや──。長崎での原爆被爆の切実な体験を、叫ばず歌わず、強く抑制された内奥の祈りとして語り、痛切な衝撃と深甚な感銘をもたらす、林京子の代表的作品。群像新人賞・芥川賞受賞の「祭りの場」、「空罐」を冒頭に置く連作「ギヤマン ビードロ」を併録。
スペイン内戦の影を引きずる亡命作家として国際的に知られるセンデールの自伝的作品。自らも妻と弟を虐殺された共和国軍の兵士でもあった作者がその怒りを内省化させ、少年ペペと少女バレンティーナに託してその多感な生き方を描く。